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ありがとうございます。投稿するたびに増えていくのが私の活力となっております。どうぞ、今後もよろしくお願いします。
さあついに召喚の時間がやってまいりました。一体どんな英霊が応えてくれるのでしょうか!(やるとは言ってない)
バランスを考えると前線で戦える方がいいんでしょうが、あえて偏らせようかな。
(孔明さんさっさとうちのカルデアに来てくれよ!頼むから!)
アンケートは一章が終わるまでです。
「よーし、午前はここまでだ。」
「ありあしたー!」
魔術の訓練が終わり、部活の終わりにやる挨拶をする藤丸。
ふざけてるのかと言いたいが、汗だくの上に手が焼け焦げたような痕ができている。魔術が失敗した時にできたものだ。これを見れば、咎める気もなくなる。よく頑張ったしな。
「先輩、これを。」
「あ、ありがと……マシュ。」
いつの間に用意していたのか、マシュは袋に入った氷を藤丸に渡す。焼け焦げた手を冷やすためだ。
「いっ……!」
よほど無理をしたのだろう。氷に触れた瞬間にすぐさま手を離すほど、痛みが強烈みたいだ。
まあ、これに関しては俺にも非がある。
「悪い藤丸。ちょっとやり過ぎだかもしれん。時間がないからと言って、強引なやり方になっちまった。」
この午前中の間に礼装に仕込んである三つ全てを扱えるようにする訓練。それを藤丸にやってもらったわけだが、藤丸は魔術に関して素人だ。魔術回路も開いていない奴が礼装の補助があるとはいえ、魔術一つを扱えるようになるのは相当大変だ。
「いやいや。俺もそれに乗ったんですから、お互い様ですよ。」
うーむ。言われてみればそうかもしれんが……いや、やっぱり俺が礼装に仕込んである魔術全部使いこなそう、とか言ったのが悪い。
「ほら手、貸してみろ。」
「? ……はい。」
俺が言うと、疑問を浮かべながらも素直に手を出してくれる。
藤丸よ、ちょっとお前が犬みたいに見えてきた。人懐っこかったり、興味津々な目で見てきたりしてくるから。
その手を俺は両方の手を添えて、魔力を込める。
「
小さく、しかし強く、柔らかな光が彼の手を包む。魔術による光、それにより焼け跡はじわり、じわりと元の肌色へと戻っていく。使った魔術は簡単な回復魔術だ。
「うおおー……これが本物の魔術か!」
「お前がさっき使った魔術も本物だよ。」
「だけど、やっぱり違うじゃないですか。僕のは礼装を使った偽物だし。」
「偽物じゃないし、もしそうだとしても役に立つのは間違いないから、そういう意味では本物と大差ない。
ほら、終わった。」
他愛のない話を片手間に、回復が完了する。その証拠に藤丸の手は傷一つない綺麗な物へと戻っていた。
「ありがとうございます。それで次は何を?」
「飯だ。そろそろ腹減ってきたんじゃないか?」
「そういえば……」
と、話の途中で誰かの腹の虫が鳴る。
すると藤丸は疑うように、俺とマシュの腹を交互に見る。
「古崖さん。貴方ですか?」
「俺は違う。お前の腹が鳴ったんじゃないか?」
互いが互いに腹の探り合い(上手いこと言ったつもり)をするが、おそらく藤丸は違う。ならば、残った一人、彼女の方へと目を向けると……
「/////」
うわ、照れてる照れてる。恥ずかしすぎて、顔を俯いていやがる。そんでもって、すげえかわゲフンゲフン。
「そ、そろそろお腹空いたし、古崖さんの言う通り、昼食にしましょうか!」
