それから数刻後。
涼を総大将とする徐州軍外交部隊、総勢四千は整然と隊列を作り、建業の大通りを進んでいた。
先頭部隊にはこの部隊の総大将である清宮涼と、護衛の張飛こと鈴々が進み、その周りを孫家の四人が馬を並べている。勿論、彼女達はこの部隊の一員ではなく、涼達の見送りに来ている訳だ。
孫家の周りには孫堅四天王の内、程普こと泉莱と黄蓋こと祭、それに若手武官から甘寧こと思春と凌統こと莉秋がそれぞれ左右に散っている。
その後も孫軍の文武百官が徐州軍と共に行進していく。殿には徐州軍から簡雍こと雫が、孫軍からは孫堅四天王の残る二人、祖茂こと黛と韓当こと快が並んで進んでいる。
これだけの人数が徐州軍と共に行進しているのは、勿論見送りの為だけでも無ければ護衛の為だけでもない。建業に住む人々や、此処へ来た旅人達に孫軍と徐州軍の繋がりの強さを主張し、更には孫家の三姉妹と「天の御遣い」との関係も周知させる為である。
そして、その目論見は今の所成功していると言って良い。
四千を超える一団を見ている市井の人々、旅人達は皆口々に涼と雪蓮達について思い思いの言葉を発していた。
今回の会談は勿論機密扱いなのだが、涼と雪蓮、両者の仲については以前から豫州、揚州の人々の間で噂になっていた事もあって、仲睦まじく歓談している二人の姿を見てその関係について確信した者も多い。中には不敬とも言える会話をした者も居たが、隊列に居た兵士達の中でそれを咎める者は居なかった。意図的に放置していたのか、兵士達もそう思っていたのか。恐らくその両方だろう。
先頭を行く涼はそんな事等露知らず、雪蓮達と会話をしながらゆっくりと馬を進めていた。
「凄い人出だなあ。建業の人々が全員出て来たみたいだ。」
「強ち当たってるかもね。元々人が多い街だけど、こんなに多いのは私も初めて見るわ。」
涼の隣で、雪蓮が周りを見ながらそう言った。
現代に伝わる資料によると、三国時代の揚州の人口は最大で四百万人を超えていたと言われている。この世界の揚州の人口が何万人かは判らないが、涼の視界に映る建業の人々の数は何千、何万と見えた。
涼達の今現在の本拠地である下邳も何万人もの人々が住んでいる。
先の遠征式の際には沢山の住人達が見送りに出ていた。勿論それは、愛する家族や友人の見送りであり、ひょっとしたらもう二度と逢えないかも知れないからだが。
それを考慮すれば、今此処に集まっている人々は戦争という憂慮とは関係が無く、ただ単に興味を持って集まっている野次馬なのだ。そう言うと建業の人々の印象が悪くなるが、実際その様なものだから仕方が無い。
戦争というものが身近にある世界に生きているからこそ、平時の行動はそれぞれが思った通りの行動をとるのである。後悔をしない為に。
とは言え、今此処に居る人々がそこ迄深く考えているかは解らないが。
「にぎやかで良い街でしょー♪ 涼もこのままここに住んじゃえば良いのに♪」
涼を挟んで雪蓮の反対側に居る小蓮が、カラカラと明るい口調で涼に言ってくる。尚、彼女は雪蓮達とは違って馬に乗っていない。白虎に乗っている。
白虎とは文字通り白い虎の事であり、本来は中国の伝説上の神獣を指す。只、現代ではホワイトタイガーという虎の白化型が一般的であり、それを白虎と称する事も多い。
恐らくこの虎もホワイトタイガーなのだろうと思いながら、涼は小蓮に対する返事をした。
「それはそれで確かに楽しいだろうけど、今は無理かな。未だ徐州でやらないといけない事が沢山あるし。」
「ぶー。つまんなーい。」
期待した答えが返って来なかったからか、小蓮は頬をハムスターの様に膨らませて不満を露わにする。
だが、始めから良い返事が来るとは思っていなかったらしく、直ぐに表情を明るくし、次の話題へと移ろうとする。
「俺が此処に居るのも良いけど、その内シャオも下邳においでよ。歓迎するからさ。」
「えっ……? う、うん…………えへへ。」
が、涼が言った一言で小蓮は言葉を飲み込み、次いで頬を紅くして微笑んだ。
既に前を向いていた涼はそれに気付かなかったが、愛娘の会話を聞いていた海蓮、小蓮の反対側に居た雪蓮、そしてそんな彼女達を後ろから見ていた蓮華は気付いていた。
三人はそれぞれ、幼いながらに女の顔になった娘、または妹をそれとなく見る。
涼の意思とは関係なく、その言葉によって喜んでいる小蓮の姿は微笑ましくあった。
(流石は婿殿。無自覚に自然と女性を口説くとは英雄の素質有り、かな。尤も、今のを口説き文句というには多少強引だが。)
彼女の母である海連はそう思い、
(シャオはやっぱり放っといても涼と仲良く出来そうね。まあ、あの子が大人しくしている訳は無いけど。……それにしても、他家の令嬢を自分の所に呼ぶなんて相当な事なんだけど、涼はそれに気付いているのかしら?)
