オリ主と藤丸立香の人理定礎復元   作:コガイ

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どうも、前書きで嘘をつく作者です。

とうとう四章が配信されましたね。私はストーリーをゆっくり進めていくタイプなので、まだ序盤ですが、ガチャとストーリー見るなり、なんかアレと関係してそうな感じがします。コラボの復刻版が終わったからかな?

ここの本編はとうとう一章に突入!果たして原作とはどのような差異が出てくるのか!がっつり弄るのか、本筋は変えないでいくのかはまだ決めかねてます。


第一章・旗を掲げよ
開始・強襲


 最後のトレーニングから一日経ち、現在は朝の九時頃。

 レイシフトのメンバーである俺、藤丸、マシュ、そして小次郎は管制室へと集合していた。他にも司令塔であるオルガマリーやドクター、その他サポートしてくれる職員達もいる。しかし、管制室を見てみると、まだ爆破事件の爪痕が残っている。壊れているコフィンもあるし、完全復旧は遠そうだ。

 今日これから行われるのは第一特異点、フランスの百年戦争へのレイシフト。世界を救うための第一歩が今、始まろうとしている。

 緊張の糸が部屋中に張り巡らされ、その雰囲気に慣れてないのか、藤丸はカチカチに固まっている。

 

「おい大丈夫か?」

「ぜ、ぜぜぜ、全然へへへ平気、じゃ、なななないです。」

「先輩、落ち着いてください。こんな時は深呼吸です。私の掛け声に合わせて一緒にやりましょう。

 せーの、ひっ、ひっ」

「同じネタをやるな。」

「フォフォウ。」

 

 止められたマシュは『はて?』と、不思議そうな顔で首を傾げてくる。おい、まさかその呼吸の仕方が普通だと思ってないだろうな? 

 誰だ、こんな純粋な子に変な知識を吹き込んだのは! 

 

「マスター殿、そこの可憐な少女の気が立っているが無視しても構わぬのか?」

「ああ、大丈夫ですよ。あの人は輪に入れなくて寂しいだけですから。」

「そ、そんな事思ってないわよ!」

 

 オルガマリーの話になった途端、先ほどまでの緊急はどこか行ったかのように弄り出す。こんな状況でも弄られるのは変わらないのか。

 

「ふむ、いわゆるつんでれというやつか。素直に言葉を伝えられないとはなんとも可愛らしいではないか。」

「どこからそんな知識を仕入れてんだ?」

「ほらほら、皆んな静かにして。所長の話が終わらないとレイシフトにも行けないんだから。」

 

 ドクターの言葉で全員しょうがないと行った感じで、一斉に静かになりオルガマリーに視線を集める。

 

「コ、コホン。レイシフトメンバー諸君、今回の特異点への目的を改めて説明します。

 まず、最優先事項は聖杯の回収です。調査の結果、冬木と同じく特異点は聖杯によって成り立っていると判明しました。さらに聖杯は願望機でありながら多大な魔力も溜め込んでおり、今後の戦力強化にもなり得ます。

 その為、破壊をしない事はもちろん、出来るだけその力を使わないように回収、および帰還してください。」

 

 冬木での事を考えているのか、俺を睨みながらも説明をしていく。

 しかし、あの時はオルガマリーを救うために仕方なくやった事だし、そんな怒ることでもないと思う。

 

「次に、レイシフトをしてからの行動ですが、拠点の確保です。霊脈を探し確保できれば、その霊脈を使ってこちらから物資を補給できます。なので、最初にそれを行うように。」

 

 拠点を構えるのは大事なことだ。確実に休める場所があるっていうのは精神の負担が軽くなるし、なによりも疲れを癒せる。

 

「そこからは現地調査です。聖杯があるということはそこに必ず歪みができるはずです。百年戦争での歪みを見つけて、それを解決すれば自ずと聖杯へと辿り着くはずでしょう。」

 

 これで目的とそれに至るまでの行動ははっきりとした。しかし、

 

「これはあくまでも人理修復のために特異点を元に戻す作業です。決して目的以外の事はしないように。」

 

 彼女ははっきりと、誰かが困っていても、死にそうになっても助けるなと言った。

 確かにその考えは正しいだろう。何もないメリットに多大なリスクを負う必要はない。失敗など許されないのに、リスクを増やしてられない。死んだらそこで終わり。だから、彼女はそう言うのだろう。

