今回は夢がメインです。原作キャラと本作のキャラとの差異の意味を色々考えてほしいなと思っております。まあ、前作を見た人はお分かりになると思います。
だから、と言って前作を見て欲しいだなんて思ってないんだからね!(マジで)
そろそろ話飛ばすか。
ぼやけた意識の中、俺はある城の中にいた。
いや、そこに存在しているわけではない。どちらかといえば、一方的に見えるだけだろう。そこにいる人達は俺の事を完全に無視して、しかも体をすり抜けて行くのだから。
その城は中世に作られたようで、部屋の脇にずらりと甲冑が並んでいる。しかも、今いる部屋はどうやら謁見の間らしく、奥にどでかい豪勢な椅子が圧倒的な存在感を出している。
そこにいるのは二人の人間のようで、一人は本を持ちながら目が飛びでている男性。顔が異形すぎて、年齢まで読み取れない。
会ったことはない。それなのに、俺はそいつを知っている。覚えている。百年戦争にて、ジャンヌ・ダルクと戦った戦士、ジル・ド・レェ。のちに狂気の殺人者となった男。
そしてもう一人、ある少女もいた。
前回の特異点で最後に戦ったセイバーのように、色素を失ったかのような白い髪と肌を持ち合わせ、金色の眼は慈悲ではなく、憤怒に燃えているかのようだ。
修道女とも戦士とも捉えられる服は黒に染め上げられ、自身は悪なのだと象徴しているかのようだ。しかも、彼女が持っているのは旗。
ジル・ド・レェといる少女が旗を持っている。これはもう、ジャンヌ・ダルク以外にはいないだろう。
そうでなくとも、確信はある。だって……だってその顔は……
「ジル、あの男は?」
黒いジャンヌがジルに何か質問する。あの男というのは誰のことかは分からないが、おそらくその男はただではすまなさそうだと感じれるほど、彼女の声は憎悪で満ちていた。最悪の場合、死に直結するかもしれない。
「はい、こちらに。」
ジルは別の部屋から縄で縛られた男を連れてくる。どうやら気を失っているようで頭が項垂れている。
「死んでいないわよね?」
「もちろんですとも。ですが、どうするかお考えで?」
「——。」
その時、彼女は一瞬の沈黙を作る。悩んでいるのか、それともどうするかなど考えるまでもないのか。
復讐するのか、慈悲を与えるのか。復讐するのであれば、殺すか、痛みを与え続けるか。
いずれにしろ彼女は俺の知るあいつではないかもしれない。だから『こうして欲しくない』と願うのは無意味なのだろう。おそらくは……
「おや、私めのアイデアは必要ですかな。」
「いいえ、不要よ。どうするか、なんてのはその時に決めるだけよ。
——ほら、さっさと起きなさい。」
男の目を覚まさせる為なのか、ジャンヌは男の頰を思いっきり叩く。
響く快音と同時に、男は意識を取り戻す。
「いっ……!
誰だ! この私を叩く不敬な奴めは……ヒイッ!?」
目を開けた途端にふてぶてしい態度をとった彼は、ジャンヌの顔を見た瞬間に、恐怖で顔を青ざめる。
「ああ、ピエールよ。ピエール・コーションよ。会いとうございました。」
彼女はわざとらしく、大根役者にも引けを取らない棒読みっぷりで、呆れたような声をだす。
「——バカな。
バカな、バカな、バカな、バカな、バカな!
お、お、お、お前はジャンヌ・ダルク! あり得ない! ここにいるはずが……! 三日前に……あの時地獄に……!」
「残念ながら、貴方の言う地獄とやらには行き損ねたわ。地獄のような体験をしたことはあっても、ね。」
その一瞬、ジャンヌはピエールと呼ばれる者に目は向けてはいたが、見ているのは全く別の物だった。遠い遠い夢、それを見ているかのようだ。
「あり得ない、あり得ない!
……そうだ、これは夢だ! 悪夢以外の何者でも……!」
「おやおや、現実逃避をし始めましたぞ。これはいけない。気付けが必要ですね。」
ジルはそう言いながら男の後ろに立ち、後頭部を殴る。
「ぎゃぁぁっ!
