ここは、とある住宅街。
7月の初頭、夏も本番に差し掛かった頃。2人の男女が歩いていた。
「いやぁ~、今日はよりいっそう暑いですね~。」
そう呟いたセーラー服夏服姿の少女は、清々しい快晴の空を見上げた。
彼女の名は、東風谷 早苗。
高校2年の16歳。実家は神社で、現在母の下で巫女見習い(正確に言えば別物だが、今はそんな事は重要じゃない。)をしている。
「今年、全体的に去年より暑いらしい。諏訪子様がだれるのが目に浮かぶな…。」
早苗にそう返したのは、学ラン夏服姿の少年だ。
彼の名は、緋村 龍也。
高校2年の17歳。現在、訳あって一人暮らしをしている。早苗とは、俗に言う幼なじみである。
龍也は頭の中で、去年の今頃境内で『あーうー』と唸りながら、だれていた見た目小学生の神様を思い浮かべる。
「しょうがないですよ。諏訪子様は蛙の化身みたいなものですから…。」
「だからといって、神様の尊厳を投げ捨てたような姿はな…。そんなんで良いのか、神様。」
ちなみに冬はと言うと、炬燵に入っているか、俺か早苗にべったりとくっついているかである。本当にそれで良いのか、神様。
「本来は、凄い神様なんですよ?決めるところは、きちんと決めてらっしゃいますし。」
いや、それは重々承知してるがね。苦笑混じりなあたり、早苗も思うところが有るらしい。
かつて、ここいら一帯を統率していた神様だとは、到底思えない。いや、本当に凄い御方なんだけどね。彼女曰く
『早苗はともかく、私や神奈子の本気の威圧を、平然と受け流すとか人間じゃない。』
とのこと。
失敬な。俺は正真正銘人間だ。
どうやら、衰えたとはいえ『見える人間』にとっては、あくまで『上位種』として写るため、その威圧感は昔と遜色ないらしい。
それほどの威圧を受ければ、普通の人間(見える人間が
普通かどうかはさておく)は縮みあがるとのこと。
ゆえに、俺は普通の人間じゃないらしい。神奈子様の見立てでは、俺には人の身には大きすぎる力が宿っているらしい。
―――閑話休題―――
「時に、早苗。今日の物理は、お前が当たる日だが予習はしたか?」
「ふっふっふ。龍君、舐めないで下さい。今日は、何の為にこんな早起きしたと思ってるんですか?」
「嫌な予感がするが、言ってみろ。」
「龍君に、教えてもらう為です!!」
「やっぱりそうか!テメェはちったぁ自分で――――……」
等々、早苗と会話しつつ登校していた。
住宅街を抜け、大通りの交差点で信号待ちしていた時だった。
大型トラックが、突っ込んできた。
早苗は気づいてない。
考えるより速く、体が動いた。
常日頃、神奈子と組み手をしていたおかげか、ほんの数歩でトップスピード近くに到達し、そのまま早苗を安全圏まで突飛ばした。
早苗は、驚愕の表情を浮かべ、次いで悲壮な表情を浮かべた。
俺の運動エネルギーは、ほとんど早苗に渡してしまった。
それに、瞬時にあれだけの高起動をしたため、技後硬直とでも言うべき状態にある。
結論として
俺は動けなかった。
来るであろう衝撃に、身構えようとした時だった
「い、嫌ああああああぁぁぁぁぁ!!!!」
早苗の悲鳴と共に、俺は白く温かい光に包まれ、意識を失った。