オリ主と藤丸立香の人理定礎復元   作:コガイ

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どうも、作者です。
前作が堂々の完結を果たし、ついに本格始動した本作!
十一年の時を得て成長したオリ主に何が起きるのだろうか!
ネタバレすると途中で終わらせるつもりなんですけどね。
さあ、夢と希望と人理定礎復元の旅へレッツゴー!

最初から変に飛ばしすぎとか言わないでください。


人理焼却

 オルガマリーの誘いを断ってから一週間が経ち、俺は北海道の実家へと帰省していた。

 実家の見た目は遠坂宅のようなでかい洋館、ではなく現代風の豪華な邸宅という感じで、伝統あると言った風には見えないものだ。

 その入り口を開けると、たまたま通りかかっていた使用人が出迎えてくれる。

 そして、廊下を抜け、奥の方にあるドアの前に立ち、ノックする。

 

「どうぞ。」

 

 許しを得たことを確認し、ドアを開けると左右の本棚がこちらを向いて、ぎっしりと並んでいる。

 そして、その真ん中には叔父の古崖創次(そうじ)がいる。

 

「久しぶり、叔父さん。」

「久しぶり、創太君。」

「……相変わらず本が好きなんだな。」

 

 挨拶を済ませた俺は叔父が片手に持っている物を見ながら、呆れ顔で皮肉を言う。すると叔父は

 

「まあね。」

 

 と澄まし顔で返す。全く効果がない。

 この人は本当に本が好きだ。趣味がなんなのかと聞かれれば、読書と答えられる。それが本の虫こと、古崖創次だ。

 しかし、しかしだ。よくよく本の内容を探ってみると、小説やエッセイの他に、実は驚きの物がある。

 

「はぁー……。甥の目の前でよく官能小説なんてものが読めるな。」

 

 十八禁物の小説だ。

 

「別に良いじゃないか。君も成人なんだし。」

「良くねえよ! アンタ、嫁候補がいるんだろうが!」

「ちょっ……、あんまり大声で言わないでよ! 彼女に聞こえるじゃないか!」

「だったらどうしようそれはしまえ!」

 

 叔父さんはしぶしぶといった感じで、手に持っていた小説を机に仕込んであった隠し場所へと片付ける。

 百歩譲って読むは良いにしても、前もって帰る日時を連絡してんだから、少しは隠そうとしてくれ。

 

「……それで、本題に入っていいか?」

「ああ。」

 

 これでやっと話したい事が話せる。

 

「カルデアからスカウトが来た。叔父さんも話を持ちかけられたんだろ?」

「来たね。しかも、所長直々に。」

「やっぱりか! やっぱり来てたんだな!」

 

 叔父の言葉に、俺は突如として怒りを露わにさせる。叔父さんは何が起こったのかと思い、困惑している様子だ。しかし、こちとら知ったこっちゃない。

 

「面倒だからって、断るのはまだいい! けどな! 俺に回すのは、止めろよ! 

 そもそも、連絡してくれよ! カルデアの人がそっち行くって! こっちだって予定があるんだからさ!」

 

 机を壊れるぐらい何度も叩きながら、早口でまくしたてる。

 

「いっつも、いっつもそうじゃねえか! この前のあれも……」

 

 その後もネチネチとした怒りを思いっきり口から吐き出し、発散させる。やがてそれが尽きた頃には、俺は肩で息をしていた。

 

「あー……。」

 

 叔父はあぜんとしている。少しでも罪悪感を覚えているのか、謝る言葉を探しているようにも見えるが、その実

 

「まあ、別にいいじゃないか。」

 

 見えるだけだった。

 

「……今日はその件で話しに来た。」

 

 そして、俺は諦めた。叔父さんの性格はもう治らない気がしてきた。四十にもなっている中年の性格を変えるなんて難しい。

 

「休暇を取る。いつまでかは分からない。」

「理由はカルデアだろ?」

「ああ。」

 

