オリ主と藤丸立香の人理定礎復元   作:コガイ

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明けましておめでとうごさいます。作者です。
この挨拶ってリアルタイムで見てる人は良いけど、後から見た人はちょっと微妙な感じになりますよね。


宝具解放

 突如として始まったマシュの宝具を出すためのキャスターとの模擬戦……いや、彼女にとっては命懸けなのだから、戦闘と言ったほうが良いか。何にせよ、キャスターが()()を無理矢理始めたのは間違いない。

 

「そらよ!」

 

 キャスターがルーン魔術により火の玉をほぼ予備動作なく放ち、

 

「た、頼む、マシュ!」

「了解しました!」

 

 マシュが、動けない藤丸守るためにそれを盾で受け止める。

 さらに、キャスターは動きながら、しかも火を器用に動かしながら四方八方の同時攻撃でマシュを追い詰める。

 

「っ……やあっ!」

 

 しかし、それでも彼女はキャスターが放つ魔術を全て防ぎきってみせる。

 けれども、キャスターは本気ではない。彼女の実力に合わせているのか、マシュが受け止められるギリギリを狙ってやっているようだった。

 

「ちょっと古崖さん!」

「おう、なんだ?」

 

 その途中、藤丸から声をかけられる。

 ったく、戦闘中なんだから目の前の敵に集中しろ。

 

「なんで助けてくれないんですか!」

「何故って……そりゃお前、俺が助けたら特訓にならないだろ。」

「これ、無茶やってるだけですよね!?」

 

 無茶だろうと、キャスターがやろうとしていることは正しい。宝具が今出せるかはマシュ次第だが、限界まで追い込むのは悪くない手法ではある。

 土壇場の逆転という言葉もあるように、極限の状態となった時、マシュの真価が発揮されるかもしれない。ならば、これも経験という事でキャスターの好きにさせてみよう。

 それよりもだ。

 

「オルガマリー。」

「何、突然。」

 

 無愛想にもほどがある彼女にある話をする。

 

「まず一つ、お前は口が硬いほうか?」

「は?」

「だから、秘密を他人に話さないかって事だ。今から言う事はキャスターには話すが、藤丸達には言わない。つまり、あいつらには知って欲しくない事だ。」

 

 知ってしまえば、俺の策略は全部台無しとなってしまう。

 その質問に対して、

 

「ええ、彼らには伝えないようにしましょう。」

 

 彼女は即答する。

 

「よし。なら、話を聞いてもらおう。

 まず結論から言えば、俺はセイバーとの戦いで手加減をさせてもらう。」

「は!? 一番大事な戦闘で手を抜くって、どういう神経してるわけ!!」

 

 ヒステリックはやめろ。頭に響く。

 

「まあまあ、落ち着け。ちゃんと目的があるんだから。」

「所長! 何かあったんですか!」

 

 戦闘中であるにも関わらず、こちらの様子に気付く藤丸。

 意外と余裕あるのか? 

 

「いやいや! こっちの話だから大丈夫だ!」

「そうなん……」

「マスター危ない!」

 

 藤丸の言葉をマシュがその前に割り込んで、途切れさせる。

 本当はキャスターの攻撃を防ぐためだろうが、そんなマシュにナイスを送ろう。

 

「それで、続きなんだが……」

 

 といった一連の流れが無かったかのように話を進めていく。

 

「俺が手加減するのはマシュのためだ。

 驕りは無しにしても俺はセイバーと互角に戦える。勝てるかと言えば別だがな。だから俺がセイバーを抑えて、お前らが聖杯を取れば、この特異点は解決だ。けど、それだけじゃ駄目だ。」

「それで良いでしょ。貴方がサーヴァントと互角というのは気になるところではあるけれど。」

「ところがどっこい、そうはいかない。

 この特異点が解決された後、藤丸はどうかは知らんが、話を聞く限りマシュはここに残るんだろ?」

 

 彼女の過去を知っているわけでもないが、藤丸のように無理矢理連れて来られた訳でもなさそうだし、元々彼女は合意の上でここにいる。ならば、そう考えるのが自然だ。

 

