「はあ、やっと帰ってきた。」
そう独り言を言いながら私は自分の部屋のドアをあけ、カバンを置き、メガネを外し、ベッドに横たわる。今日は楽しかったけど、とても緊張した。天井を眺めながら今日のことを思い返す。茜ちゃんと放課後デートしてしまった。そう思ってるのは私だけかもしれないけど。・・・これは一回考えた気がする。そんなことは置いておいて、今日は茜ちゃんとデートをした。帰宅途中に一時間程の寄り道をしただけだったけども、いつもより長い間茜ちゃんと時間を共有できてとても嬉しかった。一緒に隣を歩けたし、一緒にお店でパンを食べられたし、そのパンの美味しさを一緒に味わえた。その一つ一つが噛み締めるほどに嬉しくて、楽しくて。その時は緊張していたから楽しむ余裕がなかったけれど、こうして後になって思い返すと口元が自然と緩んでしまうほどの幸福な時を過ごしていたんだと思う。枕を抱きしめ、にやける。
「今日は、楽しかったなぁ。」
私一人しかいない部屋に声が響く。
「あ、そうだ。」
一つ、思いついたことがあった。これは茜ちゃんに喜んでもらえるだろうか。いや、茜ちゃんに迷惑ではないだろうか。そういった思いがグルグル頭を巡るっていたが、結局私のとった選択は―――。
「あ、茜ちゃん、お弁当。一緒に、た、た、ったべませんか。」
そう声をかけたのは一年生の教室がある廊下のことだった。
「あ、ええでー、ゆかりさん。」
笑顔で二つ返事を返してくれた。
ああ、その笑顔、尊い―――。
余韻に浸っていると茜ちゃんが不思議そうにしていたので、取り繕いながら文学部の部室へと向かった。いつものように対面の位置になるように座る。茜ちゃんは自分のお弁当を取り出して並べる。おにぎりとおかずとフルーツ。そこそこ量がある。
「いただきます。」
茜ちゃんは行儀よく手を合わせてそう言い、食事を始めようとした。
「あ、あの、私、お、お弁当・・・作ったんですけど。食べて、みま、せんか。」
そう、私が思いついたことというのはこれ。茜ちゃんに私手作りのお弁当を食べてもらうこと。私はそこそこ料理の腕には自信がある。茜ちゃんは食べるのが好きだということが分かったので、これは喜んでもらえるんじゃないかと思ってのことだが。どうだろうか・・・。
「えっ、ほんまか。ゆかりさんの手作りなんか。」
私の目の前には目をキラキラと輝かせながらお弁当を見つめる茜ちゃんがいた。見てる私も幸せになってしまうような、そんな笑顔。眩し過ぎるくらいの笑顔からは私の作ったお弁当への期待と嬉しさがこもっているのが分かる。
「じゃ、じゃあ、早速食べましょうか。」
「はーい。じゃあちょっとお邪魔しまーす。」
そういって茜ちゃんは対面の位置から私の隣の席へと移動しストンと座る。
茜ちゃん、めっちゃいい香りする―――。
茜ちゃんの良い香りに気を失いそうになりつつも何とか気を持ち直し、どうぞと手で合図する。
「いただきます。」
二度目のいただきます。最初のより元気よく言ってくれた。それが私には堪らなく嬉しかった。それからは私の作った一品一品に茜ちゃんが美味しいと言ってくれて、楽しい昼食の時間はあっという間に過ぎて、私はこう思った。
もっとおいしい料理が作れるようになろう。茜ちゃんの隣に座るために―――。