 話が早くて助かる。

 

「創太君は断ると思っていたよ。指揮官なんていう立場は自分には不相応だって……」

「いいや、断った。」

「え?」

 

 言葉を聞き間違えたかのように、驚きの表情を見せる。

 

「だから、断ったって言ったんだ。

 俺としては指揮官でもなんでもいい。そこから力を見せて前線に異動するなり、教官になるなり、相応の役割を貰う。まあ、世界を救うためなら雑務だってやるさ。」

「だったら、なんで断ったんだ?」

「所長の付き人が妙に怪しいからな。そんなやつと一緒なんて、休める気もなくなる。まずは外からカルデアを調べて他にも不審な部分がないかを調べる。」

「あの娘、オルガマリーちゃんには怪しい部分はなかったと思うけど?」

「だからだよ。俺から見てもあいつが嘘をついている様子はなかった。世界を救うことは本当だろう。けども、付き人の事を信頼していた。

 なら、最初は情報収集だ。そいつがクロなのかシロなのか、共犯者は誰か、一体何をしているかを探る。」

 

 俺の考えを聞いた叔父は少し考えた後、納得したような顔で『なら、そうすると良い』と言って、賛成してくれた。

 

「よし、だったら早速人員集めだ。」

「絶対に半分は残してくれよ? 君が世界を救う間、また紛争が増えないように、こっちも色々人手が必要なんだからさ。」

 

 叔父はどうやら、別の意味で世界を救うそうだ。まあ、俺も最初からそのつもりだった。世界を救ったのに、世界中で犯罪が起きてるなんて本末転倒だ。

 だから、叔父さんには残ってもらう必要がある。

 そうして、互いの行動が決まった直後、ドアをノックする音が聞こえる。

 

「失礼します。コーヒーを淹れてきました……おや、創太くん、久しぶりですね。」

 

 ドアを開け、コーヒーが入ったカップをトレイに乗せて持ち運んできた男装の麗人は

 

「久しぶり、バゼット。」

 

 元封印指定の執行者であるバゼット・フラガ・マクレミッツだった。

 

「ええ、以前にこちらへ来た時はちょうど一年前でしたか。

 どうぞ。砂糖は二個ですね。」

「ありがとう。」

 

 かつては脳筋とか、ボクシングバカとか呼ばれていた彼女は丁寧にコーヒーを叔父の前に出す。

 しかし、それとは別に俺はある変化に気づく。

 

「バゼット、その義手また改造されたのか?」

「はい。様々な機能が追加されたとは伺いました。」

 

 かつて言峰神父に取られた彼女の左腕は、現在古崖の技術班が開発した義手となっていた。もちろんただの義手ではなく、彼女の意思で思いのままに動かせ、強度はかなりの物。さらには()()()が搭載されているのだが……

 

「一応聞かせてもらっても?」

「分かりました。まずは超強力な電気ショックですね。腕を螺旋状に回転させることにより電気を溜めることができ、相手に直接触れられれば即気絶というものらしいです。

 さらには地面に叩きつけることにより、生物には全く聞こえない高周波の音を反響させ、敵の位置を知ることも可能になりました。

 後は遠距離用として腕を取り外した瞬間に接合部からジェット噴射による推進を行い、相手を攻撃するという機能も追加されたそうです。遠隔操作も可能となっています。」

「おいそれって……」

「……。」

 

 それを聞いた後、俺はあるいやーな予測を立てながら叔父を睨みつける。

 あ、こら、目ぇ逸らすな。

 

「しかし、それ以外にもやたら眼帯をつけるよう勧められたり、ツノを生やそうなどと言っていました。」

「完全に鬼蛇じゃねえか!」

 

 もっと言ってしまえばメタル◯アじゃねえか! 

