先週は私生活が忙しく更新することが出来ませんでした。申し訳ない。
評価、コメントありがとうございます。アドバイスくださった方、御参考にさせていただきます。ありがとうございました。
取り敢えず、原作前編はここまで。次からは原作介入編として高校試験スタート。としていきたい、なぁ。
"個性"とは、超能力だ。
なに言ってんだおめぇと思われることなかれ。超人社会が現実となった今、過去の超能力への羨望と興味、物珍しさは拭い取られて、それは当たり前のものとして世間一般に浸透していった。だからこそ、『ヒーロー』という職が成される。
一般で云う超能力────……個性とは、親の遺伝子を受け継いで発現する"生まれつき"か、全く何も受け継がず、普通の人である"無個性"のどちらかだ。
"無個性"だろうが"個性持ち"であろうが生まれつきであるということにどちらも変わりない。
そう、どちらも生まれつきで、途中から譲り受けたりだとか、奪ったりだとかは出来ないのだ。
だがしかし、忘れることなかれ。ここは超人社会でありそれこそ億の"個性"が存在するこの世の中では、そんな常識である筈の事も通じはしない。なんてたって超人ばかりなのだから、昔のように常識ばかりで測れないのは当たり前で。
だからこそ、"希望"もあれば"絶望"もあるわけで。
──────詰まるところ、僕は今絶賛絶望中である訳で。
じんじんと脚が熱を訴えてくるのを無視して何とか呼吸を整えようと荒くなっていた息を深く吸って吐いて深呼吸。流れ出て顎を伝う汗をタオルで拭いとりながら、休息を取れる憩いの場所へと足を進めた。
もはやすっかり秋晴が目に付き、紅葉が燃えるように色付くこの季節。既に落ちた紅葉に席を取られていたので軽く払ってどかりと座る。
はぁ~良い天気だなぁ~~~。
本人としては感慨深く秋晴のからっとした青空を見詰めていても、表情はまるで動く気配なし。働く気がないようで何よりだよ表情筋。
いや、やっぱり表面上取り繕った内心などお見通しだとでも云うのか。
結論から言おう。
"個性"が増えた。
何言ってんの?頭大丈夫と思ったそこの人。僕もそう思いたかった。切実に。
いや別に、"個性"が増えたから絶望しているわけではなく。僕としても"個性"二つ持ちってかっけぇーなぁーと思っていた。問題はその"個性"がどういうものかである訳で。
オールマイトとの邂逅を果たしたあの日、体の異変に気がついた僕は、最悪とも言えるその可能性に冷や汗を流したもんだよ。流石に半年も経つと慣れるもんだし、慣らざるを得ないけど。
その日僕は超一級とも言える核爆弾をその身に、なんの覚悟もなしに持たされたのと一緒だった。それからはもう、慎重に慎重を重ねて調節する日々。この時ほど自身のセンスに感謝した日々はないと思う。少しでも間違えば一気にドカン。うろ覚えの原作知識をフル活用して毎日を過ごした。普通に歩くのさえも少し怖かったくらいだから、生来のビビリも大したものだなと何処か客観的に思ったものだ。今思えばあれ現実逃避だわ。まぁ、その生来のビビリにも心底助けられたと思う点は少なくなかった。
最近では各部位ごとに"個性"の微調整が出来るようになってきている。この調子なら、高校までに間に合いそうではあるが、気を抜いてはいられない。
数多の先人たちの努力の結晶。正義の力。先人たちから譲渡されてきた"個性"────……
──────『ワンフォーオール』
正しく死亡フラグの権化と言ってもいい。この"個性"は、物語の要であり、軸と言ってもいい。それほど重大なもので、僕なんかが偶然貰って良いものでもなかった、筈、なんだけど。
覚えておいでだろうか。オールマイトとの邂逅に於いて戦闘中、僕は彼の血液を顔に浴びた。数滴ほどで、なんの影響もない筈の。
ここから先はまさしく僕の推測で勝手な妄想だと断じてくれても構わない。
