今回は少し短めです。
ラブライブの県予選。そしてインターハイ予選から二週間が経過した。共に予選を突破し、より大きな大会へ進むということもあり練習はより濃密なものになっていた。
「無事に県予選も終わりましたね!みんなと最高のパフォーマンスが出来て本当に楽しかったよ!」
「わかっているとは思いますが、油断なんてしてはいけませんよ。私達にはまだ東海予選が残っているのですから」
「でもそれを乗り越えればついにラブライブ本戦だね!」
Aqoursの方はまだ全国とはいかない。もう一つブロックごとの予選があり、そこで入賞を果たせばいよいよラブライブの本線へと出場することが出来るのだ。
「よし!今日も練習やろっか!」
「あ、待ってちかっち!今日は沼津の方に練習スタジオを予約してあるわ。流石に毎日は使えないけど一週間に一度くらいはそこで練習出来るようになったわよ」
「ホントに!?流石鞠莉さん!」
「ちょっと移動の手間がでてくるけど屋上よりも良い環境で練習出来るからね!」
「よし!早速行こっか!」
千歌の一言で全員が一斉に準備を始める。それと同時に彼も部室へやってきた。
「ういーっす」
「あ、龍ちゃん!来てすぐで悪いけどすぐに準備して!これから沼津の方へ行くから」
千歌は龍吾に鞠莉から聞いたことを伝えた。
「なるほどな。そんなに良い環境で練習出来るなんて最高じゃん!この機会は大事にしないとな!」
「そうだね!それじゃ行こっか!」
千歌達は龍吾を含む全員でバスへ乗り込み沼津へと向かっていた。その途中で龍吾は曜と談笑していた。
「ねぇねぇ龍くん、今度の予選は見に来てくれるの?」
「申し訳ないけどインターハイの日程と被ってるから行けないな。だけどラブライブ本戦は確実に見に行くから!」
「そっか、残念だなー」
「なんかすまないな。毎回みんなの晴れ舞台を見に行くことが出来なくて。サポートしてる人間としてはお前達がやりきるまで全部見届けてあげたいと思ってるんだが…」
「気にしないで。いつも感謝してるから!」
やはり曜の笑顔は眩しい。心のモヤモヤも晴らしてくれるような笑顔に昔から何度助けられたことか…
「そう言って貰えると気持ちも楽になるよ」
「そろそろ降りるわよ。練習場所はすぐそこなんだから!」
俺達はバスから降り、鞠莉さんに連れられて練習スタジオへと入っていった。
「おお…思ってたよりも広いんだな…」
「すごい…早く練習したいな!」
やはり本格的な場所で練習が出来るということでみんなのやる気も高まっていた。俺もすぐに自分の作業に取り掛かろうと思ったが…
「ちょっと着替えとか準備しなきゃいけないから龍ちゃんはしばらくブラブラしてていいよ!でもすぐに終わるからあんまり遅くはならないでね!」
というわけで俺はスタジオから追い出されてしまった。すぐに終わるって言ってたけどそれまで何をするか…
「まぁ適当にふらっとしてるか。何か面白いものでもあるかもしんないし…ってあいつは…」
龍吾は前方からやってくる一人の男に気がついた。それは彼がよく知る人物だった。
「あいつは…竜崎…」
「…海藤?」
龍吾はインターハイ予選で激闘を繰り広げたライバルである竜崎と早くも再会した。
「ここに何の用なんだ?俺は練習の帰りだが」
「ああ、ちょっと友人達の手伝いがあってな。その付き添いでここまで来たんだよ」
「…あの女達か。つーかお前と少し話したいこととかあんだわ。ちょっと付き合ってくれよ」
「付き合ってくれって…まぁ少しだけだったら別にいいけどよ」
龍吾は竜崎に連れられ、場所を変えて話をすることになった。
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「この辺でいいだろう」
偶然の再開を果たした二人は駅前の広場で椅子に腰掛けお互いの近況報告をしていた。
「会うのは試合の日以来だな」
「そうだな。あの後の試合はどうなったんだい?」
「お前らに負けた後の試合は正直覚えてない。ただキャプテンやジョズのおかげで何とかインターハイへの出場権は得られたよ。お前こそ怪我の方は大丈夫なのか?」
「すぐに治ったさ。まぁもう少し傷が深かったら緊急手術だったかもしんないがな」
龍吾は笑いながらそう言って怪我の箇所を見せる。その部分は既に完治しており傷跡も殆ど残っていない。
「悪いことをしたな。その怪我の元凶になったヤツらは後で監督にこっぴどく叱られてたよ。んで多少はしっかり練習するようになったわ」
「そっか、気遣ってくれてありがとな。他に変わったことは?」
「そうそう、この手紙が届いたんだぜ?」
竜崎はポケットから一枚の封筒を取り出して龍吾に見せた。そこには県で選抜チームを作るために力を貸してほしいと書いてあった。
「これは…国体の招集か。よかったじゃねーか。俺んとこには来てねーけど…」
「まぁいずれ来るっしょ。だって県内トップのスコアラーは紛れもなくお前なんだから…認めたくねーけど」
「国体か。正直出たいけど今すぐに招集かけられてもちょっと困るなぁ…インターハイの準備の他に俺は友人達の手伝いもしなくちゃいけないから」
「本格的に始まるのはインターハイ後だから大丈夫だろう。あとお前に聞きたいのは国体についてじゃない」
竜崎は急に真剣な表情になり龍吾へと問いかける。
「あの子達はお前にとってなんなんだ?何故大切な練習の時間を削ってまで尽くそうとする?」
「うーん…俺がそうしたいからとしか言えない。まぁバスケ一筋なんて言えねーような人間が県一位のチームでエースやってるだなんて笑いもんだよな」
「俺も正直全く意味の無いものだと思ってたさ。だが、お前ほどの選手がそこまでこだわるなんて何か特別な理由があるのかと思ってな」
竜崎の言葉からは刺々しさもなく、ただ純粋に龍吾の意見を聞きたいという様子に見えた。龍吾は別に隠すこともないだろうと思い、正直に話すことにした。
「一つ理由をつけるなら…恩返しかな?」
「恩返し?」
「俺は一度バスケから逃げた。そんな俺をもう一度バスケへと向かわせてくれたのはあいつらなんだ。俺はあいつらから受けた恩をこうやって返してるだけさ」
彼は一年の頃に自身のミスでチームを敗北させ、責任を取って自らチームから姿を消した。今思うとそれは理由を付けて逃げていただけだった。そんな自分をもう一度バスケに向かうきっかけを間接ながらくれたのが千歌達だった。
「そうかい。そんな大切な理由があんだったら俺から何か言うこともねーよな。あの子達のことは大切にしてやれよ」
「お前に言われなくてもわかってるわ。てかそろそろ戻んないとあいつらに何か言われっかもしんねーなぁ」
時計を確認すると竜崎と話し始めた時からだいぶ時間が進んでいた。みんなは着替えなどとっくに終わって練習を始めている頃かもしれない。
「んじゃ行ってやんなよ。なんか文句言われたら俺のせいにしとけ。あ、もしかしたらお前のとこにも国体の招集かかるかもしんないからそうなったら一緒にやろうぜ!」
「もちろんだ。期待して待ってろよ!」
二人は固く握手を交わして別れていった。龍吾はスタジオへの道のりを急ぐ。
「あいつも頑張ってるんだ。もたもたしてたらすぐに抜かされちまうから俺も頑張らねーとな!」
…この後みんなから戻ってくるのが遅いという理由でこっぴどく怒られたのは別の話。
それではまた。