今回はただの説明回です。オリ主が自身の力について淡々と語るだけなので、そんなもん聞いてられるか!という人はすっ飛ばしてください。
一応、オリ主の力はかなり強力だけど、何でもかんでも使えるチートじゃないよって説明したかったんですけど、客観的に見れば充分チートなんですよね。
「ふう、食った食った。」
藤丸の見舞いを終えて食堂での食事を済ませた俺は、ゆっくりとカルデアの廊下を歩く。行き先は昨日作った俺の工房だ。
昨日作ったはいいものの、基礎部分だけなので、これから自分好みにアレンジをしなくてはならないのだ。
食堂には誰もいなかったので、材料を勝手に使わせてもらい自分で作った。久しぶりにチャーハンを作ったけど、なかなか上手くできていたと思う。
途中でムニエルとかいう人が入ってきたので、その人にも分けてあげた、というのはただの余談だ。結構喜んでもらえたし、満足満足。
そんなこんなで、工房へと戻ってきた。
昨日はレオナルドと一緒にこの工房を作ったのだが、まあなんとも変哲も無いことでしょう。木の机に、木の椅子、おまけに照明器具は天井に元々ついてあった蛍光灯と来た。
ただ唯一の怪しげな物体は、机の上に置かれてある謎めいた機械だけだ。
「……何でここにいるんだ、レオナルド?」
いや、唯一ではなかった。他にもう一人、部屋の隅々を観察する芸術家がいた。
昨日話してみてわかったが、いや、その体を女体にしている時点で、話さなくても分かるが、彼女……彼? は変態だ。
「お、ようやく来たね。何もなくて退屈してたんだよ〜。」
「退屈なら、自分の工房に帰ってくれ。」
「あれれ〜? 昨日の約束覚えていないのかい?」
昨日? 確かレオナルドに工房作りに手伝ってもらって、それから……
「君の魔術の事だよ。昨日は途中までしか説明してもらってないからね。」
「そうだった。悪い悪い。」
マシュの特訓やら、急な藤丸の見舞いやらで忘れてしまった。
本当は俺の魔術を公にするのはしたくないのだが、というかしたら後々に大事になるのだが、今回は世界を救う仲間という事で例外だ。
もちろん、藤丸やマシュ、オルガマリー達にも打ち明けるつもりだ。
「で、どこまで話したっけ?」
「変換魔術と属性が力だっていうとこぐらいかな。」
「そこまでか。」
それが俺の力の全容ではあったりするのだが……
「けど、それだけじゃあ、特異点での活躍に説明がつかない。」
と、相手方としては納得がいかないみたいだ。
「私の見立てじゃあ、特異点で見せた力を発揮するのに、君が持つ身体能力も魔力も低すぎる。」
「なら、復習だ。」
ここは一つ一つ丁寧に説明しよう。
「まず、変換魔術についてだ。
これはある物体の性質を別の性質に変えるという魔術……っていうのは言わなくても分かるよな。」
「もちろんだとも。魔術基礎の一つ、変換魔術。
置換魔術のように全てを置き換える訳じゃないから、その分効率が良い魔術だ。」
「そういう事。一応後々の理解をしやすくするために、例を出しとくと……そうだ。ここに、人形がある。」
何かないかと部屋を見渡すと、机の上に手頃そうな人形があったのでそれを手に取る。
人形といっても藁とか、木とかでできたものではなく、布に綿が積まれた呪い系ではない人形だ。
「この人形は柔かく、そこそこ引っ張っても千切れない強度がある。」
そう言いながら人形の腕を折り曲げてみたり、引っ張ってみたりする。これが本物の人間ならば拷問となっていただろう。
「それを俺の魔術で、柔軟性と強度を変換させると……
俺がずっと慣れ親しんだ詠唱、それとともに人形は変質していく。魔力を使い、元の性質から別の性質へと変換する。
見た目こそ違いは無けれど、これは別のものへと変わった。
「よし、これでいいかな。」
そう言って、人形の腕の先を掴み地面と平行にさせる。すると、なんとあんなにふにゃふにゃだったのに、肩から先はピンッと真っ直ぐに伸びているではありませんか。
「こうやって、硬度のあるものに変化する。」
「けどそれ、魔術で性質を付与しているだけにも見えるけど?」
「それが、ちょっと違うんだな。試しにこうやると……」
