黒い短編   作:K/K

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彼らから見た輝き

『乾杯!』

 

 ホテルの最上階、二つの意味で高い場所で四人の男たちがワイングラスを掲げる。その表情は誰もが晴れやかなものであった。

 

「ついにやったな!」

「ああ!」

「この日を待ちわびていた!」

「今日はとことん飲むぞ!」

 

 内から湧く喜びの衝動に身を委ね、ワイングラスに注がれた酒を一気に呷る。

 身体の内に流し込まれる冷えた酒。臓腑に落ちると身を燃やす様な熱へと変わる。

 暫しの間、男たちは喉に流し込まれる甘美な酒の美味さに浸り、その間沈黙が訪れていた。尤もつけっぱなしにしていたテレビから流れるニュースを読み上げる声が、その沈黙を掻き消してしまっていたが。

 

 

「みんな! 本当にご苦労様だった! 俺は最高の仲間に恵まれた!」

「おいおい。よせよ。水臭い。それに感謝するのは俺たちの方だぜ? お前というリーダーがいたからここまでやってこれたんだ」

「そうですよ。貴方が居たお陰で僕たちは成功することが出来たんです!」

「全く、お前は最高のリーダーだよ!」

 

 仲間を労う言葉に対し返ってきたの感謝の言葉であった。その言葉に感極まったのか、男は一瞬俯くと、グラスに豪快に酒を注ぎ中身を一気に飲む。中身を飲み干してから上げた顔は真っ赤に染まっていた。

 照れているのを無理矢理誤魔化すのが面白かったのか他の男たちは笑い、リーダーと呼ばれた男も笑う。

 ホテルの一室に男たちの笑いが響き渡る。誰も笑うことは止めない。何故ならば今日は彼らの苦労が報われた日。笑えなかった日々を取り戻す様に豪快に笑う。

 笑い、酒を飲み、再び笑う。それを何度も繰り返し、喜びと酔いに身を任せる。

 ひとしきりそれを繰り返した後、先程までの宴が嘘の様な静寂に満ちた。

 

「本当に成功したんだな……」

 

 何処か夢を見ているかの様に男の一人が呟く。

 するとリーダーはソファーから立ち、窓に向かって歩いていく。他の男たちもそれにつられ窓に近寄っていった。

 窓からはホテルの外の光景が一望出来る。

 

「これを見ても夢だって言えるか?」

 

 窓の外に広がる光景。紛れも無い現実。それを見て、男の一人が鼻を啜り上げる。

 

「おいおい。いい歳した奴が泣いてんのかよ」

「だって……あれだけ頑張ったのが報われたかと思うと、どうしても……」

「バカ、泣いてんじゃねぇよ、まだ最初の一歩だろう、が……」

「そういう、お前だって、泣いてんじゃ、ねぇか」

「お前だって」

 

 皆が泣いていた。頑張って、頑張って成功したことに感極まり泣いていた。

 涙を流す仲間をリーダーは咎めない。彼もまた泣いていたからだ。

 これから先長く苦しい戦いは続く。しかし、今だけは戦友たちとこの喜びを分かち合っても罰は当たらないはず。

 

「見ろ。あれこそ、俺達の魂の輝きだ!」

 

 窓の外に広がる光景を、男たちは涙に濡れた瞳で眺め続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『本日○時頃、△△にある×××ビルにて大きな爆発が起こりました。この爆発で十五人が亡くなり、負傷者の数は三百人に上るようです。警察は大規模なテロ事件と見て捜査を進めています』

 

 




熱い人たちが外道なことをしたら、やっていることの醜さが増すのかという実験みたいな話です。
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