 

「おいアンタ、最近あれやっているからって流されすぎだろ!」

「ぼ、僕じゃないって。技術班が勝手にやったことだよ。」

「知ってんだぞ! アンタが発案者だって事は!」

「な、何でそんな事を!?」

 

 技術班に内密者がいるからって事は黙っておこう。

 

「とにかくだ、あんまり趣味趣向で人の腕を改造するなよ。」

「いえ、私はこの機能には実用性があるとは思いますが。」

 

 その時、俺の顎が外れた。

 何だこの人は。隠密行動でもするつもりか。

 

「特にこの……ロケットパンチなる物でしたか。遠距離からの攻撃をほぼ持たない私にとっては十分に活用できます。迎撃や追撃なんかにも使えそうですし。」

 

 いや違うな。この人は筋肉ゴリラだったな。

 

「……まあ、二人とも末永くな。」

「ちょっと創太くん!? 別に僕とバゼットくんはそんな関係じゃ……!」

「うるせえ。さっさと結婚しやがれ。」

 

 ったく、十年も嫁候補になってんだから、貰ってやれ。バゼットが恥ずかしそうに顔を赤らめているが、関係ないね。

 

「んじゃ、俺はそろそろ行くぞ。飛行機の便に間に合わなくなるからな。」

「ま、待つん……」

 

 俺は最後の叔父の言葉を聞かず部屋を出て行く。

 どうせ、邪魔者がいたって何の進展もないだろう。だから、さっさと結ばれてほしい物だ。

 さて、それじゃあ冬木(地元)に帰るか。最近あいつらに会ってないしな。世界救う前に挨拶ぐらいはしとくか。俺のいない間に何かあったかもしれないし、なかったかもしれない。どちらにしても、他愛の無い話でもしに行こう。

 

 ーーーーー

 

 と思って懐かしの場所へと帰り、少しはのんびりしようかとくつろいでいたら、

 

「なんだって一瞬で街が焼け野原になりやがるんだ!」

 

 事件が起こる。

 

 先も行ったが、街が瓦礫と火の山となるという、まるであの時のような光景だった。二十年前の大災害そのもの。俺のターニングポイントとなってしまった出来事。

 これではまさに、あの時の焼き直しじゃねえか。

 その中で俺は走る、誰かが生き残っている事を信じて。しかし、

 

「誰も、誰の遺体も無い……?」

 

 人類が生み出した文明の遺産は残っているのに、()()()()という痕跡は全くない。

 以前にオルガマリーが言っていた事と関係があるのか? 

 周りの磁場というか、人を消し去ろうという結界が地球全体に働いているように感じられる。俺はある方法でそれから身を守ったのだが。

 

「……使い魔よ。」

 

 ここ以外の状況も把握するため、使い魔を五体作る。とても小さく、ほとんど虫のような大きさだ。

 しかし、索敵という目的であれば十分な大きさで、さらには僅か十分足らずで、この星全てを探索できる速さも持つ。

 

「頼んだぞ。」

 

 それを四方八方に飛ばし、念話を応用した視界共有で使い魔からの情報を受け取る。

 せめてここだけであってくれればと願うが、しかしその結果はさらに酷かった。

 どこもかしこも火の海だらけで、冬木となんら変わらぬ惨状だった。まるで人類を焼却しようとしているかのようで、生命体の反応もない。

 何にしても、あまりに

 

 突然、頭がふらつく。

 

「っ……トラウマを完全に克服したとは言い切れないか。」

 

 世界が歪む。

 

 似たようなものは何度も見てきたが、冬木(ここ)がこうなってしまえば、嫌でも父さんと母さんが死んだ事を思い出してしまう。

 けどな、立ち止まってなんかいられない。じゃないと、今までが全て無駄になる。

 

「生存者はいない。なら、あそこに行くしかないよな。」

 

 トラウマから持ち込たえたと同時に、ある魔術を行使する。

 目標地点は既に決まってある。そこに潜伏させていた使い魔に飛ぶだけ。なら後は

 

「詠唱破棄、転移!」

 

