「ねぇバラキー? 今さらだけど、どうして私は貴女にお菓子を作ってるんです?」
「それを菓子とするかは議論の余地があるが、
そう言って、皿に乗せられた焼きたてのアップルパイに手を伸ばすバラキー。
すると、カーマは皿ごとひょい、と取り上げると、
「なんですか。要らないならそう言ってください。ちょっと配り歩いてきます」
「うおぉぉ!? そ、そうではないが!? 要らないとは一言も言っていないが!?」
立ち上がろうとするカーマを必死に止めつつ、なんとかアップルパイを奪えないかと手を伸ばすバラキー。
だがカーマは肉体を変化させながらかわすため、バラキーは触れることすら叶わない。
「ふふん。これですっかりバラキーも私の虜ですね。やはり胃袋を掴めば勝ちというわけです。全生物共通の弱点ですからね。神も悪魔も鬼も人も変わりませんよ」
「なんだかバカにされている気もするが一つも否定できない!」
「えぇ。ですから、ほら。私から逃げられないくらいに堕落してくださいね?」
「ふぅん。まぁ60点くらいかしら。まだマスターのナシタルトの方が美味しいわ」
「こっちも十分美味しいと思うのだけど。お料理教室に行ってないのにこんなに美味しいのよ?」
「え? あ、きゃぁ!」
少し離れたところで聞こえた声に困惑するカーマ。
その一瞬の隙を突いて飛び掛かったバラキーに捕まり、カーマは倒れる。
その時一緒に落ちるはずだった皿は既に手元にはなく、もはや目的を忘れて飛び付いているバラキーを邪魔そうに引き剥がしつつ探すと、少し離れたところでエウリュアレとアビゲイルが食べていた。
「ちょ、ちょっと! それ私のなんですが!?」
「あら、落としそうだったから拾ってあげたのだけど。代わりに一切れもらってるわ」
「嘘ですよね半分減ってるんですが!? 八等分にしたはずなんですが!」
「嘘は言ってないわ。一切れよ。一切れ。四分のね」
「純粋な情報不足! そんなデタラメ理論やめてくれませんか!? 小さい子達が真似したらどうするんですか! 教育に悪いですよ!」
「えっ……ど、どうしましょうエウリュアレさん。この人、鏡を見た方が良いと思うのだけど」
「むしろ一周回った説得力があるわね。マスターなら、『お前が言うな』とか言いそうだけど」
「うぐぐ……と、とにかく返してください! それ、本当にただのアップルパイですから! 英霊用に調節してないただのアップルパイですから!」
カーマがそう言うと、エウリュアレは少し考え、
「……それって、この前のヤツみたいに太らないってことよね。返す理由がなくなったのだけど」
「面倒ですねこの女神! バラキーやっちゃってください!」
「いやぁ、この前ランサーでも負けたからあの二人には勝てぬ」
「早々に諦めムードなのなんでなんですか!?」
ギャーギャーと騒ぐカーマ。
それをひとしきり楽しんだ後、エウリュアレはアップルパイと一緒に紅茶を渡すのだった。
なんでカーマが良い子ちゃんになってるんですかねぇ……まぁ平和なのでよし。だんだんとゆる~くなっていくこの二人。初期の方がヤバかったような……?
星四交換をどうしようかなぁと考えつつ私はお空の古戦場へと向かうのです。
次のデート回
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王道のエウリュアレ
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メルトしかあるまい
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技術部二人と散歩でもいいのよ
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いいから全部だ