消灯の時間。誰もが寝静まり、それは英霊とて例外ではない。
管制室では何名かの職員や補助として数名のサーヴァントがいる程度で、どこもかしこも真っ暗だった。
だが、そんな暗闇で蠢く影がいくつか。
「うはは! やっぱ儂の発明はしっかりしておるな!」
「こっちの要求にしっかり応えてくれるノッブの本体設計は悔しいですけど称賛ものです。で、どう回るんですか、センパイ」
「正直このメンバーならBBの門で秒速で終わりそうだけどそれは禁止で! とりあえず近い所から順番に行くよ」
「「了解」」
技術部特製の暗視ゴーグルを装着し、これまた技術部制の特殊サンタ服に身を包んだオオガミ達は特徴的な赤色を夜闇に紛れさせながら目的地に向かって突き進む。
三人とも、この日の為に何度か予行練習と言いながら遊んでいたので、既にどの部屋に誰がいるかは完全に理解していた。
「それで、最初は茶々さんからですか」
「もちろん。まぁ、茶々だけに渡すと攻撃的になる女神と皇女がいそうだけど、まぁ、無視で」
「はいは~い。じゃ、音が出ないように扉を開けますね~」
そう言って、ゆっくりと扉を開けるBB。
オオガミはグッと親指を立てて、プレゼント袋を担いで中へと入る。
当然の様に真っ暗な部屋で、きれいに片付いていた。
茶々はアナスタシアの上のベッドに寝ており、二段ベッドの上と言う、かなり面倒な位置にいた。
とはいえ、オオガミがそれで止まるわけも無く、小太郎に教わった音消しを実践しつつ、ゆっくりと近づいて行く。
* * *
「なぁ、儂必要?」
「生け贄です」
「あ~……マスターの代わりにボコられる係かぁ……いや納得いかんな?」
「後はあれです。一部屋に二人以上いたときとか、巡回の誤魔化しとかです」
「なるほど……あれ、でも今日の巡回って誰じゃ……?」
「……エレシュキガルさんですね」
「適任はマスターな気もするんじゃが」
「私もそう思うんですけどねぇ……」
二人がため息を吐くと同時に、帰ってくるオオガミ。
「あ、閉めますね」
「よろしく」
「はいは~い」
そう言って、BBは静かに扉を閉める。
* * *
「あらマスター。何をしているの?」
「あ、エレちゃん。こんばんは」
「えぇこんばんは。それで、そんな赤い服を着て何をしているのかしら?」
「ん~……まぁ、こういうことかな」
そう言うと、オオガミはプレゼント袋からプレゼントを一つ取り出すと、エレシュキガルに差し出すと、
「メリークリスマス」
「……あ、あぁ! あの、夕食の時のやつね! え、プレゼントを貰っちゃうだなんて……どうしましょう、お返しできるものが無いのだわ……!」
「いやいや。別にお返しとかはいいよ。ただ、この事は秘密ね?」
「あ……えぇ、分かったわ。マスターはこんな嬉しいことをみんなに分けてあげてるんだもの。邪魔しちゃダメよね。頑張ってね、マスター」
「うん。巡回お疲れさま。今度は昼間にね」
「えぇ、昼間に。そちらのお二人もね」
そう言って、立ち去るエレシュキガル。
それを見送ったノッブとBBは、
「……コミュ力お化けを心配したのがバカみたいなんですけど」
「儂の必要性無くなったんじゃが」
「二人とも行くよ~」
「……まぁ、機器の不備があったらって感じですね」
「整備係までランク落ちかぁ」
ノッブはそう言って肩を落としながら、オオガミを追うのだった。
* * *
「じゃ、解散で!」
「ほとんどセンパイしかやってないじゃないですか……!」
「儂最後まで要らんかったわ。帰ろ~」
オオガミのマイルームの前で解散する三人。
二人が帰ったのを確認したオオガミは、静かにマイルームに入ると、ベッドで寝ているエウリュアレとメルトに近付き、
「……メリークリスマス、エウリュアレ、メルト」
「えぇ、メリークリスマス」
「可愛い可愛い私達のマスター?」
「……可愛いはちょっと複雑かなぁ……うわわっ!」
困ったように笑った瞬間、ベッドに引きずり込まれるオオガミ。
しばらくバタバタと動いていたものの、やがて完全に取り込まれ、静かになるのだった。
クリスマスにはプレゼントが付き物なんだぜ?(子供に限る
まぁ、実年齢を気にしちゃいけないカルデアに置いて、中身が子供か外見が子供なら判定内ですかね。アンデルセンは深夜まで起きてるので悪い子ボーナスでカットです。あとナーサリー泣かせた罪。
この為だけに早朝(未明)投稿。実質一日二本。
ではでは、メリークリスマス! 良いクリスマスゲームを!(現実逃避
次のデート回
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王道のエウリュアレ
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メルトしかあるまい
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技術部二人と散歩でもいいのよ
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いいから全部だ