「ねぇ、今さらなんだけど……たまにオオガミっておかしくなってるわよね」
「おかしくって、例えば?」
食堂の片隅でこそこそと質問するメルトに、エウリュアレは首をかしげる。
「例えばって……ん~……昨日みたいな? と言っても、直接見た訳じゃないのだけど」
「昨日……あぁ、べったりくっついてくる感じの? まぁ、数週間に一回くらいのペースでああなるわね。見たことなかったっけ?」
「寝ている瞬間は稀に見るのだけど、一回もされた覚えがないのよね……」
「そうだったかしら……でも、そんなに良いものでもないわよ。重いし」
「……なぜかしら。無性にイラッとするわね、そのセリフ」
エウリュアレの言葉にむっとした顔になるメルト。
だがエウリュアレは大して気にした様子もなく、
「まぁ、まず貴女にはしないと思うけど。なんだかんだ、貴女は特別枠みたいだし」
「ふぅん……まぁ、悪い気はしないけど、なんだか不満」
「そうは言ってもねぇ……貴女の前だと基本気を張ってるのよ。たまにおかしくなるけど」
「……なんだか貴女のアドバイスって、その、なんと言えば良いのかしら……」
「エウリュアレのアドバイスって、おばあちゃんみたいだよね! 大丈夫! 茶々分かるから!」
突然エウリュアレの横に出現する茶々。
何時からいたのかと問う前に、真っ先に手を伸ばしたエウリュアレは、そのまま茶々の頭を両手で掴み、
「誰がおばあちゃんかしら。ねぇ、誰がおばあちゃんなの?」
「あっれぇ? おかしいな。茶々、エウリュアレの筋力は弱いって聞いたからやったのに、想像の何倍も痛いんですけど。具体的には頭割れそう」
「聖杯パワーは伊達じゃないの。覚えておきなさい?」
「うん。ダメですね。ここは素直に謝る戦法です。エウリュアレ様ごめんなさい。茶々のやったことだから許して?」
「……愛される女神に愛嬌をぶつけてくるとか、正気じゃないと思うのだけど」
エウリュアレはそう言いながら、全力で締めていた頭を解放し、座り直す。
「それで、何しに来たの?」
「え? いや、理由なんかないけど。来たかったから来た、的な?」
「理由が雑ね……まぁいいけど。マカロンでも食べる?」
「わーい! 茶々マカロン大好きー!」
「……私も一つ貰おうかしら」
そう言う二人に、一つずつマカロンを食べさせるエウリュアレ。
そして、茶々はマカロンを飲み込むと、
「やっぱり、エウリュアレはもう田舎のおばあちゃんって感じだよねええあああ痛い痛い痛い!」
「わざとよね。あからさまにわざとよね。許さないわよ?」
「ひぃんっ! エウリュアレがいじめるぅ!」
「完全に自業自得じゃない」
泣きついてきた茶々をバッサリ切り捨て、メルトはため息を吐くと、
「なんだか、考えてるのが馬鹿馬鹿しくなってきちゃったわ。アイツが来るまでここで寝てようかしら」
「食堂で寝てるとうるさいのが来そうだけど……まま、大丈夫でしょ。おやすみなさい、メルト」
そうエウリュアレに言われ、メルトは机に突っ伏して目を閉じるのだった。
オオガミ君はたまに幼児退行するので。プリコネ太郎には勝てませんけど。
それでも基本メルトの前ではあんまり退行してないはず……してましたっけ……