前回のあらすじ!
二回エクスカリバー打たれた!
ついでに所長救った。
今回から数話ぐらいは、特異点には突入せずに色々とします。藤丸くんの講義とか、召喚とか。急ぎすぎるとこの作品はすぐ終わってしまいますので。
次への準備
ある一室、そこでは音が鳴り響く。断続的で、無機質、そして小さな音。
たったそれだけが聞こえてくる。何も聞こえないよりはマシだが、どうにもそれに意識を向けてしまう。そしてそれのせいで、余計に待つという時間が長く感じてしまう。
その時計の針という音により、時間を意識してしまい、暇という感情が生まれる。ただ椅子に座るだけの作業はどうも落ち着かない。
しかし、それは十分ほど続くだけで終わった。何故なら、俺の待つ人物、目の前にあるドアの向こう側から一人の人が現れたからだ。
「終わったぞ。」
「ああ、ありがとう。」
机や椅子、ベッド、そしていくつかの資料のファイルが置かれてある診察室。そこで待っていた俺は、部屋に入ってきた人物に感謝をする。
ウィリアムズ・ザケランダム、それが彼の名だ。愛称はウィルらしいけど、俺が使うのは早すぎる。
ダンディで低い声が特徴的で、黒い肌を持ち合わせる強面の彼は、顔に似合わず医療機関の一人らしく、主に機械や魔術機器のメンテナンスが仕事だったらしい。しかし、初レイシフト時に起きた事件の爆発により、従業員の大半は重症、よって患者の直接治療も仕事になったそうだ。
「それでウィリアムズ、結果は?」
俺がここで言っているのは、身体検査の結果だ。先ほどまであらゆる検査を受けており、診察室で待っていたのもこのためである。
彼は右手に持ったカルテを見ながら淡々と報告する。
「身体バイタル、精神バイタル、魔力バイタル、全て安全値を満たしている。戦闘を行っても、問題はないだろう。」
「そうか。」
やけに良い声してんな、ウィリアムズ。……じゃなくて。
この結果に対しては驚くも、安堵の溜息をつくこともない。予想していた通りだ。これはただ念の為に受けただけなのだから。
「だが……」
「……だが?」
「精神の方がな。安全値ではある事には変わらん。しかし、他よりも低めと出ている。」
しかし、ウィリアムズが続けた言葉で、俺は心臓が跳ね上がる。
「今は良いが、何かのきっかけで不安定になる可能性がある。」
「わかった、気をつけるよ。」
話は終わった。そう勝手に判断させてもらい、椅子から立ち上がり、部屋をでようとする……
「待て。」
が、止められてしまった。
「こうなったのは原因があるはずだ。お前が動揺してしまった何かがな。」
「……言わなきゃならないか?」
正直あまり言いたくはない。だから、話を切り上げて出て行こうとしたんだが……。
「個人的には気になる。だが、今の俺は医者だ。無闇に傷口を広げる真似は避けたい。
それに、お前の専属ではないしな。他の誰か、例えばドクターロマンに話したいのであれば、そいつに聞いてもらえ。」
無理強いをする気は無いのか。
俺としては話しても良いが、何故そこでロマニの名前が出てくるんだ? あいつは何故か気にくわないんだが。
「まあ、その内話すよ。」
「ならば、さっさと出て行くなり、ここでゆっくりするなり、好きにしろ。俺の要件は終わった。」
「おう。んじゃ、お言葉に甘えて。」
手を軽く上げ、別れの挨拶をし、部屋へと出る。
「さて、どこへ言ったもんか。」
自動ドアを抜けて、左右に伸びた真っ白い廊下を見回しながら、俺は次なる目的地を考える。
しっかし、このカルデアっていうのはどこもかしこも無機質で、生活感がないな。どこを歩いても似たような雰囲気だし、自分のいる場所が分からなくなりそうだ。
……と言っても、そもそも俺はここの全体を知らないから、今下手に歩き回れば、迷子になってしまう。さて、どうしたものか。戻ってウィリアムズに聞くか?
