大変遅れまして申し訳ありません!色々と風邪とか風邪とか風邪とかが原因で……言い訳くさいかなこれ。
だってしんどかったし!夏風邪とかふざけんなと思いながら鼻かんでたし!すげぇ咳でたし!
……まあ風邪の事は置いといて。
一章の内容についてはある程度改変しようかなという予定にしています。登場サーヴァントはある程度脱落してもらって、敵の目的をより大きくしていこうと思います。
ジャンヌチャンヲサッサトダシタイナー。
ワイバーンの襲撃を追い返し、オルレアンの聖女らしき……いや、確実にそうである少女との開拓を果たした俺たち。周りの敵視されるような目から場所を離れ、近くの森へと向かい、さらにその奥へと進む。
「ここであれば誰の目にもつかないでしょう。」
ジャンヌ・ダルクの案内の下、木々に囲まれながらも少し開けた場所につく。ここは休息の場としても最適だろう。
目的の場所についたとわかった途端、藤丸は地面に尻を落とす。
「つっかれた〜……」
「立香、貴方は何もしていないわよね?」
「そ、そう言われると……反論、できません……。」
オルガマリーから受けた指摘で肩を落とし、目に分かるほど落ち込む藤丸。
「まあまあ。初めての実践だったんだ。それにしちゃあ指示は飛ばせていた。」
「古崖さ……!」
その目は感動か、尊敬か、それとも感謝か。どれにせよ俺のフォローへと向けられたものだろうが、次の言葉でそれを打ち砕く。
「ただし、ピンチになった時に焦りすぎだ。戦闘の指揮はあくまでも俺じゃなくお前の役割だぞ。頭使う奴がテンパってたら状況が不利になっていくだけだ。」
「ううっ……で、でも! 古崖さんだって本気出し損ねてたじゃないですか! いつもならあんなワイバーンでも勝てるのに!」
「ちち、ちげえよ! あえて手加減して、お前がどう出るかを見極めてただけだし!」
「ウッソだ! めちゃくちゃ焦ってるの見たんですからね!」
こいつ! 自分も焦ってたくせに、人の顔色を見極めてたのか! いつの間にこんな洞察力を身につけやがったんだ!
「あーあ! それだけ人の事見てられたなら、冷静な判断をして欲しかったなー!」
「自分の失態を棚上げしといて……!」
うるせえ! こんなもん意地張り続けなきゃ負けなんですぅー!
「……ぷっ。」
おい誰だ。今笑った奴は。
「ジャンヌさん?」
「す、すみません……フフッ、なんだか微笑ましくなって。お二人は仲が良いんですね。」
「そうなんです。出会ってからの期間は短いですが、私達の間には鋼鉄のように強固な絆が生まれているのです!」
「フォウフォウ!」
ある意味、マシュの言葉に間違いはない。いやそもそも、ある意味がなくても間違いない。そうであるはずなんだが……
「……なんか、言葉に出して言われると恥ずかしいな。」
「あ、ああ。そうだな……」
恥ずかしい……いや、俺はそれ以外の感情を持っていた。何か寂しいような、彼女から
「貴方達、遊ばないで。」
しかし、オルガマリーはそれらの私情を断ち切るかのように、キツイ言葉を俺たちに浴びせる。
ドウモスミマセンデシター。
「まずはそこの貴女、ロマニがサーヴァントと言ったけど、貴女の真名は? 一体何が目的なのかしら? 彼らを救った理由は?」
「……それらはたった一つの言葉だけで答えられます。
私は、私の真名はジャンヌ・ダルクです。」
その真名に俺とオルガマリー以外の全員がまたもや驚く。さきほど悪魔だと言われていたよりも、だ。
しかし、オルガマリーはあえてその事を聞いたのか? 彼女の顔は写真で知っているはずだし、ジアナとジャンヌが同一人物……は少し違うが、ともかく同じ顔だと俺から伝えたし。
「え!? ま、まさかさっき話に出てきた……?」
「魔女となり、この世に再び生を得たという話であったな。」
「それは……」
ジャンヌはその話から目を逸らしてしまう。それが偽物なのか、それとも自身がしてきたことだからなのか。どちらにせよ話を聞かないことには真実は分からないままだ。
「まあ、待て。まずは彼女の話を最後まで聞いてからだ。」
再び俺は彼女と向き合う。