彼女の姉である雪蓮はそう思い、
(シャオったら浮かれ過ぎよ。涼は別に深い意味があって言った訳じゃないのに。)
彼女のもう一人の姉である蓮華はそう思った。
三者三様の考えに当の小蓮が気付く訳も無く、今も涼と歓談している。その時間も、余り長くは無い。
「そう言えば蓮華。」
「な、何かしら!?」
急に話を振られた蓮華は思わず、言葉に詰まる。
「孫軍の事に口出しするのはいけないとは思うんだけど、亞莎は君の許につけてもらえないかな?」
「……どういう事?」
「彼女は何れきっと孫軍の中心に居る。それだけの才能がある筈だ。そして、その才を十二分に発揮するのは孫仲謀、君の軍師としてだと思う。」
「……それも貴方の、天の知識によるものかしら?」
「そうだよ。例によって追及は無しで。」
「……解ったわ。伯言!」
「は~~い♪」
逡巡の後、蓮華は自分の後ろを進んでいた陸遜こと穏を呼んでいた。穏はゆっくりと馬を進めて蓮華の隣につける。
「あの呂子明という子の教育係を貴女に頼みたいの。受けてくれるかしら?」
「勿論ですよ~。私もあの子は才能があると思ってましたから。」
「お願いね。」
は~い、という間延びした返事を聞きながら、蓮華は呂子明こと亞莎の事を考えていた。
彼女はこの場には居ない。幾ら涼の推薦とは言え、来たばかりの人物をこの巨大な宣伝戦、所謂プロパガンダに参加させる訳にはいかなかった。不測の事態が起きてからでは遅いのだ。
蓮華の一存としては、彼女の気持ちを考えれば参加させてやりたかった。姉や妹に比べて色恋に疎い彼女でさえ、亞莎の気持ちが誰に向いているのかは一目で解った。
その証拠に、彼女は既に真名を涼に預けている。これから仕える主である孫堅やその娘である孫策よりも先に、である。
更には、涼が今日揚州を離れると知った時の動揺振りからも彼女の好意が解る。尤も、亞莎自身は未だハッキリと認識していない様だが。
そんな彼女に対し、涼はまたの再会を約束して亞莎と別れた。彼も彼女の好意に気付いていないのが事態をややこしくしているのだが、それを教えた所で今から出立する涼に何が出来る訳でも無い。それを考えれば、約束を交わした事は最良の手段だったのかもしれない。
それにしても、この清宮涼という人物は何処迄知っているのだろうか。
先程、この出立式というべき行列が動く前に蓮華は訊いてみた。すると涼は、
『何でも知っている訳じゃないよ。俺は、自分が知っている事を知っているだけさ。』
と苦笑しながら返している。
そんなのは当たり前ではないのか、と彼女は思ったが、その時周りに居た冥琳や穏といった軍師、文官にとっては琴線に触れる何かがあったらしく、感心した様に頷いていた。
蓮華は考えた。涼の方が年上ではあるが、それ程差は無い。寧ろ、ここ数日での会話や行動を見る限り、彼の方が年下なのではないかと思うくらい、幼い面が目立った。
それに関しては仕方無いところだ。幾らこの世界で長く暮らしているとは言え、涼は基本的に現代で十数年間暮らしてきた。しかも、世界的にも治安が良い国である日本で。
そうした平和な世界で生きていれば、精神年齢が幼くなるのも当然だ。実際、半世紀前の十代と今の十代では、外見も考え方も大きく違う筈だ。蓮華が涼を幼いと思っても不思議ではない。
だが、そうかと思えば前述の様に様々な事を知っていたりする。お陰で、蓮華にとって清宮涼という人物はよく分からない、でも油断出来ないという評価になっている。
(姉様や母様が涼を評価している理由は解る。……けど、本当に彼を信頼して良いのかしら?)
