「ハッ……明日最終日……?」
「えぇもちろん。当然交換は終わってるわよね。いつも通り」
若干顔の青いオオガミに、小さなカップケーキを片手ににっこりと微笑むエウリュアレ。
蒼輝銀河から帰ってきて以降、高頻度でオオガミがお菓子を作るようになったので少しご機嫌なエウリュアレだったが、今の微笑みはどこか不穏な気配を感じる。
「い、いやぁ、ははは……サボりサボって今ここです」
「……私がいなくても大丈夫だと思ったんだけど?」
「やる気の減衰は厳しいよ。何よりもリンゴがないから回るに回れないんだよね」
「ふぅん……なら仕方ないわね。クリスマス用に控えているのを引きずり出せとは言えないもの」
「この理解力。エウリュアレ様、察しが良くなりすぎでは?」
「そりゃ三年近く一緒にいればそんなものでしょ。古参は大体出来るんじゃない?」
「う~ん……古参へのハードルが高くなってません? エウリュアレはわりとハイスペックだよ?」
オオガミにそう言われ、エウリュアレはチマチマとカップケーキを食べつつ、
「……貴方がそういう風に望んだからそういう風になったのよ。カミサマってのはわりとそういうところがあるんだから」
「汝神であれかし。なんて、不思議な話だよね。ギリシアは神故に神なのだって思考じゃなかったっけ」
「そこはほら、貴方が日本人だから、多少はそういうところがあるわよ。そもそも英霊召喚システムは日本人が作ったとか、そんな話を聞いたけど」
「そうなの? そこら辺は全く詳しくないけど」
食べかけのカップケーキを置いて、紅茶を一口飲むエウリュアレ。
それとは対照にカップケーキを一口で食べたオオガミは、
「まぁ、日本人に構築されたって言っても、神道がメインじゃなくてむしろ中国の風水じゃない? 地脈とか」
「どうなのかしらね。でも、いつの世も、伝承が全てよ。皆が想い、願ったのが私たち。でしょ?」
「ん~……哲学。正直カルデアに来てから学んでるのであんまりわかんないや。でもまぁ、エウリュアレが強いのはわかった」
「えぇ。それだけわかっていれば満点。でも武力には弱いので気を付けてね」
「あれ。武力的強さだと思ってたんだけどまさか精神的な意味で取られた?」
「……私、非力で守られる少女の象徴なのだけど」
「むしろ無敵女神では?」
「……非力って何かしらねぇ……」
概念的な何かじゃない? と適当に答えるオオガミの脛を爪先で蹴り、怒った顔のままカップケーキを一口で食べるのだった。
終わっているわけもなく。クリスマス用にリンゴを確保するのは無理なのではないかと薄々感じている私。
まぁやれるだけはやるんですけどね。
最近復活してきた飯テロ欲。お菓子を被らせないようにと思ってましたけど、流石にボキャブラリー足りず断念。無理なものは素直に諦めるべき……
次のデート回
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王道のエウリュアレ
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メルトしかあるまい
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技術部二人と散歩でもいいのよ
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いいから全部だ