「それを考えれば、セイバーとマシュをぶつけさせて、経験を積ませた方が戦力強化になる。それで勝てれば、さらに万々歳だ。」

「そんなに上手くいくのかしら?」

「俺の見立てではな。あいつはセイバーの聖剣を防ぎきる事ができる。いや、あの聖剣だからこそ防ぐ。それをあいつ自身に身をもって体感させれば、今後の自信にも繋がる。

 だから、俺は必要以上の力は出さない。もちろん攻撃役はキャスターにやってもらう。」

 

 これからも特異点という物が生まれるかもしれない。なら、誰かに強くなってもらわなければならない。俺一人ではなく、信頼出来る相手に。

 封印指定とか知ったこっちゃねえ。

 

「……なるほど。けれど、二つ質問です。」

「おう、何だ?」

「一つ目、貴方の考えは能力を秘匿にしておくためだとも捉えられますが?」

「おおう、これは痛い所を。」

 

 当然と言えば当然だが、そう解釈されてしまうな。

 

「でも、そう捉えれば良いんじゃないか?」

「は?」

 

 鳩が豆鉄砲食らった顔やめい。

 

「俺が秘密を明かす事よりも、マシュが強くなる方がお前らにとっても都合の良いことだろ? 

 俺の力が不安要素だって言うならそれでいい。俺の考えが不審であるならそれでいい。けど、今言った事は間違いなく未来に繋がる物であるはずだ。だから、今はそれを信じてくれないか?」

 

 俺の説得の後、オルガマリーは少し考え、そして結論を出す。

 

「分かった。

 でも二つ目の質問に答えてもらっても?」

「ああ、良いぜ。」

 

 一体なにが出てくるのやらと思えば、

 

「何故彼女に、マシュに肩入れするような真似をしてるのかしら?」

 

 俺自身が無意識でやっていた事への疑問だった。

 

「貴方と彼女はさっき初めて出会った。なのに、そんな世話を焼いて、お人好しなの?」

 

 それは俺の友人だ。

 まあ、当たりではあるな。

 

「困ってる奴は助けてやる主義でな。そんでもって、彼女は悩んでいるように見えた。サーヴァントとしての力を使いこなせない事をな。だったら、色々と手を回したいんだよ。」

「そいつが悪人でも?」

「そりゃあ、人は選ぶさ。けど、これでも人を見る目は良い方だぜ。」

「……なるほど。なら、何するかは貴方の勝手だし良いわ。

 けれど、これだけは絶対よ。聖杯を取る事。最後にそれさえできれば何の文句も言わない。」

 

 ほんとか? さっきまでヒステリックを散々出してたくせに。

 

「ところで、貴方。」

「おう、まだなんかあるのか?」

「よくその謎生物に懐かれてるわね。」

 

 謎生物? ……あ、もしかして

 

「こいつか?」

 

 あぐらをかいている俺は脚の上に乗っかるフォウに、手を軽く乗せる。

 

「確か……フォウだったわね。マシュによく懐いていたのは覚えているわ。何故貴方にも……私は噛まれたって言うのに。」

「さあ? まあでもこいつに悪意を向けない限りは大丈夫だと思うぜ。」

 

 俺の目で視ると、今はただの可愛らしい動物と変わらないが、人の欲望に触れた瞬間にこいつはとんでもない化け物になってしまう可能性を秘めている。

 その証拠に内側にはとんでもない魔力が溜め込まれているけど、まだ伝えて置かないでおこう。こいつ自身は悪意があるわけでもなさそうだし、そもそもそれは予測程度だし。

 にしても、こいつの魔力もどっかのやつに似てんだよなー。時代特有と言うか何と言うか。

 まあ、まだわからなくていいか。

 

「よーし、よーし。お前は可愛いな。」

「フォウ、フォフォフォウ?」

「あー……これ言われるの嫌い? 悪い、今度美味しいモン食わせてやるから許してくれ。」

「フォ〜? フォウフォフォ フォフォフォ〜?」

「その目は疑ってんな? ほんとだから、信じろ。」

「フォウ!」

「そうか、楽しみにしてろよ。」

「……貴方、そいつの言ってることが分かるの?」

 

