今回はこれからの展開に左右していくお話となります
「よし、ラストだ!しっかり決めろよ!」
インターハイも終わり、俺達は次の舞台のために練習を再開していた。今日は翌日に練習試合を組んだこともあり、早めに終了することになっていた。
「ナイス!今日はここまでだ!」
「お疲れ様でした!」
「お疲れ様です。しっかり休んでください。それと海藤くん。少しだけ時間を頂けますか?話と渡すものがあります」
「了解です」
コートと監督への挨拶を終え、それぞれ帰りの支度をするなり自主練をするなりして過ごしていた。俺も軽めのシューティングを始めようとしていたが監督に呼び止められてしまった。
「監督、話ってなんですか?」
「海藤くん、理事長から君宛ての手紙を預かっています。学校のポストに届いていたと。中身は見ていないので分かりませんがおそらくバスケ関係のことでしょう」
「そうですか…わかりました」
監督はそれだけ伝えると体育館から出ていった。俺は受け取った封筒を鞄にしまって自主練に戻っていった。
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「ただいまー」
俺はキッチンで夕食を作っている母親に帰りの挨拶を済ませ、自室で監督から渡された封筒を見つめていた。
「…うーん。直接俺の家に届けずにわざわざ学校を経由したってことは少なくとも俺との面識はほぼ無いに等しいってことだよな。一体誰が…」
龍吾は封筒を丁寧を開いて中に入っていた手紙を読み、そして驚愕した。
「え!?嘘だろ?」
そこには東京の大学からの勧誘…スポーツ推薦についての内容が書かれていた。
「確かこの大学って…そうだ。今年のインカレでベスト4に入った学校じゃねぇか…」
その大学の名は水明学院大学。数年前までは2部リーグに所属していたが、部員達が血の滲むような努力を重ねて2年前に1部リーグに昇格。そこから僅か1年でインカレという大学バスケ最大の大会でベスト4にまで進出した。這い上がるまでの過程が浦の星学院と似ているところもあるので俺も注目していた大学だった。
「そんな大学が俺のことを…」
正直言うとめっちゃ嬉しい。自分の力が大学でどこまで通用するのかを出来れば強豪校で試してみたいと思っていた。
「っと!その前に兄貴に話しとくか。あいつは何だかんだ言って頼りになるし…」
龍吾は東京の大学に通っている兄である海藤
「龍吾か、どうしたんだ?」
「兄貴、水明学院大学からの推薦についての手紙が来たんだ。それを報告しておこうと思ってな」
「水明学院から…やったじゃねぇか!あそこの関係者も全国でのお前の活躍を見ててくれたんだな!更に御眼鏡にも適ったとなりゃ最高だな!」
兄貴は推薦の話を聞くと自分のことのように喜んでくれた。
「でもさ…お前は元々どこの大学を受けるつもりだったんだ?」
「沼津の方の大学だ。比較的通いやすかったり学習面でも力を入れていた。だけどこの手紙でそれは考え直すことになったよ」
「龍吾、分かっているとは思うが東京に行くってことは親や友人達とも離れ離れになる。それに住み慣れた地を離れて暮らすってのは相当な覚悟がないと出来ないぞ」
兄貴にそこまで言われて俺はようやく本当に自分が考えなくてはならないことに気がついた。
「まぁ自分が本当にその大学へ行きたいのならば俺は止めないし協力する。だからもう少し真剣に考えてみるんだ。それじゃ切るからな」
「ああ…ありがとな」
電話を切りもう一度手紙を確認すると下の方にアドレスと3日後に学校に来て直接話をしたいと書いてあった。そのアドレスに自分も大学の監督と話をしたいという趣旨のメールを送ってその日は床についた。
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「海藤くん、準備はいいですか?」
あれから3日、龍吾と石崎は学校の応接室へと来ていた。この扉の向こうに大学の監督はいる。
「監督、あなたは大学入学と同時に東京に行ったのですよね?地元から東京へ出て生活したり故郷を離れるのは大変でしたか?」
「勿論不安はありましたよ。だけど自分の好きなバスケットをやりに行くのですからそれ以上に楽しみでしたよ」
