桜色の君と過ごす日常   作:大天使

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お久しぶりです。バスケの話はとりあえず今回で一区切りつくのでもう少しお付き合いの方をよろしくお願いします。




12話 浦の星学院

「これより浦の星学院高等学校対藤沼国際高等学校の試合を行います」

 

コートに両チームの主力五人ずつが整列していた。浦の星にとっては去年の借りを返す絶好の機会だった。藤沼国際も昨年は苦戦した相手のため今年こそは完勝するつもりでいる。

 

「よろしくな!」

 

「よろしくお願いします!」

 

キャプテン同士の挨拶も終わり、いよいよ試合が始まろうとしていた。

 

「海藤…今年こそは負けねーからな」

 

「受けて立つぜ竜崎!」

 

両チームのエースも握手を交わし、それぞれの立ち位置に戻っていった。

 

「それでは試合を開始してください」

 

「頼んだぞ朔也…」

 

「おう!」

 

審判がボールを高く上げ、試合が開始された。

 

TIP OFF(試合開始)!』

 

「フン!」

 

「くっ…高ぇ!」

 

「気にするな!まずは一本止めるぞ!」

 

ジャンプボールは身長で勝っているジョズが抑えた。浦の星はディフェンスからのスタートだ。

 

「颯大、頼んだ!」

 

「わかりました!」

 

小松から竜崎にボールが渡る。試合開始早々に行われたエース同士の闘いに誰もが注目していた。

 

「いくぞ…覚悟しな!」

 

竜崎は早速龍吾を抜きにかかる。相手のディフェンスを置き去りにするスピードで竜崎は完璧に龍吾を抜いたと思われたが

 

「まだまだ甘ぇよ。こんなんで俺のことを抜けるとでも思ってたのか?」

 

竜崎が二度目のドリブルをついた瞬間に龍吾は目に止まらぬスピードで竜崎の懐に潜り込み、ボールを奪っていた。

 

「クソっ!やられた!」

 

「ドンマイ!次で取り返すぞ!」

 

龍吾はそのまま敵陣に突っ込んでいくが、そこにはすでにディフェンスが二人戻ってきていた。

 

「戻りが早いな…俺が竜崎を止めることまで読んでの行動ってことか?」

 

「そんなもんかねぇ…てかホントにお前一人で来る気かよ?」

 

「叩き落としてやるよ!」

 

二人はすでに龍吾の進むコースを塞いでいた。彼はこのまま相手にボールを奪われ返されるだろうと誰もが思ったが…

 

「一人じゃねぇよ…よく見とけや」

 

龍吾は自分のすぐ後ろを走っていた琉空にノールックでパスを出した。

 

「なにっ!?」

 

「ナイスパース!」

 

琉空が放った3ポイントはリングに触れることなくゴールへ吸い込まれていった。

 

「よし!先取点は頂いたぜ!」

 

「ナイスだ!」

 

観客はみな試合は藤沼国際が有利に進んでいくだろうと思っていたが、浦の星もそう易々と流れを引き渡すようなことはしなかった。

 

「いきますヨ!」

 

「相手してやるよ!」

 

もう一つの注目だった朔也とジョズのマッチアップはほぼ互角だった。先程からジョズが決めれば朔也が入れ返し、朔也が止めればジョズもやり返した。

 

「さて、こっちもそろそろやりますか」

 

「来な。止めてやるよ」

 

「んじゃまぁ…遠慮なく!」

 

龍吾は竜崎のシュートを身を挺して止めようとしたが、それは叶わずボールはそのままゴールへ吸い込まれていった。

 

「やるじゃねぇか…」

 

「俺はもう去年とは違うんだ…舐めんな!」

 

「わかってはいたけどよ…やっぱそう簡単には勝たせてくれないようだな!」

 

前半は点の取り合いだった。お互いに一歩も引かずスコアは同点のまま試合は進んでいった。

 

「なんだ…こいつら雑魚じゃなかったのかよ…」

 

「こうなったら…」

 

(あの二人…さっきから様子がおかしいぞ。エースやキャプテンが奮起してるというのに全然動きを見せない。いや、見せようとしていない…)

 

相手二人の様子がおかしい。孝至はそれにいち早く気づき、警戒を始めていた。

 

「お前ら、これでわかっただろう?浦の星は雑魚なんかじゃねぇんだよ!」

 

龍吾は再びドライブでディフェンスを抜きにかかる。そしてさっきのようにそのままシュートにいく…はずだった。

 

(クソが…これでも喰らいな!)