 側から、いや彼女から見てみれば、不可解な会話であるからか、なんか微妙な目で質問される。

 

「いいや、何となくだ。」

「何となくって……」

「俺たちは動物保護もやっていてな。普段から動物と触れ合う機会が多くて、その経験から自然と気持ちを読み取れるようになったんだ。」

 

 魔術が関係していない俺の数少ない特技でもある。

 他にも戦争孤児の保護だったり、荒れた土地での食物の栽培だったり、水路を引いたり、今思い返せばかなり色んな事をしてきたと、しみじみ思う。

 

「そう、人間はまずいから動物を魔術の実験体に……」

「しない、断じてな。」

 

 人聞きの悪い事はやめてくれ。

 

「っ……はあっ……はあっ……。」

「なんだ、こりゃあ期待ハズレだったかもな。」

 

 と、オルガマリーと話していれば、そろそろ藤丸たちの方の終わりが見えてきそうだ。

 

「すいません……これ以上は……もう……」

「そうかよ。」

 

 キャスターは懐から何かを取り出す。ワラ人形っぽいが、その用途はおそらく別だろう。それに魔力を込めだし、ルーン文字を書いていく。

 間違いない。あれは宝具だ。

 

「なら、所詮お前はそこまでの奴だ。」

「キャスター! いくらなんでもそこまで……!」

「オルガマリー。」

 

 宝具を放とうとしているのが理解したのか彼女は止めに入ろうとするが、その前に俺が腕を掴む。

 

「放しなさいよ! いくらなんでもあいつは無茶苦茶しすぎよ!!」

「そうかもな。だが……っ!」

 

 彼女を説得しようと口を開いたが、ある事を感じ取ってしまう。

 強大な何か、それが近づいてくる。

 

「だが? その続きは?」

「……下がれ。」

「はあ?」

 

 奴が来る。

 あいつはとんでもない奴だ。

 俺は身を以て体感した。

 何度も苦しめられ、実際に死にかけた。

 最強の英霊だとも言われる()()()()

 

「焼きつくせ、灼き尽くす(ウィッカー)……!」

「みんな、ストップ! ストーップ!」

 

 キャスターが真名を解放しようとした瞬間、ロマニが止めの通信を入れてくる。

 

「チッ、何だ軟弱男……そう言うことか。」

「そう言う事だよ! レーダーに君たち以外のサーヴァント反応! もうすぐ……」

 

 もうすぐ、いいや、その次の瞬間には

 

 彼らのすぐ横から黒塗りの巨漢が塀をぶち壊しなから、翔んでくる。

 

「敵襲……!? マスター、下がってください!」

「マシュ! お前は戦うな! 藤丸抱えて下がれ!」

 

 キャスターと全力で戦った後だ。あんな疲れた状態で相手になるはずがない。

 彼女は俺の指示通り、藤丸を庇いながら母屋へと下がる。

 

「い、いいいい一体なによ!?」

「下がれって言っただろ! 俺が前に出る!」

 

 いや、そうしなくても良いかもしれない。だが念のためだ。

 

「バーサーカー……森の奥で引きこもってた奴が何故ここに!」

 

 キャスターが言うバーサーカー、それは俺の知るバーサーカーと同じ。つまりはあの何度も苦しめられたヘラクレスだった。

 圧倒的な存在感と、並みの英霊が束になっても勝てないと思わせるほどの力を放つそれは、まさに伝説だ。

 そいつは何かを探すように周囲を見回し、そして俺と目が合った瞬間、

 

「■■■■■ーーー!!」

 

 殺意を剥き出した咆哮を上げ、俺の体を潰そうと、手に持つ大斧を振り下ろす……! 