そんな彼女を気遣ってか、彼はさっさと話を移そうとする。
藤丸は優しいなあ。ウチの身内だったら、今頃とっくに弄り倒されてること確定してんだよね。今回は藤丸に乗ってあげよう。
「そうだな。食堂でも行って何か食べようか。ほら、マシュも一緒に。」
「は、はい……!」
彼女を誘ってみるものの、未だ赤い顔は戻らないままみたいだ。よっぽど恥ずかしかったのだろうか。
まあ、歩く途中で自然と直っていくだろう。そう思い、俺たちは工房を後にして食堂へと向かう。
さて、今日は何を作ろうかね。
ーーーーー
「お待たせ。今日の昼飯はシャケの塩焼きと味噌汁、ひじき煮、それからもちろん白飯もな。白菜の漬物も一緒にどうぞ。」
食堂に着いてから三十分後、藤丸とマシュの目の前に日本の家庭で食卓に並ぶ料理が出される。
藤丸のためを思って今回は和風にしてみた。マシュは……どこの国の人かは分からんが、口に合うとは思う。
ちなみに漬物は自分で作った。短時間でそんなことできるのかと言われると、料理にも魔術(錬金術)は応用できるんだぜ。
「古崖さんって料理もできたんですね!」
「多少はな。けど、俺の師匠には遠く及ばない。」
彼には多くの事を学んだ。今はもういないけれど、いい奴だったよ。
「これが……和食というものですか。」
マシュの視線は料理へと釘付けとなっている。
「マシュは初めて見るのか?」
「直接という意味では。この料理に限らず、多くは映像を見るだけでしたので。」
彼女がここから一歩も出たことはないとは聞いたが、これじゃあまるで箱入り娘か何かだな。しかし、彼女の親は一体……まあ、今は腹ごしらえの時間だ。
「ほら、冷めない内に食え。」
「はい! じゃあ、いただきます!」
「わ、私も。いただきます。」
藤丸は元気良く、マシュは静かに手を合わせて食前の挨拶をし、箸を持ち昼食を取り始める。
元々日本人である藤丸はともかく、マシュは弄ばれるかのように箸を不器用に動かす。掴もうとしても掴もうとしても、空振ってしまう。
「もしかしてマシュ、箸を使うのも初めてなのか?」
「は……はい。お恥ずかしながら。」
普通はそうだろう。アジア圏以外の人が箸を使うのなんて滅多にない。例え、日本文化が他の国で浸透していても、このカルデアにまで文化圏が及ぶ事はないだろう。
ここがどこにあるかは知らないが、おそらくは孤島なのだろう。ここが陸続きであったとしても、だ。
「ほら。ここをこう持って……」
「っ! せ、先輩、顔がちか……!」
おお、青い青い。俺も昔は青春……しきる前に色々終わっちまったよな。
「ここにいたのね。」
俺の後ろに……! ゲフンゲフン。
コツ、コツとハイヒールの音を立てながら、食堂に入ってくる人物、それはここの最高責任者、オルガマリー所長であった。
「よう、オルガマリー。」
「こんにちは、所長。」
「こんちわっす、所長!」
こいつ、ガチで部活みたいな雰囲気を持ち出してきやがった。
「貴方、ふざけているの?」
「いや、ふざけてないっす!」
そこまでにしておけよ、藤丸。
だって、彼女のこめかみがピクピクと動き出してんだから。あんまり怒らせたら面倒なだけだぞ。仕方ない、少しフォローを入れるか。
「こいつなりのスキンシップだよ。だから、そんな眉間にシワをよせるなよ。老けるぞ?」
「はあー……。
分かってるわよ。イライラしても仕方ないわね。」
深いため息の後、呆れるように怒りを鎮める彼女。少し前ならば、ギャンギャンと犬のように吠えていたのだが、少しばかり成長したのか?