硬化した人形の腕で机の角を二度ほど叩く。そうすると、腕は叩いた場所で真っ二つに割れ、更には床に落ち、その衝撃で粉々に砕け散ってしまう。
ただ硬度を高めただけなら、こうはいかない。
その様子を見たレオナルドは『ほう』と言い、興味深そうな目で観察する。
「この人形、最初は『強度』があった。けれども、俺はそれを硬度に変え、柔軟さを無くした。これにより人形の腕は『硬く脆い性質』に変わってしまったんだ。」
あくまでも俺が使う魔術は付け加えるのではなく、元々ある物を別の物に変えるのだと、念を押す。
これによって、俺ができることの解釈に差異が生まれてしまっては困る。
「なるほどね。その部分に関しては、まあ基本的ではあるし、元から知識があるから良しとしよう。けど、本題はその次だ。
属性が『力』なんていうのは聞いた事ないけど?」
「そうだろうな。なんせ、あのコルキスの王女ですら知らなかったみたいだし。」
「それは十年前の聖杯戦争のことかな?」
「ああ。実験材料にされそうだったよ。」
あの時はあっという間に体を乗っ取られるという屈辱があったが、今なら勝てる自信すらある。魔術師としての勝負は別問題だけど。
「話を戻すと、力っていうのは単純に、筋力や体力のことだ。というか、力に関連するものなら、だいたい扱える。
さっきも言った筋力や体力なんかの身体能力に関する力、重力や磁力と言った自然現象に関する力、さらには存在力と言った概念的なものもな。」
これだけならば
「へえ、なら相手の力を跳ね返すってのは……」
「あ、それは無理。」
早速、レオナルドが欠点を言ってくれた。が、説明するのは後だ。
「ちぇー、それができたらかっこいいんだけどなー。」
「まあまあ、何故無理なのかは後々にして、まずは何ができるかを説明するから。」
拗ねる彼女をなだめながらも、話を進めていく。
にしても、跳ね返せてカッコいいというのは、少し子供っぽい気がする。
「さて、俺の能力のことで勘違いされやすい事をあらかじめ言っておくが、この能力は万能じゃないんだ。」
「そうなのかい? 万能な私から見ても、君の力は私に及ばないにしても、人としては十分万能だとは思うよ。」
及ばないって、ちょっと自負しすぎじゃないのかこの芸術家。自分で言うのもあれなんだが、本来なら時計塔とかの大御所が喉から手が出るほどの能力なんだぞ。
……まあ、黙っていよう。別に自慢したいわけでもないし。
「実質的にはそうなんだろう。だが、俺の能力は特化させる事に向いてるんだ。」
「——ほう、聞かせてもらえるかな?」
この顔……おそらく彼女は、大方の予想がついているようだ。しかし、あえて自身の口からは語らずにいる。つまりは俺からの確証が欲しいらしい。
なら、聞かせてやろうじゃないか。
「まず、さっきも言った通り、俺の属性は『力』だ。基本的に魔術はそれを対象として発動する。そして、その魔術は変換魔術だ。
次にその『力』何に変換するか。もちろん、『別の力』だ。」
「勿体ぶってないで、早く結論を言いなよ。」
おっと、こりゃあちょっと格好つけすぎたようだ。お陰でレオナルドが不満そうに急かす。
「失礼失礼。
まあ、何が言いたいかというと、俺は魔力とスタミナやら耐久力やらをそのまま筋力や敏捷力に変えて、身体能力を極限まで向上させ、限定的に英霊に匹敵する力を手に入れてるってわけだ。
ただし、一般人に殴られただけで致命傷になりかねない脆い体になってしまうんだけどな。」
致命的な欠点を生み出す代わりに、それを上回るほどの強みを作る。それが俺の能力であり、そして戦い方だ。
「やはりそうか。あれだけの力を生身で行使するのはおかしいとは思ったけど、それなりの対価を払っているわけだ。
魔術における基礎の基礎、それが君のタネということか。」
「まあな。けど、だからと言って他の奴が真似できるわけでもない。能力を上げようとしても、変換する魔力以外に魔術を使う分にも魔力が必要だし、そもそも効率が悪い。普通の魔術師なら魔力を二使って、筋力を一あげるだけになる。
属性が『力』だからこそ、効率良く魔力を運用できるんだ。」
「なら、
アレ……どのアレだ? 俺、他に何したっけ?
