龍吾達が出発する日になった。梨子達は彼らの見送りをするために朝早くから集まっていた。
「龍ちゃん!みんな!インターハイ頑張ってね!」
「はは、ホントに来てくれたのか。朝早いから来なくてもいいって言ったのに…」
「私達が行きたかっただけだからいいの!」
「それじゃ行ってくるよ。そっちも頑張れよ!」
「うん!龍ちゃんもインターハイ頑張って!私達もラブライブ本戦に出られるように頑張るから!」
「遠くから応援してるよ…」
そして扉は閉まり、龍吾達はインターハイの開催地である福岡県に旅立って行った。
「…行っちゃったね」
「梨子ちゃんはよかったの?最後に何か言ってくればよかったのに」
「ううん。昨日のうちに伝えたいことはちゃんと言ってきたから大丈夫だったよ」
梨子の隣では事情を知っている千歌が優しい笑みを浮かべている。
「さて、私達も明日の準備をしましょうか。今日は軽く確認をしてすぐに終わりにしますから家に帰ってゆっくり休んでくださいね」
Aqoursの9人も練習へ行くために学校へと向かっていった。
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「ふぅ…やっと着いたな!」
「本当に俺達はここで試合出来るんだな…」
インターハイの会場についた龍吾達はこれから始まる闘いを前に心踊らせていた。
「楽しみだけど…めっちゃ緊張するわ…」
「こんな大きな会場で試合するのは初めてだからなぁ…」
「恐れることなんてないさ。勝ち負けよりもまずはこの会場でプレイ出来ることを楽しもうよ」
龍吾達は開会式に堂々とした態度で臨んだ。そして宿舎に戻って翌日の試合への闘志を燃やしていた。
(ついに明日なんだよな…あいつらには散々でかい口叩いてたけど俺も緊張してきたわ…)
「なんだ?お前も緊張してきたのか?」
「…孝至か」
「お前とはミニバスの時から一緒にやってるけどここまで緊張してるとこは見たことねぇわ」
孝至は穏やかな笑みを浮かべながら言う。
「うるせぇよ。確かに全国大会に出るのは初めてってわけじゃないけどやっぱ慣れねぇんだよ…」
「まぁそれは俺も同じだ」
「…なぁ孝至。お前には散々迷惑かけたよな?俺のせいで主将もやることになって余計な重圧を背負ったりもしたよな………すまなかった」
龍吾は孝至に頭を下げて自らの過ちについて謝罪した。自分勝手な行動で孝至達を傷つけたこと。あろうことかその原因となった自分が尻尾を巻いて逃げたこと。自分が犯した罪を全てを償うつもりでここまでやってきたこと全てを孝至に話した。
「そうか。お前は俺達を全国へ連れていくためにここまで頑張ってくれたんだな」
「ああ。だから明日も全力で…」
「龍吾………ありがとう」
「…え?」
急に礼の言葉を伝えられて龍吾は困惑した。自分が孝至達に感謝することは多々あるけど逆のことは考えられなかったのだ。
「今まで俺達のために闘ってくれたことは素直に嬉しいよ。でもそろそろいいだろ?これからは自分のために闘ってくれ」
「そ、そうか?嬉しいけど他の奴らになんか言われねぇかな?」
「心配いらん」
二人だけの空間に突然第三の声が響いた。龍吾達が後ろを振り向くとそこには声の主を含めた三人の男がいた。
「朔也か。どういうことだい?」
「俺達も孝至と同意見だ。この大会だけでも自分のために全力で闘うんだ。サポートは俺達に任せてくれ」
「ここまで俺達を導いてくれて本当にありがとう。恩返しにしちゃ軽いかもしれんが明日の試合は俺達を好きに使ってくれよ」
「…それともなんだ?俺達じゃ役不足だって言うのか?」
それぞれから感謝と激励の言葉を貰い、龍吾は感激していた。そして四人に向けて言う。
「みんな、本当にありがとう。明日は好きに動くしお前達のことも好きに使う。ただ、その中でも全員で勝ちに行くということは忘れないでほしい」
龍吾は右手を突き出す。他の四人も同じように手を出すとそれは龍吾の手の上に重ねられた。
