クリスマスの装飾でワイのワイのと騒ぐカルデアの面々。
昨日の今日で出来たというわけではなく、事前に準備していた厨房組の成果といえる。
グループで固まっていたり、一人でいたりと様々だが、そのほぼ全員がオオガミに声をかけられていた。
あちらこちらへ奔走するオオガミをぼんやりと見ながら、配られているシャンパンに似せた炭酸ジュースを飲むエウリュアレ。
「あれ、エウリュアレさんはお一人?」
「あらアビゲイル。えぇ、今は一人よ。貴女も?」
「いいえ? 北斎さんと一緒なの。今は他の人とお話ししているから離れてきたのだけどね」
「あぁ、そういう……だったら私も一人じゃないわね」
「誰と一緒なの?」
「あそこで全員に声をかけまくっているやつ」
「……いつものってことね」
バタバタと走るオオガミを見て、納得するアビゲイル。
エウリュアレはキレイに盛られていた、今は無惨に食べ散らかされているサラダを摘まみつつ、
「うん。なんだかんだ言っても、厨房メンバーの料理は美味しいのよね」
「えぇ。どれもこれも美味しいわ。ただ、まぁ、苦手なのもあるのだけど……」
「それはまぁ、誰でもあるものよ。ほら、北斎も呼んでいるみたいだし、行って来たら?」
「あ、うん。行ってくるわね!」
そう言って、手を振りながら去っていくアビゲイル。
それと入れ替わるように帰って来たオオガミは、メルトと一緒にいくつかの料理を皿に乗せてきた。
「ただいま~」
「お帰りマスター。スター独り占め自慢はしてきたの?」
「してないって。というか、何故しないといけないのさ」
「……まぁ、そうよね。いつものことだもの、言うまでもないわよね」
「そもそも、メルトを独り占めとか、出来るわけないでしょ。湖面の白鳥は、飛び立つ姿がとても綺麗なんだから」
「……皿は受け取っておいてあげるわね」
「え? なんで……げふぅっ!」
エウリュアレがオオガミから皿を受け取ると同時に叩き込まれるメルトの蹴り。
わりと洒落にならなそうなダメージではあるが、ブレードではなくただ硬質化しただけの足に変わっていたため、鈍器で殴られた程度のダメージになっていた。
オオガミはその場でうずくまりつつ、メルトを見上げると、
「ぐ、おぉ……内蔵に響くデストロイアタックぅ……うっかりしてたら死んでたんですけどぉ……」
「人間、そんなに柔じゃないわ。少なくとも、マスターは大丈夫ね」
「どこからその信頼が出てくるんですかねぇ……」
メルトに言い返し、蹴られた場所を押さえながら立ち上がるオオガミ。
既にその顔からは痛みの表情が抜けてきており、大丈夫なように見える。
そんなオオガミに、エウリュアレは楽しそうな笑みを浮かべると、
「さてマスター? 今日はこんなに美人な女神が二人いるのだけど貢物は無いのかしら」
「その美味しい料理じゃダメですかね」
「もう貰っちゃったからダメね」
「えぇ~……」
そう言うと、どうしようかと考え始めるオオガミ。
そんなオオガミを見て、エウリュアレは更に楽しそうな笑みを浮かべると、
「まぁ、その料理でも食べて考えましょ。大丈夫。まだ時間はあるわ」
「ん~……そうだね。何かちゃんと考えるよ」
そう言ってオオガミはエウリュアレから皿を受け取り、三人で一緒に食べ始めるのだった。
なんだかんだ言って万能な『日本式』
多宗教国家の強みと言うかなんというか。まぁ、一部サーヴァントは怒ってそうな気もしますけど、マスターが日本人ですし日本式ですね。平和。
次のデート回
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王道のエウリュアレ
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メルトしかあるまい
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技術部二人と散歩でもいいのよ
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いいから全部だ