「その顔、覚えてないっていう顔だね。」
「いや、悪い。本当に心当たりがない。何かしら関係性のある単語を出してもらえれば思い出すかもしれん。」
「
レイシフト……あ、思い出した。
「ああ、特異点に移動したあの魔術か。」
「魔法と言っても、ほぼ過言ではないとは思うけど。君はものの数秒でそれを真似て、個人で行使してみせた。
アレは人間一人が気軽に使えるような物じゃない。どれだけ魔術師として優秀だとしても、ね。
仮に君がそうだとしても、どうやって
うーむ、正直ここまで根掘り葉掘り聞いてくるとは予想外だ。まさか、俺の魔術を真似てみようという魂胆でもあるのか?
ここは遠回りにでも聞いてみようか。
「それはこれから共に戦っていく仲間だから、ってことか? それとも、単なる興味か?」
「もちろん両方だよ。」
本当に興味でも聞いているとは——彼女は俺からの情報で一体何をするつもりだろうか。
しかし、魔法……ねえ。
俺としては、術式さえ分かってしまえば無理やり使えるから、魔術と変わりないのだが。
にしても、彼女は少し勘違いしている。どうやら、俺は事前にこのカルデアの情報を、ひいてはカルデアの持つ技術を盗み見たように思っているようだが、実際には違う。それも含めて色々と説明しよう。
「そんじゃあ根本的な疑問、何故
まずはっきり言っておくと、俺は
あんな時間旅行がこの時代に開発されてるなんて、夢にも思わなかった。
「だから、知ったのは昨日だ。
次にどうやって知ったかと言うと、俺は術式を読み取ったんだ。あの管制室で組み上げられた術式から、な。
どうやって読み取ったかといえば、また『力』の属性が関わっている。」
またか、と思われそうだが、俺は終始それに頼っており、だからこそ色んなことができるのだ。
「さっきも言ったが、『力』には魔力も属していて、俺が最も得意としている。だから、魔術であろうと、魔力の残滓であろうと、見た瞬間にそこから術式を読み取ることができるんだ。」
とまあ、何故知っていたかという質問に答えるならば、こんなところか。
次は何故使えるか、だな。
「それでどうやってその術式を使ったか、なんだが、これもまた『力』の属性が関わっている。
簡単に言えば、行使する魔術に合わせて魔力の属性を変えているんだ。火の魔術を使うなら火の属性に。水の魔術なら水の属性に。という具合にな。
そうやって
「……うん、筋は通ってる。嘘を言っているようにも見えないし、それなら——」
納得した。そう言いかけてレオナルドは急に黙り、そして数秒後、真剣な表情で俺の両肩を掴んでくる。
「お、おいどうしたんだ?」
突然の行動に困惑するしかない俺。一体何が彼女の気に触れたのだろうか。
「君、まさかとは思うけど、それって理論上で言えば全ての魔術を使えるってことでは?」
彼女が重い声で言った事は、まさに図星だ。
「ああ。魔力が底をつかない限り、どんな魔術であろうと使える。けど、術式を知らなきゃ意味ない。」
「そうだとしても凄いじゃないか!」
先の重い声から一転、彼女の声は飛び跳ねそうなくらい明るくなる。今までの経験から、これはどうやら技術者としての血を騒がせてしまったようだ。
彼女のこの行動に似たようなモノを何度も見てきた。そして、決まっていつも面倒になりやがる。
「こうなると、色々と研究が捗りそうだ!」
「待て待て。そんな期待するような目で見るな。俺だって限界はあるし、そんなに凄い力を持ってたら、今頃俺は抑止力に殺されてるぞ。」
「いやいや、そこまでは求めていないさ。ただちょっとギリギリを攻めてみるだけだよ。」
「一歩超えたら死ぬかもしれないというチキンレースですね。分かります。」
手札が増えるのは良いことではあるが、死んだら元も子もないので、丁重に断らせていただきたい。
しかし、今回はそれとは別にある物を彼女に作って欲しい。
「レオナルド、お前の考えていることは後で前向きに検討しておく。
けど、今はある礼装を作って欲しいんだ。
「つまり、やってくれるんだね?」
こいつ諦めねえつもりでいやがる……!