 

「……けど、目的を達成する助けになるなら、余計な事はしてもいいんですよね?」

 

 それでも、藤丸はその意見に反抗するかのように尋ねる。

 

「貴方にその判断ができると? いや、そもそもそんな余計な事をする余力が貴方にはあるの?」

「っ……そ、それは」

「なあ、藤丸。」

 

 諦め切れないようだが、それに待ったをかける。

 

「その心を持っているのは良い事だ。けど、我慢する事っていうのも必要になってくる。だからもしその時が来た時、お前は選択しなきゃならない。

 だから、な?」

「……分かり、ました。」

 

 理解してくれたものの、その顔は拗ねた子供そのものだ。けど、納得しろとは言わない。俺だって何度もその選択をしてきたのだから。

 

「分かってくれたようね。

 これで作戦の確認を終わります。レイシフトメンバーは所定の位置で準備するように。

 ……それでは、今から人理を掛けた戦争を開始します!」

 

 その号令とともに周りが騒がしくなる。レイシフトの準備を始めるためだろう。それともに俺たちもカルデアスの前に設置されたコフィンへとそれぞれ向かう。

 ……一人、不機嫌な顔だが。

 

「お、コフィンの中はクッションになってるみたいだな。そりゃそうか、硬い床で寝るとか居心地悪いもんな。」

 

 そんな事を尻目に、わざとらしく気にしていないようにコフィンの感想を言う。

 前は緊急だったから、コフィン無しでレイシフトしたけど、これなら、わざわざ自分の魔力を消費する事はなくなるな。

 

「と、その前に。」

 

 そういえばだが所長たちに伝え損ねた事があったな。

 

「オルガマリー、ちょっといいか?」

「レイシフト直前に何の用?」

「伝え忘れた事があってな、すぐ済むからそんな怖い顔するな。

 でだ、こいつなんだが……」

 

 羽織っているローブの内ポケットからある写真をオルガマリーに渡す。

 

「これは?」

「ある友人だ。ここにくると思うからそんときは通して、ついでにレイシフトできるようにしてやってくれ。」

「まさか、前に連絡をしていた……?」

「ああ。頼まれてくれるよな?」

「……貴方が言う程ですから信じてよい人物でしょうね。分かったわ。なるべく早く手配するわ。」

「ありがとな。」

 

 手をヒラヒラと振りながら、再びコフィンへと向かう。

 

「全員コフィンに入りました。」

「バイタルは?」

「身体、精神ともに異常ありません!」

「よし、シバを起動してくれ!」

 

 とうとう、フランスへと赴く時が来た。

 彼女が生きた時代、生きた場所。そう思うだけで心臓の鼓動が早くなる。

 

「全コフィン、オールグリーン。レイシフト成功率九十九点九八パーセント!」

「行くよ、レイシフト!」

 

 その瞬間、意識が身体を置いていく。前にも感じたこれは少し違和感を覚える。

 しかし、俺の感情も御構い無しにレイシフトされる。向かうは彼女がいるはずのフランスへ……

 

 ーーーーー

 

「つ、ついたのか?」

 

 レイシフトが完了した直後、藤丸はあまりにもすんなり行き過ぎた事に違和感を覚え、つい疑問を口にしてしまう。前回のレイシフトではドタバタして流れるように冬木へとレイシフトされたらしいので、何かを言う余裕すらなかったのだろう。

 しかし、今回は準備万端で余裕のあるレイシフトををしたからか、初めて感覚に意識を向ける事ができていた。

 

「はい。無事つきましたよ、先輩。」

 

 そう声をかけたのはマシュだ。彼女は既に盾を持ち、戦闘用の霊衣に着替えている。もちろん俺と小次郎もいる。

 

「マシュ、創太さん、小次郎さん。」

「ふむ、ここがフランスとやらか。日本とはまた違った自然の豊かさがあるな。」

「そうだな。あっちの自然は山ばっかりだし。」

「フォウ、フォウ!」

「フォ、フォウさん!?」

 

 しかし、突然どこから飛び出したやら。藤丸の顔面にフォウが飛びつく。

 

「うわっ! ちょ、ちょっと!」

 

 その勢いのまま、藤丸はもふもふに押されて倒れてしまう。

 

