「やぁアナ。何してるの?」
「げ、マスター……」
オオガミを見るなり、後退りをするアナ。
不思議に思うオオガミは首をかしげ、
「なにもしてなくない?」
「姉様もメルトさんもいないときに近付くとろくなことがないのは知ってるんです。どうせどこかに連れていく気でしょう?」
「スゴい誤解されそうなワードと全力の逃げの姿勢。別に何かするつもりはないんだけどなぁ……」
なにもしないとばかりに両手をあげて示すオオガミ。
それを見て、アナはため息を吐くと、
「それで、何の用でしょうか」
「話は聞いてくれる感じかな?」
「マーリンよりは、信頼してますので」
「マーリンと比べられちゃうのかぁ……」
「そこは別にいいです。早く用件を」
「あぁうん。それね」
一度咳払いをし、
「アイス作ってみたんだけど、試食する?」
「……しょうがないですね」
無表情なまま、しかし目を輝かせてアナはオオガミについていくのだった。
* * *
「……騙されました」
「騙しては無い」
「姉様もいるなんて聞いてません」
「言ってないからね」
「騙されました!」
「騙してはないかな?」
「いや騙してるわよ」
アナとのやり取りを聞いていたエウリュアレに突っ込まれ、静かになるオオガミ。
アナは一瞬だけ勝ち誇ったような笑みを浮かべるも、すぐに無表情を取り繕うと、
「それで、姉様は何をしているんですか?」
「何って……貴女と同じよ。さっきまでメドゥーサとゴルゴーンを連れ回していたのだけど、逃げられたわ……次は
そう言って、真剣そうに思案するエウリュアレを見て、アナは何かを決心したような顔をすると、
「あ、あの、姉様……私がいるので、二人を連れ回さないようにするとか、出来ますか……?」
「無理」
一撃だった。
容赦なく一撃で斬り伏せたエウリュアレはそのままにっこりと笑うと、
「だってほら、次は全員で行くんだもの。誰も抜けさせないし逃がさないわよ?」
「ひぅ……」
逃げられないと気付いたアナは悲鳴のように短く息を吸い、何事もなかったのようにエウリュアレの隣に座る。
そして、オオガミがアイスを持ってくると、再び目に生気が宿るアナ。
「というわけで、豆乳アイスです。牛乳はないので豆乳です」
「ふぅん? でもまぁ、美味しいと思っているから良いわ」
「食べる前からそう言われると反応に困るんだけど」
そう言って困ったように笑うオオガミに、エウリュアレは楽しそうに笑いながら食べるのだった。
エウリュアレの上機嫌モードは続く……メドゥーサ組はもうしばらく振り回されるのだろう……南無三。
次のデート回
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王道のエウリュアレ
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メルトしかあるまい
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技術部二人と散歩でもいいのよ
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いいから全部だ