 

瞬間、コートの中から鈍い音が響いた。相手の肘が龍吾の額に直撃し、龍吾は頭から血を流しながらコートに倒れ込んだのだ。

 

「龍吾!大丈夫か!?」

 

「クソっ…やりやがった…な…」

 

龍吾はそのまま意識を失い、担架で医務室まで運ばれてしまった。

 

「テメェ…わざとやりやがったな!」

 

「やめろ!手出したらお前が退場させられるぞ!それにあんな奴を殴ったところでどうにかなる問題じゃないだろ!」

 

仲間を傷つけられたことで怒り、相手に掴みかかろうとする朔也を孝至が押さえつける。

 

「…すまねぇ」

 

朔也は拳を強く握り、声を震わせながら答えた。

 

「だが到底許すわけにはいかないな。そこまでして勝ちたいとは…正直失望したな」

 

「海藤さん…大丈夫でしょうか?」

 

「あいつなら大丈夫だ。とにかく今は試合のことだけを考えろ!」

 

竜崎は担架で運ばれていく龍吾を見て残念そうな表情を浮かべていた。

 

「くそっ余計なことをしやがって…」

 

「こうなったのは不本意だが仕方ない。万全ではない相手を本気で倒しに行くのは好きではないがこっちも全国がかかってるんでね…竜崎、相手への余計な情は捨てろよ」

 

「…わかってます」

 

浦の星はエースがいなくなった穴は大きいが、何とか食らいつき前半を同点で終わらせた。だが不安要素を残したまま後半へ望むこととなってしまった。

 

──────────────────────

 

…頭が割れるように痛い。治療は終わっているはずなのに起き上がることが出来ない。龍吾はまだ闘うことを諦めてはいなかったが、痙攣する身体は言うことを聞かなかった。

 

 

医務室のベッドの上で横たわる龍吾の姿は今までにないほど弱々しかった。意識もはっきりしておらずほとんど目覚めていないと言ってもいいだろう。

 

 

もうこのまま試合が終わるまで起き上がることは出来ないのだろうか。一層のことこのまま寝てた方が楽になれるのではないだろうか。時間が経つにつれて龍吾はそんなことを思うようになってしまった。

 

 

 

そんな時だった

 

 

 

「…くん!海藤くん!」

 

「…り…梨子…?」

 

龍吾は朦朧としていた意識の中で確かに聞いていた。自分の名を呼ぶ最愛の人の声を。

 

「海藤くん!よかった…気がついたんだね」

 

「梨子?なんでここに…」

 

龍吾の疑問はもっともだった。梨子達はラブライブの予選があるため試合会場には来れないはずだったのだ。

 

「予定より出番が早くなったから間に合うことが出来たんだよ!もう少しでも遅かったらここにはいられなかった…」

 

「そうか…試合はどうなんだ…?」

 

「みんな頑張ってるけど…9点差で負けてて残り時間はもうすぐ5分…」

 

5分で9点差か…充分間に合う。今すぐコートに戻ってあいつらの負担を少しでも軽くしてやらねーとな…

 

「わかった!今すぐにコートへ…」

 

龍吾は何とか起き上がったが、頭の激痛ですぐに倒れ込んでしまった。

 

「くそっ…こんな大事な時に仲間を助けられなくて何がエースだ!」

 

「無理しないで!これ以上貴方に何かあったら私は…」

 

「梨子、心配する必要はないよ。この怪我は選手生命に関わるほどの傷じゃないからすぐによくなる」

 

「でも…そんな状態で…」

 

「俺は一度自分の身勝手な行為であいつらを傷付けた。その罪滅ぼしがまだ終わってねぇんだ。俺はあいつらを絶対に全国へ連れていく!身体の傷はすぐに治るけどよ…心の傷はそう簡単には癒えないもんだろ…?」

 

「海藤くん…」

 

龍吾は完全に覚悟を決めた。これ以上彼に何を言っても届くことは無い。それはずっと龍吾の近くで過ごしてきた梨子が一番わかっていた。

 

「わかった。でもこれ以上怪我しないでね?貴方が傷つくことは私も辛いから…」

 

「梨子…」

 

「海藤くん…勝ってきて!」

 

梨子は優しく龍吾を送り出した。彼は決して振り返ることなくコートへ向かっていった。

 

「交代です!」

 

「あ!龍ちゃんが戻ってきた!」

 

「あら?あいつらも来てたのか。それはいいけどだいぶ苦しい試合展開になってきたなぁ…」

 

「戻ってきたか。散々待たせやがって…」

 

浦の星の面々はコートに彼が戻ってきた姿を見て安堵の表情を浮かべる。

 

「何シケたツラしてんだよ?まさか本気で勝てねぇとか思ってたんじゃねぇだろうな?」

 

「フン!正直お前がいなくても勝てるんじゃねぇかとか思ってたわ!」

 