「だ、大丈夫ですか! 先輩!」

「いてて……大丈夫……だと思う。」

 

 顔にへばりついた白いリスのようなフォウをつまみ上げながらも起き上がる。

 

「しっかし、いつの間にフォウは来たんだ?」

「おそらくは先輩か私、もしくは創太さんのどれかのコフィンに紛れ込んでいたのでしょう。」

「へぇ〜。もしかしたら背の小さい創太さんのなら隙間があるの空いてそうだし、ない話じゃあないかな?」

「そうだとしたら、本当にいつの間に潜り込んだ? コフィンの中は一応確認していた筈なんだが……」

 

 謎が謎を呼び、何故という単語が終わらない。この不思議な生物は一体何者なんだ? 

 

「まあ、ひとまずは置いておくか。」

「はい。おそらくは特異点から帰る時は一緒でしょうから、みなさんが無事に帰れば、フォウさんも一緒に帰れるでしょう。」

「ならフォウが帰れるように、この特異点を無事に解決しましょう!」

「ああ。さて、カルデアからの通信が来る筈なんだが、少し遅いな。」

 

 向こうで何かあったのだろうか。不安に思ってしまうが仕方ない。とりあえず、周りを見てみよう。そう思って、意識を周りに広げるが……

 

「……小次郎、感想は?」

「人や生き物、生物といった類がおらぬな。あそこに黒い煙が上っているのも気になる。」

 

 大方、俺と同じか。

 周りは緑豊かな草原だ。しかし、生物らしき者は見当たらない。さらには匂いもすこし気になる。まるで、何かを焼いたような匂いがする。

 

「ふ、古崖さん?」

「藤丸、マシュ。気を抜くなよ。もしかしたら、いきなり強敵との戦闘になるかも知れない。」

「それはなんで……」

「あー、映像はひとまず大丈夫だね。

 皆んな、聞こえてる?」

 

 藤丸が疑問を言いきる前に、タイミング悪く通信が入る。どうやらホログラム式のようで、ドクターの上半身が目の前に立体となって現れた。

 

「ロマニか。ああ、聞こえてる。」

「全員いるね?」

「はい! いますよ!」

「なら、所長からの指示があるから代わるね。」

 

 そういうと一旦映像は消え、再び現れる。今度はオルガマリーを映していた。

 

「全員いるようね。なら、早速指示を出します。

 まず、そこから東に歩くと霊脈があります。その間には街があるはずなので、まずはそこへ向かうこと。および、街の人たちから情報を集めてください。」

「了解。」

「了解です。」

「……分かりました。」

 

 皆返事をするものの、藤丸だけは何処か不機嫌だった。

 当然だろう。レイシフト前にあれだけ自身の考えを否定されたんだ。しかも、その考えが正しいはずなのに。その相手であるオルガマリーには少し嫌悪を感じるのだろう。

 それでも、今は前へと進まなければならない。どれだけギクシャクしていようと、そんな暇はないのだから。

 まあそれでも、いざという時にそれが悪影響なるかもしれないから、何処かのタイミングでフォローをしよう。

 

「よし、着いたぞ。」

 

 と、考えていると早速第一の街へと辿り着いた。

 

「なら、誰でもいいから接触を図ってちょうだい。」

「ですが……」

 

 しかし、そこには問題があった。

 

「どうかしましたか、マシュ?」

「すみません所長、それが……」

「街が崩壊している。」

 

 目の前に広がるのは街であったであろう()()だ。焼け焦げた跡がある瓦礫や、穴が空きまくっている城壁。そして……多くの死体があった。

 

「ど、どういうことよ!?」

「言った筈だ。ここはまるで戦場の跡地のように全てが崩れ去っている。おそらく、生存者は……いない。」

 

 チッ、悪い予感っていうのはいつも当たってしまう。しかも、俺が一番見たくない光景を目の当たりにしちまうのは、何かの因果を感じる。

 

「……所長、確かに彼のいう通りその街に生存反応はありません。」

「おかしいわ……この時期は休戦のはずなのに……まさか、イングランド側が? いやでも……」

「え? マシュ、所長が言ってる休戦とかってどういう意味? 戦争だから、戦っていた跡があったのは不思議じゃないよね?」

 

