一人は地公将軍・張宝。
一人は人公将軍・張梁。
その内の一人である張宝が、まさに今、涼達率いる連合軍の前に立ちふさがろうとしていた。
数では両者共ほぼ互角。
激闘は避けられそうに無かった。
2010年1月10日更新開始。
2010年2月15日最終更新。
2017年4月10日掲載(ハーメルン)
翌日、出陣の準備を終えた
昨日の夕方迄に合流した
「
「うん……私は余り戦いに向いてないし、だったら
「折角の名を上げる好機なのになあ……。」
その先頭集団の中程で並んで進む
昨日の軍議で、総大将を決める事になった。
最後に合流した盧植は早々と辞退したが、
『
『私の落ち度は清宮様の落ち度ではありません。混同されては困りますね。』
『あら、軍師の実力を見極められない指揮官なんて、無能では無いの?』
『確かに。……では、荀彧殿の実力を見極められなければ、曹操殿も同じく無能という訳ですね。』
『な……な……何ですってーっ‼』
こんな感じの口喧嘩が四半刻も続いた。
結局、仲違いを好まない董卓が辞退すると、次いで曹操も連合軍に参加したばかりと言う事で辞退し、残るは涼だけになった。
慌てた涼は桃香に替わって貰おうとしたが、当然ながら桃香が首を縦に振る筈は無く、そのまま涼が総大将の任に就く事になった。
「まあ……“天の御遣い”が総大将って事で、兵の士気はかなり高まっているけどね。」
賈駆は、連合軍の士気が今迄になく高まっているのを感じながら、涼が総大将になったのも悪くは無いと思っていた。
一方、曹操と荀彧、そして盧植は董卓達より少し先を進んでいた。
「……
「総大将の件ならさっき言った通りよ。」
「そんなあ……。」
荀彧の言葉を曹操が切って捨てると、荀彧は悲しげな声を出した。
曹操が総大将を辞退した事は、荀彧にとってかなりのショックだったらしく、それから何度も考え直す様に言ってきた。
だが、一度辞退したものをやっぱりやってみたい等とは、曹操が言う筈もない。
なので、曹操は荀彧の話が総大将の件と解ると、今みたいに直ぐ話を終わらせている。
また、曹操が総大将を辞退したのは、連合軍に参加したばかりという理由以外にもあった。
(フフ……噂の“天の御遣い”の実力、見せて貰うわよ……。)
曹操は涼の実力を見る為に辞退していた様だ。
それが何を意味するかは、曹操以外誰も知らない。
「……という訳だから、ちゃんと涼の命令を聞くのよ。」
「そ、そんなっ! 華琳様ぁっ!」
荀彧が涙を浮かべながら懇願するも、曹操はそれ以上何も言わなかった。
「華琳ちゃんは相変わらずね。」
そう言ったのは、少し前を進んでいた妙齢の女性だった。
「……ちゃん付けは止めて下さいと、以前にも申した筈ですよ、
「あら、そうだったわね。ごめんなさい、華琳ちゃん。」
「……はあ。」
言った側からちゃん付けされたので、曹操は溜息しか出なかった。
「ふふ……。それで、曹操さんはこれからどうするのかしら?」
「どうするも何も、天の御遣いの采配通りに動くだけですよ、盧植様。」
曹操は前を向いたまま、翡翠――盧植の問いに答える。
曹操の視線の先には、部下である関羽達と共に進む天の御遣いの姿があった。
この世界には無い生地で出来ている白い衣服に身を包み、背中に一つ、左腰に二つの剣を差している天の御遣い――清宮涼の姿が。
「ふふ……華琳ちゃんが力になるのなら、清宮様も心強いでしょうね。」
「……翡翠様は、涼についてどう思っているのですか?」
「あら、もしかして清宮様は華琳ちゃんの好み?」
「違いますっ! 私は只、翡翠様が天の御遣いをどう評価しているのか知りたいだけですっ!」
「あら、そうだったの。……ふふ。」
曹操はからかわれていると理解しながらも、必死になって反論した。
盧植はそんな曹操を見ながら、口元を袖で隠して笑みを浮かべる。
「そうね……。今は未だ経験に乏しく、護られるだけの存在。けど、少しは兵法に通じている様だし、これからの成長に期待出来る程の大きな可能性を秘めている、と、私は見ているわ。」
「……そうですか。」
曹操はやはりという様な表情をして呟いた。
盧植が自分と同じ様な評価をしているのを知って、嬉しくもあり複雑でもあった。
「涼は張宝を討てるでしょうか?」
「大丈夫でしょう。彼には優秀な仲間が居ますし、華琳ちゃんも居ますから。」
「あ、いえ、私が聞きたいのは……。」
曹操は一度口を閉じ、暫く迷ってから尋ね直した。
「涼が、その手で張宝を殺せるか、という事です。」
曹操達がそんな話をしている頃、先頭を行く涼と桃香は一言も口にせずに進んでいた。
「……清宮殿、気持ちは解りますが、もう少し落ち着かれては如何ですか?」
「そ、そんな事言ったって……。」
そう言った涼の声は少し震えていた。
馬上の涼は姿勢正しく座っており、真っ直ぐ前方を見つめている。
一見とても落ち着いている様だが、実際はそうではなかった。
「俺なんかが董卓達を差し置いて総大将になるなんて、やっぱり無理だよ。」
その声はとても弱々しく、とても総大将の言葉とは思えない。
それでいて体はガチガチで、緊張しまくっている。
「そ、そんな事無いよ。涼兄さんならちゃんと出来るからっ。」
その緊張が隣を行く桃香にも移ったのだろうか、何故か桃香の口調も若干震えている。
「やれやれ……。」
そんな二人を見ながら、