元々、姉である雪蓮から、「真面目で堅物」という評価をされている蓮華である。周りが簡単に――実際はそうでもないのだが――涼を信頼し、同盟を組んだので、必然的に彼女は慎重にならざるを得ないのだ。
勿論、他にも冥琳などはそれなりに涼を警戒しているのだが、蓮華からすればそれは警戒しているとは言えない。彼女にとっての警戒とは、警戒に警戒を重ねるくらい慎重にという事である。
正史に於ける孫権は、その生涯で内政の手腕は高く評価されている。また、外交も時には劉備と、時には曹操と組む等、強かな面を見せている。それは、自身が先代の兄孫策、先々代の父孫堅より劣っていると思っていたからかも知れない。
勿論、孫権の実績を見れば決して劣ってはいないのだが、先の二人が武勇に優れていた事と比べれば孫権は少し劣るかも知れない。
孫権も合肥の戦い等で陣頭指揮を執るなどの武勇があるのだが、いささか血気に逸って死にかける事も多々有ったという。
また、晩年の孫権は猜疑心の固まりになって多数の肉親、部下を死に至らしめている。正史の著者である陳寿は、「万人に優れ傑出した人物」と評しつつ、晩年の行為については「子孫達に平安の策を遺して、慎み深く子孫の安全を図った者とは謂い難い」と切り捨てている。
そうした事が、この世界の孫権である蓮華にも影響しているのかも知れない。尤も、それについては蓮華は勿論、三国志を知る涼も知らない。
彼女がそんな悩みを抱えている時、一団の前方から一人、馬に乗った女性が近付いて来るのが見えた。
不審者か。暗殺者か。すわ集中する鈴々を始めとする徐州軍。だが、一方の孫軍は慌てる事無く、その人物の接近を待っている。
それを見た涼は鈴々達に、警戒したまま様子を見る様に厳命した。
やがて、その人物は涼達の、というより海蓮達の前に着くと即座に下馬し、平伏の姿勢をとった。
「海蓮様。
「荊州への長旅、御苦労であった。報告は後で良いから、取り敢えず婿殿に御挨拶だけでもしておきなさい。」
海連は彼女――
諸葛瑾は涼の姿を伺うと恭しく近付き、先程海連にしたように平伏し、名乗った。
「御初に御目に掛かります、清宮様。私は徐州琅邪郡陽県生まれ、漢の
涼は、諸葛瑾の透き通る様な声から紡がれた丁寧な名乗りに驚きながら、自分もきちんと名乗り返した。
「子瑜さん、御丁寧にありがとう。俺は徐州軍州牧補佐の清宮涼。一応、天の御遣いなんて呼ばれているけど、そう気にしないで良いから。」
「そうはおっしゃいますが、清宮様の御活躍は妹から伝え聞いていますし、そんな訳には……。」
どうやら、彼女はかなり真面目な性格らしく、涼の気遣いに対しても畏まっていて中々その厚意を受け取ろうとしない。
それを見かねた海蓮が、諸葛瑾に言った。
「紅里、婿殿を余り困らせないで。彼が良いと言っているのだから、その通りにしなさい。」
「……成程。確かにそうですね。失礼しました、清宮様。」
「ううん、さっきも言ったけど気にしてないから。」
そう言われた諸葛瑾はホッとしたのか、安堵の笑みを浮かべる。
その際、涼はさり気なく彼女の容姿を観察した。
腰迄ある長い金髪、真名の様に紅い瞳、妹と同じ様に幼い顔。スラリと伸びた手足、出るとこは出て、引っ込む所は引っ込んでいて、女性にしては高い身長。やはり妹と似たデザインで、紺色を基調とした服裝、ベレー帽を被っている妹と同じ様に、彼女はストローハット、要は麦藁帽子を被っている。
姉妹だけあって雰囲気は似ているが、外見は結構違うな、というのが涼の感想だ。
