broken [W]ings
西暦5012年、外宇宙から飛来したエイリアンによる侵略行為が始まった。彼らの繰り出す兵器「機械生命体」によって人類文明は壊滅。残った人類は月へと逃げ延びた。
西暦5204年、アンドロイドを使った人類による反攻作戦が開始される。
数十回に及ぶ大規模降下作戦を経ても、機械生命体に決定的な打撃を与えることはできず、アンドロイドと機械生命体の戦いは終わらない。
そんな膠着状態を打破するため、人類は最終決戦兵器としてのアンドロイド「ヨルハ部隊」を作り上げた。
アンドロイド「2B」も、そんなヨルハ部隊の一員だった。だが、彼女は他のアンドロイドと違っていた。決定的に、分かりやすく、彼女は変わっていたのだ。
◇◇◇
上空を6機の機械が飛んでいた。
アンドロイド達が「飛行ユニット」と呼ぶ、戦闘機のような形をしたそれは、規則正しく並んで空を飛んでいた。
「こちら司令部。ヨルハ部隊応答してください」
飛ぶ飛行ユニットに通信が入る。
「こちら2B。全機無事に成層圏を突破。自動航行システムに問題なし」
通信に答えたのは、6機のうち、真ん中辺りを飛ぶ2Bだった。
「こちらオペレーター6O。全機反応確認しました」
「現在、対目標50km地点を通過」
「敵防空圏内に突入後、マニュアル攻撃形態に移行し、目標の大型兵器の破壊と情報の収集にあたってください」
「了解」
しばらく事務的で機械的なやり取りが続く。
だが、その途中、突如として前方から撃ち出された赤く光るレーザーがアンドロイド達を襲う。1機の飛行ユニットがレーザーに直撃し、乗っていたアンドロイドもろとも、爆発して消え去った。
「12H、ロスト」
2Bはその様子を淡々と告げる。
「全機マニュアルモード起動。目視で回避」
「既に起動。移動操作可能」
2Bの言葉に返答したのは、彼女のサポートシステムの箱型の機械「ポッド」だった。
「長距離レーザー発射点を確認」
別のアンドロイドがそう告げた瞬間、撃ち出された2撃目のレーザーがさらに別のアンドロイドを撃ちぬいた。
短い悲鳴のような断末魔と共に、アンドロイドは爆発する。
「11B、ロスト。装備Ho229のキャンセラー効果ナシ」
アンドロイドは感情のこもっていない言葉で告げる。
「前方に敵機確認」
ポッドが低い機械音声で告げる。
「火器使用を申請」
「火器使用の許可をします」
短いやり取りの後、前方からやって来た機械生命体との銃撃戦が始まった。
機械生命体の攻撃と、遠くから撃ち出されるレーザーによって、アンドロイドの数はどんどん減っていき、機械生命体を全滅させたころには、もう残っているのは2Bただ1人だった。
「当機以外の機体は全てロストした。作戦の遂行に支障が予想される。指示を請う」
「オ、オペレーターより2B」
オペレーターの声は少し震えている。
「現地担当の9Sと合流し、地形情報を入手してください」
「了解」
そのまま2Bは目標の大型兵器がいるという廃工場に入っていった。
廃工場の中はひどく入り組んでおり、なかなかに進むのが難しい。さらには、中へ入った2Bを排除するため、機械生命体が飛んでくる。銃撃で機械生命体を破壊していくが、油断していたのか、敵の撃ち出した弾に当たってしまう。
その瞬間、2Bの飛行ユニットが爆発した。
同時に2Bも爆発に巻き込まれ、空中に投げ出される。
爆発の影響で体はボロボロだ。これでは助からないだろう。
薄れゆく意識の中で、2Bは思った。
(やっぱりベリーハードは止めておくべきだった。もっと簡単な難易度に・・・うん?)
ベリーハード?いったい何のことだ?難易度?自分は何を考えているのだ?
頭の中で声が聞こえる。
「エンディングを見るのです。全てのエンディングを見るのです」
それは、自分の声のように聞こえた。
だが、それについて考える余裕もなく、2Bは意識を手放した。
◇◇◇
ヨルハ部隊は壊滅した・・・。
こうして地球はロボットの楽園と化して行った・・・。
NieR:Automata
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◇◇◇
気がつけば、2Bは飛行ユニットに乗って空を飛んでいた。
周りにはアンドロイドも機械生命体もいない。2B1人だけだった。
「2Bさん?2Bさーん?聞こえてますか?」
オペレーターの声が聞こえてくる。通信中だったらしい。
「ああ、聞こえている。問題ない」
「良かった・・・。それでは、現地担当の9Sと合流し、地形情報を入手してください」
「了解」
「2Bさん・・・。仲間が壊されて悲しむ気持ちも分かりますが、頑張ってください」
心配そうにそう言って、オペレーターは通信を切った。どうやら誤解させてしまったらしい。
しかし、自分はさっき破壊されたはずなのに、どうして生きているのだろう。
しかも、何やら時が戻っているようにも感じる。
体は大丈夫なのだろうか。
「ポッド、私の健康状態はどうなってる?」
とりあえずポッドに聞いておく。この異常な感覚について調べておく必要もあったが、飛行ユニットに乗っているのに自分で状態チェックなんてしたら、壁か何かにぶつかってまた死ぬかもしれない。
「健康状態は良好。運動能力に問題ナシ」
ポッドは淡々と聞かれたことに答える。余計な心配だっただろうか。
「ヨルハ機体2Bの内部データに『エンディング』の項目を発見。取得エンディング数、1」
「は?」
ポッドが突然聞きなれない単語を言った。健康状態と関係があるのだろうか。
「エンディング?それは何?」
「不明。エンディング自体は物事の終わりを指す言葉だが、ヨルハ機体2Bの内部データにて発見されたエンディングの項目については、判断材料がないため推測不能」
「不明って、だったら何でそんな言葉・・・」
その瞬間、2Bの頭の中に何かが流れ込んでくる。
「これは・・・」
それは、記憶だった。本来ならばあり得ない記憶が、2Bの記憶の中に存在した。
そしてその記憶は、2Bの何かを変えた。決定的に、明らかに。
2Bは口元をほんの少しだけ上げる。誰にも見えないように笑って、廃工場の中へと入っていった。