「創太さん。」
と頭を抱えて悩んでいたところ、助け船が来てくれた。
「オルガマリー。」
銀髪の少女、そしてカルデアのトップである彼女は複雑な表情で俺を見てくる。
「お前の方が早く検査が終わったんだな。どうした、何か用があるんだろ?」
「ええ……まあ、それはそう、ですが。」
言葉に詰まっているのか、なかなか本題に入ろうとはしない。
これはどうやら、俺の方から助け船を出さなきゃならないようだ。
「そういえば、藤丸はどうなった?」
何故藤丸の事を聞いたか。それは彼の意識がないからだ。
セイバーと戦い、レフが人理焼却に加担したということが分かった、ということまでが特異点での出来事だ。しかしその後、帰還した時に、慣れない状況下に置かれた反動なのか、彼はコフィンの中で意識を失っていた。
それからすぐさま検査を受ける事になり、俺とマシュ、オルガマリーもそれを受ける事に。そして、さっきのようになった。
「私もまだ報告は受けていないわ。」
「そうか……。まあ、死ぬことはないだろう。」
憶測ではあるが、意識が無いというのは今までにない限界以上の疲労が、脳に襲いかかった結果だろう。
死んでいたという様子では無かったし、安静にさせればいつかは目が醒めるだろう。
「……だったら、お前は?」
しかし、問題はオルガマリー自身にもある。
彼女は本来この場所に、カルデアに帰って来られない存在だった。あの冬木で、彼女は霊体だけの存在となり、特異点でしか生きられない体となってしまった。
だが、特異点が修正される直前、彼女は聖杯に、魂だけとなっても現世に生きられるようにと願い、そして叶えてもらった。
だからと言って何も問題がないとは限らない。オルガマリーも先ほどまで検査を受けていたようだし、結果は出ているはずだ。
「何か不調だったりは?」
「無かった。体が魔力でできているっていう事以外は何も。」
「つまり、それって……」
「第三魔法、魂の物質化が私の体で行われた事になっているわ。」
やはり、か。俺もある事情でそうなってはいるが、その話は別の時にしよう。
「まさかとは思っていたけど、貴方のおかげで私はレフ・ライノールに殺される事を避けられ、更には現代に戻って来れました。
だから……その……ありがと。」
彼女は照れながら顔を背け、恥ずかしそうにする。最後の方は小さな声で、けども、はっきりと感謝の言葉を述べる。
「それはちょっと語弊があるな。」
しかし、俺もはそれを
確かに俺は緑シルクハットからオルガマリーを助けた。けれど、
「お前が生き返ったのは俺のおかげじゃない。お前が願ったからだ。生きたいと、純粋で尊い願いを、お前は口にした。だから、お前はここにいる。俺に感謝するのはお門違いだ。」
「……それでも、貴方のお陰です。こんな私を認めてくれから、私は生きていてもいいのだと思えた。だから、その願いを口にすることができた。」
先ほどとは違い、真剣で尊敬の眼差しで見つめてくる。
これは逆に……なんというか、俺が恥ずかしくなってきそうだ。否定しても、しつこく訂正してきそうだし、別の話に切り替えよう。しかし、何を話すべきか……
「所長、創太さん。お二人も検査が済んだようですね。」
と思えば、廊下の奥から来たマシュが声をかけてくる。
これでどうにか話を逸らすことができそうだ。
「ええ。その様子だと、貴女も済んだようね。」
「はい。しかし、肝心の先輩は……」
とマシュが藤丸を心配するような口振りの途中で館内放送が鳴る。
そういえばだが、
「えー……マイクテスト、マイクテスト。
所長、創太さん、マシュ。至急管制室まで来てください。
繰り返します。所長、創太さん……」
一度目の集合アナウンスを聞いた後、俺たち三人はすでにそこから意識を互いに向け合い、それぞれ目を合わせる。
「どうやら、
「ああ。藤丸がどうなったのかも、多分分かるだろうな。」
「なら、早く行きましょう!」
どうにもマシュは先輩の事が心配なのか、早足で管制室に向かう。
「随分とせっかちだな。