ひぃっ、ひぃいい……!」
脳を恐怖に支配されたのか、彼はすでに言葉とならない声を上げるしかなくなっている。
ただ、怖い。死にたくない、死にたくないと、願うばかり。
「……虐殺なんて趣味、本当はないのだけれど。」
誰にも聞こえない小さな声、しかし、俺だけはその言葉を聞き取れた。彼女は確かにそう言ったのだ。
殺す気は無い。すでにジャンヌ・ダルクはピエールという男はどうでもいいのだろうか。
「さあ、貴方が異端だと弾劾したジャンヌ・ダルクがここにいるのですよ。十字架を握り、天に祈りを捧げなくても良いのですか?
あの時のように、雄々しく吼えて見せてください。邪悪な者に災いあれと、邪悪なジャンヌ・ダルクに死あれと!」
……なんだ、この違和感は?
その言葉は
「た——」
震え怯えながらも彼は僅かに口を動かす。
「た?」
しかし、それは勇気を振り絞った物ではなく、
「たす……けて……。
助けて、助けて! お願いしますお願いします! 何でもしますから!」
臆病が表立っただけだ。
「——ふふっ。あっはっはっ!
見た、ジル? あの神官様が! 私を虫のような目で見ていたあの男が! 今は足元で命乞いをしているなんて!」
見下すように、冷酷に、彼女は
その瞳の奥には愉快の文字などない。
ただ、自分はこうである。だから、悪の化身となる。本質は変わらないと、自身を偽っているようだ。
「ああ、結局貴方は神などではなく自身を重んじた。悪を罰するのではなく、我が身を乞うた。
そんな紙のような信仰だからこそ、私を殺しきれなかったのでしょうね。」
残酷な笑みを浮かべながら、ジャンヌ・ダルクは男の手を自身の手と重ねる。
その行動だけ見れば慈悲を与えるかのようだが、彼女はそんな甘ったれるような事はしない。情けという言葉はここには存在しないのだから。
「ひっ! ひいいいい!」
「怯えないでください。そんな貴方にでも神は救いの手を差し伸べるでしょう。生きとし生けるもの、全てに生きる価値がある。例えその在り方がどれだけ歪であろうと、神は見捨てはしません。」
——それは、それだけが彼女が口にした唯一の本音。
嘘、偽りなど一切ない。心の底からの信仰であった。
「ですが、」
しかし場は一転し、残酷な物になる。
「ぎぃゃぁぁぁぁ!!」
彼女に掴まれた男の手から、黒き炎が燃え上がる。
腕から肩に広がる事はないが、その炎は腕を
あの炎は焼き尽くす炎ではない。痛みを与え続けるだけの物だ。
「私個人は別よ。
神がどうあろうと、知ったことではないわ。」
先ほどまで丁寧な物言いであったはずの彼女は、突如として荒い言葉を使う。
「さあ、自ら異端者と認めた者よ。貴方には私に与えたように、火刑を与えましょう。
その身を邪悪な炎で焼かれ、永遠の地獄を見るがいい!」
「や、嫌だ! 助けて! たすけ……!
