出立の日はあいにくの空模様だった。
空一面を黒雲が覆い、時々小雨が降った。いつ土砂降りになってもおかしくない空気が流れている。朱里の助言を受けた桃香は徐州軍全軍に雨天用の装備を身につける様にと命じた。要するにカッパを着る様に言ったのである。
この世界にもカッパの様なものはあったが、当然ながら現代の様に完全防水できるカッパではない。素材が無いから仕方がない。だが、それでも雨にうたれるのは嫌なのが人である。なので、涼はこの世界で出来る範囲で最良のカッパが作れないか考えていた。徐州に赴任し、それなりに実績をあげ、余裕が出来た時点でカッパの改良を提案していた。周りに居るのは殆どが女性なのもあり、その提案に前向きになった。ずぶ濡れになると服が透けるので当然であった。
勿論それだけではない。雨に濡れれば体が冷える。体が冷えれば身体機能が落ちる。身体機能が落ちれば戦闘になった際に不利になる。そうした事もあって、この世界で作れる可能な限りの高機能カッパが完成した。まあ、結局はカッパなので高機能も何もないが。
それでも、一般の物と比べれば多少は防水性も耐久性も高いらしく、今回の行軍で本降りになった時にその性能が発揮された時は兵士達から少なからず歓声があがった。
「青州に行った時にこれがあったら良かったのに。」
そう言ったのは
「仕方ないですよ、地香さま。これが出来たのが今回の遠征の出発直前だったんですから。」
地香の隣を進む少女、
「まあそうなんだけど……また雨足が強くなってきたわね。視界も悪くなるから、警戒を強める様に。」
「はっ! 劉燕隊、警戒を厳に!」
地香の指示を受けた飛陽が部隊に号令をかける。瞬時に兵士達は警戒を強め、異変がないか頭を、目を動かしていった。
やがてそれは劉燕隊だけでなく徐州軍全体にも広がり、遂には連合軍全体に広がった。勿論、徐州軍に倣ったというのではなく各自が考えた末の行動である。ここに集まっているのは規模の大小はあるとはいえ、
ほどなく雨は本降りとなった。懸念されてた様に視界が悪化し、晴れていれば見えている筈の景色が見えなくなり、視認範囲は大きく削がれた。
雨音も激しい。それはつまり声や音が聞こえにくくなっているという事であり、もし敵が接近していたら反応が遅れるだろう。そしてそれは死に直結する。
桃香は斥候を出すと決めた。万が一に備える為である。前方と左側に数人を走らせた。恐らく他の軍も斥候を出すだろうと桃香は思い、事実そうなった。前後左右に斥候が放たれ、全員が戻ってきた。異常は無かったという事だ。
その後も斥候は何度か放たれた。大軍でかつ悪天候なので用心にこした事はない。
結果として行軍中はずっと曇り空や雨だったが、幸いにも、敵の接近はこの日も次の日も、遂には汜水関到着の日まで無かった。董卓軍は汜水関での迎撃を選んだのだろう。
それを連合軍諸将はどう思ったか。少なくとも桃香は、頭上の空の様に暗く重く感じていた。
という訳で、第二十四章「汜水関へ向けて」をお届けしました。
……と言いたいのですが、皆さん済みません! 今回大きなミスをしていました!!
実は今日投稿した「第二十四章 汜水関へ向けて・5」は3年前にとっくに出来ていた文章なのです。なので短いんです。
確認したら2023年1月19日にこの章の本文が完成してました。そこから読みやすい様に分割して予約投稿した筈なのですが、この5だけ予約投稿をし忘れたのか、何か書く予定だったので後回しにしていたのかは最早忘れましたが、自分は3年前に投稿したつもりでした。中途半端なままで止まっていて済みません!
ちなみに何故気づいたのかというと、続きを書くにあたって設定や言動の整合性とかを確認する為に本作を読み返していたのですが、何故か書いた筈の「第二十四章 汜水関へ向けて・5」が無く、探したら執筆中小説一覧に残ってました。なので今(この後書きを書いてる現日時は2026年3月31日の深夜2時3分を過ぎました)急いで予約投稿しようとこの後書きを書いています。
……多分、後書きを書こうとしてこの部分を後回しにしてたんだろうなあ、と推察します。
なお、本作の続きはちゃんと書いてます。出来れば早く書き上げていい加減投稿したいのですが、ここ数年忙しかったり入院してたりいろいろあったので果たしていつになるか←
資料となる本の読み込みもしなきゃいけませんし、いつになるか本当にわかりませんが、今しばらくお待ちください。話の大まかな流れは数年前に確定しているんです。文章に書くのがいろいろあって遅いだけで(ダメじゃん)
話は変わりますが、自分が執筆をちんたらしてる間に、原作の恋姫シリーズで曹操こと華琳役を長年努めていただいていた声優の乃嶋架菜さんが、先日ご病気で他界されました。
まさかの事に驚き悲しみました。今も「カリンちゃんRPG」などで乃嶋さんの声が聴こえてきますから不思議な感覚ですが、いずれ後任の方も決まると思うので、その時改めて喪失感に苛まれるのかも知れません。
恋姫シリーズも長いので、様々な事情で何人か声優さんが代わったりはしていますが、恐らく演者死亡による交代は初めてだと思いますし(違ったら済みません)、それが主役級のキャラを演じていた方になるとは思いませんでした。
本作ではまだ余り活躍させてあげられてない華琳ですが、乃嶋さんが長年魂を吹き込んできたキャラクターですし、そのイメージを崩さず活躍させられる様に書いていきたいと思います。
乃嶋架菜さん、本当にありがとうございました。
2026年3月31日更新。