 詠唱はいらない。その名を呼ぶだけだ。

 意識が世界に置いていかれる感覚。一瞬にして視界が赤から白に変わる。火によって熱気を帯びた空気はなく、吹雪が吹く雪山が目の前に広がる。ここが標高何メートルだか知らないが、魔術で保護すれば大丈夫だろう。その中にポツンと、周りからの関わりを一切絶ったような建物があった。

 どうやって建てたかなんてのは少し疑問ではあるが、視た瞬間に理解した。世界に起きている異常事態の原因はここに、正確に言えばこの中にある異次元のような入り口の向こう側にある。

 さらには唯一の生存者がここに集まっているようだ。

 

「ちょっと荒っぽいけど……!」

 

 そう確信した俺はなりふり構わず、玄関扉をぶっ飛ばした。

 不審侵入者用の警報が鳴っているが、非常時に丁寧な事はやってられない。

 異次元への入り口まずはそこを探す。正確には異次元とは少し違うが、とにかくこの施設内を走り、目的の場所まで着いたらまたドアを豪快に開き、部屋へと入る。

 目指した場所、そこには真ん中に溶岩のように赤い球体と、それを囲むように棺桶とその残骸が散らばっていた。

 ここでも爆発かなにかが起きたのだろうか。

 

「き、君! どこから来たんだ!?」

 

 それと同時に、部屋の外から声が聞こえる。その方向に振り向けば、今は吹き抜けではあるがガラス張りだったと思われる部分があり、その向こうには何故か気にくわない(頼りなさそうな)医師のような格好をした人がいた。

 

「そんなのはどうだっていいだろ! それよりも……!」

 

 壊れている棺桶の中から比較的状態の良い物を探し、その前に立つ。

 

「ここから、()()()に行けるんだろ! さっさと俺を飛ばしてくれ!」

「そんな無茶な……!」

「無茶かどうかじゃ……チッ、仕方ない。」

 

 ここからでもわかる。誰かがこの棺桶の向こう側で戦っている。その中にはオルガマリーもいる。きっとここで行かなくては世界を救えない……! 

 

「……性質(フォース)変化(チェンジ)。」

 

 今まで幾度となく使ってきた詠唱。

 俺が魔術を使うとき、絶対に必要な作業。

 自身の魔力の性質を変えて、行使する魔術に合わせる。

 コフィン(棺桶)に宿る魔力と術式を読み取り、欠けた部分すらも知識で補う。

 

「まさか、一人で……!?」

 

 俺自身が作った術式と備え付けてある術式を重ね合わせ、魔術を完成させていく。

 

工程(プロセス)完全踏破(フルコンプ)……!」

 

 あと足りないのは魔力。筋力や瞬発力を魔力に変換するなんていう事はできるが、そんなの地の魔力が足りなかった十年前にやる事。今は効率良い運用と、ある課程で生まれた膨大な魔力量、そして俺専用に作られたこのローブ(魔術礼装)によって面倒な作業を省き、たった一工程で大魔術を行使する……! 

 

霊子転移(レイシフト)!」

 

 術式を完成させると同時に、また意識が世界に置いていかれ、周りの景色が変わる。着いた先はまた赤い荒野だった。

 さっきも見た冬木の光景そのもの。レイシフト(転移)をしたはずなのに何故またさっきと同じ所に。

 ……いや、何か違う気がする。違和感がどことなくある。これは一体なんなんだ? 

 

「クックッ、マタ漂流者ガキタカ。シカモ、コドモトハナ。」

 

 それよりも、今考えるべきは眼前の敵か。

 

「もしかして、貴方……!」

「よう、今度はちゃんと憶えてるぜ、オルガマリー・アニムスフィア。」

 

 転移先にいた銀髪の少女、オルガマリーは()()姿()を見た瞬間、何故ここにいるのかという、驚いた顔をする。

 

「あの子は一体……?」

「え? え? まさかの地元住民? けど、所長さんも知り合いみたいだし、違うのか?」

 

