砂煙が晴れると、目の前にはボヤけてしまってよくわからないが、それでも名前をすぐに出すことができる学校で唯一の、そして人生で初めてできた親友の顔があった。恐怖に怯え、目があけられないようだ。安心させられるような言葉を掛けるのが望ましいのかもしれないが、正直言ってそんな悠長なことをしていられる余力はなかった。自分の体を支えている両手足のどれか1つでも力を抜けば、間違いなく背中にのしかかっている瓦礫によって親友共々圧死してしまうからだ。
(どかしたいけど、ちょっとこれは重過ぎかな…)
運良く剥き出しになった基礎に瓦礫がつっかえて、そのおかげで生じたわずかな隙間に二人して入り込めたのは良かった。だが、流石にそのまま橋のようになってくれるほど、ボロボロに風化したレンガが頑丈なわけがなく、途中で折れて再び落下してきた瓦礫を、無防備な背中で受け止めるしかなったのだ。
(あと、何秒いけるかな…30秒保てば万々歳か…)
目の前に守れる命がありながら、とんだ無責任な人間である。だが、そんな叱責でどうにかなるほど事態は甘くなく、正直まだ意識があるのが奇跡と言っていい程この体はもうあちこちにガタがきている。後頭部は出血を起こして滴り落ちた血で親友の顔を
もう間も無く意識が遠のきそうになった時、上から降ってくる生暖かい鉄の臭いに気付いたのか親友は恐る恐る目を開けて、すぐにその表情を驚きに染めた。至極当然だろう、いつの間にか友人が目の前で血によって顔を
「紫!?なんでどうしたの!?」
「早く、逃げて……」
「なんでそんなに血だらけなの!?うそ、なんでかばったの!?」
「もう保たない…から、早く…」
そこまで言うと、ようやく彼女は状況を理解したのか、すぐさま脱出を試みた。ただでさえ狭い空間で悪戦苦闘しながらも、彼女はなんとか脇の方からすり抜けて瓦礫の魔手から逃れてくれた。それを見た紫は安堵し、ようやく体の要求通り四肢の力を抜いて成されるがままに潰れた。瓦礫と地面に板挟みにされたことで肋骨が悲鳴を上げ、凄まじい息苦しさに襲われたが、感覚が麻痺しているのかそこまで辛くはなかった。寧ろ、大切な人の命を救えたことによる満足感で心が満たされていた。
上の方から自分を助けようとしている親友の声が聞こえたが、もうニュアンスでしか脳に伝わってこない。今助ける、待ってろ、死ぬな、もう頭で処理できるのはこのくらいの情報だけ、もう彼女がどんな
(もういい、僕はもういいから)
声に出すこともできない思いを、最後に残されたわずかな力を使って、彼女の足元に携帯を放り投げることで伝える。頭の回転が速い彼女ならすぐに意図がわかるだろう。そうでなくとも、自分がこの様な時に何を望むかを彼女は知っているはすだ。
(君が生きてれば、それでいいんだ…)
喧騒さえも薄れゆく
あんまり短いものだから何を書こうか…
ああそうだ、一応一話から最新話の辺りまでは前書き後書きは後に編集を加え投稿時の物と変わっております。故に、この回が一話の後書きで書いた目安と食い違っているので、スタイルを変更したわけでも間に合わなかったわけでもございません、ご安心を。