次回から9Sが大活躍(?)する2週目に入ります。
「コロス、コロス、コロス、コロス」
廃工場で機械生命体は言葉を発した。
「コノママジャ ダメ」
砂漠の機械生命体達は変貌した。
「私は・・・私は・・・美しくなるんだっ!!」
遊園地で機械生命体は叫び続けた。
「我らが森の王の為に!!」
森の国の機械生命体達は守り続けた。
「私達、機械生命体は人類に興味があるんだ」
複製された街で戦った機械生命体は貪欲だった。
「カミになるのだー!」
廃工場の機械生命体達は信じ続けた。
彼らの行動はどれも違った目的によるものだったが、彼らは皆必死だったように思う。
「誰かと一緒に行動出来るって、楽しいんです」
一緒に行動したアンドロイドは喜んでいた。
「ちょっと好きだった先輩を食事に誘ったら断られちゃって・・・」
自分をサポートしてくれたアンドロイドは一喜一憂していた。
「無事で良かった」
部隊を指揮するアンドロイドはよく自分の身を案じてくれた。
感情なんてないと思っていた機械生命体は、様々な感情を見せた。
感情を禁止されたアンドロイドは、感情を隠そうとはしなかった。
彼らは成長するが故に弱く、感情を持つが故に苦しみ、考えるが故に悩む。
◇◇◇
アダムが死んだことで弟のイヴは暴走した。機械生命体のネットワークを統括する存在であるイヴの暴走。それはネットワークで繋がった全ての機械生命体の暴走を意味した。
「お前たちも思うだろう?こんな世界・・・意味がないって」
イヴを止めるためにやって来た2Bと9Sにイヴは語る。
「俺にとっては、にイチゃんが・・・にいチャンダケガ・・・全部・・・消エテ無クナレッ!!」
イヴの周りに機械生命体が集まっていき、イヴに近づくと次から次へとバラバラに自壊していく。壊れた機械生命体のパーツはイヴへと集まっていき、巨大な腕のような形を形成する。
「どうしてニイチャんを殺しタッ!!俺は・・・オレはッッ!!」
巨大な鉄の腕を2Bに向かって叩きつけながら、イヴは叫ぶ。
2Bはイヴの攻撃を躱しながら武器を構える。
こうしてイヴとの最後の戦いが始まった。
イヴとの戦いは熾烈を極めた。いくらダメージを受けようとも、ネットワークで他の機械生命体からエネルギーを吸い取り回復してしまうイヴに対して、9Sはハッキングでイヴをネットワークから切り離そうと試みる。
暴走するイヴの攻撃は苛烈さを増す。2Bの武器は折れ、体のいくつかの機能は損壊し、思うように動けなくなる。
それでも、最後は折れた刃をイヴに突き刺し、イヴは静かに倒れた。戦いは終わった。
だが、イヴにハッキングした9Sの体はウィルスに侵食されてしまっていた。ウィルスを持ったままバンカーに帰る訳にはいかない。9Sは2Bに自分を殺すように頼んだ。
バンカーにあるデータで復活することはできる。だが、それで「今」の9Sが戻ってくる訳ではない。
だから2Bは迷った。迷ったが、ゆっくりと9Sの首に手をかけた。
首を絞めると9Sの苦しそうな呻き声が聞こえ、2Bは手の力を強くする。しっかり殺せるように。迷わず殺せるように。
やがて、9Sの体から力が抜け、彼は動かなくなった。
そして2Bは泣いた。涙を流して泣いた。
その時だった。1体の壊れた機械生命体の目が点滅する。するとそれに反応するように周囲の壊れた機械生命体達の目が一斉に点滅しだす。
突然の現象に戸惑っていると、1体の大型の機械生命体が起き上がる。
2Bが折れた武器を構えると、その機械生命体は慌てたようにこう言った。
「ちょ、ちょっと待って!2B!!」
「・・・君は・・・」
機械生命体の発した声は9Sのものだった。
「僕、パーソナルデータを機械生命体側に残していたみたいで。なんか気づいたら周囲のネットワークの上で自我が再形成されたんだ。こうやって複数の自我が統合されていくのは貴重な体験だから記録しておきたいんだけど、まだ保存領域へのアクセスが出来てなくて、とりあえずこのあたりにある敵のメモリーに多重化して保存しておいた後に、僕が自分のボディに戻れた時に・・・」
「9S・・・」
興奮した様子で早口に語る9Sだったが、2Bに名前を呼ばれ言葉を止める。
「よかった・・・」
「・・・うん」
◇◇◇
機械生命体と私達アンドロイドを分かつモノは何だろうか。
意思と感情を持つに至ったロボット達。
彼らが死の間際に振り絞る、最後の叫びが今もまだ、私の中に残っている。
NieR:Automata
flowers for m[A]chines
◇◇◇
9Sが目を覚ますとバンカーの自室だった。当然だが体はアンドロイドのものだ。
何やら不思議な気分だ。見知らぬ誰かの記憶をずっと見ていたような、そんな気分。
そんな奇妙な感覚に戸惑っていると、通信が入る。
「オペレーター21Oから9Sへ。聞こえてますか?」
「聞こえてますよー」
「司令官が呼んでいます。司令部まで来てください」
「了解しましたー」
真面目で仕事以外の話はあまりしないオペレーターからの通信はすぐに切れた。9Sは先程までの感覚の正体については保留することにしてとりあえず司令部へと向かう。
司令部で9Sは司令官からヨルハ降下作戦についての説明を受けた。
廃工場の敵大型兵器を破壊するため、9Sは先行して現地の事前調査と防衛システムの解除をしろとのことだ。
司令部を出た後、念のために飛行ユニットで地上へ向かう前に自分の体に異常がないかチェックする。
「あれ?・・・なんだ、これ?」
チェックのために開いた各種項目。その中にまるで最初からあったかのように「エンディング」の項目があった。
エンディング取得数 11
消そうとしても消すことができない。ハッキングをしようとしても効果がない。まるで神の意思でも働いているかのようだ。
体に悪影響を与えている訳ではないので、仕方なく9Sはそのまま地上へと向かうことにした。