「…の割にはさっきより点差縮まってねぇじゃないか?全くしょうがねぇ奴らだな」

 

残り時間は4分。点差は変わらず9点差。何事もなく追いつくには少々きつくなってきた。

 

「海藤…」

 

「竜崎…俺のいない時間で少ししか点差をつけらんないとかやっぱその程度かい?」

 

「フッ、お前なんかよりあいつらの方が何倍も手強かったんだぜ?ずっと寝てたみたいだしお前の方が大丈夫か?」

 

「言ってくれるねぇ…」

 

「そっちこそ…」

 

試合中だというのに人目もはばからずに火花を飛ばし合う両エース。チームメイトも少し呆れたような目で見つめている。

 

「絶対負けねぇからな!」

 

「絶対追いつかせねぇぜ!」

 

浦の星ボールで試合は再開した。竜崎もいつも通りにディフェンスに入るが、彼は浦の星の攻めに驚きといった表情をしていた。

 

「龍吾、任せたぞ」

 

「ああ!存分にお前らを生かしてみせる」

 

「海藤…お前がポイントガードなのか…?」

 

普段の浦の星はゲームを組み立てるのは正ガードである孝至の仕事だ。それを今は普段はフォワードの龍吾がガードのプレイをしている。竜崎がそれに驚いた一瞬を龍吾は見逃さなかった。

 

「油断すんなよ!」

 

「しまっ!キャプテン!」

 

「任せろ!」

 

竜崎を抜いた先には小松が待ち構えていたが、龍吾は慌てず冷静にパスを捌いた。

 

「ぶち込め朔也ァ!」

 

「うらぁ!」

 

龍吾からのパスを受けた朔也はジョスのブロックが間に合わないタイミングでダンクを決めた。

 

「やられましたネ…」

 

「いや、俺も悪かった。オフェンスで立て直そう…」

 

小松はすぐに攻防を切り替え、近くにいた竜崎にボールを預けるはずだった。

 

「龍吾がガードやってるからって俺のことを忘れてもらっちゃ困りますよ!」

 

「しまった!」

 

小松から竜崎へのパスを予測していた孝至がすぐさまパスをカットし、そのままシュートを放ったが…

 

「孝至!ジョズが来てるぞ!」

 

「ボク達は絶対に負けません!」

 

「………ぐっ!」

 

ジョズの強烈なブロックショットが孝至のシュートを止める。が、弾いたボールの行き先には真一が待ち構えていた。

 

「ナイスパス」

 

「あっ!」

 

流石のジョズでも二回連続の跳躍は間に合わない。そのまま真一は冷静にシュートを決めた。

 

「孝至サン!ケガはありませんカ?」

 

「大丈夫、気にする必要はない。それと真一、お前のおかげで助かったよ」

 

「…俺はこぼれ球を拾っただけだ。お前の方がお手柄じゃねぇか」

 

あっという間に5点差に詰め寄り、残り時間はもうすぐ3分になる。だが、こんな状況でも主力に焦りが見えないのが藤沼国際の強さの一つだ。

 

「竜崎!こっちがフリーだ!よこせ!」

 

「…仕方ねーな。決めてくれよ?」

 

竜崎もフリーになった味方に冷静にパスを捌き、パスを受けた味方も焦らずにシュートを放つ。が、そのシュートはリングに嫌われ、そのまま相手ボールになってしまった。

 

「やべっ!外した」

 

「…やれやれだぜ」

 

シュートが外れてもディフェンスへの戻りは早い。彼らはすぐに自軍のゴールを守り始めた。

 

(孝至…)

 

(…いいぜ)

 

龍吾は孝至と一瞬のアイコンタクトを交わすとすぐにドライブで敵の中へ切れ込んでいった。

 

「打たせねぇよ!」

 

「お前の傷じゃ無理はできねーだろ?選手生命は大事にしようぜ?」

 

「………」

 

龍吾はすぐさま相手には見えない角度へのパスを出す。そこには既に孝至が待ち構えており、パスをもらうと同時にスリーポイントシュートを放った。そのシュートはとても高く、綺麗な弧を描いてゴールへと吸い込まれていった。

 

「よっしゃあ!これで2点差だぁ!」

 

「く…どっからパス出しやがった…」

 

「こいつと何年一緒にやってると思ってんだ。どこにいればパスもらえるかなんてすぐにわかる」

 

誰よりも同じチームで長い時間を過ごしてきた。そんな二人だからこそ出来たコンビネーションだった。

 

(あいつらの次の行動は…深く考えるまでもないか…)

 

「り…竜崎!お前に預けるぞ!」

 