ぎゃああああ!!」
消えない炎にのたうちまわり、虫のように蠢き、意識を失おうにも痛みが強すぎて、失神すらできない。
死よりも恐ろしい生が、彼を襲う。地獄に落ちぬ地獄。これが終わるには、彼女の気が変わるしかないのだろう。
「いやあああああっ!!」
「……いつまでも、うるさいわね。
ジル、こいつは下がらせて。地下牢にでも入れときなさい。」
「承知しました。
他の聖職者はどうするつもりで?」
「いちいち相手するのも面倒ね。
「では、私はこれで。」
目玉男は炎に悶え続けるピエールを連れ、部屋を立ち去る。
そして、ジャンヌ・ダルク一人となる。
「……ああ、主よ。」
誰もいなくなった部屋で、彼女は神に語りかける。先ほどの冷酷な顔から一転し、彷徨う子羊が救いを求めるかのような顔をする。
その人が聞いているのかも分からない。けれども、祈るように膝をつく。
「私はこの身を邪悪な感情に任せ、そして悪へと落ちました。
人を憎しみ、殺す事に何の躊躇もなくなり、悪を良しとする者へと変わり果てました。」
それでも、その事自体には何の後悔もないと、これが自分なのだ、とも続けて言っているようだ。
「しかし、それでも貴方は私が言ったように、こんな私にでも手を差し伸べるのでしょう。だからこそ、貴方は多くの人々から信仰を受けるようになった。」
あ、まずい。薄い意識がさらに薄くなってきた。
夢から覚める合図だ。
「ですが、私はそれに手を添える事はできません。
してはならないのです。」
クソ、もう少しで彼女が
「せめて彼と会うまで、あわよくば……」
そこで、意識は完全に無くなる。
ーーーーー
「……何だったんだ、今のは?」
重たい瞼を開け、白い天井を見上げる。カルデアの一室、そこで俺は夢を見ていた。
こんなのは久し振りだ。夢を見るのが、ではなくて、こう……夢がリアルであった事が、だ。
昔にも何回か、現実味のある夢を見たことがあり、今回もその類だ。そして、決まって現実に起きた事ばっかだ。一体何の因果で……
「——いや、あるのか。」
ジャンヌ・ダルク、ジル・ド・レェ。これから行くフランスに関係ある者たち。因果も何もないのかもしれない。おそらくは、いや確実に、別の意味でも。
「さて……今は七時か。」
最初の特異点から二日後の朝、それが今だ。
色々と予定が詰まっているので、先の夢が何だったかはとりあえず置いとこう。さっさと飯食って、藤丸のとこに向かわなければならないのだから。
時間は限られている。一分一秒だってだって無駄にはできない。
あいつはやるって言ってくれた。だから、今はその気持ちに応えてやろう。
「よし! 行くか!」
ベッドから飛び跳ねて愛用であるボロボロの黒ローブを羽織り、部屋の隅に立てかけてある木の杖を持ち部屋を後にする。
向かうは昨日も行った病室。カルデアの構造は頭にそろそろ入ってきたので、案内など無くとも辿り着けるだろう。そう考えてる合間にも、ほら。
「迷わず一発か。」
十分ほどで病室のトビラの前に立つ。
なら、今度はノックを三回して……
「いるかーロマニー?」
藤丸の担当医でもある彼の名を呼ぶ。一応これが礼儀だし、嫌悪感を持つ相手であろうと、それは大事にしなくてはならない。
「どうぞ。」
俺の呼びかけに対して、すぐさま反応してきた彼の許可を聞き、トビラを開け、部屋へと入る。
「よう、ロマニ。」
「おはようございます、創太さん。」
軽く挨拶を済ますだけ済まし、さっさと本題に入ろう。こいつといると、なーんかイライラすんだよな。
「藤丸は?」
「起きてますよ。先ほどマシュも来て、今は彼と話しています。」
なるほど。特に何もなさそうなら良かった。
と思ったら、次にドクターは真剣な顔で俺を睨みつける。
「……藤丸くんからは聞きました。今日から訓練をつける、と。」
「何か問題が?」
確かにちょっと報告するのは遅れたが、それでも問題はないだろう。さっきドクターはあまり問題があるように言ってないし。
「いえ、その事については特に。ただ……」
「俺自身に問題があるのか?」
その言葉にロマニは大きく目を見開き、驚く。図星か。