「…そうだったんですね」
「お客を待たせてます。入りますよ」
2人は軽くノックをして部屋に入った。
「失礼します…」
「あ、リューゴ!石崎センセー!早く座ってお話しましょ!」
「なんで鞠莉さんがここに?」
「一応理事長だから私達と共に話を聞く義務はあるということですよ」
2人はソファーに腰掛けて大学の監督の話を真剣に聞き始めた。
「突然押しかけてすみません。私は水明学院大学バスケ部の監督をやっている葛西という者です。よろしくお願いします」
「ご丁寧にありがとうございます。お手紙を頂いた海藤龍吾です。隣にいるのは私が日頃からお世話になっている石崎監督です」
龍吾と葛西は握手を交わし、話の本題に入り始めた。
「さて、まずは私達があなたをチームに欲しい理由からお話しましょう。それはあなたのどんな時でも決して諦めることの無い不屈の精神。そして大学バスケでも通用する技術力です」
「なるほど。お聞きしたいのですが何故私を?私よりも優秀なプレイヤーは沢山いるはずです」
「実は私も静岡県出身でね。県内の有望なプレイヤーのことは把握しているよ。君と激戦を繰り広げた竜崎のこともね」
監督は自分が俺のことを欲しがっている理由を熱心に語ってくれた。
「そして何より…海藤、君はうちのプレイスタイルにあっている。私はうちでなら君の力を最大まで引き出すことが出来ると思っている」
「私からも一つ。私はその大学に行くことによって自分の夢を叶えるための努力をすることは出来ますか?」
「海藤、君の将来の夢…目標はなんだ?」
「………プロになることです」
まだ梨子達にも話したことはないけど俺はプロのバスケ選手になるという夢がある。それは幼い頃からずっと変わらない夢であり目標になっている。
「…わかった。その目標が達成出来るように私達がしっかりとサポートする。勿論そのあとのこともだ。話はこれで終わりだ。いい返事を期待してるよ」
「いえ、こちらこそありがとうございました!」
「理事長さん、話す時間をくださりありがとうございます。海藤、何かあったらこの前のアドレスに連絡してくれ」
葛西監督はそう言い残して部屋から去っていった。
「さて、私も戻りますけど…海藤くんはこのあとどうしますか?」
「鞠莉さんと…理事長と話をしますね」
「そうですか。では先に戻っていますね」
石崎監督も出ていき、部屋には俺と鞠莉さんの2人だけになった。
「鞠莉さん…果南姉さんから聞いたけど鞠莉さんも留学の経験があるって?」
「あるわよ。途中で内浦に戻ってきちゃったけどね。でもその選択に悔いはないわ。それに…」
鞠莉さんは少し俯きながらもいつもと変わらない笑顔でこう続ける。
「…そのことは後で。私と話をするってのはAqoursの練習に行くために口実でしょ?それじゃ行くわよ!」
「…わかりました」
俺と鞠莉さんはAqoursの練習を行っている屋上へと向かっていった。
「チャオ!仕事終わったわ!」
「ういっす…」
「2人ともお疲れ!先に始めてるよ!」
龍吾は屋上に到着するとすぐに練習の準備を始めた。
「リューゴ、みんなに大学のことは話すの?」
「みんなには後で話しますよ。練習中に言われても邪魔なだけですから」
「…そうかもね。気遣いありがと」
「さ、練習頑張りましょ!」
「ええ!」
今日の練習も次のラブライブへと向けて頑張らないと。そんなことを考えながら二人は練習に加わっていった。
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手伝いをしてる時もさっきことが頭から離れなかった。伝えるなら早めの方がいいだろう。だけどいつ言えばいいのか…
「みんなお疲れ!今日はここまでだね!」
「ふぅ…少しずつだけど上手くなってる気がするよ。これからも頑張らないと!」
「それはよかった…って鞠莉さん?」
何となく心中を察したのか鞠莉さんが俺に近づいて耳打ちをする。
「リューゴ、言うなら今のうちよ。それに私も…」
「…ねぇ、俺からみんなに話すことがある」
俺の一言で全員がこっちを向いた。正直話しづらいけどここで言わなくちゃ…
「まだ完璧には決まってないんだけど俺…東京の大学からの推薦の話が来たんだ。だから
