とぼけた返事をした零は、必死に頭を回転させさっきの説明の意味を考える。しかしいくら考えても答えは出てこず、諦めのため息を吐いた。
「だめだ、まったくわかんねぇ……」
『そう焦らずとも教えてあげますよ。……まず、地球から召喚される人物は5人、それぞれの名前は、【聖者】夢森 鈴音、【大魔法師】夕爪 琴葉、【軍師】内藤 和人、【勇者】近衛 優太です。そして最後に【魔王】筑場 零、貴方です』
目を瞑り腕を組んで途中までうんうんと頷いてた零は最後に、んん?と発声。そして目を開けすこし上をみると
「魔王だと?」
と単調に言った。
『そうです』
謎の声が肯定した直後、零は額に手をあてて、そう来たか~と呟いた。
今まで読んできたラノベにもそんな展開があったのあもしれないがこんなとき、どうすればいいのか零にはわからなかった。さらに彼からすれば魔王というのは一般的には悪人とされていて、勇者にやられるという良いイメージがないため、選らんだ答えは
「お断りします」
であった。
『え?、ああ、それについては大丈夫です。【魔王】と言っても只の肩書きの様なものですし、実際、今のところ敵対している魔族の王様がこの世界一般の魔王とされていますから』
零のきっぱりとした声に謎の声はどこか焦ったような口調で早口にいうと、つまり貴方は職業が魔王なだけで、勇者と敵対する必要はありません。と締め括った。
「じゃあさ。俺って必要ないよね。日本に帰してください」
だが零も諦めていなくこう言った。
零が思うことは必然的で客観的に見ればこの世界の役者は揃っていると思える。そしてさっさと日本に帰ってゲームしたかったのだが、現実とはやはり複雑で、
『あっ、それは無理です』
バッサリと切り捨てられた。
「……理由は?」
謎の声に断られた時、妙に説得力を感じた零は一応、不本意だが納得した体としてワケを聞いた。
『理由ですか……少し詳しく説明すると。この世界には2体の魔王がいます。まず人間と同じ人型で魔族と呼ばれる者達の王。こちらは、さっき述べたとおり人の国と戦争中です。この魔王を倒すため勇者は喚ばれました。そして、もう片方はこの世界の裏側にある魔界と呼ばれる強力な魔物が跋扈する世界の王です。ゲームで言うなら裏ボスですね。』
「2体もいるんなら、やっぱ俺要らないよね。というかその裏ボスとやらは一つの世界統一してんじゃん。俺喚ぶんじゃなくてそいつに任せろよ」
どうやら零は余程魔王が嫌らしい。何かと理由を付けて断ろうとしていた。
「引きこもりの俺より絶対良いって」
『否定しません』
「だろ!そうだろ」
零は少し自分に形勢が傾いてきたと思っているからか、上機嫌だ。しかし実際は真逆で既に魔王になることが決定されていることを零は知らない。
だからか、その事実を知っている謎の声は零の無駄な足掻きを見て可笑しく思いフフと笑った。
「何が可笑しい?」
『いえ、別に……』
それを見て癪に触った零は不満の声を上げたが、華麗にかわされる。
『話を続けますが、ゲームの裏ボスとは無敵だと思いますか?』
謎の声は、声のトーンを下げて心の底から絞り出す様に悲痛な声で言った。
「何が言いたい?そんなこと当たり前だろ…………いや違う…な……」
途中まで零はさも当然の様に言ったが突然の暗い雰囲気にしばし考えると否定する。
『そうそのとおり違います。一見最強に思える裏ボスですが唯一、鍛練を積んだ主人公に負けます。つまりこの世界では悪者は正義に勝てないのです。そしてあの過去が再びやって来てしまう可能性が高くなってしまうということです。つまり私が言いたいのは貴方に過去の過ちを繰り返さないためにオブラートに包めば見える形で止めて貰いたいのです。』
淡々とした口調で話す謎の声に、零は違和感を覚えつつも今それを聞くべきではないと判断し、自分の役割を理解した。
日本にいた頃の零は引きこもりの為、運動もまともに出来ないし、知識、知力だって、多少の雑学をかじっている程度で中学生と同等だ。この事を考えると、当たり前だが、疑問が浮かんでくる。
ーーーーーーそう、
「役割は理解した。だが、なんで俺なんだ?勇者は置いておくとして、全国的にみれば、さっきも言った通り俺より適任のやつなんてゴロゴロいる筈だ。」
ーーーーーーー何故零でなければならないかである。