「妹さんといえば、朱里には徐州の仕事で色々助けてもらっているよ。優秀な妹さんだね。」
「有難うございます。あの子は、私達姉妹の中でも特に優秀ですから。私なんか足元にも及びません。」
「ご謙遜を。子瑜さん……いや、紅里さんも相当な実力者でしょう。朱里が言ってましたよ。“お姉ちゃんは私達を助ける為に遠く揚州に仕官しに行って、そこで活躍しています。自慢の姉です。”って。」
「あ、あの子ったら、何だか恥ずかしいわね。」
涼から聞いた妹の言葉に照れているのか、紅里はその真名の様に顔を紅くする。
涼が言った様に、朱里こと諸葛亮は優秀な人物で、正史でも優れた人物で政治の腕が凄かったと伝わっている。
演義だとそこに「天才軍師」の肩書きが加わり、更に妖術やら祈祷やらが使える完璧超人みたいな扱いになっているが、実際は勿論そんな事は無く、軍事にもある程度精通した政治家というのが現代における諸葛亮の評価だ。
その兄である諸葛瑾は、現代日本では余り知られていないが、彼も優秀な人物だ。
「左氏春秋」「尚書」等を読んで学問を極め、孫権の許でその才能を発揮。様々な戦果を上げ、孫呉の大将軍に迄なっている。
また、諸葛亮の兄という事や、夷陵の戦いで講和の使者になっていたりするので勘違いされがちだが、諸葛瑾は武官である。政治家としての才能もあったが、「呉主伝」によると前述の事を理由に一度孫権の要請を黙殺している。
その様な事を涼は知っている為、この世界の「諸葛瑾」も優秀な人物だろうと思っている。
その考えは当たっている。紅里は先程の海蓮の言葉から、荊州へ行っていた事が解る。この世界では今荊州は袁術の統治下にある。そこに行ってきたというのは、当然ながら単なるお使いでは無い。その内容を涼が知る事は無いが。
まあ、涼もそんな事を気にする性格では無いので問題は無いが。
「と、兎に角、妹に会ったら私はいつも貴女達を想ってますよ、と宜しくお伝えください。勿論こちらからも手紙は出しますが。」
「構いませんよ。これから兗州に行くので、帰るのは未だ先になりますが、必ず伝えます。」
涼がそう言うと、紅里は再び平伏の姿勢をとり何度もお礼を言った。
その後、海蓮の計らいで紅里も行列に参加し、建業を出る涼達を見送った。徐州軍が全員建業から出ると、城壁に居た兵士達が、海蓮の指示によって様々な楽器による演奏を行い、壮大な送別となった。
尚、帰り際に涼が雪蓮に頬ではあるがキスされた事で、一悶着あったのだがそれは割愛する。どうせいつもの事なので。
そんなこんなで徐州軍が建業から離れ終わると、孫軍の一同は一仕事終えたからか大きく息を吐いた。
「……それで、母様は兵士達の選抜をどうする気なの?」
雪蓮は前を向いたまま、隣に居る海連に訊ねる。
「気が早いわね。未だ要請は来ていないわよ。」
「戦いの場所は青州か徐州になるのよ。要請が来てから準備していたんじゃ、間に合わないわ。」
「まあ、ね。かと言って、余り大軍を派兵する事は出来ないわよ。解っているでしょ?」
「解っているから訊いているのよ。荊州の袁術、南の南越、どちらも警戒を怠れない。どっちも、隙を窺っているのは明白。」
「そうね。……けど、だからこそ好機とも言える。」
「どういう事?」
雪蓮は海連が言いたい事が解らず、思わず訊き返した。
「あら、解っているんじゃなかったの?」
「ぐっ……解らない事もあるわよ。別に良いでしょ!」
「あらあら。」
