皆様はいかがお過ごしでしょうか?作者は来年度の準備などでバタバタした日々を送っていましたがようやく一段落ついたところなので投稿も前のペースに戻れるように頑張っていきます。
遅くなりましたが今年もよろしくお願いします!
「えーっと…話す場所は俺の家でよかったかな?」
「ううん。この辺りでいいよ」
俺と梨子はお互いのこれからについて話すために俺の家に向かっていたが、そのうちに思い出の地である浜辺にたどり着いた。
「じゃ、ここで話そうか」
「うん…早速なんだけど海藤くんは本当に東京へ行っちゃうの?」
お互いのために進路についてはしっかり話さなきゃダメだけどやっぱり面と向かって言うのはなかなか辛いものだ。だけど…もう決めたことだから…!
「………そうだな…色々考えたんだけどさ、やっぱり俺はあの監督の元でバスケがしたいんだ。勝手に決めたことはすまないと思ってる…ごめん」
「そっか…別に気にしないで!海藤くんには自分の将来を優先して欲しいし…それにこういうのは自分で決めなきゃダメだと思う」
「本当にありがとう…俺は夢を叶えるために頑張るよ」
話自体はすぐに終わった。やっぱり寂しい思いもあるけどお互いの将来のことだし、あとはそれぞれ進学に向けて準備しないと。
「ねぇ…海藤くん…」
「何かな?」
「慣れない土地で生活するのは大変だよね。私も転校してきた時は不安だったからよくわかる。だから…私も決めたよ!」
「梨子…?」
「お父さんとお母さんに話して私も東京の学校に行くことにするよ!」
梨子の口から飛び出た言葉は俺を驚かせるには充分だった。確かに梨子も東京に来てくれることは嬉しい。だけどそのためだけに自分の将来を決めて欲しくもない。
「ほ…本当にそれでいいのか?君は県内の大学に進学するつもりじゃなかったのか?」
「いいの。あれから私も色々調べてみて東京にもいい学校があることがわかったんだ。色々な職業のプロを育成する大学があってね、そこでは私が行こうとしてた大学よりも音楽のことをもっと学べるの」
「そうだったのか。俺も色々調べたつもりだったけど知らなかったなぁ…」
「私にも夢があるんだ。私はピアノの先生になりたい!スクールアイドルも大好きだけどやっぱりピアノが好き!千歌ちゃんが気づかせてくれたんだ…」
梨子の方が俺より真剣に考えてたんじゃないか。もっと早く梨子と話が出来ていれば俺も迷ったりすることはなかったかもしれないなぁ…
「私…海藤くんについて行ってもいいかな…?」
「そんなの…いいに決まってるだろ!」
俺はいつの間にか梨子を抱きしめていた。
「すっげぇ嬉しい…これからは一緒に頑張ろうな!」
「…うん!」
人に見られるとかそんなことはどうでもよかった。今だけは誰にも邪魔をされずにこのままでいたい。そんなことを思いながら梨子をさらに抱き寄せた。
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「問題ないみたいだね。誰かさんが心配そうな顔してたから見に来たのに」
「べ…別に心配なんてしていませんわ!」
「誰もダイヤがなんて言ってないんだけどねー」
さっきまで浜辺から少し離れた場所で三年生の三人が龍吾と梨子のことを見守っていたが、二人が無事に話を終えたことを見届けてその場をあとにした。
「あの二人なら大丈夫です。私達のように大切な時間を無駄にしたりはしませんよ」
「あの頃の私達は未熟だったからねぇ…」
二人と同じように果南も思う。
(そういえばあの頃だったな…私と龍吾の関係が終わったのも)
二年前、東京でのライブが失敗に終わり内浦に戻った数日後に果南は龍吾に別れを告げた。
「本当に勝手だけどこんな状態で龍吾と付き合う資格はない。もう終わりにしよう」
「果南…待ってくれ!」
果南は龍吾が言い終わる前に強引に話を切り上げ、半ば無理やり別れの道を選ぶことになった。それからの二人は少し疎遠になってしまった。鞠莉の留学が決まったのも同じ時期だった。
「…果南?」
「ごめんね?ちょっと昔のこと思い出しちゃって…二人も同じでしょ?」
「そうですわね…」
三人は自分達が無駄にしてしまった時間を思い出していた。お互いに理解していると信じ込み、結果的にすれ違ってしまったこと。お互いを思いやったが故に長年の友情にヒビが入ってしまったこと。思い描いていたスクールアイドルの夢を宙ぶらりんにしてしまったこと。
そんな自分達を救ってくれたのは千歌や曜達。自分達が付けたAqoursの名を継承する者達だった。
意地を張ったまますれ違っていた自分達を再び引き合わせ、もう一度夢を追いかける機会をくれた千歌達に口では厳しいことを言うこともあるが本心では感謝してもしきれないくらいに思っていた。
実際は関係が元通りになって数ヶ月程度しか経ってないが、それが遠い昔のように感じられるのはあれから非常に濃い時間を過ごしてきたからなのだろう。
「さて、私達も帰りましょうか。しっかり休んで明日に備えなければ」
「そうだね」
三人は残された時間を全力で駆け抜ける。思い描いた夢の果てにある輝きを追いかけるために…
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翌日。バスケ部が活動している体育館でいつも以上に躍動する一人の青年がいた。
「よっしゃあ!」
「龍吾!ナイスシュートだ!」
「ああ!お前もいいパスをありがとな!」
「どうしたんだ?いつもより調子よくなった感じがするじゃねーか!」
「まぁな。色々あったんだ」
そこには絶好調なプレーを続ける龍吾の姿があった。そんな彼の目はいつも以上に輝いているように見える。
「さぁ次だ!まだまだやれるよな!」
「当たり前だ!」
それと同時刻。Aqoursが練習している屋上でも変化が現れていた。
「やった…私にも出来た!」
「すごいね梨子ちゃん!このパートは果南ちゃんも完璧に覚えるの苦労したんだから!」
「そうなの?なんだかいつもより元気いっぱいな気がして頑張っちゃった!」
「この調子なら本番でもいけそうだね!次の場所も難しいけど頑張ろ!」
「はい!」
二人はこの先も止まらずに進み続ける。夢への道のりはまだ始まったばかりだ。
それではまた