触れてはこなかったが、彼が俺に向けるモノは何か大きな敵意があった。彼が黙っているならいるで、別に構わないとは思っていたが、ここに来てそれを口にするのであれば、俺も少し反論しよう。
「ロマニ、お前が俺を疑ってんのは分かる。いきなり外から侵入したと思えば、あれこれに口を出す。最初は正論を言うが、後々にカルデアを乗っ取ろうとする敵対者かもしれないと。
けど、無意味だとは思うが、言っておく。俺は味方だ。少なくとも藤丸達のな。
別に疑ってくれても構わない。むしろ、それぐらいの奴がいたほうがチームとしては安心する。」
今すぐ疑心を払えとは言わない。嫌悪を持つなとも言わない。これはただ俺が言いたかっただけの事だ。
「疑ってすみません。けど、どうしても僕は疑心暗鬼になってしまうんです。」
「気にすんなって。こんな状況だ。誰が犯人かも分からないのに、そうそう信用できない気持ちもある。
……まあ、俺もそうなんだけどな。」
「え?」
またもや彼は驚きの顔を見せる。しかし、さっきとは違い呆気に取られたという様子だ。
「正直に言おう。俺はロマニという存在を嫌っている。
いや、お前自身は嫌っているわけじゃない。今までの性格からして、むしろ仲良くはなれそうだとは思う。
けど……なんかこう、な。」
嫌悪している。そう言った後なのに、困ったような顔で笑ってみせる。
俺としても何言ってんのかよく分からない。言葉で表現しようとも、上手くできない。
「だから、辛いなら頼りにしてくれたって良いんだぜ? お前、日に日に目の隈が濃くなってるからな。」
「……ああ、いつかね。」
ロマニの好感度が上がった! とは言えないな。ま、それでも言いたい事言えて俺はスッキリだ。未だにロマニを嫌悪する俺の気持ちは分からんが、彼とは良い関係を築きたいものだ。
あわよくば、その負担を肩代わりしてやろう。
「さて、随分横道に逸れたけど、藤丸との面会は?」
「良いですよ。バイタルも安定してますし、ほどほどであれば訓練をしても構いません。」
「……ああ。ほどほどにするよ。」
ほどほど。そうなったら良いな。
と、若干の不安要素を残しつつ、ロマニの許可も得たところで、奥の部屋まで入る。
「よう。二人とも元気か?」
「あ、古崖さん!」
「創太さん、おはようございます。」
ベッドに座っている藤丸と、その横の椅子に座るマシュ。その両方からの歓迎を受け、彼らの元まで歩く。
「その様子だと、昨日と変わりなく元気みたいだな。」
「はい。ドクターに訓練の事を話したら、渋々ながらもオッケーを貰いました。」
それは本人からも直接聞いたな。
「それで、訓練って何するんですか!」
ウキウキとした表情で、興味津々ながらもその目は真剣であり、世界を救うという事に覚悟を決めたかのようだ。
「まあまあ、それは適切な場所についてからな。
それよりもここで渡されたカルデア制服を着るんだ。そんな寝巻きみたいな服装じゃあ、動きにくいだけだろ。」
「カルデア……制服?」
何のことやら、と不思議そうな顔をする藤丸。
おいこら。アレ、お前が戦う為に必要な物だって言うのに。今からの訓練にも使うんだから、忘れたなーみたいな顔をするな。
「ほら、あの白い服に黒のズボンですよ。上半身につけたベルトが特徴的な……」
「ああ! あれか!
荷物も無しに連れてこられてきたから、着替えとかどうしようかなと思ってると、職員の人に手渡されたんだ。」
なるほど。藤丸はマジの手ぶらでここに来たのか。今となっては家に物も取りに帰られないってのが、さらに彼の不運さを感じさせられる。
「で、どこにあるんですか?」
「俺は知らない。」
「衣類品でしたら、ドクターがそこの棚の中に収納していると。」
「なら、それに着替えてさっさと行くぞ。俺は部屋の前に待ってるからな。
マシュ、行くぞ。着替えに他の奴が、それも異性がいたらやりづらい所じゃないからな。」
「はい。
それでは、先輩お待ちしております。」
ーーーーー
藤丸が着替え終わり、場所を移して現在は俺の工房に三人がいる。
チビな俺は教卓の
マシュはその横でパイプ椅子に座っている。
まるで、授業が行われるかのような雰囲気だ。いや、実際にやるんですけど。
「さて、藤丸くん。」
学校の先生みたく、体を踏ん反り返り、いかにもな声で呼びかけてみる。