「バカが!俺へのパスは既に予測されてるってわかんねぇのか!ディフェンス来てるぞ!」

 

竜崎の叫びも虚しくパスは再び孝至にカットされ、そのボールは琉空の手に渡った。

 

「このシュートは落とせねぇ!」

 

「う、打たせねぇぞ!」

 

「待て!無理するな!」

 

小松の指示も届かなかった。相手のディフェンスは琉空がスリーを放った瞬間にぶつかり、二人はコートに倒れ込んだ。そのシュートは一度リングの弾かれたが何とか持ちこたえ、リングへと吸い込まれた。

 

「バスケットカウント!今のシュートは得点として認められます!」

 

バスケではファールが試合中に何度も起こる。中には無理やり反則を犯し、シュートを止めるなんてこともあったのでファールを貰いながらのシュートが得点として認められるようルールが決まったのだ。

 

浦の星は琉空のこのシュートにより見事に逆転。残り時間もあと僅かだ。

 

「これで逆転だぁ!」

 

「よく決めた…琉空!」

 

「ふぅ…正直ヤベェと思ったわ」

 

追加でもらえるフリースローも見事に沈め、リードを2点に広げた。

 

「よし!あとは守りきるぞ!」

 

「正直参ったわ…お前ら強いな」

 

竜崎はハーフラインでボールを受け取り、ディフェンスの龍吾に言う。

 

「でもな、勝つのは俺達。それにさ…守りがそんなに遠くていいのかよ!」

 

「な…」

 

竜崎はスリーポイントラインの遥か遠くからシュートを放った。そのシュートは見事に決まり、藤沼国際が再びリードとなった。もう時間はない。

 

「うぉぉ!竜崎!」

 

「なんてやつだ!この局面で決めてくるとは!」

 

「海藤…どうだったかい?」

 

「…やはりそう易々とは勝たせてくれないようだな?」

 

孝至からボールを受け取り、残り時間を見る。あと10秒しか残っていない。龍吾は孝至とアイコンタクトをとる。

 

(…どうする?)

 

(決まってんだろ…お前が決めろ。俺達はお前に全てを託す)

 

(そうか…ありがとう!)

 

他の三人も同じ意見のようだった。龍吾は仲間に感謝の意思を持ちながら敵陣へと向かっていった。

 

「やっぱお前で来たか…絶対止めてやるからな!」

 

「いや、お前じゃ俺のスピードには追いつけない………さらばだ」

 

龍吾は竜崎の前でスピードを上げ、ディフェンスを振り切った。

 

「いけぇ龍吾!このままぶち込めばそれでおしまいだ!」

 

「いくぞ竜崎!」

 

「やっぱ強いな…けどよ…俺はまだ勝負を諦めちゃいねぇよ!」

 

抜かれても諦めない。竜崎は何とか食らいついて龍吾のシュートを叩き落とそうと高く跳躍した。

 

「くらえ海藤!」

 

「竜崎、本当にお前は強い…認めるよ。だけどよ…まだ足りない…」

 

「…くっ!」

 

「試合は…これで終わりだぁ!」

 

龍吾が渾身の力でダンクを叩き込む。竜崎はあと僅かに届かなかった。その瞬間、試合終了のブザーが鳴った。

 

「よっしゃあ!」

 

「これでインターハイ出場決定だぁ!」

 

歓喜の輪に包まれる浦の星学院サイド。その中心に龍吾はいたが、彼の目線は共に全力を出し尽くして闘ったライバルの方に向いていた。

 

「泣くな竜崎、お前はよくやってくれた。負けたのは俺がお前の力を生かしきれなかったからだ…許してくれ…俺を許してくれ…」

 

「キャプテン…あんたも泣いてんじゃねぇか…それじゃ説得力ねぇよ…」

 

「竜崎サン、キャプテン、まだ終わってませんヨ。次頑張りましょう…」

 

互いに健闘を讃え合い涙する三人の姿は何よりも美しかった。それは本当に頑張った人だからこそ流せる涙だったのかもしれない。

 

「龍吾!控え室に戻るぞ。明日の試合も勝って全部終わったらみんなで祝勝会だ!」

 

「すぐ行く!またな竜崎、楽しかったぜ…」

 

試合終了(タイムアップ)。浦の星学院対藤沼国際の試合は激闘の末、浦の星学院が土壇場で逆転し、1点差で勝利を収めたのだった。

 




梨子がラブライブの地区予選に出てるのはオリジナルです。私の中ではこの予選のあとにピアノのコンクールがあるという設定でやってます。

さて、次から今まで通りに戻っていきますがまだバスケ模写が完全に終わったわけではないということだけ伝えておきます。ご理解をよろしくお願いします。

それではまた。
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