ふくれる愛娘を見て、海連は子供をからかうのは楽しいと再認識した。とんでもない母親である。
「恐らく、海蓮様は将兵を鍛える好機とおっしゃいたいのでしょう。」
「鍛える?」
「流石ね、公瑾。伯符とは大違いね。」
「そりゃ、知力じゃ冥琳に勝てないわよ。冥琳が剣で私に勝てないのと同じ。それより冥琳、解り易く説明してよ。教えて冥琳♪」
「そうは言うが、ある程度は理解しているのだろう?」
「まあね。将兵を鍛えるには、先ず調練。けど、実戦に優るものは無い。だから、いざ戦いになり、それを生き残った将兵は自身でも考えられない程に成長している。」
「そう。どんな将兵も、始めは弱く名も知られていない。戦いの中で生き残り、経験を積み、強くなり、やがて歴史に名を残す名将となる。劉邦に仕えてその才を発揮した大元帥・韓信の様に。」
前漢の三傑の一人、韓信の名を挙げて説明をする冥琳。尤も、韓信は項羽に採り立てられなかった事以外は殆ど挫折しなかった様だが。
「そして、その実戦の舞台は今三つ在る。南越、袁術、そして青州・徐州。ここに若手将兵を投入し、経験を積ませるつもりなのよ。」
「それが好機? それくらいなら私も考えたけど……。」
「海蓮様のお考えはそこに付け足しがあるのよ。……蓮華様と小蓮様の指揮官としての経験を積ませるという、ね。」
「なっ!?」
「え?」
急に名前を呼ばれて慌てる蓮華と、呼ばれたけど何かな? というくらいに落ち着いている小蓮。そんな二人を見て、雪蓮は納得し、同時に何かに気付いた様だ。
「……成程ね。冥琳、理由ってそれにもう一つあるんじゃない?」
「ほう……? 雪蓮は何だと思う?」
「私達が徐州や青州に行く事で涼と過ごす時間を増やす、って事でしょ?」
「その通りだ。黄巾党の戦いで一緒だった雪蓮と違い、御二方は清宮と余り一緒には居られていないからな。」
「将来を考えて二人も涼と結婚出来る様にしたのに、シャオは兎も角、蓮華は殆ど話さなかったみたいだし。」
蓮華は、自分の事をまるで意気地無しか無愛想の様に言われて思わず口を出しそうになるが、当たらずとも遠からずというのが実情なので、結局言い返せなかった。
「まあ、蓮華様は雪蓮とは違うからな。慌てずとも良いが、少しでも慣れてもらわねば孫家の為にならない事も事実。……それはお解りですね、蓮華様?」
「……っ! わ、解っているわ、それくらい。」
「なら良いのです。」
「そ、それより、私は一つ気になったのだけれど。」
「何でしょう?」
蓮華が訊ねてきたので、冥琳は姿勢を蓮華に向けて話を聞く体勢にした。それを見てから連華は疑問をぶつける。
「さっき冥琳が言った事が正しいとすれば、私だけでなくシャオも指揮官の訓練をするという事でしょう? こう言ってはなんだけど、普段の勉強も
「お姉ちゃんの言い方には反論したいけど、シャオもちょっと無理だと思う。」
「まあ、それは私も思うわよ。シャオは私達に何かあった場合の最後の切り札なんだし、無茶はさせたくないわ。」
「ならば何故……。」
「今言ったでしょ? シャオは私達に何かあった時の切り札だって。けど、切り札なのに何も出来ない只のお姫様じゃ、これから先やっていけないわ。」
「けど、その時は涼と結婚すれば良いんじゃないの?」
「その時も涼が居るとは限らないでしょう? 元の世界に戻っているかも知れないし、死んでいるかもしれない。そもそも、生きていても同盟関係が続いているとは限らない。その時に私達が居なかったら、シャオは何が出来るの?」