まあ、それよりもだ。
「来るんだったら、言っておいてくれよ。もう一人分作ってやったのに。」
「気持ちだけ受け取っておきます。多忙な仕事から空いた時間を使いに来たのは食事のためではないので。」
どうやらそうみたいだな。
彼女の目の下にはうっすらとクマができている。この二日間大変な思いをしているみたいだ。
しかし、彼女は俺の作った料理をじっと見つめる。
「……これ、貴方が作ったの?」
「ああ。もしかして食材を勝手に作ったらまずかったか?」
「いいえ。むしろ、そちらに関しては考慮していなかったのでありがたいと思ってました。」
なら、良かった。後になって怒られるかもしれんと考えてたし
と思っていたら、彼女はまた歩き出し、テーブルを挟んで藤丸の前に立つ。
「藤丸立香。」
「ひゃ、ひゃい!」
オルガマリーの威圧に気圧されたのか、何故か藤丸の声が裏返る。
真剣な雰囲気になりそうだったのになぁ。ゆるゆるしてんなぁ。
「貴方は今後、特異点の前線で戦うという選択をしたそうですね。」
と思いきや、一転して部屋は緊張が張り詰められる。
「しかし、その選択はとてつもなく重い意味を持ちます。貴方はこの先、失敗してはならない状況に幾度となく出会うでしょう。そしてそのどれもが人理修復の失敗に直結します。」
その言葉一つ一つに責任という文字が刻まれている。
一つ間違えれば、もう取り戻せないほどの責任が。
「それが万全な状態で迎えるとも限りません。疲労に疲労を重ねた状態で、さらには連続する可能性もあります。これはそれほどまでに過酷な任務なのです。
それでも貴方は、全人類の希望をその肩に乗せ、この任務を遂行する覚悟はありますか?」
真剣に問いかける。覚悟という二文字にあらゆる物を込めて。
辛い、苦しい、やめたい。
そんな甘ったるいことは言ってられない。どんな状況であっても前に進なければならない。立ち止まってしまうなんて論外だ。
人類の歴史を勝ち取らなければならない。
ただの普通の人間には重圧すぎて、逃げたくなるだろう。そして、藤丸はその普通の人間だ。ただの一般的な家庭に生まれただけの一般人。だから、覚悟なんて持ってない筈だ。
「……僕は……」
けれど、
「覚悟はもう、してあります。」
彼は世界を救う準備をしていた。
「僕には所長の言う辛い状況なんていうのは想像できません。けど、ここへ来る時、世界を救うなんて聞いて正直ちょっと期待していました。僕なんかが世界を救えるんだって。
今は少し違うけど、でも根本は変わりません。世界を救う事ができるんだったら、僕は戦います!」
真っ直ぐと、そして口に笑みを浮かべながら、彼ははっきりと言葉にしてみせる。
これが自身の答えだと。すでにその気でここにきたのだと。
「……いいわ。貴方がそこまで言うなら、私に止める権利はないわ。」
やや呆れながら、それでも彼女は納得する。
おそらくは彼を試したんだろう。人理修復というものがどれだけ過酷であるかは分からない。しかし、そうであっても前に進む志を持っているかを見極めていた。いわゆる精神面における試験だろう。
そして、藤丸は見事合格した。
「所長……! ありがとうございます!」
彼もそれを薄々勘付いていたのか、許可がもらえたことに感謝の意を表し、即座に立ち上がって体を九十度に曲げる。
これが日本人のOJIGIだ。
「べ、別に感謝する事でもないわよ。これは単なる確認みたいな物だったし。」
にしては内容が重いというか、長いというか……
「それに、本題は別にあるわ。
創太さん、少しこちらへ。」
「え、俺?」
「いいから早く。」
そういうと彼女は食堂の外へと出ようとする。
「えー、強引すぎません? 返事してないんすけど。
……あ、二人は先に食べといて。」
「はい。」
「わっかりました! その間にマシュに箸の持ち方を教えときます!」
昼食を食べたいのをグッと我慢して、二人を残し食堂を出る。
しかし、俺に話があるみたいだけど、何かあったっけな? うーむ。悩んでも思い出せない。食材を勝手に使った以外に何かあったかと言われれば……まあ、直接聞けば良いか。
「創太さん。貴方に二、三聞きたい事があります。」
部屋の外に出るや否や、彼女は早速話を始める。
わざわざ廊下にまで出たという事は、中の二人には聞かせたくない話なのだろう。
「何だ? なんでも聞いてくれて良いぜ。」
「まず一つ。次の特異点、貴方はそこへ向かう覚悟がありますか?」
「っ……! な、何の事だ?」
か、覚悟も何も。俺はそんなもんとっくに……
「二日前、ドクターが次の特異点を詳細に話した時、貴方の顔は動揺をしてしいました。となると、何らかの理由がある筈です。
日本人である貴方がフランスの百年戦争に関わっているとは考えにくいですが。」
「それ、は……」
ああ、くそ。こんな時に限って嘘がつけなくなりやがる。何でも良いからデタラメを言えたら良いのだが、答えを模索し、間を作る事で余計に怪しまれる。
「言えないのであれば結構。しかし、精神が安定しない状態で戦線へと送り出す事はできません。」
「……」
無理だ。あの事を言ってしまえば、それこそ前線に出せないと言われてしまう。しかし、このまま押し黙っても、特異点には行かせてもらえない。
どうする、どうすれば……?