 オルガマリーが通信越しに小声で言っている内容が気になったのかマシュに聞く。

 

「先輩、百年戦争というのは百年間ずっと戦っていたわけではなく、合間に休戦という物がありました。一四三一年は本来、休戦中であったはずなので、所長が疑問を抱いているのはそこに関してだと思います。」

「へぇ〜、そうなんだ。マシュって物知りなんだね!」

「い、いえ……そんなことない、と思います。」

 

 マシュは最後に照れながらも答える。

 しかし、俺はそれ尻目に瓦礫の焼け焦げた跡を調べる。

 

「創太さん、どうかしましたか?」

「魔力だ。」

「え?」

「魔力の残滓が残っている。これは魔術師の仕業か……もしくはサーヴァントか、だ。」

 

 これは本来ありえないことだ。今のフランスに魔術を使えるやつなんてのは聞いた事がないし、だとすれば特異点となる歪みから発生した結果だろう。もしくは、この時代で錬金術に手を染めたあいつのせいか。

 ともかく、謎がまた増えたということだ。

 

「そ、そんな事までわかるのかい?」

「まあな。」

「え? ドクター、これって魔術師なら誰でも分かるんじゃないんですか?」

「いやいや! そんなことまでは分からないよ! 残滓と言っても僅かだから、普通は判断がつかないんだ。」

「なら、なんで創太さんはできるんですか?」

「俺は力を専門にしてるからな。魔力もその一種で、そういう判断もできるってことだ。」

 

 細かく説明していると長くなりそうなので、あえて簡潔に説明をする。

 しかし、街が崩壊しているとなると他のところもやられている可能性もある。さっき黒い煙も見えたし、おそらくはそこの街もここと同じ状態だろう。このまましらみ潰しに近くの街を転々としても人に会えるかどうか。

 

「……待って、近くに生体反応がある! そこから北に行ったところだ。」

「そりゃあ朗報だな。早速そこに行ってみよう。情報っていうのは人から聞く方がよっぽど効率が良い。」

「よろしく頼むよ。」

 

 と言うわけで、ドクターからの情報を元に北へと移動する俺たち。途中で殺気立った狼やら猪やらを倒しながらも先へと進む。

 

「な、なんで襲われてばっかりなんですか……。」

「何かしら異常があったからだろう。おそらくあいつらは防衛本能から興奮してんだ。縄張りから追い出されたとか、同族が殺されたとか、そういう理由からな。」

「となれば、ますます雲行きがあやしい。流石に人間がそれをしているわけがなかろう。」

「ああ、何はともあれ情報が欲しい……と、そろそろ見えてきたな。」

 

 俺たちの向かう先、そこには先程とは違い規模は小さいものの、しっかりとした城壁に囲まれた街が見える。

 襲撃の跡もなさそうだし、人がいると判断して良さそうだ。

 

「にしても、やっぱり見覚えがあるな。あそこの木の並びとか、川の位置とか……」

「古崖さん?」

「……あ、いやなんでもない。」

 

 と、どうやら無意識に喋っていたようだ。

 俺はこの時代のこの景色を見たことがない。けれども、どうも既視感がある。何がどこにあるのかが分かる。土地勘に関しては完全に頭が理解していた。

 やはり、この()が覚えているのだろう。

 

「着いたようね。とりあえず、そこの門番に接触、及び街の中に通してくれるように説得しなさい。」

「りょーかい。」

「で、誰が行くんですか?」

 

 そう藤丸が言って、皆の顔を見渡してみる。しかし、それに快く反応する者はおらず、互いに目を合わせる。

 

「私、フランス語は少ししか……」

「拙者は聖杯からの知識がなければ、日本の言葉しか話せぬ身よ。」

「フォウ。」

「……た、頼むマシュ!」

 

 おい、俺まだ何も言ってないのに無視されたぞ。

 

「わ、分かりました。マシュ・キリエライト、行き……」

「そんなに力まなくても大丈夫よ。レイシフトした際に貴方達の身に翻訳機能がついている筈だから。」

「それを早く言ってくださいよ!」

 

 ……まあ、いいか。どうやら、俺の出番はなさそうだし。

 

「じゃ、じゃあ俺から行きますよ。」

 

 そう言って藤丸は門番へと近づき接触を試みる。どうやら、門番は二人いるようだ。

 

「ハーイ、エクスキューズミー? ニホンゴ、ワカリマス?」

 

 駄目だ! 藤丸は混乱している! 