おいこら、藤丸吹き出すな。
「まず最初に、今から何をするのか当ててみろ。」
「何をって……特訓ですよね?」
「いやだから、その内容を聞いてるんです。先生は。」
そんな初歩の初歩の答えは求めてません。
すると藤丸は腕を組み、真剣に考え出す。答えを捻り出そうとし、あれこれ悩み二、三分。その果てに、
「魔術……ですか?」
「そうだ。プラス一点。」
やっとのこさ出た正解の一部だった。
ちなみに俺がつけた点数だが、百になると一人前になる。今思いついたデタラメだけどね。
だから、藤丸くんが嬉しそうにガッツポーズをしても、この一点に意味なんかない。
「じゃあ、次の質問だ。魔術を習得、及び鍛錬することで、実戦にどう役立つのか。」
これは最も重要な質問だ。彼が担う役割、それをちゃんと理解しているのかを確認する意味がある。
「ええーと……相手を倒すため?」
「お前は敵のサーヴァントと直接戦うっていうのか。相当な勇者だな。マイナス一点。」
またもや謎の点数がつけられる。
それに対して、藤丸くんは強烈にがっかりし、机に突っ伏してしまう。
「ううー……、間違えちゃったよー……マシュー。」
本当に泣いているのか、それとも冗談なのかまったく分からないが、マシュはその反応にあたふたしている。
「え、ええっとですね。そ、創太さん! あとは頼みます!」
おい、この片目カクシ、丸投げしよった。
仕方がない。というか、間違えても教えてやるつもりだったし、正解を言っておこう。
「良いか、藤丸。まずお前の役割は前線に立つ者へのサポートだ。基本的にはマシュの援護だろう。
まかり曲がってもお前が最前線には立つな。
今、地球上で戦えるのはここにいる三人だけだ。特に、お前はサーヴァントを従えるマスターだ。これから戦力を増やすという意味では、お前が最重要となる。
マスターがいなければ英霊を従えられないし、召喚すらもできない。
だから、後ろでしっかりとサポートするんだ。」
「はい!」
うん。何度聞いても藤丸の返事は気持ちいいものだ。純粋であるからこそ、真っ直ぐになれる。真っ直ぐだからこそ、突き通せる信念がある。
だから、さっきまでメソメソしてたのは黙ってやろう、
「あの、少し疑問があります。」
ひっそりと、申し訳なさそうに謙虚な手を上げるマシュ。
一体どこに疑問があるというのか。
「おう、何だ? 言ってみろ。」
「はい。前に言っていたと思うのですが、創太さんは冬木の聖杯戦争に参加していたんですよね? なら、貴方もマスターとしてサーヴァントを召喚していたのでは?」
確かに似たようなことは言っていたな。特異点が地元で、しかも俺が戦った聖杯戦争の場所だって。しかし、
「いいや、してない。そもそも俺は参加していたんじゃなくて、横槍を入れていただけだ。」
本当はただの部外者だった。ただ、ある理由で邪魔をしていただけの。
「では、その理由……」
「さて藤丸!」
マシュの言葉を遮り、強引に話を戻す。
これ以上根掘り葉掘り聞かれると進まないし……それに、な。聞かれたくないことだってあるんだよ。
「魔術を教えるとは言ったが、実際にやるのは魔術礼装の起動だ。」
「魔術……礼装?」
「お前が今まさに着ている服がそれだ。」
「そうだったんですか!?」
うむ、驚きだとは思う。
しかし、ここは世界を救うと謳っているカルデア。マスターにはそれなりの支給がされているようだ。というのをレオナルドから聞いた。
「本来ならば、魔術がどういうものでどう使えるのか、というのを教えたいが、あいにくそんな時間はない。この短い期間で英霊の戦闘において役立つ物を身につけなければならないからな。」
冬木では黒サーヴァントであったが、これから先に真っ当なサーヴァント以上の力を持つ者とも戦うかもしれない。ならば、まずは何でもいいから力をつけていくのが先決だ。
彼が魔術師として生きていく、という選択をするのであれば話は別だが。
「じゃあ、早速その礼装を使っていく。今日一日で、あわよくば午前中にでも使いこなして、そのまま模擬戦まで持っていくぞ!」
「了解っす! がんはるっす!」
……藤丸くん。たまに変な喋り方するのはやめようね。