 

「っ……!」

 

 即座に魔術で腕を硬化させ、拳を剣の腹で殴り、軌道をそらす。

 その一撃には、鉛なんか目じゃないほどの重さと、そして閃光すらも追い越すような速さが込められていた。何度も思うが、俺がいくら体を鍛えようと強化しようと、それをまともに食らえばたたではすまない。

 けど、それだけじゃない。

 

 ———貴様か。

 

 俺の脳内に響く。

 

「キャスター! こいつの正体わかってんだろうな!」

 

 巨人と対峙したまま、キャスターとの意思疎通を図る。

 

「安心しな。同じモン二度喰らわねえのと、半端な攻撃は効かねえのと、十二回殺さねえといけねえ事ぐらい分かってらあ!」

「俺が足止めする! その間デカイ奴一発頼む! 言っとくが、威力がでかけりゃ、その分削れるからな!」

「■■■■■ーー!!」

 

 まっず……! またあの攻撃が来やがんのか! 

 

性質(フォース)変化(チェンジ)……!」

 

 バーサーカーの薙ぎ払いとともに、体を()()()()()詠唱を口にする。

 それを避けるためにスピードに特化した……いや、マシュの為にも彼女がすべき戦い方を見せるか。

 

環境に依存しうる盾(メイク・オブ・シールド)。」

 

 彼女に似た戦術を取る為に、周りにある瓦礫や鉄骨やコンクリートなどを使い、盾を作り出す。たった今、()()()()()()()()で二メートルほどもある身丈以上の盾を。

 それを使いバーサーカーの一撃を受け止める! 

 

「うぐっ……!!」

「古崖さ……ん……吹っ飛ばない!?」

 

 藤丸が驚くのも無理はない。

 俺の体格よりも四倍ほどの大きさを持った大男からの攻撃を、逸らすわけでもなく躱すわけでもなく、一切動かずに正面から受け止めるという、物理法則なんてクソ食らえな状況が創り出されているのだから。

 筋力を単純に上げてもそんなことは起きない。なら、どうしているか。足の部分だけ重力を強くしているのだ。

 にしても、衝撃がデカすぎだ……! 右腕だけで盾を持ってんのに、左腕まで痺れやがる……! 

 しかし、それと同時にまた頭に響いてくる。

 

 ——貴様がマスターを! 

 

 ……ああ、そういうことか。

 こいつは俺の中にある()()の存在に気づいたんだ。それを狂化か、聖杯の影響か、俺が殺したと勘違いしているのだろう。

 ならば、引導を渡してやるしかない。

 

「来い、バーサーカー。お前は眠るべきだ。」

 

 =====

 

「みんな、後退するんだ! そのサーヴァントの強さは半端じゃ……!」

「待てよ。」

 

 創太がバーサーカーを応戦している時、後ろでは撤退か、それともこのまま戦うかを決定し損ねていた。

 

「キャスター! 何を考えているのよ! 今はあいつが抑えているから良いかもしれないけど、あんなモン敵う相手じゃない!」

「だとして、あの野郎から逃げ切る手段はあんのか?」

「彼を囮にして逃げる。それしか方法は……!」

「だが、あいつには秘策があるらしいぜ。」

「そんなの無理……!」

「なら、尻尾巻いて逃げるんだな。俺ぁここに残る。」

 

 きっぱりと、オルガマリーの言葉を否定する。

 

「それによ、今逃げちまったら、あいつの考えが全部パーになっちまうぜ。」

「は?」

 

 呆れ返るオルガマリーを尻目にし、マシュの横へと歩く。そして、彼女の頭に軽く手を乗せる。

 

「よーく、見とけ。形は少しちげえだろうが、お前が目指すのはアレだからよ。」

「……分かりました。」

 

 キャスターの意思を汲み取ったかのように、マシュは目の前の戦いに集中する。

 創太の戦う姿。攻めるのではなく、守る戦い。勝つためではない、負けないための立ち回り。

 小さき体にも関わらず、バーサーカーの重く、そして疾き連撃を盾で受け止めるその戦い方。動かざること山の如し、それを体現するかのように、彼は一歩も引かない。

 

「……そろそろこっちも準備しとくか。」

 

 伝えるべき事を伝えたキャスターは先程出し損ねた宝具、手に持つ木の枝で作られた人形に魔力を流す。

 本来は神への供物として使われるそれは、腹の辺りにある檻へと贄を捧げ、火と共に天へと送る為のもの。

 

「焼きつくせ木々の巨人……」

 

 人形は次第に大きくなり、本当に天へと届きそうな程まで成長していく。

 