 

「馬鹿か! 翻訳できてるって言ってんのに何で英語っぽくしてんだよ! というか相手はフランス人だぞ!」

「相手が外国人だとついついやっちゃうんですよ! そもそもここイギリスの近くなんだから英語だって通じるはずです!」

 

 やべぇ。混乱しすぎで何言ってんのかよくわかんねえ。いや分かるけども分からん。

 

「双方待たれよ。口喧嘩は良いが、相手方の様子が変だ。」

 

 小次郎に言われて、門番に目を向けると、その藤丸の発した言葉に対して、何が悪かったのやら相手は警戒をしだす

 

「あ、あれ? 通じてなかった?」

「おそらく。相手の言葉も聞き取れませんね。」

 

 門番の二人は何かを言い合っているようだが、マシュの言う通り少なくとも日本語には聞こえない。

 

「オルガマリー?」

「わ、私だって知らないわよ! ロマニ、翻訳機能は!」

「……え? 翻訳機能?」

 

 あ、このパターンは。

 

「おいこらロマニ!」

「ご、ごめん! すぐにプログラムを起動させるよ!」

「そのすぐに、でこの戦闘を回避できるのか?」

「時間的に無理!」

「だろうな!」

 

 しっかりしとけよ! こんなことで無駄に時間食ってる暇ないんだからさ! 

 

「ど、どうするんですか!」

「マシュ! とにかく迎撃するしかない! 峰打ちで……」

 

 こうなった以上、戦闘は免れないと確信したのか迅速に指示を出す藤丸。けれども、俺は別の行動をとる。

 

「まあ、一旦落ち着け。」

 

 今度は俺が門番の二人に話しかける。ここで、貿易で培った話術が活きるとはな。

 

「古崖さん? ……が、フランス語ペラペラ!?」

「いいえ。確かにあれはフランス語のように聞こえますが……なんというか少し違います。」

 

 それはそうだろう。俺の話している言葉はフランス語であってフランス語ではない。少し別の言葉なのだから。

 

「彼は貿易商でその生業から様々な国を巡っているから、フランス語自体を喋れる事はおかしくはないはずよ。」

「それは……そうですが。」

「おい、話は終わったぞ。何とか中には入れてもらえるようにはした。」

「ほ、本当ですか?」

「ああ。」

「ちなみに何と言って通してもらえたのでしょうか。」

「日の本から遣わされた者だとか、何とか言ってな。王様に会いに行くためにここまで来たけど、休める場所が欲しい、とかでっち上げた。」

 

 今の日本は確か室町ぐらいで外への交流に割く力はないはず。だが、逆に言えばどの国にもあまり日本の事情を知らないから、俺の言葉を不自然だと思う奴はいないだろう。

 

「……あと、少しだけだが情報を掴んだ。」

「それは?」

 

 オルガマリーにその内容を聞かれ、少しの沈黙を作ってしまう。

 これは俺にとって衝撃だった。だからこそ、話すのにも戸惑ってしまう。しかし、いつまでも黙っているのは動揺を悟られてしまう。

 俺は決心して話を続ける。

 

「ジャンヌ・ダルクが……魔女になって復活したらしい……と。」

「ええ!?」

「ま、魔女!?」

 

 その情報に皆が驚く。

 

「ちょっと待ってくださいよ! ジャンヌ・ダルクって、あのジャンヌ・ダルクですよね? 聖女って呼ばれてる……」

「ええ。確かにジャンヌ・ダルクは聖女です。しかし、処刑された時は……」

 

 魔女、その言葉を出す事にマシュはためらった。

 

「まあ、魔女と責められ立てて処刑されたのは間違いない。彼女がそうでなかったとしても。」

 

 特異点というぐらいだから、ジャンヌ・ダルクが活躍している最中に何かあったと思っていたが、彼女が死んだ後に何かあったみたいだな。

 

「もし、それに特異点となる理由があるとしたら、聖杯を使って生き延び、今度は自身が魔女となって復讐しよう。というのが一番それらしい。」

 

 あって欲しくないことではあるが、可能性としては一番高い。もしくは……

 