雪蓮に言われて、小蓮は何も言い返せなかった。
彼女は二人の姉と比べて決して劣っている訳では無い。只、年齢の所為か末妹だからか、彼女は自由奔放に生きている。自由奔放で言えば雪蓮も負けていないが、彼女は長姉という立場でもある為、一応自制が出来ている。それでも周りは大変な目に合うのだが。
自由奔放で余り勉強をせず、かと言って武芸に打ち込むという訳でも無い。演義では「弓腰姫」と渾名され、夫である劉備は勿論、孫呉の将兵達からも恐れられた孫夫人だが、この世界の孫夫人こと孫尚香こと小蓮は未だそれ程の実力は無い様だ。
「だから、今の内に経験を積んでおく必要があるのよ。勿論、きちんと護衛を付けた上でね。」
「本当ならば、護衛なんて要らないと言いたい所だけど……。」
「今のシャオ達じゃ、護衛無しは難しいかな。」
「そうそう、せめて私くらいにはならないと。」
「いや、雪蓮も護衛を付けてほしいのだがな。」
冷静にそう言った冥琳に対し雪蓮は文句を言ったが、彼女自身が孫家の跡取りの第一候補である事を改めて告げると言い返せなくなった。
「兎に角、要請が来たら私達が援軍に向かう、将兵は若手中心、って事ね。南越や袁術への備えは母様達がするの?」
「ええ。私達が一睨みすれば南越は震え上がり、袁術は漏らしてしまうかも知れないわね。」
そう言うと、海連は小さく笑った。周りに居る孫堅四天王もそれに倣って笑う。
実際に、この面子が前線に出れば味方の士気は大いに上がり、敵は恐れ
「まあ、そうした戦いとか関係なく清宮と逢えれば一番だがな。」
「まったくね。」
冥琳と雪蓮はそう言って苦笑する。
涼との、徐州軍との同盟によって互いの背中を預ける事が出来た。当然それにより新たな責任が生じたが、それはこの際些細な事だ。
そう、敵を倒す事が出来るのならば。
漸く書き終わりました。
纏めようとしても纏まらず、時間がかかってしまい、申し訳ありませんでした。次はもっと早く書ける様にします。
さて、今回はオリジナル武将を沢山出しました。名前だけの武将も居ますが、そのキャラも何れ出るでしょう。このオリキャラを沢山出したのが遅れた要因の一つではありますが。
さて、次はいよいよ華琳編です。と、なると、原作のあのキャラが出てくるかも?既に大筋の話は出来上がっているので、そんなに遅れる事は無いと思います。多分。
今回のパロディネタ。
「みんな、鍛えてますから。」→「鍛えてますから。」
「仮面ライダー響鬼」の主人公、ヒビキの口癖より。主人公は明日夢かも知れないけど、やはり仮面ライダーなので、筆者はこの様に認識しています。
「肩から袖にかけて黒い線が三本引いてある。それを見た涼は片仮名五文字の某スポーツブランドを思い出した。」→「アデ◯ダス」
自分はこのスポーツブランドをよく使います。
「某戦闘民族の様に若い時代が長く、老化の時期が遅いのだろうか。」→「サイヤ人は戦闘民族だから、若い時期が長いんだ。」
最近、新作映画が公開されたドラゴンボールの原作最終回のベジータの台詞より。
若い時期長過ぎです(笑)
「何でも知っている訳じゃないよ。俺は、自分が知っている事を知っているだけさ。」→「知らぬさ!所詮人は己の知ることしか知らぬ!」
「機動戦士ガンダムSEED」のラウ・ル・クルーゼの台詞より。
色々言われた作品だけど、あの最終決戦は良かったと思う。
では、次回の華琳編でまた会いましょう。
2013年9月25日更新。
少し加筆修正をしました。
2017年6月9日掲載(ハーメルン)