さて、今日はこの作品のヒロインである梨子ちゃんの誕生日ということで二回目の誕生日回をやっていきたいと思います。
「海藤くん!」
「梨子、おはよう!」
9月某日。俺と梨子は部活が休みになった日に二人で遊びに行くことになっていた。
「ごめんね!待たせちゃった?」
「いや、全然待ってないから大丈夫だよ」
恥ずかしながら昨日は楽しみで全然眠れなかった。まぁ魔剤キメてきたから大丈夫だけど。
「それじゃ行こっか」
「うん!」
俺達は手を繋いで歩き始めた。
「梨子は映画を見たいんだったかな?」
「うん!ずっと楽しみにしてたんだぁ」
「曜が面白くて感動したって言ってたから俺も気になってたんだよね。その映画」
その映画は人を愛するということについて深く考えさせられる内容らしい。
「あ、時間迫ってきてる。急ごう!」
俺達は映画館に向かって走り始めた。
「映画めっちゃよかったね。泣きそうになっちゃったなぁ…」
「うん。感動しちゃったよ」
結論から言うと映画はめちゃくちゃ面白かった。人を愛することの尊さを改めて理解することの出来た映画だった。曜がオススメしてきた理由がよくわかったよ。
「少し暗くなってきちゃったね」
「結構長い映画だったしなぁ…」
俺達が映画館から出た時、空は既に赤みを帯びていて小さい子達も帰り始めた時間だった。
「よし、そろそろ移動するか。そして飯を食いに行こう」
「うん!今日はどこにする?」
「今日行くところはさ、もう決まってるんだ。レストランなんだけど…」
「えっ?うん…」
今日行くレストランは既に予約もとってある。ちょっとだけ特別な場所だ。
「それじゃ行くよ」
俺は梨子の手を引いて店への道を歩いていった。
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「ここって…」
「俺も初めてくるんだけどさ、どうしても梨子と一緒に来たかったんだ…」
俺達がやってきたのは少しお高めのレストラン。高校生である俺達にはまだ早いのではないかと思ったりもしたがちょっと奮発して来てみることにしたのだ。
「すごい…こんなに高そうなレストランに来るのなんて初めてだよ」
「俺は君と一緒に来ることが出来て嬉しいよ」
「うん!連れてきてくれてありがとう!」
梨子が目を輝かせてくれたのを見て安心した。色々考えちゃったけどここに決めてよかったなぁ…
「何を食べようかなぁ」
「いや、今日はコースで頼んでおいたからさ。料理が来るまでゆっくり話でもしようよ」
「私のためにそこまでしてくれたの?嬉しい///」
「喜んでくれて何よりだよ」
そのまま話を続けて待っているとスタッフの人が料理を運んで来てくれた。
「お待たせしました。ゆっくりと召し上がってください」
「はい。ありがとうございます」
「海藤様、少しよろしいでしょうか?」
「大丈夫ですよ。梨子、少し席を外すけど先に食べてて構わないよ」
俺は席を立つとスタッフに連れられてある話をされた。
「例の物はいつ頃お持ちすればよろしいですか?」
「そうですね…では食後にお願いしてもいいですか?」
「かしこまりました」
そう言い残してスタッフは厨房へ戻って行った。
「お待たせ。味はどうかな?」
「すごく美味しい!海藤くんも早く食べよう!」
「そうだね。早速頂くよ」
その料理の味は格別だった。少し大袈裟かもしれないが今まで食べてきた料理の中でも一位二位を争うほどだ。普段は食事を多く食べない梨子も満足そうに口に運んでいた。
「はぁ…とても美味しかった。幸せ…」
「それはよかった。ところでもうお腹いっぱいかな?」
「まだ食べられるよ」
「わかった。ちょっと待ってて」
俺はもう一度席を外してさっきのスタッフの元へ向かった。
「すみません。例の物をお願いしてもいいですか?」
「かしこまりました。少々お待ちください」
これで大丈夫だ。俺はスタッフが厨房の奥に消えていくのを確認して席に戻った。
「ただいま」
「おかえり。どっか行ってたの?」
「まぁね。すぐにわかるよ」
それからすぐに例の物は運ばれてきた。それまで首を傾げていた梨子はそれを見ると驚きの表情を見せた。
「お待たせしました。これは海藤様から桜内様への贈り物でございます。ではごゆっくり」
「ありがとうございます」
「えっと…海藤くん、これって…」
「見ての通り君への誕生日プレゼントだよ」
それは店を予約する時、同時に頼んだ誕生日ケーキだ。あまり大きくはないけど梨子への愛情がたくさんこもっている。
「梨子、誕生日おめでとう」
前を見ると目に涙を浮かべ、手で口元を覆っている梨子の姿があった。
「嬉しい…こんなに幸せなことってあるんだね…」
「これからもさ、二人でたくさん思い出を作っていこうよ。今よりもっと幸せになれるようにね」
「うん!これからもよろしくね!」
俺はここで梨子と食べたケーキの味を一生忘れることはないだろう。
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店を出ると空には満点の星空が広がっていた。俺達はそれを眺めながら帰路についていた。
「今日は本当にありがとう。とっても楽しかったよ!」
「こちらこそ。俺も楽しかった」
彼女の首にはさっき渡したネックレスが月の光を浴びて輝きを放っていた。
「プレゼントもありがとう!大切にするね!」
「ああ、それじゃまた学校で」
いつの間にか梨子の家の前まで来てたようだ。親御さんも心配するだろうし今日はこれでお別れかな。
「あ…ちょっと待って!」
「なんだい?」
上着の裾を引っ張って俺を見つめる梨子は何かを欲しているように見えた。
「ちょっとだけわがまま言ってもいいかな…?」
「俺に出来ることならなんでもするよ」
「じゃあ…キスしてほしいなって///」
キスか…梨子からこんなことを言ってくるなんて珍しいな。俺は自分の頬が熱くなるのを感じながら梨子に顔を近づけてキスをした。
「…んっ」
唇が触れていた時間は僅かだったがこれ以上ない幸福感が俺達を包み込んでくれているようだった。
「はぁ…ありがとう…気持ちよかったよ♪」
「そっか…それならよかったです…///」
「それじゃまたね!」
いつの間にか少し大胆になっていた梨子を見送りながら俺は考える。
(…ほんの少しだけ大胆になっただけでこれか。これ以上になったら…もう心臓もたねぇよ…)
まぁこれ以上考えるだけ野暮ってもんだ。それはそれとして…
「梨子、誕生日おめでとう!」
梨子ちゃん誕生日おめでとう!