「で、でかい!?」

「これが……キャスターさんの宝具……!」

 

 それを見た全員は圧倒的な姿に気圧されてしまう。と同時に安心もしていた。これならば、バーサーカーすらも倒せると。

 木々の巨人の名、それは

 

灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)!!」

 

 真名解放と共に、『ウィッカーマン』は炎を纏い、バーサーカーへと突き進む。ゆっくりと、しかし確実に。巨人が更なる巨人に焼かれようとしていく。

 

「どきな! 創太!」

 

 後は任せろと、これで仕留めると言わんばかりに、キャスターは射線を開けるよう、指示する。しかし、

 

「古崖さん! 聞こえなかったんですか! 早く引いてください!」

 

 彼は未だ動かない。バーサーカーからの攻撃を耐え続け、前進することも、後退することもない。

 だが、それは敵もだった。そうする事が許されなかった。

 

「■■■■■ーー!!」

 

 キャスターの宝具を避けようと、まずは彼を飛ばそうとするが、全く動かない。後退しようものならばその命を貰うと、生きかえろうが何度も殺すと、引きの一手を選べば押し潰されるという覇気が、彼から発せられていた。

 けれども、彼の顔には敵意はない。

 

「……これで最後だ。」

 

 代わりに、慈悲という感情が乗せられていた。

 死を悼むように。敬意を払うように。

 

 =====

 

 こいつと打ち合う度に、記憶が流れ込んでくる。共感していく。重なり合っていく。

 俺の中にある彼女はこいつと繋がっていたわけではない。契約した本人同士ですらない。

 だけど、俺は無念を、後悔を味わう。

 彼が経験した物を。

 彼女と出会い、共にこの地へと踏み入れ、守りきれなかった事を。

 そして、彼女を守ろうと執着し、狂化されても泥に呑まれようと、()()()()に居続けたことも。

 

「創太さん! 早くそこを……!」

 

 ああ、分かっているさ、マシュ。

 けどな、今ここでこいつには引導を渡してやらなきゃならない! 

 

「ウィッカーマン!」

 

 供物を捧げる為に暴れる人形を招ぶ、贄はここだと。そして

 

「俺ごと焼け!」

 

 盾を捨て、バーサーカーの懐に入っていく。相手はそれを迎撃しようと大剣を振り回すが、体が小さく素早い俺に当たる事はない。

 完全に懐へ入った時、

 

「だあああっ!!」

 

 俺の拳はバーサーカーの心臓を貫く。筋力に特化したこの腕が真っ直ぐに突き出され、敵の動きは一瞬止まる。

 しかし、すぐに蘇生され、また動きだす。俺を潰そうと。

 だがもう遅い。俺の腕は体に貫通し、固定されている。そこに、木の巨人がすでに迫っている。

 敵は逃げようとするが、俺の腕によって全く動けない。押そうとしても引こうとしても。ならば、腕を斬ろうと大剣を振り下ろすが、

 

強化(エボリュート)! 燃焼継続(インフィニティ)!」

 

 俺は詠唱と共に巨人へ魔力を流し込み、火をさらに大きく光を強くさせ、巨人は俺ごとバーサーカーを檻へと閉じ込める。その胴体に付けられた、供物を天へと捧げる為のものへ。

 そして、焼き続ける。バーサーカーの命を全て削りきるまで。山火事なんていう生易しいものではない。その身を骨を全て灰にするまで終わらない炎舞。

 

「古崖さーーーん!!」

 

 その惨状を見た藤丸が泣きながら俺の名前を呼ぶ。

 一体何故、俺がその場から動かなかったのか。理解してはいないだろう。けれども、俺が焼かれたという事実は変わらない。あれを受けたバーサーカーが()()()()使()()()()()ほどだ。それが規格外であっても普通の人間が受ければ死ぬのは確定だ。しかし、

 

「おいこら、何勘違いして泣いてんだ。」

「痛っ!?」

 

 未だに生きている俺は藤丸の後頭部をど突く。

 

「え? え? 何……え? どういう……亡霊……」

「亡霊ちゃうわ。」

「またっ!?」

 