あのとき僕は確かにオールマイトの血液が付いたが、本当に付いただけだったのか? もしそれが皮膜吸収なら?若しくは、気付かない内に口からでも入ってしまったのか。眼球からならば流石に気が付くと思うので、これはないだろうな。
記憶を探る限りでは"譲渡したいと思った相手への譲渡が可能になる個性"だったはず。ならばあの時、彼は、オールマイトは、僕に何かを期待してくれたんだろうか。認めてくれたのだろうか。
悩みに悩んだ末の、僕の結論はこうだ。
─────悩んでいても
個性申請はちょっと面倒だしゲフン、登録したとしてもその後どうなるか全く分からないためにやっていない。
既に個性持ちの奴がある日突然二つ目の個性が発現しました!と公言しているようなもので、ぶっちゃけ怖いから。最悪な未来ばかりが見えて鳥肌がたって仕方がないのなら、登録しない方が自身の心身ともに幸福だろう。
思考に一区切りつけると同時に腰をあげる。結構考え込んでいたようで、時間帯的にも肌寒くなってきていた。ぶるりと体が震える。
そろそろ帰ろう。腕を擦りながら帰路へと身を翻して、また走り始めた。
というか、もうそろそろ高校決めないとなぁ………。
◆
爆豪光己side
ただいま、と玄関から響く声に今日もホッと胸を撫で下ろす。
息子があの日、事件に巻き込まれ怪我をしたと聞いて帰ってきたときは大変に驚いたものだけれど、あの日からあの子の中で何かが変わった気がして、心配だけれど無理に引き留めず見守る事を決意した。
リビングに響いた開閉音に気が付き、後ろを振り向いておかえりと声を掛けると、無愛想な返事が返ってくるが、今に始まったことじゃないしその後に続く蚊の鳴くようなただいまという言葉に頬が緩んだ。
「勝己。あんた宛てに高校の資料届いてるわよ。机の上置いといたからね」
「ん。………これ」
「そ!あんたヒーロー志望でしょ?だったら雄英行きなさいよ!トップ狙うならそこね!あんたなら推薦いけるかも!」
「…………」
あら?と首を傾げる。てっきり鍛えていたのもヒーローになるためのモノだとばかり。余計なことだったかと汗を流していると、息子の闘志に湧く瞳が、上がる口許が見えて考えを改める必要はなさそうねと溜め息を吐いた。
そうと決まれば善は急げ、ね。用意するものが多そうだと息子よりも張り切る気持ちが俄然湧いてきて、ならば、と早速夕飯の支度に取り掛かった。
◆
いつの間にか雄英志望で決定していた件。
いや、分かる。原因は分かってるんだ。まさかパンフレットが届いているとは露知らず、帰宅早々に母から差し出されたそれは実際に見てみるとうわすげぇと思うやつであった。写真からして綺麗な校舎に広大な土地。綿密なカリキュラムに豊富な学科。やはり偏差値高いと違うな。すごい。前世が頭悪かった方だけに余計そう思う。
話が脱線した。
まぁ何はともあれと、すげぇなーなんて呑気に見ていたら、学食欄が目に入った。こんなのも載ってるのか。しげしげとその項目を見つめた。
衝撃である。なんじゃこりゃと叫びたかった。
学食が広い。だだっ広い。しかもめっちゃ美味そうなものばかりである。おっと涎が。
食い入るように見詰めていたところ、ふふふという微かな笑い声で意識が戻って、ハッとなる。
母の満面の笑み。失礼だがゾッとした。この顔のとき大抵自分自身に良くないことが降りかかるので。
ご飯につられていたのを微笑ましく笑われてしまったという仄かな羞恥心と悪寒から、さっさと部屋に戻った。怖すぎる。
そう思った後日、これである。
原作に忠実にいこうと思ってはいるが、雄英に入らなければ巻き込まれる心配もないのでは?という考えのもと、違う公立高校に行こうかと考えていた筈が、母によっていつの間にか外堀が埋められている状態だった。
母よ、あの時どんな思考からこうなった。
しかし、受験してしまったものはしゃーないのである。やるしかない。
沸々と沸き上がる闘志を抑え込みつつ、これから始まるであろう物語と、平穏な未来を思い浮かべた。
表情筋は仕事する。正しく仕事はしないけど。