 その他にもひょうきんそうなツンツン黒髪の少年と生真面目そうな片目隠したピンク髪の……なんだ? ボディアーマーを纏って盾を持ち、そして人並み外れた力を持つ少女、という事は英霊か? にしては、人っぽいというか、慣れてない感じがするというか。

 

「サテ、デハドチラヲエラブ?」

「カッテニエラベ。」

 

 ま、後で確認するとしてだ。目の前の真っ黒い奴らが敵っぽいな。しかもサーヴァントの型落ちではあるが、そこの片目少女よりかは確実に強い。確実ではあるが、一応確認してみるか。

 

「おい、オルガマリー。敵はあいつらで良いんだな?」

「え、ええ。もしかして、助けてくれのるかしら?」

「まあな。」

 

 よし、勘違いはなし。なら次は

 

「そこ二人。日本人っぽい子はマスターで、ピンク髪はサーヴァント。そんでもってオルガマリーを守ってあいつらを倒したい、ってことで良いな?」

「は、はい!」

「そうです……けど。」

 

 これで最低限の状況把握は完璧だ。最後はあいつらを倒すだけだ。

 敵は二人。一人は腕に包帯を巻いた見たことあるようなアサシン()、もう一人は様々な武器を持った武士といったところか。英雄王よりは大分マシだろうな。

 正直どっちでも相手になれるが、盾少女の能力を見るに搦め手を使うアサシンを任せるのは酷だろう。

 

「なら、そっちの武者は任せた。俺はもう一人の奴をやる。あくまでも時間稼ぎをしといてくれ。」

「分かりました!」

「よく分からないけど、了解です。」

 

 簡単な作戦を支持した後、互いに戦う相手と対峙する。

 

「私ノ相手はキサマカ。ナマイキナ子供トハ実力ブソク……。」

 

 英霊と戦う人間、そんなのは一握りすらいない。けれども、俺は過去に英霊と戦い、そして勝ってきた。都合の良い様々な条件付きがあったとしても。

 

「哀レナ、目立チタイトイウ欲望ガ先走リ……」

 

 勝利の理由、それはこの魔術。力を一点に集中させ、相手よりも優れた部分を作る。

 今回は俊敏力を強化する。相手が反応できないほどのスピードで、戦況をこちらの手に取る。

 

「……キサマ、キイテオルノカ!」

「お前、やっぱ型落ちだな。色々と下がりすぎだ。」

「何ヲ……ッ!」

 

 体を最高速まで上げ、背後に回りうなじを斬ろうとしたが、やはり英霊といったところか、流石に単調な一撃は防がれる。

 

「これは流石に防ぐか。けど、ギリギリだな。」

「ナゼ、コンナヤツガ……!?」

 

 確かに子供に見えるかもな。けど、

 

「見た目だけで判断するのは三流以下だぜ、四流サーヴァント。」

 

 また体を加速させ、今度は距離を離す。

 さっきの一撃は布石。本命はこの後……! 

 

「苦しみなき拷問を、鉄の処女(アイアンメイデン)!」

 

 アサシンを攻撃した際に仕掛けた魔術陣を発動させ、周りにある瓦礫を集める。敵を押し潰すかのように。

 

「アガッ……! ウガガガーーーー!!」

 

 そして、大量のコンクリートが敵を覆い隠した時、瓦礫の収束は治まる。アサシンは生きたままではあるが、まさにコンクリート詰めの状態で、動く事は不可能だ。

 

「……焼かれろ。」

 

 だから、今度は火を集める。全てを焼き尽くそうとする火を操り、纏わせる。

 

「っ……! これは……!」

「嘘でしょ、まさか彼がここまでの人材だなんて……。」

 

 集められた炎は光と熱が強くなり、それを極限まで引き上げられ、目にした者の眼すらも焼き尽くすような光だった。

 熱が体を溶かし、光が霧散させる。形など残させない。痕跡すらも消す。そういった意思を持つかのような残酷な火焔が数十秒もの間、敵を焼くと次第に治まり、そして元の場所へ帰るように拡散していく。