「……言えませんか。なら、質問を変えましょう。」
どうあっても口にしないと判断したのか、彼女は別の切り口を試す。
「十年前、冬木の聖杯戦争ではある一人の人物が消息不明となっています。未だ遺体は発見されておらず、その人物は貴方の協力者であったとか。」
何故、何故そいつの話が出てくるんだ。
核心に迫られる。けど、別にバレても構わない。構わない筈……なのに。
「そして更に十年前、第四次でも彼女の姿が確認されています。
それも、旗を掲げた姿も確認された、とか。」
「え!? 待って待って! それは俺聞いてない!」
おいマジかよ! じゃあ、そん時から正体バラしてないか!?
「……どうやら、貴方もこの情報は初耳だったみたいね。」
「初耳も何も、そんな事になってるのによく平穏に暮らせたなと、呆れたというかなんというか。」
「そうでしょう。貴方の叔父がその情報を漏れ出さないようにしていたのですから。私も彼から聞いて驚きました。」
……え? 彼? それってつまり、
「叔父から聞いたのか、その話?」
「ええ。極秘にしてくれと言っていた割にはあっさり喋りましたけど。」
あの人ー! ペラペラしやがって!!!
そんな心の叫びが口に出そうだが、ここで言っても仕方ないのでグッと我慢しよう。
そして事が終われば、問い詰めるとしよう。
「その彼女、ジアナ・ドラナリクは典型的なフランス人の顔をしています。
これらの事から推測すれば、貴方とジアナ・ドラナリク、そしてフランスが関連している事は確かです。顔の特徴だけでは判断できませんでしたが、戦場で旗を掲げているとなればかの聖女と関わりがある筈です。
おそらくは子孫か何かだとは思いますが……?」
彼女の推理、それは
だからと言って喋っていいのか? これは俺の問題だ。他人を巻き込むことでもない。それにおそらく本人ではないのに……彼女の間違いに漬け込むか?
「それは……」
悩んだ末、俺は思うがままの言葉を口にする。
「……まず最初に言っておく。俺はジアナ・ドラナリクを愛していた。十一年間共に暮らしていたうちにな。」
俺の心情、これを前提におく事で重要視させる。
「次にそのジアナ・ドラナリクだが、それは偽名だ。例え俺がその名で彼女を呼び続けたとしてもな。」
しかし、フランスの特異点に行ったところで俺はその名を呼ぶ事はないだろう。なぜなら彼女の名は……
「彼女の真名、それは……
ジャンヌ・ダルク、聖女と呼ばれたその人だ。」
これが俺の出した
その答えにオルガマリーは驚き、目を見開く。しかし、嘘だと疑っている様子はなく、逆に信じているようだ。
「……そう。それが貴方の心を揺れ動かす原因ね。」
納得したように彼女は頷く。
「貴方が愛した人である彼女と、今度は記憶がないまま再開するかもしれない。こんな複雑な状況であれば、戸惑うのも無理はないでしょう。」
彼女はこう言っているものの、実際には違う。
特異点にいるジャンヌ・ダルクは、実際には似ているだけの別人だ。元はどうあれ、俺と共に暮らした
けど、彼女からすれば俺は私情を挟んでしまうかもしれないと思案するのだろう。だから、彼女は決断するだろう、俺を戦線から外すと。
「良いでしょう。私の疑問は晴れました。
貴方が
……は?
