「もう無理寝るわ……」
「今回のイベント、令呪三画を二回も使ったのね。まぁ、最初の一回はみていないのだけども」
帰ってくるなりベッドに倒れ伏すオオガミ。
その手にあったはずの令呪は霞んでおり、使われたのだろうという形跡だけだった。
それを確認したエウリュアレは少し考え、
「……ふむ。今なら令呪が無いからやりたい放題……?」
「今とんでもなく嫌な予感がした」
顔だけ起こしてエウリュアレを見るオオガミ。
しかし、見られているエウリュアレは、むしろ楽しそうに笑い、
「一切制止がないならイタズラしたい放題ね。サーヴァントの筋力に勝てると思わないでよ……!!」
「ぬおおぉぉぉ……!! 意地でもやらせはせぬぞエウリュアレえぇぇ!!」
そう言って、取っ組み合いを始める二人。
エウリュアレの両手に持っているペンだけが、イタズラへの熱意を物語る。
そんな混沌とした状況の中、部屋の扉が開き、
「いやぁ大量じゃったな! また行きたいなぁ蒼輝銀河!」
「大収穫でしたもんね……え? 何やってるんですか二人とも」
「「加勢して!」」
有無を言わさぬ加勢要請。二人は顔を見合わし、再度二人の様子を見ると、
「よっしゃエウリュアレに加勢じゃ!」
「センパイを拘束すれば勝ちですね!」
即座にオオガミを取り押さえにかかるノッブとBB。
裏切られたとばかりの表情をするオオガミは、しかし瞬く間に両腕を拘束され、
「ハロウィンの日にお菓子を貰えなかった恨み、ここで晴らしましょう……!」
「それは理不尽ってやつじゃないですかね……!!」
オオガミはそう言って、やがて静かになるのだった。
* * *
「……似合いすぎて気持ち悪いですねこれ」
「ん~……とりあえず撮っておくか」
「現像したら私に一枚寄越しなさいよ」
「好き勝手言いますね三人とも」
気付くと、女性用の制服を着させられていたオオガミ。
最初に姿見で見せられたときは困惑していたものの、すぐにポーズを取り始めている辺り、楽しんでいるのではなかろうか。
「それで? ノッブ達は何しに来たの?」
「あ、そのまま話を進めるんじゃな」
「絶対気にいってますよアレ。元気すぎません?」
「面白いからどんどん撮りましょ」
「話を聞けぃ話をぉ」
全スルーして三人だけで話すのを見て、思わずツッコミを入れるオオガミ。
すると、ノッブは面倒そうに、
「別に、お主の女装より価値はないから気にせんで良いぞ。後メカノッブ号はグリーン・キッチンに置いてきた。資材は運び込んだがな」
「何してんだコイツ!?」
平然と置いてきたらしい。でも資材は持ってきている辺り、流石と言ったところか。
オオガミはヒラヒラと揺れるスカートを気にしつつ、
「で、何を作る予定なの?」
「えぇいうるさい! 黙って被写体になれマスター! 話はその後じゃ!」
「突然の暴走! でも後でなら聞いてくれるんですねいくらでも撮れよオラァ!」
熱意が暴走しつつある三人に、オオガミは涙目で応えるのだった。
アレはヤバイ。超高難易度伊達じゃないですね。令呪使わされましたよ。
人なら北斎ちゃん。やはり大物絵師は強いのだ……
次のデート回
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王道のエウリュアレ
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メルトしかあるまい
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技術部二人と散歩でもいいのよ
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いいから全部だ