「むぅ……なんだかやることがなくて暇ね」
「そうですねぇ……じゃあ、適当に見て回りますか。ノッブも来ますよね?」
「あからさまに拒否権無いって言われてるんじゃが。いやまぁ構わぬが。どうせならようやっと来た沖田も連れていこうかと思ったが……おらんか。まぁ、そのうち合流出来るじゃろ」
そう言って、いつもの軍服からバスターTシャツに着替えるノッブ。
BBもチアガール風の水着に着替えると、アビゲイルの手を引いて町へ繰り出す。
* * *
「いや、射的は余裕ですよね。ノッブの十八番じゃないですか」
「うむ。まぁ、儂は鉄砲が好きなだけで、射撃が上手い訳じゃないけどね! だってほら、殺せりゃ問題ないし!」
「……これだから戦国脳は……」
「いやだって、儂は点攻撃を面攻撃に変えただけじゃし……面なら上手い下手関係無いじゃろうが」
むむっ。と睨み合う二人の間に挟まれたアビゲイルは、数秒あたふたとした後すぐになにかを閃いたかのような表情になると、
「喧嘩はダメよ!」
「「えっ、ちょ、まぁっ!?」」
一瞬の躊躇いもなく放たれたデコビームに呑まれる二人。
ビームから解放された二人は、苦い顔をしながら服の煤を払い落とし、
「よっしゃ。儂良いとこ見せるからな。見ておれよアビゲイル」
「えぇ。とっても楽しみだわ! 私、あのウサギのぬいぐるみが欲しいわ!」
「あ、BBちゃんはゲーム機希望で! やれるって信じてますからね!」
「阿呆! 儂はアビゲイルのを狙うからお主は自分でやれ!」
「ちぇ。仕方ないですね……じゃあそちらのを手伝うとしますか」
二人はそう言うと、二人分のお代を払って一人二丁持ち、標的であるそれなりに大きいウサギのぬいぐるみに照準合わせ、
「これだと四段撃ちじゃないですか?」
「いや一斉に撃ったら一段じゃからな? つか、この数じゃ足りんからな?」
「細かいですねぇ……まぁいいですよ。よゆーです」
そう言ってから一拍。パパン! パンパン! と放たれるコルク弾。
まずノッブが放った弾がウサギの頭部に当たり後ろに仰け反りきったところに後押しするようにBBの放った弾が追加で一発、二発と叩き込まれ、大きく揺れると同時、素早く再装填されたノッブのコルク弾が二発叩き込まれ後ろに倒れ落ちていく。
「うわははは! 儂の勝ちよな! んじゃ、景品は貰うぞ~」
「もちろんイカサマとか言わせませんからね? イカサマは、ぬいぐるみの底に貼り付けてた両面テープの事ですから」
BBにニッコリと笑って言われ、硬直する店主は、渋々といった様子でノッブに渡すと、
「ほれ、これで完璧じゃろ?」
「えぇ、えぇ! ありがとう、信長さん!」
「え、あれ、私は?」
「お主はほら、基本的に迷惑の方が度合い高いし……是非もないよね?」
「えぇ~……なんか悔しいんですけど……」
「あはは……BBさんもありがとう。とっても嬉しいわ」
「……なんだか同情された感じで、嬉しいような悲しいような……」
「面倒なやつじゃなぁ……」
ノッブはそう言うとBBの頭をわしゃわしゃと荒く撫で、
「うむ。お主はよくやった。何気儂に合わせておったし。じゃ、儂オススメのうどん屋へ行くか。まぁ、武蔵のヤツに教えてもらったんじゃけどな」
「む、ぐぅ……髪がボサボサに……整えるのに時間はかかりませんけど、出来ればやめてほしいです……」
「どんなおうどんなのかしら! 美味しかったら、画家の方の北斎さんを誘っていきたいわ!」
「う、むぅ……いや、剣豪の方と会わせなければ良いか……そうじゃな。部屋にこもってると思うから引きずり出せば良いぞ」
「えぇ、アドバイスありがとう信長さん」
アビゲイルはウサギのぬいぐるみを抱きしめながらそう言うのだった。
久方ぶりのアビー。そして激レアな絡み。何気にこの組み合わせほとんど無いような……
正直この二人の組み合わせを相手にイカサマを通すのは教授くらいじゃないですかね……