静かに回転する中心部分から飛び出す細い糸。
そこから漂う甘い香りに釣られていくと、そこにはロビンがいた。
「……何してるのロビンさん」
「ん? あぁマスターか。昨日BBから届いてな。適当に試運転中だ。んで、これが試作品」
ロビンはそういうと、オオガミにふわふわの綿菓子を渡す。
貰ったオオガミは困ったように笑い、
「お菓子を作りに来たらお菓子を貰ってしまった」
「ハハッ。たまには貰う側でもいいんじゃねぇの? なんだかんだハロウィンも参加出来てねぇだろ?」
「うぐっ……エウリュアレから皆には作り置きのお菓子を渡したって聞いてるけど、正直色々と用意したかったのは事実……」
「いや待て。なんで渡す側なんだよ貰えよそこは」
「いやぁ、あの集団に混ざって仮装してお菓子貰いに行くのはハードル高いって……」
「くっ、変なところでダメだなこのマスター……」
ロビンは首を横に振り、ため息を吐く。
だがオオガミは気にした様子もなく、
「まぁ、来年は行けるでしょ」
「来年まで人理救えない宣言はどうなんですかねぇ……」
そう言って、ため息を吐くロビン。
しかし、オオガミは楽しそうな笑みを浮かべながら、
「人理を救っても一緒にいたいよねって話だよ。まぁ、ロビンさんが嫌なら、ロビンさんだけ帰って貰うけどね?」
「……なんか、最近嫌な意味でBBに似てきたよな?」
「え、うそ、マジで? 気を付けよ……」
「なんですかその反応! 普通に傷付くんですけど!?」
「うおぁ!? か、隠れてやがったのかBB!」
物陰から飛び出てくるBBに驚くロビン。
だが、BBはそんなこと一切気にせず、
「ちょっと、どこら辺がセンパイと同じなんですか! こんな、可憐でキュートな小悪魔系完璧後輩と、このポンコツ残念なマスターさんが! どこら辺ですか!?」
「雰囲気自体が似てきてる」
「「それはない」」
「互いが互いに寄ってきてるんだよアンタらは」
ロビンに言われ、不満そうな顔をする二人。
どことなく似たような雰囲気を感じているのは、おそらくロビンだけではないのだろう。
「まぁいいや。んで? BBは受け取りに来たのか?」
「え? あぁ、いえ、ロビンさんが送られたものを律儀に使ってるのかなぁ~と思いまして。いえ、ダメって訳じゃなく、むしろ使って貰いたいんですけど、怪しまれて放置されてたらすりつぶそうかと」
「おっと、デッドエンドスレスレだったとは思わなかったわ。綿菓子に命を懸けたくねぇな」
「えぇ、そうでしょ? それでセンパイ、その綿菓子食べました?」
「いや、まだだけど。食べる?」
「ん~……そうですね。貰います。エウリュアレさんにあげるなら後継機の方が優秀ですしね」
そう言って、一口食べるBB。
だが、すぐ不満そうな顔をすると、
「ん~……やっぱ変換効率がまばらですねぇ……」
「変換効率?」
オオガミが聞くと、BBは少し上機嫌に、
「ふふん。今回のは魔力をエンジンにした特殊わたあめ製造機でして、使用者の魔力を吸収して稼働するんですけど、実験が中々難しくてですね、試運転をしたくても先にこっちがぶっ倒れちゃうので、ロビンさんにやらせてみようと思って今ここにあるんですよ」
「……へぇ?」
「あぁ、もちろんタダじゃないですよ? このザラメも、カーマさんから技術を奪い取って手に入れた圧縮魔力による特殊ザラメですし。使った分は食べれば回復。むしろオーバーなので作れば作るほどお得になるシステムですとも。まぁ、作らないで食べまくると太りますし、食べないと座に帰るんですけどね」
「先に言えよ! てか、コンセントは飾りだったのかよ!」
コンセントを引き抜きながら怒るロビンに、BBは目を逸らしながら、
「コンセントはそれっぽいかなぁと思って。というか、先に言わなかったのはセンパイが来るとか思ってなかったので……それに、子供達が来ないようにマーリンさんに根回ししてましたし……今頃みんな揃ってレクリエーションルームで花のお兄さんの『王の話~劇場版~』を聞いてますよ」
「なんだ劇場版って。そっちの方が気になるんだが」
「ちょっと聞いてくるか……」
「センパイはともかくロビンさんはわたあめ作っててくださいよ。そのためのマーリンさんなんですから」
「いや、もう作っただろ……?」
「いえ、後3つ作ってください。それで一応最低限のデータは集まるので」
「……しょうがねぇな、3つだけだぞ」
「えぇ。ロビンさんならやってくれるって思ってました! よっ、チョロイン!」
「殴るぞテメェ!」
そう言って、怒るロビンに、BBはキャ~☆と言いながら走り去るのだった。
綿菓子シーズンは真逆ではないかと内心突っ込みながら書きました。でも楽しかった。そういうところだぞロビンさん。
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技術部二人と散歩でもいいのよ
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