じゃあ、マシュに置いていかれないように、俺たちも行こう。」
「そうね、行きましょう。」
彼女に続く形で俺たちも目的の場所へと歩く。
しかしながら、俺は何度も言っている通りチビだ。そして、必然的に歩幅が小さくなる。だから、マシュのスピードに合わせようとすると……
「……予想はしてたけど、そうなるのね。」
「うるせえ。小走りになるのは仕方ねえんだよ。」
こうでもしないと追いつけないというのは、少し敗北感がある。
けど、こっちの方が利点はあるっちゃあるので、背が欲しいとは思わない。
途中では、カルデアのスタッフ達が慌ただしくしている横を通り過ぎる。おそらくは、爆発における被害の処理をしているのだろう。しかし、人数自体は少なく、ごった返しになっているわけではなかった。それでも、彼らの労力はとんでもない事になっているのだろう。
そうこうしている内に、俺たちは目的の場所である管制室に到着する。自動ドアを再び抜けると、目の前に
「三人ともお疲れ様です。検査は無事に終わったようですね。」
何ともまあ、ふっわふわした医者らしくない医者がいた。
「ええ。一度死んだ後だっていうのに、どこにも異常がないっていうのは驚きよ。」
「その部分に関しては、本当に彼に感謝するしかありませんね。」
「はいはい。その話はいいから。」
褒めるのは後にして、そろそろあいつがどうなったのかを知りたい。
「ロマニ。あいつは、藤丸はどうなってる。」
こいつは藤丸の検査を担当した。ならば、すでに結果はでいるだろう。
「彼なら大丈夫です。明日にでもなれば、きっと目が醒めるでしょう。」
それを聞いたマシュは安堵のため息をつく。
「しかし、本題はここからです。」
ゆるふわな雰囲気から真剣な表情に切り替える。おそらくは特異点、そして人理焼却のことだろう。
「まず外の様子だけど、創太さんの言う通り、人一人いない状況になっています。残った人類はカルデア内のみ。」
絶望的な状況、それにマシュは絶句する。
ロマニのその言い方に間違いがあるが、今は指摘しないでおこう。
「おそらく、原因は特異点でしょう?
冬木以外にも特異点が発生し、それが人理焼却の要因となっている。
でないと、特異点を解決しているにも関わらず、外に人がいないと言う事に理由がつかない。」
「はい、その通りです。
カルデアスにより観測した所、特異点が七つ見つかりました。それで全てです。」
ほう、なるほど。逆に言えば、それを解決すれば良いのだろう。
確実にゆっくりと……などとはいかないのだろう。
「期間はいつまでなんだ?」
「そこまで分かっているだなんて、貴方は……」
「ドクター、それは一体どういう事ですか?」
驚く表情を見せるロマニ。しかし、マシュの言葉に遮られる。
「……マシュ、ここカルデアはカルデアスの磁場によって守られている。けど、それはあくまでも二〇一六年まで。二〇一七年以降になると、ここも焼却されてしまうと、カルデアスでそう観測されたんだ。」
「と言う事は、今が二〇一六年の三月……ここが焼却されるまで一年もないのか。」
これを短いと捉えるべきか、余裕があると捉えるべきか。
今回の冬木特異点では一日で解決できたが、これからどうなるかは分からない。だから、本来ならば早めに解決しなければならないだろう。
「これからどうなるかは分からない。レフやその仲間が邪魔しないとも限らない。
だから、今判明している特異点だけでも解決しなくてはならない。それが僕の考えです。」
「そうね、今すぐではなくとも、三日後ぐらいには……」
「いいや、十日だ。」
しかし、ここはあえて待ってもらおう。
「俺はここへ来て一日も経ってない。カルデア内の把握やら、戦闘の準備やらをさせてもらう。
工房とかも確保したいしな。」
前に使っていた工房は世界ごと焼かれただろうから、ここで最低限の工房は用意したい。自身だけでも多くの魔術は使えるが、能力の関係で短時間限定になる。
「それなら、一日でもできるんじゃないんですか?
