真・恋姫†無双 ~天命之外史~   作:夢月葵

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青州は混乱していた。

本来居る筈の州牧は居らず、全国的には滅んだ筈の黄巾党はこの地では未だに健在していたからである。

だが、人々は希望を捨てていなかった。それには理由が二つあった。

一つは、州牧代わりに活躍している孔子の子孫である孔融の存在。

そしてあと一つは……。


2011年2月10日更新開始。
2011年7月13日最終更新。

2017年5月23日掲載(ハーメルン)


第五部・青州動乱編
第十三章 青州からの使者・1


「今ですっ! 関羽(かんう)隊は右翼から、糜竺(びじく)隊と糜芳(びほう)隊は左翼から攻めあがって下さいっ‼」

「「「応っ‼」」」

 

 軍師の指示を受けた関羽――愛紗(あいしゃ)、糜竺――山茶花(さざんか)、糜芳――椿(つばき)はそれぞれの部隊を率いて、目の前で自分達に背を向けている「敵」に向かって突撃を開始する。

 その敵は、後方に在る丘の向こうから現れた「新手」に対して動揺するばかりであり、今迄追いかけていた「獲物」を追う事すら出来なかった。

 その獲物――田豫(でんよ)隊は、敵が混乱したのを確認すると偽りの逃走を止め、反転して敵に向かっていく。

 田豫――時雨(しぐれ)の部隊が自分達に向かって来ているのに気付いた敵は、後方から来る三部隊に応戦しながら、更に一部隊とも戦わなくてはならなくなった。

 つい先程迄は倍の戦力をもって相手を圧していた敵は、今では逆に三倍から四倍の戦力を相手にしている。

 正規兵ならまだしも、農民上がりで何の訓練も受けていない彼等に、この状況を覆せる力は無かった。

 結局、それから半刻もしない内に敵は壊滅した。

 後方で戦況を見守っていた少女がそれを確認すると、隣に居る軍師に話し掛ける。

 

「これで、この辺りの黄巾党(こうきんとう)は倒せたかな?」

 

 その問いに、軍師の少女は微笑みながら答えた。

 

「はい、これで青州(せいしゅう)の半分は解放出来たと言って良いでしょう。先ずはおめでとうございます、桃香(とうか)様。」

「有難う。けどこれは、実際に黄巾党と戦った愛紗ちゃん達や、策を考えてくれた朱里(しゅり)ちゃんのお陰だよ。有難うね。」

「勿体無い御言葉です。」

 

 軍師の少女――朱里は、隣に立つ少女――桃香の謝辞に顔を赤らめながら頷くと、羽毛扇(うもうせん)で火照る顔を覆った。

 実際、今回朱里が執った策はそれ程大した事ではない。

 先ず、囮となる部隊が黄巾党と戦い、わざと負ける。

 その部隊はそのまま敵を引き付けながら敗走し、兵を潜ませている丘を横目に突き進む。

 そうして敵が丘を通り過ぎてから伏兵を動かして、敵の背後を衝く。

 後方からの攻撃に敵全体が混乱した所で、囮部隊を反転させて反撃に移る。

 前後からの挟撃に黄巾党が対応出来る訳は無く、簡単に壊滅する。

 正規兵相手なら、多少は抵抗されたり、そもそも策にかからないかも知れない、基本的な策。

 勿論、それを実行出来る将兵が居なければ策に意味は無く、愛紗達はそれを見事にやってくれている。

 それにより、最小限の被害で最大限の成果を出せたのである。

 

「それで、これからどうするんだっけ?」

北海国(ほっかい・こく)平寿(へいじゅ)に向かいましょう。現在、暫定的に青州を治めている孔融(こうゆう)さんと合流するんです。既に私達を受け入れるという返事は貰っていますし、一度兵を休ませる必要もありますから。」

 

 桃香は朱里の提案を採用し、兵を纏めて小休止をとってから平寿へと向かった。

 今居る場所から平寿迄は、兵を率いて移動しても半日もかからない。

 今から移動すれば、夕刻には到着するだろう。

 

「……(りょう)義兄(にい)さんは、上手くやってるかな。」

 

 平寿への移動中、桃香は何気なくそう呟いた。

 

「大丈夫ですよ、桃香様。護衛には鈴々(りんりん)が居ますし、(しずく)霧雨(きりゅう)が補佐についていますから弁舌で負ける事も無いでしょう。」

「そ、そうだね。」

 

 桃香を護る為に隣を進む愛紗の言葉に、多少どもりながら返事をする桃香。

 

(まあ、身の安全や交渉についてはそんなに心配してないんだよね……。じゃあ、私は何について不安なんだろう……。)

 

 漠然とした不安を胸に抱いたまま、桃香は平寿に着いた。

 未だ続く戦いに備えて休息をとる為に。

 その前に、徐州牧(じょしゅう・ぼく)である桃香が青州に居る事の説明が必要だろう。

 話は、三ヶ月前に遡る。

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