……ダメだ。チラチラと脳裏に記憶がよぎってしまう。意識をしないようにしていたが、どうしてもその事が頭から離れない。
なのに、なのにどうしてそうお前は、
「ジャンヌ・ダルクと言ったな。お前は街の人が言ったような『魔女』なのか?」
自身の内にある複雑な想い、それを外に出す事を堪えながら、あくまでも『ジャンヌ・ダルク』に問いかける。
「いいえ、少なくとも私は街の人達に危害を加えるような事はしていません。」
真勢な眼差し、そこに嘘はない。
少なくとも街を襲ったという『魔女』は彼女ではないだろう。
「分かった。その言葉、信じる。」
「ちょっと創太! 何を勝手に……!」
横槍を入れられそうになったが、アイコンタクトで『ここは信じてくれ』と、オルガマリーに送る。
彼女からしてみれば彼女の言葉に確証はないし、俺はただの私情で動いているようにしか見えないだろう。しかも、実際にそうだ。
けど、俺はそれ抜きでも彼女を信じている。彼女が嘘をつく様を、彼女が真実を伝える様を、俺は知っているから。
「……ええ、信じましょう。ジャンヌ・ダルク、貴方が魔女でない事を。」
「信用していただき、ありがとうございます。」
「まあ、一時的に協力するんだ。少し遅れたが、次は自己紹介をさせてもらおう。
俺は古崖創太、魔術使いだ。立ち位置は……まあ、現地指揮官をやらせてもらってる。」
俺の自己紹介を終えて、次へのバトンタッチをしようと、藤丸と目を合わせる。しかし、彼は首を傾げて何も言わない。
まったく、他の全員はもうすでに理解して、藤丸に視線を集めてるっていうのになんで当の本人は鈍感なんだ。
「え、ええと、なんでみんな注目してくるんですかね……?」
「次がお前の番だからだよ。」
言われて初めて『なるほど!』と手を打ち、やっと自己紹介を始める。
「僕の名前は藤丸立香です! 藤丸の藤はくさかんむりに月にそれから……ええっと……」
「そんなんは言わんでよろしい。」
「あべしっ!」
ツッコミながら、藤丸の後頭部をチョップする。言っておくがこれは暴力ではなくて、一種のコミュニケーションです。決して仲が悪いわけではなく……
「こいつは藤丸立香、人類最後のマスターだ。」
藤丸に任せると話が長引くと判断して、俺が引き続き紹介をしていく。
「で、その二人が藤丸のサーヴァントであるマシュと佐々木小次郎だ。」
「改めて初めましてジャンヌさん。私は
「デミ……サーヴァント……ですか?」
「はい。正規の英霊ではなく、正確に言えば私には英霊が宿っているのですが……事情があってその英霊が誰かなのは分かりません。」
成長したとは言え、やはりその事に負い目を感じてしまっているのか、後半は申し訳なさそうに喋る。
「拙者は佐々木小次郎。……本当は名も無き農民であるが、今はそう呼ばれている。」
「立香にマシュ、小次郎、それに創太ですね。」
……ああ、やはりその呼び方か。似ているけど、確実にそれは違う。あの慣れていないからこそ特別だった呼び方を、お前は口にしないのか。
「……そして、司令塔兼バックアップとしてさっきから通信をしているのが、オルガマリー所長とロマニだ。」
「オルガマリー・アニムスフィアです。暫定とはいえ、貴女を信用しましょう。」
「僕がロマニ・アーキマンです。気軽にロマンと呼んでください。」
「オルガマリーにロマニ……なるほど、夢見がちな人なんですね!」
「褒められたのに全然嬉しくない……」
哀れロマニ。そういう星の下に生まれたんだ。
「自己紹介はそこまでで結構でしょう。」
だがしかし、よよよと泣いているロマニを無慈悲にも無視して、オルガマリーは話を進める。
「次は情報交換です。
ジャンヌ・ダルク、貴方はこのフランスでの異変について何か分かっていますか?」
「すみません、私は何も知りません。
……それどころか、今の私は何故呼ばれたかも分からないのです。」
「英霊の座や聖杯から与えられる知識は一切ないと?」
「はい。聖杯に召喚されたので聖杯戦争が起こっているとだけは理解しているのですが、それ以外の知識はありません。