言い終わると全員の表情がやや暗くなったように見えた。俺も正直辛い。東京に行くということは千歌達とも離れ離れになってしまうということだから…
「ねぇ…それホントなの?龍ちゃん…大学では東京に行っちゃうの…?」
「まだ確定ではないけどそうなってくると思う。その大学の監督は俺のことを本当によく見てくれていた。俺はあの人の元でバスケがしたいんだ…」
「そう…なんだね…」
「海藤さんが正直に言ってくれたのですから私も話さなくてはなりませんわ…」
「ダイヤさん?」
ダイヤさんは少し暗い表情を浮かべながら続けた。
「私も…来年の4月から東京の大学に進学することが決定していますの。だからここで過ごすのも今年が最後になりますわ」
「私もね、本格的にダイバーの免許を取るためにオーストラリアに行くことになってる。しばらく帰って来れなくなるね…」
「…マリーはこの学校を卒業したらイタリアへ留学することになってるの。でもこうやってやりたいことは9人でやれたんだから一度留学をやめて学校へ戻ったことに悔いはないわ」
3年生は卒業と共に離れ離れになる。わかっていたはいたけどここまでバラバラになってしまうのか。俺は少し寂しい気持ちになった。
結局その日は重たい空気のまま解散となり、俺は3年生の3人と一緒に帰ることになった。
「ダイヤさん達も卒業したら別々の道を歩むことになってるんですね。薄々わかってはいたんですけど…」
「本当はまだ言うつもりはなかったんですけどね。ラブライブの予選はもう一度あるのですから練習の妨げになってはなりませんし」
「いや、俺はあの場でダイヤさん達も話してくれたことをありがたく思ってますよ」
「それにしても私達らしいよね…みんな勝手に進路を決めちゃうなんて…」
「ほんとにね…」
そう言いながら鞠莉さんと果南姉さんは微笑み合う。そんな様子を眺めているとダイヤさんが俺の服を摘みながら言った。
「ねぇ…海藤さん…」
「はい、なんですか?」
「…貴方は大学についてどうお考えですの?」
なんとなく想像してたけど大学のことだった。さっきも言った通り俺はあの大学で指導を受けたいと思っている。でもその決断をすることは…
「俺は…どうすればいいのかわからないんです。あの大学でバスケがしたい。でもその道を選ぶってことは家族や千歌達とは離れ離れになる。推薦の話が来た時からこうなる覚悟はしてたはずなんだけどなぁ…」
「海藤さん…」
「俺は…どうするのがいいと思いますかね?」
俺はダイヤさんの意見を聞こうとした。だけど返ってきた返事は平凡なものだった。
「そんなのは自分で決めるしかないでしょう。自分の人生なんだから道は自ら切り開いていくしかないはずです。私達がどうこう言って済む話ではないんですよ?」
「そうですよね…」
「貴方にはまだ時間があるでしょう?この様子だと東京へ行く前提で話が進んでいくと思いますからしっかりと考えておくことですね」
「わかりました。これからどうなるかはわかりませんけど東京へ行く前提で考えていくことにしますね。相談にのってくれてありがとうございました」
そう言って俺は軽く頭をさげた。
「お役に立てたのなら嬉しいです。あ、相談とかするなら私より相応しい人がいるのではないですか?例えば…私達の方へ走ってきてる人とか」
ダイヤさんが言う方向を見ると梨子が俺達のいる場所へ向かって走ってきているのが見えた。
「梨子…!」
「行ってきなよ。私達は三人で帰るからさ」
「うん…ありがとう」
梨子が俺のところへついた時にはいつの間にか三人はいなくなっていた。
「海藤くん!やっと追いついた…」
「梨子?どうしたんだ?」
「気にしないで。私が勝手に追いかけてきただけだから。それよりさっきの話なんだけど…」
さっきの話というのは大学のことだろう。いずれ梨子とは話さねばならなかった件だし俺も彼女がどのような進路を考えているのか知りたい。
「わかった。ここではなんだし家で話そうか。ここからだと距離はそんなに離れてないしさ」
「うん。私も自分が思ってることを海藤くんに話したい…」
二人は龍吾の家に向かって歩いていった。お互いのこれからについて向き合っていくために。
時期的に色々おかしいような気もするけど後悔はしてない
それではまた