ちょいと待て。今、頭の理解が追いついてない。予想外の回答であったからか、思考回路がフリーズしてんだけど。
「今なんて?」
アカン。俺の処理能力が著しく低下しているせいで、聞き返す事でしか、答えを得られなくなってる。
「今言った通りです。いくら貴方が戦闘メンバーの統率をしているからといって、腑抜ければ容赦はしないと……」
「って事は、フランスへ行って良いんだな?」
「……はい。むしろその方が良いでしょう。フランスへ向かわない方が、あとで苦悩する可能性が高いでしょうから、行って踏ん切りをつけた方が貴方の為です。」
……今、俺は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてんだろうな。
驚きを隠す気すらないほど、唖然とする。
「なんですか、その顔は?」
「い、いや。留守番になるかな、と思ってたから。」
「貴方がいなければ、マスターである立香とマシュだけになります。せめて頼りになる人を側においておきたいだけです。」
本当にそうか?
風の噂で聞いたが、英霊を藤丸に召喚するっていう話からその英霊に頼ればいいし、そもそも俺自身が頼りなくなる可能性もあるっていうのに。
……まさか、俺の事気遣ってんじゃないか? 踏ん切りつけるとか、正にそういう意味じゃないか。
まあ、何にせよ礼は言っておこう。
「ありがとう、オルガマリー。」
「……先ほども似たような事を言ったような気がしますけど、礼を言われるような事ではありません。」
プイッと顔を逸らす彼女だったが、顔を赤く染めているので、どうやら照れているだけのようだ。
「では、貴方は立香の教育に戻ってください。私にも次の特異点までにこなさなければならない作業が山ほど残っていますので。」
「そうする。本当ならそっちを一緒に手伝ってやりたいんだけどな。」
「必要ありません。貴方がいなくとも、こちらはなんとかやっていけます。」
にしては、色々大変そうだけど。さっきも忙しいって言ってたし。しかし、今回はその言葉に甘えさせてもらおう。
後方支援をしっかりと受け取るには前線がちゃんとしてないとな。
「はいはい。それじゃあ、戻らせてもらおうかな。あんまり無理すんな……とは言ってられないか。
せめて、倒れないようにしてくれよ。」
「貴方に心配されるまでもありません。」
強がりを言うが、その声自体には疲労が見え隠れしている。さっきの藤丸に見せた威勢は何処へやら。
けども、今は彼女達を信じよう。俺だってあれもこれもやってられない。与えられた役割を果たすまでだ。
ーーーーー
それから三日間、藤丸とマシュにはそれぞれの戦い方を身につけさせる為、たった一つの特訓を行った。
それは模擬戦だ。
戦い、反省し、次の模擬戦に活かす。それを延々と繰り返す。彼らにとっては少しキツかったかもしれないが、なんとかついてきてくれた。
そしてその三日後の朝。今日はある事を行う予定だ。その為にカルデアにいる全員が管制室へと集まっている。
「英霊か……生で見るのは初めてだな。」
「マシュ嬢もデミ・サーヴァントになったけど、やっぱりそれとは違うよな。」
「楽しみではあるけど、誰が呼ばれるのかはちょっと不安ね。」
カルデアの職員がザワザワと話しているようだが、もうすぐ静かになるだろう。時間通りであれば、な。
「な、なんか、きき、緊張しますね……」
いつもは陽気なはずの藤丸。しかし、今回ばかりは緊張からか、声がどもってしまっている。
「落ち着いてください、先輩。先輩でなくとも誰でも緊張してしまいますから。」
「それ、よくわかんない。」
謎のフォローをするマシュに呆れたような声で返す彼であったが、少しばかり気持ちがほぐれたような気がする。
さて、そろそろ現状を伝えておこう。
この場では今、英霊召喚が行われようとしていた。それを今日に予定したのは実は俺だ。そもそも、英霊を召喚するというのは最初から決まっていたのだが、一体いつするのかを決めかねていた。
そこで俺は七日という猶予を考えた時、どうしても今日でないと色々と都合が悪いとオルガマリーに直接申し出たところ、あっさりと承諾してくれた。