「私もそれに近い考えだけど、今はまだ予測でしかないわ。今後はそれについて調べる事が主な目的よ。

 立香、マシュ、創太。他の住人にも話を聞きなさい。」

「分かりました!」

「了解です。」

 

 名前を呼ばれた内の二人は命令に応えるものの、俺だけはそれに反応を示さなかった。

 

「ちょっと、創太? 話を聞いてましたか?」

 

 それよりももっと重要で、かつ危険な事に意識を向けていたからだ。

 

「……聞こえる。」

「ならば、街の中に入って……」

「違う、何が遠くから聞こえる。」

 

 重い羽音、複数で一つ一つの音の間隔は長い。少なくともただの鳥ではない。それよりも大きい何か。しかもこちらに向かってきている。

 

「お前ら、戦闘準備だ。」

「え? 敵なんてどこにいるんですか?」

 

 藤丸とマシュは戸惑い、小次郎のみが警戒態勢に入る。

 

「……あ! 生体反応、複数だ! しかも凄い速さで迫ってきてる! 創太さんのいう通り戦闘準備を!」

「わ、分かりました!」

 

 近づいてくる敵に段々と周りが騒がしくなっていく。

 

「敵襲! 敵襲だ!」

 

 城壁の上から警告の声が出される。おそらくは偵察兵か何かだろう。その声によってさらに街中までもが騒ぐ。

 

「藤丸、マシュ。撃退もそうだが、街も守れよ。」

「それくらいは言われなくてもわかってますよ!」

 

 余計なお節介だったか。まあ、それを聞けただけで良しとするか。

 遠くから聞こえていた羽音は近づき、それとともに遠くの影が大きくなっていく。あの形は……

 

「ド、ドラゴン……? ドラゴンだ!」

 

 若干一名、キラキラ目を輝かせて興奮気味だが、それは間違いだ。

 

「いいえ! あれはワイバーンです! ドラゴンの亜種ですが、その強さは侮れません!」

「ほう、ついには燕を超えて竜を斬ることになるか。」

 

 小次郎、お前の技は多分燕返しじゃなくて竜返しとかそこら辺に変えた方が良いと思う。三方向同時ってそれ燕に出す技じゃねえし。じゃなくて、

 

「あいつら、城壁を上から超えるつもりか!」

「これじゃあ攻撃が届かない!」

 

 接近してきたワイバーンは俺たちのことなぞ御構い無しに、頭上を飛び越そうとする。

 俺たちは眼中にないって事だろうが、そうはいかない。

 

「風よ、叩き落とせ!」

 

 風を使い、地面に叩きつけるほどの強い下降気流を発生させ、ワイバーン達を引きずり落とす。これで街に行かせることは阻止できたし、こっちの攻撃も届く! 

 

「数は六体! 少し多いがやるぞ!」

「はい! マシュ、小次郎さん、行ってくれ!」

「了解!」

「承知!」

 

 掛け声とともに、マシュ、小次郎、俺の三人はまとまってワイバーン達と戦う。個々としてではなく集団として戦うことで、こちらの数が少なかろうと、一体だけフリーに動ける、という事態を避ける。

 

「Gyaoーー!!」

 

 しかし、そのワイバーン達の行動は驚愕だった。相手は知恵あるドラゴンの亜種とはいえ、野生の本能で生きている。例えどれだけの知力があろうと、それは個体としての物だ。断じて協力するようなものではない。

 

「なっ!!」

 

 その予想を裏切り、敵はまるで他を生かすかのような動きを取る。

 俺たちの作戦に対して、ワイバーン達は三体を守るようにして他の三体がそれを取り囲む。そしてその一体はすぐさま飛び上ろうとしていた。

 

「一体、上昇しています! ですが近づけません! このままではまた街に……!」

「他の三体が邪魔をしてくるなんて……なんでこんなに統率が取れているのよ! 

 

 このままでは……! 

