9Sは修理のためにボディごとバンカーに打ち上げられることになった。ふと、月面基地に物資を打ち上げていたあの光景を思い出す。物資の中にボロボロのアンドロイドが紛れ込んでいたらトラウマになりそうだ。
9Sがいないあいだ、2Bは司令部からの任務で機械生命体の動向を調査することになった。機械生命体のネットワークを管理していたアダムが死んだことで多くの機械生命体がネットワークから切り離された。それでも、脅威が去ったとは言い切れない。
ポッドの提案で、パスカルなら何か知っているのではないかと連絡をとってみる。すると、廃工場にコロニーを作った機械生命体の集団がパスカルの村と同盟を結びたがっているという。2Bはパスカルの和平交渉に付き合うことに決め、現地で落ち合うことになった。
廃工場に行くと、既にパスカルが待っていて、こちらに手を振ってくる。
「2Bさん、こんにちは。同盟を結びたい機械生命体はこの奥にいるそうです。しかし気をつけてくださいね。我々機械生命体は危険ですから」
「自分達が、危険?」
2Bが聞き返すと、パスカルは頷く。
「ええ、客観的事実です。ネットワークから切り離された私達は、お互いの情報を共有していません。言葉を交わしても、本心とは違うかもしれませんので」
「・・・言葉、か」
言葉を操る者は嘘をつく可能性がある。機械でもその事実は変わらない。
廃工場の中に入ると、綺麗に整列した機械生命体達が2Bとパスカルを待っていた。そして、その中の1体が語り出す。
「ようこそ。神の宿る場所へ・・・」
「うるっさい!!ポッドォ!!!」
機械生命体の言葉を遮る様に叫んだかと思えば、2Bはポッドに命令を下す。
「了解」
突然の2Bの言動にポッドは淡々と反応し、レーザーを撃ち出す。
「我々に戦う意思は―――」
何かを言おうとした機械生命体は、言い終わる前にポッドのレーザーによって爆発する。
辺りがしんと静まる。
他の機械生命体達も何か反応する暇もなく、ポッドの追撃や2Bの攻撃で次々に破壊されていく。
部屋に残ったのは2Bとパスカルだけとなった。
「あのー、2Bさん?これは一体・・・?」
パスカルが話しかけると2Bはハッとした様子で振り返った。
「いや、なんというか・・・条件反射で?」
「条件反射ですか。なるほど」
アンドロイドには何やら変わった機能があるらしい。ツッコミという概念を知らないパスカルはそんな風に考えていた。
◇◇◇
突然癇癪を起こした2Bによって機械生命体は全滅。
アンドロイドとの間に和平が結ばれることはなかった・・・。
NieR:Automata
bad [J]udgment
◇◇◇
パスカルが気がつくと、2Bが廃工場の中へと入っていくところだった。パスカルは慌ててその後をついていく。
「ようこそ。神の宿る場所へ・・・」
廃工場の中では綺麗に整列した機械生命体達が2Bとパスカルを待っており、その中の1体が語り出す。
はて、前にもこんなことがあったような。そんな事を考えるパスカルだったが、2Bが動き出す様子はない。気のせいだったのだろうか。
「こちらの通路をお進みください」
機械生命体の案内で、彼らの「教祖様」がいる部屋に通される。
部屋自体に電気はついておらず、機械生命体達が手に持っていたり部屋に置いてある松明の火がゆらゆらと揺れている。部屋の中央に作られた祭壇のようなものの上に1体の機械生命体が座っている。おそらく彼が教祖様だろう。
「あの・・・私、パスカルと申します。和平交渉についてお話をさせていただく為に・・・」
パスカルが話しかけるが、教祖様は座ったまま動かず、返事もしない。
2Bとパスカルが不思議思っていると、不意に教祖様の体がぐらりと揺れて、頭だけが祭壇から転がり落ちた。
「教祖様はカミになった!」
「カミになった!」
驚く2Bとパスカルをよそに部屋にいる機械生命体のうち1体が叫び、それに合わせて他の機械生命体達も叫ぶ。
「教祖様はカミになった!」
「カミになった!」
「教祖様はカミになった!」
「カミになった!」
「私達もカミになる!」
「カミになる!」
「私達もカミになる!」
「カミになる!」
「君達もカミになる!」
「カミになる!」
「君達もカミになる!」
「カミになる!」
叫びながら機械生命体達は2Bとパスカルを囲んでいく。
「皆で死んで、カミになる!!」
そして彼らは襲い掛かってくる。そんな彼らを2Bは迎撃していく。
「やはり私の予想は的中したようですね。しかし興味深い・・・こんな特殊な思想を持つ機械生命体は見た事がありません。きっと貴重なサンプルとして・・・」
「いいから逃げるッ!」
呑気に話すパスカルに2Bは叫ぶ。
しかしながら、こんな結果になるのならば出会った時点で破壊したところで特に問題はなかったのではないだろうか。まあ、結果論に過ぎないのだが。
そんな事を考えるパスカルだったが、2Bが聞いたら「さっさと逃げるッ!」と怒られそうな気がしたので口には出さないことにした。