そして現在、管制室では藤丸とマシュ、そして俺という戦闘組三人はド真ん中に立たされており、全員の視線を集めている。ロマニは何人かの部下ともに部屋の壁際に待機している。何が起こっても対処できるようにするためだ。
ただ、唯一オルガマリーが来ていない。他の職員はほぼ全員集まっているにも関わらず。
彼女もこの英霊召喚に立ち会う予定であったはずなのに。
「ふ、古崖さん。一体いつ始まるんですか? 僕、緊張のしすぎでトイレに行きたくなっちゃいました〜……。」
「お前は子供か。そんなの事前に済ませとけ。」
「だって……」
「だってもクソもあるか。
せめて時間が過ぎてもオルガマリーが来なかった時に行け。そうすりゃあ多少言い訳が……」
その時、ドアを思いっきり開ける音が部屋に響く。
皆の視線はそのドアを開けた人物へと集まり、藤丸は『まじか、トイレ行きそこなった』と言わんばかりの表情をする。
「全員集まってますね?」
「ああ、あとはお前らだけだ。」
時間ギリギリぴったり。オルガマリーと彼女が引き連れた何人かの職員で、ようやく職員全員が集まる。
「一体何してたんだ?」
「触媒を探していました。強力な英霊を手に入れる為に、と思っていましたが、あいにく一つもありませんでした。」
堂々と歩き、俺たちに近づきながら質問に答える。
なるほど、だから職員を引き連れていたのか。そいつらで探し物をしていた、と。
しかし、堂々と言うことではない。
「触媒は事前に用意していた。けれど、誰かが処分したようね。」
「おそらく、レフじゃねえか? 共犯者がいなければの話だけど。」
後半部分だけを小さな声で、オルガマリーだけに聞こえるように言う。共犯者が本当にいた場合、聞かせたくないし。
「それを探すのはまた別の機会です。」
まあ、そうだな。今回は別の目的があるし。
「ところで、何故全員を集めたのですか?」
何故この質問が出たか。それは俺が原因だ。オルガマリーに英霊召喚の日にちを相談した時、カルデア全員を集めてくれとも頼んでおいた。
「うーん……歓迎会を兼ねてるのかな。」
「は?」
俺の答えに不満なのか、眉をひそめ、俺を睨んでくる。
けど、俺は顔色一つ変えずに話を進める。
「だってほら、これから一緒に戦っていく仲間なんだし、全員に顔合わせぐらいはしといた方がいいだろ? 本格的なやつは後にしといても、やっぱ紹介しなくてはいけないらしい。」
「らしいって……貴方が提案したのでは?」
「違う違う。俺は伝えただけで、提案したのは藤丸だ。」
親指を後ろにいる藤丸を指す。その彼は申し訳なさそうに、後頭部を手でさすりながら笑う。
「いや〜……。すみません所長。少し見当違いだとは思うんですけど、やっぱりこうしなきゃいけないと思うんですよ。」
「ええ、そうね。たしかにこの状況に相応しくない考えね。」
それを聞いて、がっくしと効果音がつきそうなほど頭が項垂れて腕もだらんとさせる。顔は見えないが、おそらくこれは泣いているな。ガチじゃないギャグの方で。
「……しかし、貴方の考えも分からなくもありません。」
そしてこの言葉で、次の瞬間藤丸は期待の目を彼女に向ける。
切り替えが早い早い。
「それじゃあ!」
「ですが、今回だけよ。次からわざわざ召喚の度に職員達を集合させる訳にもいかないわ。」
普通はそうだろう。むしろ、今回だけでも許してもらえただけでも感謝すべきだ。
「それで十分です。これで俺も全員の顔を見れますので。
ありがとうございます。」
……ああ、今の言葉で理解した。彼の真意を。
藤丸は今から迎える仲間だけではない。自身のためにも今いる仲間を集めたのか。
「礼はいらないわ。それよりも立香、そろそろ始めてちょうだい。時間を無駄にはできないから。」
「は、はい!」
オルガマリーの命令を受けた彼は事前に用意された召喚陣へと歩く。
この召喚陣はどうやら、マシュの盾を使ったものらしく、これを使えばどんな英霊でも召喚できるとか。流石に神を召喚なんていうことは無理だと思うけど。
……無理だよね?