唯一、言語だけはここが故郷であるおかげでなんとか会話はできています。」
そうか、なら俺を見て何の反応もないのは当然か……いや、それでも寂しいモンは寂しい。それだけは変わらない。
「ただ、ここの騒動で中心となっているのは、私に似た人物……としか。」
「さっきの兵士もそんな事を言っていたわね。魔女として復活したと。」
二人目のジャンヌ・ダルク……か。
それが偽物か、それともなんらかのキッカケでできた本物が復活したのか。何にせよ情報が足りなさすぎる。
「あの、話の途中ですが、少しよろしいですか?」
しかし、ここでジャンヌは何か別の話をしようとする。
「少し貴方達が置かれている状況が分からなくて……最後のマスターやデミ・サーヴァントと、ただの聖杯戦争とは違うような……。」
ああ、そうか。彼女からしてみれば何の知識も持っていないから聖杯戦争として呼ばれたと思っているのだろう。ならば、今後のためにもこちらの現状は伝えるべきだなのだが……
「オルガマリー、どうする?」
「伝えても問題はないと思うわ。むしろ、その事を伝えて協力を仰ぎなさい。サーヴァントといえど彼女は現地人です。その観点も必要だし、純粋な戦力としても十分よ。」
よし、トップの許可は貰った。なら、話してもいいだろう。
「ジャンヌ、実はな……」
俺はこれまでにあった事実を話す。二〇一五年に人類は焼却され、それを修復するために俺たちは動いている事を。そして、ここが特異点であり人理修復のために、特異点の原因を解決しに来た事も。
「そんなことが……」
「だから、一緒に協力してくれませんかジャンヌさん!」
おっと、大事な部分はさらっと盗んでいくなあ、藤丸くん。けども、彼としてはただ懸命に頼んでいるだけで、他意はないだろう。
「……分かりました。未熟ながらも貴方の旗となりましょう、立香。」
その言葉と同時に、藤丸の令呪が赤く光る。どうやら仮契約は済んだようだ。
「あ、ありがとうございます! これからよろしくお願いします!」
「そんなに畏まらなくとも……」
「いやいや! ジャンヌさんは偉大な先人なんですから、敬意を持たないと失礼だと思うんです! ジャンヌさんが構わないと言っても、僕はこれを続けます!」
その姿勢に嘘も冗談もない。これはテコでも動かないというやつか。
確かに藤丸はマシュ以外のほとんどの人に敬語を使っている。最初は日本人が故なのだと思っていたが、ちゃんとした理由はあるみたいだ。
「……分かりました。貴方がそれで良いというなら私は何も言いません。ですが、一言だけ。
私は貴方達が言うような歴史的な人物……聖女ではありません。」
しかし、彼女も自身は偉大ではないと言い張る。
その理由は……彼女の手が血塗れだからだろう。『ジアナ』はそれをずっと気にしていた。それと同じように彼女もきっと——
「さて! そろそろお喋りはここまでにして次の行動に移そうじゃないか。」
私情を断ち切るかのように、俺は話を本題へとむりやり変える。
「次……とは?」
「情報収集に決まってる。街に行って色々と聞き込みをするんだ。けど、もちろんジャンヌはその間街の外で待機だ。その顔は恐怖の対象となっているみたいだからな。」
さっきも顔を見ただけで怯えていた兵士もいたし、しょうがない。
「それは良いのですが、一体どの街に行くつもりですか? 私の記憶が確かならばここから南に……」
「悪いがジャンヌ、その記憶は当てにならないかもしれない。」
彼女の提案をバッサリ切り捨てる。そのせいか、彼女は困惑する。
「ど、どうしてですか?」
「ワイバーンの襲撃でここらの街は壊滅しているところがある。そこの街が必ずしもあるわけじゃない。」
「ならどこに……」
「さっき行った街だ。あそこはワイバーンを追い払ったし、この短い時間に襲撃が来る事もないだろう。」
「ですが、貴方達が私といることはすでに知られています。」
そう、そこが最大の難点だ。あそこの門番達には顔を知られ、さらには魔女とされているジャンヌと一緒に逃げていく姿も見られている。そんな俺たちが再び街へ行けば、彼女の姿が一緒に無くとも敵対するに決まっている。