準備というのもそこまで掛かるものじゃ……」
「他にも俺以外の準備をする必要がある。例えば、そこの彼女とかな。」
俺に指差された人物、マシュは何故自分なのかと驚く。
「え……私、ですか?」
「ああ、お前はデミ・サーヴァントとなってから日が浅すぎる。これからの特異点で、経験不足が仇となる可能性がある。ならせめて、出来る限り模擬戦をして、力の穴を埋めるべきだ。」
俺以外の三人は一理あると言った表情で、黙々と話を聞く。
「それに、藤丸の事もあるしな。」
「どうしてそこで彼の名前が出てくるのかしら。
まさか、今後も彼を特異点に行かせるなんて事を……」
「それをするんだ。」
想定外の言葉であったのか、オルガマリーは目を見開き、同時にまくし立てるような、怒りをあらわにする。
「貴方! 一体どういう事よ! 彼が戦力になると思っているの! あいつはただマスター適正があるだけの一般人よ! それを……」
かなり棘はあるが、言葉の節々に彼を思っていることがうかがえる。
「オルガマリー。」
しかし、彼女のそれすらも押さえ込み、黙らせ、威圧させ、それ以上追求できないような声を放つ。
「……ある一人の話をしよう。」
先ほどの迫力とは打って変わり、次は柔らかく語りかけるように話す。
何度も知り合いの話を引き合いに出して悪いと思ってはいるが、適切な物がこれしか無い。いや、この話があったからこそ、俺は藤丸を待つという選択をしようとしているのだ。
「そいつはどうしようもないお人好しで、いつも誰かを幸せにしたい、救いたいと願っていた。それがそいつの全てで、夢だった。
夢を叶えるためにそいつは奮闘し、失敗し、それでも切望していた。
けど、一人じゃなかった。仲間もいて助け合ったりした。……結果的に、ではあるが。
そいつは仲間を信用し、そして仲間からも信頼されていた。けれども、そいつから仲間へと頼ったことはない。
いつも先走って、自分の身を省みず、どれだけ傷ついても止まることはない。ついにはその仲間からも見捨てられ、夢を叶えることはなかった。」
これは俺が直接知った話ではなく、その知り合いを知っている友人から聞いた話だ。
一人で駆け抜け、一人で夢半ばで途絶えた、正義の味方を目指した奴の話。
「……だから、仲間は多くいる、と?」
「ああ。けど、分かっているとは思うが、これは俺の考えだ。無視してもらっても構わない。それに、藤丸が一緒に来るかなんてのは、あいつの選択を聞かないと分からない。」
先の特異点では藤丸を魔術の世界から遠ざけようとはしていたが、外の世界が滅んでしまったのであれば話は別だ。四の五の言ってられないし、途中参加になってしまえば中途半端で危険だ。やるのであれば、最初からついてきてほしい。
「あくまでもこれは俺の意見だ。
準備をある程度してから行くか、それともそんな暇はないと判断して出来る限り早く行くか。
最終的に決めるのはトップの権限であり、そして責任だ。」
判断はオルガマリーに任せる。そう伝え、俺の話を終わらせる。
話を聞き終わった彼女は考えるような素振りを見せ、その後に口を開く。
「……私の考えを言います。」
彼女は上に立つ者として、威厳を保つ言い方をしようとする。しかし、元々そんなのないので、意地を張っているようにしか見えない。
「ドクターの意見は少々早計であり、確実性を欠いています。しかし、創太さんの提示した十日という期間は長すぎます。
よって、次の特異点への
メンバーは暫定的に創太とマシュ。藤丸立香は本人からの要望があれば聞き入れましょう。
何か質問は?」
まあ、妥当な判断ではあるだろう。
むしろ、俺とロマニの意見を聞いて、それをまとめてくれた。賢明な上司だ。
「期間に関しては問題ない。けど、俺の部屋と工房はどこになるんだ?」
部屋は俺以外が全員決められているそうだが、俺のがまだ決まっていない。
せめて寝る場所ぐらいは欲しい。
「今回の事件で空き部屋は山ほどできたから、好きな場所を選ぶといいわ。工房は……」
「フフンッ。どうやら、私の出番のようだね。」
この気配は、まさかっ——!