 

「マシュ、小次郎! その三体に攻撃! あとの一体はなんとかする!」

 

 その指示通り二人は敵の前衛に攻撃を仕掛ける。マシュは盾で防御しながら、小次郎は刀で受け流しながらも比較的柔らかい部分を斬る。

 

「大地よ!」

 

 そして俺は、以前にも使った魔術を発動させる。土を腕に変えて、自由自在に操る魔術。

 

「掴め!」

 

 それを使い、飛んでいくワイバーンの真下からまるで生えてくるように土の腕を生成し、足を掴む。だけではなく、

 

「もう一回、引き摺り下ろす!」

 

 今度は腕を大地に戻して、掴んだワイバーンを地に固定させる。これでもう飛ぶことはできないだろう。

 

「流石です、古崖さん!」

「まだだ! 残りの三体はまだ動ける! 余裕を作らせたらすぐ飛んでいくぞ!」

 

 俺が捕縛したのは三体だ。残りの三体はまだ自由に飛行でき、さっきのように協力してきたら厄介だ。とは言え、三体三ならそういう状況はそうありえないはずだ。

 

「っ……! 攻撃が重い……ですが!」

 

 人とは比べ物にならないワイバーンの攻撃。尻尾や爪を振り回し、さらには翼までも攻撃に使う。しかし、それでも一つ一つは単調で、異常なのな先程のような団体としての動きだけだ。

 だからこそ、マシュはその全てを受け止める。最前線に張り付き、一歩も下がることはない。

 

「小次郎さん、一体ずつ頼みます!」

「承知した。」

 

 そのマシュを盾に、藤丸は小次郎への指示を出す。

 

「小次郎! 援護するから左から倒せ!」

 

 俺もそれに負けじと、標的を示す。小次郎も俺の言った標的に攻撃をし、そして攻撃を躱す。

 彼の持つ技術は対人のソレではあるが、ワイバーン相手でも真っ向勝負ができている。攻撃を右へ左へと受け流し、足や翼と言った移動能力のある部位に損傷を与えていく。俺もそれに合わせて魔弾を打ち込んだり、泥で動きを鈍らせていく。

 そして、相手の動きが止まったところで首を狙う! 

 これならば……! 

 

「なっ……!」

 

 だが、またもやワイバーンは予想外の動きをする。いや、()()()()()()()

 今度は小次郎のトドメの一撃を避けた。それだけでは予想外でもなんでもない。移動能力が低下していようと、力を振り絞った精神論で避けた、なんてのはざらにある。

 問題はその後。彼の眼前には火球が迫っていた。後ろのワイバーン、俺が捕縛しておいた奴が撃っていた物だ。

 偶然ではない。そうなるように誘い込まれていたんだ。こちらが各個撃破をしようとした時に、狙われた一体があえて攻撃を受けて誘導し、後ろのやつと小次郎が一直線になるようにしてタイミングを見計らい、先のようになった。

 これはあまりにも異常だ。自己犠牲を厭わない軍隊のような統率力、そしてそれをやろうとするワイバーンの知恵と精神力。特異点というのはこんな強敵がそこら中にいるのか?

 

「……なんて、考えてる場合じゃねえな! 壁よ!」

 

 その火球を防ぐために、俺は魔力の壁を小次郎の前に作る。火球がそれにぶつかる瞬間、激しく爆発し、モロに喰らえば火傷どころか骨まで焦がされそうな一撃であった。

 しかし、奴らの一連の行動はそれだけでは終わらない。

 

「まっず……!」

「っ……仲間を助太刀に行ったか!」

 

 小次郎に狙われていたワイバーンが一瞬の隙で退き、足の爪で後ろの三体の内、一体の仲間にまとわりついた地面を抉り、脱出させやがった! 

 

「小次郎さん! 詰めて!」

「心得た……っ!」

 

 小次郎は藤丸の指示に従うが、退いていたワイバーンに道を塞がれる。

 ああクソ! またさっきみたいに街へ行こうとしてやがる! 

 

「なら俺が……っ!」

 

 彼では無理だと判断し、俺が魔術でまた引き摺り下ろそうとするが、別のワイバーンが噛み付こうとして、それを杖で防ぐ。

 

「すみません! 一体取り残してしまいました……!」

 

 マシュは謝るが、そもそも竜種であるワイバーンを二体相手に引きつける事自体が難問だ。彼女の責任ではない。けれど……! 

 

「こいつ……! 何やっても張り付いてきやがる!」

 

 後退しながら魔術で距離を開けようとしても、何が何でもついてくる。炎だろうと氷だろうと、何を放とうと自分の身なんて御構い無しだ。壁を作ろうにも即興物は一発ぐらいしか耐えられない。

 基本的に俺の魔術は詠唱を必要としないが、それでもまともな魔術はタメが必要だっていうのに! このままでは、街が危ない! 