「すーっ、はぁーー……」
大きく深呼吸をする藤丸は体を召喚陣を向け……てはおらず、むしろ背にして、ここに集まる全員に顔を向ける。
「まず、皆さん!
集まっていただいてありがとうございます!」
最初の行動は大きなお辞儀。日本人特有の行動であるが、それでも彼としては関係ないのだろう。
数秒頭を下げ、次に顔を上げると一人一人の目を見ながら演説でもするかのように言葉を続ける。
「今回ここに集まってきてもらったの目的は本来、僕達の仲間となるサーヴァントを迎え入れるためでしたが、もう一つあります! それは僕自身が皆さんと、これから特異点を解決するために戦う仲間として挨拶をするためです。
なし崩し的に、僕はマスターとなり、前線を任される身になりました。おそらく、いや確実に、こんな素人に戦わせるなんて不安だと思うでしょう。
けど、それでも言います。
必ず人類を未来を取り戻してみせます! ですから、共に戦う仲間としてどうかよろしくお願いします!」
最後にもう一度、藤丸は深く頭を下げる。
……誰が叩いたか、最初は一つの拍手だった。
彼の熱意のこもった言葉に心を打たれ、無意識に動いてしまったのか。けれども、それは一人が二人、二人が三人と波紋のように広がり、いつしか全員が拍手をしていた。
藤丸を少なからず認めたということだろう。これには当の本人である彼も呆然とするしかない。
「やるじゃねえか、藤丸。」
「創太さ、ん……」
「こりゃあ、俺も負けてられないな。
んっん!」
藤丸の前に出て咳払いを一つすると、あれだけの拍手が見事に止まる。
「皆、初めまして。途中から入ってきた古崖創太だ。
といっても、言いたいことはほとんど藤丸に言われちまったんだが……」
さて、でしゃばったはいいものの何を言うか。
身長低いから全員の目を見れないのが残念だが、仕方ない。熱い言葉を後ろにも届かせてやろう。
「今、俺たちは人類史上かつてない壁に挑もうとしている。
困難で壮絶な戦いになるだろう。とてつもない責任が負わされるであろう。
けれども、人類史上初なんてのは歴史上にいくつもある。それが少し難しくなったぐらいだ!
人理定礎復元がなんぼのもんだ! 俺たちが人類初の偉業を成し遂げてやろう!」
最後は拳を高く突き上げ、皆もそれに乗って『おー!!』と言い拳を突き上げる。俺も仲間と認めてもらえたな。
「ほら、次はマシュだぞ。」
「え!? わ、私ですか!?」
「当たり前だ。レイシフト組は残りお前だけだ。」
俺も言っちゃったし、マシュにも言ってもらわないと示しがつかない。
「え、えーと、で、デミ・サーヴァントとして、ですがマスターと共に頑張りましゅ!」
ああ、噛んだな。
トリという大事な場面でまさかの噛むという事態に本人は慌てふためき、周りは笑う。最後の最後まで失態をやらかしてしまったマシュはこれまでになく頰を赤らめる。
しかし、結束は固まっただろう。むしろ最後の出来事があったからか。どちらにせよ、気持ちは一つになった。これからの特異点に挑む覚悟はできただろう。
今後の方針についてです。別作品を書くか、それともこのままで行くかを答えてください。どれも今のオリ主が引き続き主人公となります。
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fgoストーリーで進んでほしい。
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プリヤの世界に行ってほしい。
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月の聖杯戦争に行ってほしい。
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ステイナイトのリメイクを作ってほしい。
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死ね!このまま打ち切りになりやがれ!()