 

「手応えあり。気配遮断による逃走もないだろう。」

 

 確実に倒した。

 まあ、十年前よりも成長したんだ。英霊もどきに勝っただけだが、強くなったと実感できる。むしろ、こんな奴は俺一人で勝たなければ、あいつらに申し訳が……

 

「だから言ってんだろ、型落ちだって。」

 

 突然、俺は後ろを振り向く。

 何故か。それは背後に敵がいたからだ。

 振り返れば、俺にナイフを突き刺そうとしていたアサシンがいた。あそこから脱出し、気配遮断によってそれを悟らせないようにしてたんだろう。

 

「ナ、ナゼ……!」

「お前は耳も悪ければ、自覚もないのか。ならもう一回言ってやるよ、お前は()()()だ。気配遮断もお粗末だし、読みも甘すぎる。わざと気配遮断に気づかない振りをしたら、案の定動いた。

 昔、お前の本来の姿を見たが、あまりにも違いすぎる。根底すらも変わっちまったお前に負けはしない。」

 

 しかし、そのままであればナイフがこの体に刺さるのみ。

 その前に俺は古風な魔術杖を召喚する。古代からあるような杖で、細長い木製の杖の先端に魔術的な装飾、特に目立つ藍色の石が施されている。

 それを相手に向け、最後のトドメを刺す。

 

光槍(フォトンスピア)!」

「ゴハッ……!」

 

 まさに名が表す通り、杖を柄として魔力の刃が先端に形成され、光の槍ができあがる。

 しかし、貫くというよりかは、アサシンの上半身と下半身を分断させるような大きさで、胸を押し潰す。

 そのまま、アサシンはもう何も喋らずに、光へと還る。

 

「今度こそ終わりだな。さて、そっちは……」

 

 一先ずアサシンは倒せた。

 ならばと思い、武士の方を任せた黒髪の少年とピンク髪の少女がどうなっているかと、そちらの方へ見ると、

 

「はあっ……はあっ……、戦闘終了……です。」

「すごいぞ! よくやったな、マシュ!」

 

 すでに倒した後だったようだ。

 

「お前ら、よくあいつを倒したな。」

「は……はい……。ありがとう……こざい……ます。」

 

 少女の方は慣れない戦闘だったのか、息絶え絶えで答える。対して少年の方は、

 

「あ、ありがとう。ところで君、迷子……なのかな? どこの子か分かる?」

 

 あらまあ、子供扱いですか。けど、こればっかりは相手に非があるわけでもないのでしょうがない。

 何故なら、()()()()()()()()しかないこの体であれば、小さい子と見間違えられても仕方ない。さらにはローブも被っており顔が見えないので、体格からしか歳が判断されないのだ。

 

「ちょっと、貴方! 年上に、しかも本来であれば上官にあたる人になんていう失礼を働いているのよ!」

「え!? この子……いや、この人年上なんですか!?」

 

 元々俺を知っているオルガマリーは、激怒しながらも彼の勘違いを正す。

 

「というか所長、この人……」

「ああ、やっと繋がったよ!」

 

 藤丸が何かを言いかけるが、話の途中で邪魔が入り、目の前にある人物のホログラムが映し出される。この声は確か……

 

「何、ロマニ? 今から少し忙しくなるのだけど。」

「突然このカルデアに子供が入ってきたと思ったら、単身でレイシフトをしてそっちに向かったんですよ! 