「はじめまして、古崖創太クン。
私はレオナルド、ここの技術部のトップだ。」
部屋に突然入ってきた女性。それに全員の視線が集まる。
美女。まさにその言葉の通りの人物。しかし、どこかで見たことがあるような顔だった。……ついでに声も。
「……はじめまして。
さっきの言い方だと工房をなんとかしてくれるみたいな言い方だったが……」
「——サーヴァント。
貴方はサーヴァントですか!」
急に驚き出すマシュ。俺もその事には気づいていたものの、先に言われてしまった。
「そう、正解だ。
カルデア技術局特別名誉顧問、レオナルドとは仮の名前。私こそルネサンスの誉れ高い万能の発明家、レオナルド・ダ・ヴィンチその人さ!」
……頭が痛くなってきそうだ。特にその声でそのセリフを言っていることが。
「気軽にダ・ヴィンチちゃんと呼ぶように。」
「……それでレオナルド。俺の工房作りについては?」
「ぶーぶー、ノリが悪いな〜。こういうのはちゃんと合わせてくれないきゃいけないんだぜ?」
レオナルドは分かりやすいように頬を膨らませ、怒っているように見せるが、色々と突っ込んでいくと話が終わらないので話題を広げないようにさせてもらう。
何故モナ・リザそっくりなのか、とか。何故ここにいるのか、とか。
唯一女性である事については別にどうでもいい。
「ダ・ヴィンチ、さっさと要件を話しなさい。」
「所長もノリが悪いなあ。」
不満を言った後、彼女は咳払いを一つして話を続ける。
「さて、工房作りの話だが、私がその手伝いをしよう。なんなら道具の一つや二つ、貸してあげてもいいんだぜ?」
「それはありがたいが、見返りとかはいらないのか?」
無償という言葉は一番怖い。それが無いことを望む。
「もちろん要るさ。
先ほどの特異点での一部始終は見させてもらってね、君の魔術は実に面白い。それをすこーし、いいや、大いに教えてもらいたい。」
また俺の魔術かよ。昔はコルキスの王女にも狙われたっていうのに、今度は芸術家ですか。
教えたところで他人がホイホイ使えるわけでも無いんだよなあ。……いやでもまさかな。
「分かった。情報を提供するだけでいいんだな。満足するかどうかは分からないが、工房作りの合間にでも話すよ。」
「オーケイ。楽しみにしているよ。」
これでひとまず、工房の確保はできそうだ。
「話は以上ですね。他には?」
「……はい。」
静かに手をあげる人物、マシュに皆の視線が集まる。
「あの、次の特異点はどこになるのでしょうか?」
次なる特異点、つまりは戦場か。どこに行くかによって、敵も違うし、状況も違う。それによって準備するものも変わってくるだろう。
「君たちからの意見も聞くけど、最有力候補としてはもう決まっているんだ。場所はフランスのオルレアン……」
——おい、まさかだろ。
その名を聞いた瞬間、冷や汗が全身から出てくる。
いいや、まだそうと決まったわけではない。しかし、もしそうとなれば……俺は……
「年代は西暦一四三一年……」
——何故、何故なんだ。
その年代は、
「ジャンヌ・ダルクが活躍した百年戦争に生まれた特異点だ。」
ああ、ついにその名前が出てしまったのか。
それは最も俺が信頼し、尊敬し、
そして、最も愛した人の