 小次郎も、マシュも目の前のワイバーンでやっとだ。俺も似たような状況で、唯一動けるのは藤丸と他兵士たちだが……

 

「ま、まずい! どうしたら、どうしたら良いんだ!」

「落ち着きなさいよ! あんた令呪があるでしょう!」

「レイジュってなんですか!?」

 

 初めてのピンチで動揺しすぎている! 兵士たちはそもそも歯が立たない! 実際に動けない二体に攻撃をしてるが、通じていない! どうすればどうすれば……! 

 ヤバイ! ワイバーンが城壁を超える直前じゃねえか! 何か! 何か何か何か何か何か! 

 

 

 

 

 その時、城壁を駆け上がっていく少女の姿が見えた。

 幻影か何かを見たのだと一瞬思ったが、その勘違いは一瞬にして打ち砕かれる。何故ならその少女が手に持った旗の穂先で、城壁上のワイバーンを貫いたのだから。

 

「彼女は……」

「サ、サーヴァント反応あり! 遅れたけど、彼女からサーヴァント反応がある! ……けど、少し弱い?」

「つまり、彼女はサーヴァント……?」

 

 ロマニの通信で、彼女がこの時代の人間ではないことが分かる。誰に召喚され、そしてどんな目的を持つ者なのか。それは分からない。

 しかし、彼女は街を守った。であれば、少なくとも俺達の敵ではないだろう。

 

「同志よ!」

 

 たった一声、それはここにいる敵味方問わず、全員の視線を集める。

 

「あ、貴方は——いやお前は!」

「今はいがみ合う時ではありません! まずは目の前にいる敵を、共に撃ち払うべきです!」

 

 その言葉一つ一つに、自身の内から何かが込み上げる力なのか、それとも精神的な何かなのか。それはこの場にいる全員が感じていることだろう。

 しかし、ただ唯一俺だけは、その声に、その姿に、涙を流してしまう。

 

「さあ、共にこの街を守り抜きましょう!」

「そ、そうだ! 皆んな! やるぞ!」

 

 敵であるかのような視線を送っていた兵士たちはいつの間にか彼女の言葉に鼓舞され、一緒に戦う事を決意し、ワイバーンを攻撃する。

 しかも、先ほどとは違い全く通じなかったはずの剣の刃が、弓から放たれる矢が、竜の鱗を打ち破っていく。

 

「これは一体……」

 

 やがて、状況は逆転していき、ワイバーンがもう二体ほど倒されていくと、残された三体は完全に撤退を始めていった。

 

「逃すな!」

「追うんだ!」

 

 追撃をしようとするものの、ワイバーンは口から放つ火球を地面に叩きつけ土煙を巻き上げて目をくらます。それが晴れた時にはもう逃げていった後だった。

 

「よ、良かった〜……。助かった……。」

 

 安堵の溜息が藤丸の口から一際大きく漏れる。心情としては俺も藤丸と同じだ。あそこで手助けがなかったら、街はどうなっていたことやら。

 

「お疲れ様でした。お怪我などはありませんか?」

 

 と、どうやら今回のヒーローから話しかけてきたようだ。

 青を基調とした僧女と戦士を彷彿させるような鎧と服を着た女性、しかも旗を持っているとなれば真名は自ずと分かる。

 ……そうでなくとも、()()()()()()()()()()

 

「は、はい! 大丈夫です!」

「ありがとうございました。……あの、貴方は?」

「え、えーっと、それは……」

 

 マシュが名前を聞こうとすると、少女は途端に歯切れが悪くなる。

 

「話を聞くのは良いが、周りの目も気にした方が良かろう。」

 

 小次郎がそういうと、藤丸とマシュは周りの兵士たちの様子を見て、そして気づく。

 先ほどまでの協力が嘘のように、今は謎の少女を怪訝な目で見ている事に。

 

「……場所を変えよう。ここにいたら問題になりそうだ。」

「ならば、ついてきてください。話はそこで。」

 

 少女の案内の元、俺たちはこの場から離れる。

 彼女が一体何なのか、この時代にどういう意味を持つのか。……そして、俺が彼女と出会ったのは何の運命か。答えはまだ先の話だろう。

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