ならどうするか。
「ところで話は変わるが、オルガマリー、霊脈に行けば物資をこっちに送れるっていう話だったな?」
「ええ。マシュの盾を使えば、後は何処にいても輸送は可能です。」
「創太さん? 何をするつもりでしょうか?」
「まあまあ、歩きながら説明する。だから、今は霊脈に行こう。」
作戦の詳細はまだ伝えずに、強引にパーティ一行を連れて行く。
別に勿体つける必要はないが、驚かせるにはこうした方が良い。
「それじゃあ、霊脈にレッツゴーだ!」
チビを先頭にした奇怪なパーティは進む。
ーーーーー
「ほ、本当に入れた……。」
そして、時は流れて数時間後。
俺と藤丸はフード付きマントを羽織り、顔を隠している姿でさっきの街へと侵入していた。本来であれば怪しい格好ではあるが、色々と細工をしたので、多分大丈夫だろう。
ロマニが忘れていた翻訳機能もちゃんと機能している事は確認済みなので、藤丸が会話しても問題ない。
にしても、やはり見たことがない場所であるからか、藤丸はキョロキョロと周りを見渡しながら『へぇー』とか『本当に過去に来たんだ……』とぼやいている。確かに木を柱として壁を石で積み上げた中世ヨーロッパの典型的な庶民の家、というのは日本で見られていないだろうが、今はやるべき事に集中してほしいものだ。
「おい藤丸。さっさと行くぞ。」
「は、はい! けど、本当にこんな格好で怪しまれないんですか? 補給物資としてこんな布を二枚送ってきてもらってましたけど……」
藤丸の言う通り、俺たちが羽織っているのはカルデアから送ってきてもらった物だ。もっと細かに言えば、俺の工房にあった物でこれには魔術が仕込んである。
「大丈夫だ。これは隠蔽……とは少し違うが、周りを誤認させる魔術をかけている。『少なくとも俺たちは害を与える者でも、敵意ある者でもない』ってな。」
「魔術って、そんな事まで出来るんですね! いや、古崖さんが凄いのかな……?」
「はいはい。どっちでもいいからさっさと情報を集めるぞ。外で待たせてる奴らがいるからな。」
街の中に入っているのは俺と藤丸だけで、他の三人は街の外で待機させている。持ってきてもらったローブは二枚しかなかったので、仕方なく俺たち二人しか潜入していない。
通信も他の人に見られれば怪しまれるので一時的に切っている。
「じゃあ、確認するぞ。まず、そのローブは見られる分には良いし、多少触られても魔術の効果は切れないようになってる。けど、強い衝撃を加えられれば解除されてしまう。さっきの門番にしか顔を知られてないと思うけど、なるべく注意するように。」
「分かりました!」
「あと、俺たちの演じる役は……」
「え、アレ本当にやるんですか?」
「当たり前だ。怪しまれない、とは言ったが純粋な疑問は持たれる。」
藤丸は微妙な顔をしながら、悩み続けてしまう。これは事前に話してはいたんだが、未だ決心がつかないようで、ためらいを感じてしまうようだ。
だが、俺はやるぜ。
「ほら、時間がないからさっさと行く!」
「うわ!? ちょ、ちょっと待って下さい!」
静止の言葉を耳に入れず、藤丸の腕を強引に引っ張る。丁度良い通行人も見つけたので、そこに突き出してやろう。
「そら、あそこから情報を聞き出すぞ!」
「うおっとっと!?」
藤丸は俺に押されてこけそうになりながらも、三十代らしき女性三人こ前に出る。しかし、彼はオドオドして何も喋れず、段々と怪しまれていく。
「あら、どこの坊やかしら?」
「ここの子ではないのかしら。見覚えないし……」
「まさか他所の国から来た……」
あー、駄目だ。無理やり聞き込みをさせたのは俺だが、流石に一言も話さないのはまずい。初めての事だろうから、慣れないのは当たり前だが、緊張しすぎて声すら出せてない。
仕方ない。事前に決めておいた役割で助けといてやるか。
「ねえねえ。」
俺はとてとてと、子供らしく、かつあざとい感じで藤丸の足元に駆け寄る。
ここから可愛らしい少し高めの声を使ってっと。
さあ、俺の演技力を見るがいい!