 二度目も頭を叩く。親父にはぶたれてない。

 

「いくつだ?」

 

 未だ戦闘体制を解いていないキャスターはバーサーカーがいた場所を警戒する。

 

「十二個全てだ。」

「ほう、せいぜい四回だと思ってたぜ。あれを連続させることで耐性が着く前に削りきったのか。」

「まあな。なかなかのもんだったろ?」

「ああ、他人の魔術(モン)をコントロールするなんて前代未聞だ。」

 

 キャスターは警戒を解き、戦闘は終わったと判断する。

 と思いきや、今度はオルガマリーが鬼の形相で睨みつけながら俺を指差し、迫ってくる。

 

「貴方、一体何をしていたのよ! あんな奴と戦うなんて正気の沙汰じゃないわ! 注意を貴方に集める為にわざと一対一を持ち込んだのかもしれないけど、最後のあれはどういうつもりよ! あんな捨て身で最後まで残って勘違いされるような事をして……!」

「はいはい、一旦落ち着け。説明はちゃんとしてやるから。」

 

 彼女の怒りをなだめ、完全とまではいかないものの落ち着きをある程度取り戻してもらったところで、経緯の説明をする。

 とは言え、バーサーカーと戦った理由は省いても良いだろう。俺から伝えるものでもないし、おそらくはキャスターが既にマシュへと伝えているからだ。

 

「まず、俺がバーサーカーとギリギリまで撃ち合っていた理由だな。

 これはキャスターの宝具をより確実に当てる為だ。」

 

 他にも意地やらなんやらがあるが、それは敢えて口に出さない。私情が過ぎるからな。

 

「後はキャスターのウィッカーマンを強化させるってのもある。」

「その宝具を強化っていうの、具体的には……」

「言うわけねえだろ、だらしない栗きんとん。」

「栗きん……!?」

 

 こちとら公になれば封印指定ギリギリなんだよ。一代限りっていわけじゃないからそうはならないけど、それでも面倒な事になるんだよ。

 

「次にあの巨人からの脱出トリックは……転移魔術によるものだ。」

 

 能力については秘密にしたが、こちらは少し考えながらも情報を開示する。全てを隠してしまえば、俺の力がどういうものかと怪しまれてしまい必要以上に厄介な事になってしまうかもしれないからだ。

 

「ふーん、そう……はあ!?」

 

 おう、この反応久しぶりに見た。

 

「貴方、それほとんど魔法よ!? 何、自分使えますけど? みたいな感じで言ってんのよ!」

 

 それはちょっと勘違いじゃないか? 

 

「そんな耳元で騒ぐな。……ちょっと待ってろ。」

 

 巨人が燃え尽き、宝具によって起きた火が鎮火した頃見計らい、俺はバーサーカーが居た場所へと歩き始める。

 

「話は終わって……」

「まあ、待てや。あいつのケリをつけさせてやろうじゃねえか。」

 

 ありがとうな、キャスター。

 そう心で思いながらも、足を動かす。

 

「あ、あれは……」

 

 マシュが指すあれ。それはバーサーカーの姿だ。体が完全にボロボロで未だ霊体を保っている事が不思議なほどだ。

 それほど彼自身の霊魂が強いという事。

 

「ヘラクレス。」

 

 その前に立った時、初めて彼の真名を呼ぶ。

 

「正直言って俺とお前に接点はない。だから、本来は何も言う事はない。」

 

 そもそも、特異点(ここ)は異世界のようなもの。似て非なる場所で、俺の知る彼女と彼の知る彼女は別人だ。それでも、

 

「けど、敢えて言う。

 いつまでも過去に囚われてんじゃねえぞこの半神が。お前が守りきれなかったモン、俺が救ってやる。

 だから、今はゆっくり休め。」

 

 相手はただ魔力に還ることしかないはずなのに、休めと言うのもおかしな話ではある。けれど、これが一番ではある。

 この特異点を元に戻す。それが彼女を救う事にもなる。だから、後は任せろ。そういう意図を持って伝える。

 そして、俺の言葉を聞いて光となったヘラクレスは少しだけ安らかな顔をしながら消えていった。

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