「それは一旦置いとけ。
とにかく、礼装作りをやってくれ。具体的に言うと……」
ーーーーー
レオナルドとの礼装作りやら、晩飯やら、シャワーやらで時間はあっという間に過ぎ、今はもう夜中。本来ならば、明日に備えて寝るべき時間だ。
けど、俺はレオナルドに頼んである部屋へと足を踏み入れていた。
「悪いな、礼装作りを頼んでおいて、道案内も頼まれてくれて。」
「構わないさ。むしろ、期待以上の情報を渡してくれたんだから、これくらいはなんともないよ。」
「ああ、ありがとう。」
軽くお礼を言いながらも、俺はある機械の横を通る。それはまるで管制室にあるコフィンのように、人一人が入れるような機械だ。
……いや、実際に入っている。致命傷を受けながらも、冷凍保存によって生きながらえている人たちが。
ここ、医療区画の一角に存在するこの部屋は、元々病室であったのが、以前の事故からコールドスリープ状態となった人を置く場所となっていた。
「ここは……Aチームの場所か。」
その中でも一際大事に扱われているのだと感じさせる場所がある。
他とは違う機械と、そして他と明らかに離して置かれていた。
「そう。本来ならば、君の指導を受ける予定だった人達だ。」
「おいおい、適当なことを言わないでくれよ。
オルガマリーから聞いた。Aチームは一年前か結成されていて、少なくとも仲が悪くはなかったってな。能力としても十分で、俺が口出しする必要はない。」
指揮官という立場を与えられるとは聞いたが、おそらく、実際に指揮するのはBチーム以下だったのだろう。今はマシュと藤丸の二人に絞られつつある。
「さて、俺の目的はこっちじゃなくて……」
ここへ来た理由、それはある人物に会うためだ。そいつはマスターとしてここに呼ばれたわけではないらしく、職員としてスカウトされた。
「ここ……だな。」
あるコフィンの前。そこで足を止める。
「中は見えないし、魔力の波長が弱いけどあいつと全く同じ。
……お前なんだな、
遠坂凛。聖杯戦争からの仲間で、故郷での友人の一人。
彼女とは魔術師として多くを学び合い、そして親しくなった。それが今は意識を失い、この中で眠っている。
「そういえば、君は彼女と知り合いだったんだね。あの聖杯戦争を生き残った仲間、だったかな?」
「ああ。あいつには助けられたりもしたな。」
蘇る十年前の記憶。
未熟なりにも仲間とともに戦い、
それだけで目頭が熱くなり、感情が抑えきれなくなりそうになる。
「悪い。一人にさせてくれ。」
加えて、目の前の彼女の状態は悲惨だ。
こんな……こんなの、人に見せられるわけがない。
「……分かった。入り口に立ってるから、帰るときは声をかけてくれたまえ。」
「いや……少し時間がかかりそうだ。お前は好きにしたらいい。
大丈夫だ。帰り道は覚えた。」
目からこぼれ落ちそうなのを必至に抑えながら、『そうかい。』と言った彼女が出て行くのを待つ。
ドアが開き、そして閉まった音を確認した頃に、ついに頰に熱いものが流れ出す。
ああ……今だけは良いだろう。泣いたって……だって、こんなにも悔しくての……そして悲しいのだから。
死んでは……死んではいない……けど、こうなってしまった。
「すまない……遠坂……!」
無意識に謝ってしまう。俺が事前にカルデアに入っていれば、事件の犯人を捕まえられればと後悔する。そんな物は無意味だと分かっているはずなのに。
けど、必ず救い出す。そう心に誓いながら、涙はとめどなく出てくる。