「
「ふぁっ!?!?!?」
おい、いくら俺の上目遣いとあざとい声が可愛いからと言って、裏声を出したら、それで余計に怪しまれるだろ。
「にいちゃん、どうしたの? しゃっくり、出ちゃったの?」
「ぶふぉーー!!」
あ、今後は盛大に吹き出しやがった。
いやでも冷静に考えてみれば、本来なら年上の相手にこんなチビっこみたいな背丈で『にいちゃん』とか言われたら、俺は吐くな。
けど、面白いから続けよう。
「あらまあ弟くんがいたのね。こんにちわ、僕くん。お名前は?」
「ぼ、ぼく、しょ、しょうたって言います……あの、にいちゃんと遠いところから歩いてきたの!」
「そうなの? 偉いわね〜。」
よしよし、警戒はされずに話ができそうだ。その証拠にご婦人達が俺に向けているのは、完全に子供に向ける目そのものだ。後は本題に入るだけだが……ここは俺じゃなくて藤丸に話してもらう方が良いか。
「にいちゃん、あのこわいどらごんのこと、きかなくていいの?」
「ぶっ、あ、ああそうです……そうだね。」
なんとか慣れてきたのか、藤丸は冷静さを取り戻しつつも兄という役を演じ始める。
「いくつか、質問をしてもいいでしょうか。」
「ええ、答えられることならなんでも聞いてちょうだい。」
「僕らはフランスではない別の場所から来た者です。
そしてここに来る前に何者かによって荒らされた街を見ています。調べた所、人が残したとは思えないような痕がありました。そして、この街もドラゴンらしきものに襲われたと聞いています。」
藤丸が口を動かす度に、相手の三人に笑顔が消えていく。この質問の意味が、真剣なものであるからだろう。
「一体、この地で何が起きているんですか?」
誰が話そうか、彼女ら三人が話しあった後、一番リーダーシップがありそうな女性が話をする。
「……竜の魔女、それは知っているはね?」
「それがジャンヌ・ダルクで、さらに復活した、とは。」
ここまでは既知の情報だ。問題はその魔女が一体どこにいて何をしているか、だ。
「そう、それなら話が速いわ。その魔女はオルレアンを侵略して、ドラゴンを使って街を襲っているらしいの。」
オルレアン、戦略の場として何度も重要視される場所であり、ジャンヌ・ダルクに二つ名がついた要因の場所でもある。
しかし、俺の疑問二つが一気に解決するとは思わなかった。どうやって知ったのかはさておき、次は敵の行動理由だ。目的を知れば敵の裏をつけるかも知れないし、何よりこれからの行動の予測が容易になる。
だが、次の彼女の言葉により、それは難解になっていく。
「しかも、そのドラゴンは生きている人間を攫っているらしいのよ。」
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一方、外の待機組。
マシュ、ジャンヌ、そして小次郎のサーヴァント達は少し離れた場所、人目につかない林の中で立香と創太を待っていた。
しかし、ただ待つというだけであれば暇な事この上ない。もちろん、周りには警戒をしているものの、獣の類はいない。本来であれば主であるマスター立香の身を案じるのが普通ではあるが、それも創太という信頼ある味方によって必要なくなる。ただ一人だけはそうではないのだが。
まあ、それは置いといて、何もする必要がないのであれば何をするか。もちろん他愛のない雑談であろう。
「マシュ。」
最初に話を切り込んだのはジャンヌであった。
「はい、なんでしょう?」
「貴方達は、その……失礼を承知で言いますが、何故そこまでして彼を、古崖創太を信頼しているのでしょうか?」
マシュと小次郎、そして通信越しのオルガマリーとロマン。それぞれ四人は、人理修復において最重要である藤丸立香に彼が付いて行くと口にした時、誰も反対せず、むしろそれが最善であり安心であるとような口ぶりであった。
その光景はジャンヌにとって不自然に感じた。確かに彼は交渉力があり、人間にしてはサーヴァントに匹敵する力を持っているのだろう。ワイバーンとの戦闘では力を出しきれていなかったようだが、それまでだ。
また先のようにワイバーンが複数襲いかかってくれば、立香を守りながら戦うなど、無理とまでは言わないが自身を犠牲にするしかないだろう。