 確か見た目は……」

 

 医師らしき男がオルガマリーに説明をしていると俺と目が合い、驚いたような顔で

 

「彼です! そう、彼そのものの姿をしていました!」

 

 いやそれ俺だよ。

 

「……はあ、ちょうど良いわ。ここで纏めて話した方が良いわね。

 創太さん、情報共有のため、まずは自己紹介をしてくださってもよろしいかしら?」

「ああ、けどそっちからも説明しろよな。」

 

 みなの注目が集まる中、俺は一つ咳払いをして自己紹介を始める。

 

「俺の名前は古崖創太、これでもれっきとした二十七歳だ。この体については……まあ色々あった結果だ。

 今は魔術師として世界を飛び回っていて、魔術の開発、実践投入を行いながら、紛争やテロの解決なんかもやっている。

 オルガマリー、こんぐらいでいいか?」

「ええ。付け加えるなら、彼は冬木の聖杯戦争の生存者で、さらには元々指揮官、つまり貴方達二人の上官としてカルデアにスカウトされていました。

 ……何故か、断られましたが。」

「へえ、彼が……」

 

 ロマニと呼ばれた医師は俺の事を耳にしていたのか、なるほどなあと言いながらじっくりと眺めてくる。

 

「それで、一度は断った貴方が何故急にここへ?」

 

 オルガマリーのその質問、俺は何故か違和感を感じる。

 急にって言ったって外があんな風になって、しかも生きている人が集まっているなら、ここに……いや待てよ。

 

「それに答える前に確認しておく。ここの……いや、カルデアって言ったか? その外がどうなっているのか分かるか?」

「外? ロマニが外部との通信ができないとは言っていましたが……」

「つまり、まだわかっていないと。」

「何ですか、そのシュレディンガーの猫みたいな話は。」

 

 どうやら本当に把握していないようだな。

 

「お前らにとっては、正にその状況が正しいかもな。なら、最初に言っておいてやる。

 

 

 カルデア内にいる人間以外はほぼ全滅だ。」

 

 

 その事実は、彼女らにとって大きな衝撃となる。

 

「冗談はやめなさいよ! 今こっちは……!」

「残念ながら事実だ。いたとしてと極少数。しかも死にかけでしかない。」

 

 俺だって冗談だと思いたい。人が死んでいるなんて考えたくもない。

 

「そんな……だったら親父は……母さんは……姉ちゃんは……浩二は……?」

 

 少年は泣きながら、俺に擦り寄る。それが嘘であってほしいと、親しくしていた人間は死んでいないと、願う。

 そんな彼に何を言うべきか。そう考えていたら、かつての自分と重なり、そしてまたもやフラッシュバックする。

 俺は()()の支えがあって今ここにいる。彼女が俺にかけてくれた言葉、そして行動が俺に活力を与えた。

 ならば、それと同じ事を彼にもするべきなのだろう。

 

「なあ、親しい人が死んで、お前は確かに悲しいんだろう。大切な人が亡くなり、自分が残されて。

 今は思う存分泣け。無理に前を進めとは言わない。いつか、お前自身が一歩前に進みたいと思った時、俺が付いていてやる。」

「何を……何を言っているんですか! 何が思う存分泣けとか! 前に進みたい時とか! もう終わったんですよ! 何もかも! 

 なのに、なんでそんな事を言えるんですか! 貴方は……貴方はどうなんですか!」

「少し待ちなさい、藤丸立香。」

 

 暴走気味の彼であったが、それをオルガマリーが止めようとする。

 

「待つも何もないでしょう!」

「アンタは勘違いをしている。それを直そうとするだけよ。」

「勘違いって……!」

「まだ全てが終わったわけじゃないわ。説明会の時に言ったでしょう。彼が言っている事、つまり人類の滅亡の滅亡はここの特異点によって引き起こされていると。」

 

 その説明に少年はハッと気づく。

 

「ということは……この特異点を解決すれば……」

「元に戻るかもしれないわね。」

 

 さっきまで絶望のどん底に落とされていたのが嘘のように、明るい表情を取り戻す。

 

「よかった……本当に良かった……!」

 

 と思いきや、感極まって嬉し泣きをし始めた。

 まったく忙しい少年だ。けど、彼動けるまでもうすこし時間がかかりそうではある。なら、置いていくのは危険だしもう少し置いていくか。

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