真・恋姫†無双 ~天命之外史~   作:夢月葵

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第十五章 再会と決意・5

「いやー、まさか同行を許されるとは思わんかったわ。」

「ホントなのー。」

「何言ってんの。部外者は俺達の方だし、少しでも早くこの戦いを終わらせる為にも、二人の……李典(りてん)于禁(うきん)の力が必要なんだよ。」

「そう言うてくれるんは嬉しいけど、うちらもこの村の人間やないから部外者やで。」

「そうなの。沙和達はこの近くの村の住人で、ここには陳留への出稼ぎに行く途中で寄っただけなの。」

 

 涼はそうなのか、と走りながら答え、その後も真桜こと李典、沙和こと于禁と話していった。走りながら話すとは結構器用である。

 二人とは、正確には凪を含めた三人とは先程の戦闘の時に簡単に自己紹介をしている。

 涼が徐州の州牧(しゅうぼく)補佐で「天の御遣い」だと知った時の三人は、恐縮して固まりそうになっていたが、未だ戦闘中だったのと、涼自身が固っ苦しいのが嫌だと言ったので、凪以外の二人は比較的早くに順応していった。

 尚、凪が順応出来ないのは生来の生真面目さの所為であり、二人と比べれば遅いが少しずつ順応していっている。

 

「それで、今も戦っているっていうあと二人はどんな子なんだ?」

「二人共この村の女の子で、沙和達は仲康(ちゅうこう)ちゃんと仲颯(ちゅうそう)ちゃんって呼んでるの。」

「……仲康? ひょっとして、その子の名前は許緒(きょちょ)って言うんじゃ?」

「そ、そうなの! 会った事も無いのに名前を当てるなんて、やっぱり御遣い様は凄いの!」

「そ、そうかな?」

 

 涼は照れた振りをしながら、今得た情報を整理していく。

 その間にも戦場へ近付いているので、残り時間は少ない。

 

(仲康が許緒の字ってのは、三国志を知っている人なら常識だから間違いはない。けど、仲颯ってのは誰だ?)

 

 一部、涼の認識と世間の常識がかけ離れている内容があるが、許緒の名前については確かに間違っていない。……どれだけ三国志に関する知識があるのやら。

 普通の人からすれば驚き、ともすれば呆れる程の情報量だが、幼少の頃からそれらの書物を文字通り山程読み漁ってきた涼にとっては、日本人が桃太郎や浦島太郎を知っているのと同じくらいの常識なのだ。

 

(古代中国じゃ“仲”って字は次男に付けるって法則があるから、この世界じゃ次女、()しくは二番目に生まれた子に付けているんだろう。だとすると、仲颯って子もそれに当て嵌まるんだけど……該当する人が居ない。)

 

 涼は頭の中の三国志人名辞典を引っ張りだし、片っ端から検索した。だが、「仲」が付く武将や文官は居ても、「仲颯」という字を持つ武将や文官は一人も居なかった。

 そこで、涼はもう一人の「仲」の名を持つ少女、許緒から何か手掛かりは無いかと考え、その瞬間に一つの仮説に思い至った。

 何故、許緒と一緒に名前が出た時に気付かなかったのか、と自嘲したくなった程だ。

 涼はそんな気持ちを落ち着けてから、沙和に訊ねる。

 

「じゃあ……もう一人は典韋(てんい)、かな?」

「そ、その通りなの!」

 

 推測を述べた涼の言葉に対し、沙和は先程より驚きながらそれを肯定した。それはつまり、涼の推理が当たった事を意味している。

 許緒と典韋。この二人は共に曹操に仕え、共に剛勇で名を馳せた武将である。

 正史ではこの二人の組み合わせはそれ程印象にないが、演義では許緒が曹操に仕える際に一騎討ちをし、互角に戦ったとされ、曹操軍の豪傑二枚看板としての印象が強調されている。

 

「その二人なら、幾ら賊が多くても安心できるかな。」

「なんでや?」

「まあ……勘、かな。」

「なんやそれ。」

「なんやそれ、と言われても、そうとしか言い様がないしなあ。」

 

 本当の事を言う訳にいかない涼は、苦笑しながらそう言って誤魔化した。

 やがて、戦場に着いた。

 とは言え、殆ど戦闘は終わっていた。賊の大半は討ち取られ、降伏する者も相次いでいる様だ。

 涼達は辺りに敵が居ないか気を付けながら走り、途中で倒れている人が居れば応急処置を行い、賊が現れれば即座に斬り捨てた。

 やがて、半壊した建物の向こうから少女の声が二つ聞こえてきた。どちらも幼さを残した声音でありながら、発している声は平時のものではない。明らかに戦闘時に発する声だった。

 

「仲康ちゃんと仲颯ちゃんの声なの!」

 

 沙和が涼に知らせる様に叫ぶ。涼は沙和と真桜、そして兵士達と顔を見合わせると、声がした方へ駆け出した。

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