彼一人では限界がある。それが彼女の見解であった。
「……あの人は、そういう人だと思ったからです。」
「はい?」
「その、ジャンヌさんが心配している事は分かります。創太さんだけでは先輩を守りきれないのではないのかと。
私はたった一週間ですが、彼という人を見てきました。あの人は一人でも目的を実行し、そしてそれを達成する力があります。」
力においての信頼、言葉としてはそう意味している。しかし、それが決定的なものではない。彼を信頼する理由は別にあるようだった。
「ですが、ただ強いだけではない。個人の力ではない。
どんな状況であろうと周りを使い、そして周りと共に生きる。だからこそ、創太さんは信用されているんだと思うんです。彼であればマスターと共に、あるいは街の人々も共に生き延びると。」
——なるほど。確かに彼が適任ですね。
ジャンヌはマシュの答えにそう感じた。
古崖創太というのは個として存在しているのではない。あくまでも常に群を成して生きているのだ。誰かと共に戦い、その誰かの力を倍増させる。だからこそ、藤丸立香の護衛として最適だ。
犠牲を出す事なく、協力して生き残る。それが最善の方法なのだから。
「……私もそんな風になれれば良いのですが。」
しかし、マシュは創太に思うところがあった。いや、正確に言えば彼の力、か。
「マシュ?」
無意識に零れた愚痴、それに気づいたマシュは、ハッとしてすぐに謝罪をする。
「す、すみません! つい弱音を吐いてしまい……」
「いえ。誰にでも悩みはあります。
……良ければ聞き相手になりますよ?」
それは質問に答えてくれた礼でもあった。彼女の悩みのタネ、それが解決できればと思う気持ちもあった。
「本当に良いのですか?」
「ええ。」
マシュは少し考えた後、ゆっくりと自身が持つ問題を話していく。
「私は通常のサーヴァントではありません。英霊の力を宿した、いわば擬似サーヴァントです。その英霊が誰なのかわからないというのは、先も話しましたよね?」
「はい。……まさか、その事が?」
「それもあります。ですが、宝具は擬似的に使えますし、皆さんと一緒に戦える自信もつき始めました。
……それでも、私はどうしても創太さんと比べてしまうのです。」
彼女はゆっくりとジャンヌとの視線を離し、下へと向けてしまう。負い目を自分で話すからか、その声色は暗くなっていく。
「護る為の力、それは確かに手に入れました。しかし、それまでです。創太さんは人間のまま私より強く、そして私たちを引っ張るカリスマもあります。
私は前線に立って皆さんを守るだけ。相手を倒す力もなく、誰かを率いる力もありません。
そう思っているとまだまだ未熟であるのだと……」
「なら、私も一緒です。」
それはマシュにとって驚きであった。正規の英雄であるジャンヌから自身も未熟であると言うのは思ってもみなかった。
「私は聖杯や座の支援を受けていません。その為か、私もどこか初々しい感じがするのです。英霊としての記録がない私は召喚されるというのが初体験になります。ですから、そういった意味ではマシュと同じ私も未熟者なんですよ。」
「それを言えば、拙者も同じようなものよ。」
またまたマシュは驚く。今度は小次郎までもが同じようなことを言い出す。
「拙者はこれの他に喚ばれた事が一度しかない。しかも、それはただ門番をせよというだけで、サーヴァントとして真っ当な役割は果たせておらぬ。
ならば、この身もマシュ殿と同じ、未熟者のサーヴァントだ。」
「ジャンヌさん、小次郎さん……!」
「ですから、マシュ。貴女は気負わなくても良いのです。自身が未熟であると感じなくても良いのです。ただ、戦い抜く事だけを考えましょう。」
「はい……! ありがとう、ございます!」
この出来事を経て、マシュの心はまた一つ軽くなっていく。いつしか本当の力を得るために。そして、この任務を完遂するために。彼女は強くなる。
しかし、ジャンヌは不思議であった。先ほどまで、彼女は自身がサーヴァントとして十全の力を振るえぬ事を恥じていたはずなのに、いつの間にかそれを使い他人を励ましていた。
どちらかと言えば、彼女の立場は逆になるはずであったのに。
——どうして、どうして彼の存在が引っかかるのだろうか。