「うわぁ……なんか、これだけ鏡があると自分がどれか分からなくなるね……」
「ゲシュタルト崩壊って、こういうことを言うのかな」
「魔力を取られて地味にピンチなんだけど。ONILAND苦手かも……」
ミラーハウスを探険するイリヤ達。
既に30分以上さ迷っているので、そろそろ色々と崩壊し始めていた。
「るびー……は、置いてきたんだった。ん~……持ってくればよかったかなぁ」
「サファイアはいるけど、元気がないみたい……早く脱出した方がいいかも」
「私もちょっと魔力取られ過ぎで元気無いんですけど~。私には何か無いの?」
「クロは脱出出来るんじゃないの?」
「ムリムリ。ここ、魔力が漂ってるせいで方向感覚おかしくされてるんだもの。真面目に脱出しなきゃなの。他に迷子なのはいないかしら……」
「それ、迷子が増えるだけで解決にならないんじゃないの……?」
「いや、人手が多いことに越したことはないし……っと、噂をすればってところかしら」
クロエが言い、それと同時くらいに聞こえてくる足音。
その音は二つ。三人は顔を見合わせて頷くと、音に向かって進んでいく。
「ね、ねぇクロ……突然襲われたりしないよね?」
「しないとは思うけど……どうかしら」
「もし襲ってきても、私がイリヤを守るから、大丈夫。サファイアがちょっと心配だけど、いざとなったら投げつける」
「投げないで!?」
そう言いながら向かっていた三人は、先頭を走っていたクロエが曲がり角で止まることで、玉突き事故のように倒れる。
「いったたた……ちょっとクロ! なんで急に止まるの!?」
「こ、答えるにしても、とりあえず上から退いてくれない?」
「あ、ごめんイリヤ。重かった?」
「美遊は全然重くないよ! うん! 大丈夫! あとクロもごめんね?」
「良いわよ別に。突然止まったのはこっちだし。で、急停止した理由だけど……あれを見たら、出てって良いのか考えるわよ」
「「あれ?」」
そう言ってイリヤと美遊は首をかしげ、曲がり角の先を見る。
そこには、オオガミとラムダが二人で歩いていた。
「あれは……マスターさんと、ラムダさん? 二人一緒みたいだけど……」
「むしろ、二人以外いない。足音も二つだけだし、周りに誰かいるって訳じゃないみたい」
「え? じゃあ、二人っきり遊園地を回ってるの? それって、デートってこと?」
「だと思う。本当はどうかはわからないけど」
「ん~……あれ? でも、マスターさんって、エウリュアレさんと付き合ってるんじゃ……?」
「でも、告白もしてないし、何かがあったって訳でもないみたいだから、正式に付き合ってるとは言い難い状況じゃない?」
「ん~……それだと、二股ってこと……?」
「いや待って。そこまで間違ってない気もするけど待って。その現実を突きつけないでっ」
三人の会話に割り込んでくるオオガミ。
三人は聞こえていたのかと驚くが、知らぬうちに声が大きくなっていたのかもしれないと反省する。
しかしクロエはすぐに立ち直りニヤリと笑うと、
「それで、どっちなの? マスターは、どっちと付き合ってるの?」
「……あやふやにね、しておいた方がいいこともあるんだよ……」
「え、目が本気なんですけど……触れない方がいいところ?」
「えぇ、それ以上はNG。あやふやにしておかないと、変なのが飛んでくるもの。スキャンダルとか、今は遠慮したいの」
そう言って、オオガミの前に立つラムダ。
スキャンダルとか既に手遅れ状態では? と思わなくもないが、イリヤ達は突っ込まない。
すると、ラムダは、
「あなた達、迷子かしら。一緒に来る?」
「え、良いんですか? お邪魔だったりは……」
「しないわよ。というか、私が言わなくてもコイツが言うもの。どっちが言っても変わらないわ」
「そ、そうですか……じゃ、じゃあ、お願いします!」
「えぇ。じゃ、任せたわよ。マスターさん?」
「う~ん、目が笑ってない」
そう言いながら、オオガミとラムダを加えた五人は、ミラーハウスを進んでいくのだった。
デート回書き終わらんですが! 明後日最終日なのですが! これ、書ききれないのでは?(直感
ま、まぁ、隠れてない伏線はばらまいたので、後は回収するだけ……ガンバルゾー。