「明日の試合は俺たちの力を出しきって全力で楽しんでいくぞ…いいな?」
「「「「おう!!!!」」」」
五人の中心で音頭を取っている龍吾は高校生らしい楽しげな表情を浮かべていた。
翌日、ついに試合当日となって彼らは念願だったインターハイでのデビュー戦を迎えることとなった。
「ついに来ちまったか…どうにかして落ち着かねぇとなぁ…」
「さて、昨日は勝ち負け以前にこの舞台での試合を楽しみたいって言ったけどここまで来たらやっぱ勝ちたいよな?」
「そんなのは当たり前だ。負けるための練習なんか一度もしてこなかったんだからな」
「本当に君達は頼もしいですね。期待してますよ」
「おう!」
スタメンの五人がコートに出てきて一列に並ぶ。
「それでは試合を始めます!」
「よろしくお願いします!」
今日の相手は鹿児島県代表の岱山高校。全国でもそこそこ名の知れた強豪校だ。
「朔也、負けんなよ」
「当たり前だ…オラァ!」
ジャンプボールは朔也が押さえ、すぐに龍吾にボールが回る。
「頼んだぜ、龍吾!」
「今回は海藤くんにポイントカードを任せてあります。どんなゲームメイクをするのか楽しみですね」
龍吾は相手をドライブで抜き去るとゴール付近にいた朔也にバウンドパスを出した。
「ナイスパス!」
そのシュートはしっかりと決まり、拮抗していた流れを引き寄せるチャンスとなった。
(やっぱりみんなとのバスケは楽しい!)
この日の彼らは一味違った。全員が100%の力を出し切って1回戦を快勝し全国大会での初勝利をあげた。
2回戦では後にインターハイ優勝を果たすこととなる地元チームとの激戦の末に惜しくも敗れたが、彼らは全力を出し切り、最後まで諦めることはなかった。
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龍吾達が福岡についた翌日、千歌達もラブライブの東海予選が行われる場所である愛知県に来ていた。
「すごい…沼津の会場より大きい…」
「私達…こんな所でライブ出来るんだ!」
「これでもラブライブ本戦に出場するための登竜門でしかないのね…」
梨子達は普段のステージとは規模の大きく違う会場に圧倒されていた。
「だけどこんな大きな会場でライブができる私達もすごいって!今まで大変なことが沢山あったけどここまでこれたんだよね…」
「千歌ちゃん…!」
これまで大変なことは色々あった。千歌自身も本当に自分がスクールアイドルに向いているのかと悩んだり悔し涙を流したりもした。
「みんな!今日は全力で楽しんで最高のライブにしようね!」
「うん!」
(龍ちゃん、私達は歌うよ。今の自分達にできる精一杯を見てもらうんだ…!)
千歌達も全力のパフォーマンスで会場を沸かせて自分達も最後までライブを楽しんだ。が、優勝にはあと一歩届かずラブライブ本戦への出場はお預けとなった。
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「…そっか。惜しかったなぁ…」
インターハイもラブライブ予選も悔しい結果に終わってしまった。その晩、龍吾と梨子は電話でお互いのことを報告しあっていた。
「海藤くん達も負けちゃったんだよね…やっぱり悔しい?」
「そりゃね。だけど昨日の1回戦には勝つことが出来たし、今日の試合も負けはしたけど全力で闘うことが出来たからそこはみんな満足してるよ」
「そっか。私はちょっと悔しいかな?」
「だけどこれで全てが終わったわけじゃない。目の前でこぼれ落ちた勝利はもう帰ってこないけどまだ次があるだろ?今度は次の舞台に向けて頑張っていくことが大事じゃないか?」
「千歌ちゃんも同じこと言ってたよ。今回はダメだったけどまた次に繋がるように頑張ればいいって。流石幼なじみって感じね…」
「はは…近いうちに内浦へは帰れるからまたみんなで練習頑張ろうな!」
「うん!」
少年達は今回の経験を糧に次のステップに向けて走り続ける。勝ち負けに関係なく平等に次の舞台が待っているのだから。
それではまた。