「ふむ。クリスマスというと、私としては一昨年の印象がわりと大きいのだが……今年は無事迎えられるのだろうか」
「あっはは。不穏なこと言うもんじゃないよ? というか、是が非でも迎えさせるんだから。流石に強制退去はしばらくしないでしょ」
「まぁ、そう言われると確かにそうなのだが……」
「でしょ? なら、料理作った方が絶対良いって。ほらほら、準備するよ」
そう言って、エミヤを急かすブーティカ。
急かされたエミヤは仕方ないとばかりに調理を再開する。
「しかしマスター達が帰ってこないのは分かっているが、戦闘に参加しない者も何名か消えていないか?」
「ん~……遊びに行ったのかな? 私も見てないからなんとも言えないけど」
「ふむ……まぁ、帰ってくれば良いのだが」
そう言って、エミヤは今ここにいない一部のサーヴァントを思うのだった。
* * *
「寒い! なんで寒いのにこんなところに来なきゃいけないんですか!」
「風の噂ではあるが、様々な料理があると聞いて飛び出した。クリスマスパーティー開催までは暇だからな。御馳走があるのなら飛び出すのが鬼の性よ」
「それに巻き込まれた私は何に怒れば良いんですか……!」
猛吹雪の中、腰まで雪に埋まりながらも速度を緩めず疾走するバラキーと、先頭が作っていった道を走って追いかけるカーマ。
もはや前など見えていないが、自信満々に突き進む彼女を止められるわけもなく、目的地を定めているらしいのでひたすらについていく。
「それで、場所は分かってるんですか!?」
「分からんが美味そうな匂いがするからおそらくこっちだ!」
「この極寒の中でも嗅覚が働くとか、鬼ってスゴいですね……!」
「クハハ! そうであろう!?」
「嫌味を真に受けないでくださいよ……!」
皮肉も通じないのかと頭を抱えるカーマだが、冷静に考えると皮肉が通じる方がレアだと考えを改める。
そんなこんなでだんだんと吹雪が収まってきたとき、バラキーがふと立ち止まる。
「どうしたんです? 目的地ですか?」
「いや……甘い菓子よりも先に血痕を見つけてな……どうしたものかと」
「はぁ? こんな吹雪の中の血痕とか、そんなのもう凍え死んでますって……」
そう言ってバラキーが見ているところを覗き込むカーマ。
そこにはまるで人形のような血痕があった。
魔術で雪が積もらないようにされている辺り、何か残したかったのだろうか。
「う~ん……何の跡でしょうか……わざわざ残してるとか、ワケわかんないんですが……」
「おおよそ周回に疲れた奴等の遊び心か……ということは、近くにマスターがいるな」
「は? いや、待ってください。なんでそうなるんです?」
「ん? 何故と言われても、吾がいたときもやっていたからなぁ……人間とはわりと脆いものよ……」
「えぇ……」
どう言うことですか……というカーマの突っ込みも空しく、やがてそういうものだと理解するのだった。
はたして無事にクリスマスを迎えられるのか……このイベント日程、ゲーティアの時も似た感じだった気がするんですが一体……
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