「マスター! 生きてぇ!」
「もうダメっぽい……ごめんね茶々……」
「ま、ますたああぁぁぁぁぁぁ!!!」
泣き叫ぶ茶々の手を、力無くすり抜けるオオガミの腕。
その様子を見て、ノッブ達は、
「なんじゃこれ」
「本当に謎ですねこれ」
呆然としながら眺めているのだった。
* * *
「で、どうしたの?」
「うん? いや、茶々が休憩室に来たら、なんかマスターが血まみれで倒れてたからとりあえず……」
「とりあえずで殺されたの?」
「いや死んでないけども」
何故か血まみれのオオガミが起き上がり、(自称)か弱い女子陣の短い悲鳴が上がる。
「なんじゃ……マスター。血糊とかどこで貰ったんじゃ……」
「うん? ロリンチちゃんから貰ってきたよ? 言ったら出てきたからとりあえずね」
「とりあえずで無駄遣いするな」
「いやいやいや。無駄遣いじゃないよ。ちゃんとノってくれた人いたし」
「茶々だね。でも、本気にした人がいたらさ、マスター危ないよ?」
「え? なんで――――」
言い切る前だった。
突如として開けられた扉の前に立つのはナイチンゲール。
その目はやはり狂気に呑まれていて――――
「急患がいると聞きました! 貴方ですねマスター! エレシュキガルさんから血まみれで倒れていると聞いたので大人しくしてください!」
「いや待って婦長これは違う怪我じゃないから!」
「問答無用! 殺菌!」
飛んできたベッドを反射的に伏せてかわすと、
「ヘルプ! 死んじゃうから!」
「え、知らないけど。諦めて連れていかれたら?」
「血まみれだもの。擁護できないわ」
「あれ意外と薄情じゃないですか!?」
遠慮無く見捨ててくるエウリュアレとメルトに半泣きになりつつ、オオガミはナイチンゲールの魔の手をすり抜けつつ何処かへと逃げ、ナイチンゲールはその後ろを追いかける。
「……嵐みたいね」
「とりあえずベッドを退かしておきましょうか」
ベッドを避けられず潰されたノッブとBB。それを仕方なく救助するエウリュアレとメルト。
ベッドを分解してドレインしたメルトは、のびてる二人を叩き起こし、
「工房を壊されないように向かった方がいいんじゃない?」
「えっ。何があったんじゃ今の一瞬で」
「……ちょっと先に行ってますね」
「あ、ちょっと待て儂も行くから!」
即座に門を開けて飛び込んで消えた二人を見送り、残された二人は、
「じゃ、茶々。片付けておいてね」
「えっ、茶々!? 二人は!?」
「拘束されてくるはずのマスターを医務室で待ってるわ。たぶんそろそろあの象神が帰ってくるはずだから手伝わせなさい」
「お、横暴だぁ……」
去っていく二人に呆れながら、茶々は仕方なく片付けを始めるのだった。
後に冒頭のような展開を医務室で見ることになるのだった……たぶん。
次のデート回をどうするか
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エウリュアレ一択
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メルトを忘れるな
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技術部二人とぶらり旅