アンドロイドはエンディングの夢を見るか?   作:灰色平行線

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どうしてこうなった。


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 廃工場にて。

「ニイチャン・・・ニイチャン・・・」

 壊れて機能停止した中型機械生命体に呼びかけながら、小型機械生命体がその体を揺らす。

「ニイチャン・・・ウゴイテ・・・」

 中型の機械生命体は動かない。

「ニイチャン、マッテテ・・・」

 小型の機械生命体はどこからバケツを持ってきて、廃工場の壊れたパイプから漏れ出るオイルを汲んでくる。

「ニイチャン、モウダイジョウブ!」

 バケツに汲んだオイルを中型の機械生命体にかける。しかし、動かない。

「いくら油を差しても機械生命体に家族なんかできませんよ~」

 そんな様子を9Sは遠くから眺めていた。

 廃工場の現地調査をあらかた終えてデータを整理している最中、ふと上を見上げれば、6つの飛行ユニットが線を引いて飛んでいた。

「そろそろ始まりますね・・・」

 誰に言うでもなく、9Sはそう呟いた。

 

「オペレーター21Oから9Sへ。聞こえてますか?」

「聞こえてますよー」

 オペレーターからの通信に、9Sは軽く返す。

「ヨルハ部隊降下作戦が開始されました。速やかに敵拠点の防衛システムを解除してください」

「了解しましたー」

 通信が切れる。

 下を見れば飛行ユニットが置いてある。これに乗れば本格的に任務が始まるだろう。

「・・・」

 ふと気になって別の方向に目をむける。

 小型の機械生命体は懲りずに中型の機械生命体にオイルをかけていた。

 まったく理解に苦しむ。機械生命体に家族なんていない。どうせあの行動も人類の模倣にすぎないだろう。というかあの機械生命体はいつまでオイルをぶっかければ気が済むんだ。もうオイルまみれじゃないか。・・・あ、転んだ。オイルを地面にぶちまけた。・・・またオイル汲みに行った。いい加減学習したらどうなのだろうか。それとも学習する機能がないのか、あるいは学習する条件が違うのか、考えれば考える程機械生命体というのは興味深い。もしかしたらあの小型の機械生命体は中型の機械生命体のことを本当に自分の兄だと思っているのかもしれない。そういえば最近は戦わずに何もせずただ立っているだけの機械生命体も増えてきたと聞く。彼らは一体何を考えているのだろう。ああ、試しにあの機械生命体にハッキングでも仕掛けてみようか。彼?彼女?は一体何を考えているんだろうか。頭の中にあるのはやっぱり「ニイチャン」かな?それとも別の何かかな?それとも何も無いのかな?ああ、もう我慢できない。

 

 そして、9Sは動く。

 ただし、飛行ユニットとは別の方向へだ。

 

 ◇◇◇

 

「機械生命体に対する興味がもう抑えられないです。独立して好きに研究させてもらいます」

 そう言い残して、9Sは姿を消した。

 

 NieR:Automata

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 ◇◇◇

 

「脱走兵の9Sだな、貴様には捕縛命令が出ている。だが、抵抗するようなら殺してもよいとも言われている。大人しく捕まるなら殺しはしない」

 薄暗い建物の中、ヨルハ暗殺部隊の1人である彼女は目の前にいるアンドロイドにそう言った。

 アンドロイドは口元をマスクで隠しているが、軽い感じでニヤニヤと笑っているのはよく分かる。

「えー、僕もうバンカーに戻るつもりはこれっぽっちもないんですよねー。だからちょっと貴女には彼女達と同じ目にあってもらいますね」

 そう言って9Sがある部屋の扉を開けると、彼女は目に映った光景に思わず顔をしかめた。

 部屋の中にはアンドロイドと機械生命体の死体であふれていた。ほぼ全ての死体が何らかの手を加えられており、綺麗な形の死体など1つもなかった。

「貴様・・・一体いくつのアンドロイドを・・・いくつの機械生命体を実験台に使ったんだ!?」

 彼女は9Sを睨みつけて叫ぶが、彼は気にする様子もない。

「アンドロイドは32、機械生命体は54でしたっけ」

「か、数えてたのか・・・!?」

「記録は大事ですよ?生きる糧になりますからね」

 あくまでも軽い感じで9Sはそう言う。

「き、貴様ァァッ!!」

 彼女は武器を構えて9Sに向かって駆ける。

 9Sは慌てることもなく、ポケットから取り出した霧吹きのような物で彼女に何かを吹きかける。

 空気感染するウィルスの類かと、口を手で覆うが、完全に防ぐことは出来ず、鼻や口に冷たい物が広がる。

 その瞬間、彼女の体は動かなくなり、その場に倒れてしまう。

「な・・・え・・・?」

「知ってましたー?研究して分かったんですけどアンドロイドってアジに弱いんですよー。アジ、知ってます?魚のアジです。この霧吹きにはアジの体液を抽出したものをいれてるんです。僕みたいにちゃんと対策しとかないと、体内に入ったらもうアウトなんですから」

 彼女は何か言おうとしたが、もう口が動かない。

「さあて、今度はどんな実験をしようかなー?」

 そんな彼女を見て9Sはニヤリと笑った。

 

 ◇◇◇

 

「9S?9S?」

「・・・あれ?」

 気がつけば9Sは廃工場にいた。さっきまで何やらハイになっていたような気がするが、気のせいだろうか。

「9S?聞こえていますか?」

「え?ああ、はい。聞こえてます」

「聞こえているなら最初から返事をしてください」

「ご、ごめんなさい」

 怒られてしまった。

「まったく・・・通信エラーかと思いました・・・」

 文句を言う割にはどことなくほっとした様子が窺える。

「・・・もしかして、心配してくれたんですか?」

「ええ、貴方がいなければ作戦に支障がでますからね。ヨルハ降下作戦が開始されたので速やかに敵拠点の防衛システムを解除してください」

「了解しました」

 通信が切れる。もう少し柔らかくなってもいいんじゃないかなと考えながら、9Sは飛行ユニットに乗る。

 飛行ユニットに乗りながら、自分に異常がないか気になって、飛ぶ前に軽く自分のメンテナンスをする。

「・・・どこにも異常はなし。さっきのは夢だったのか?・・・あれ?」

 

エンディング取得数 12

 

「・・・増えてる?」

 




アネモネ「最近アンドロイドも機械生命体も無差別に襲うアンドロイドがいるらしい。お前も気をつけた方が良い」

パスカル「なんと、恐ろしいですねえ」

あるいはこうなる予定でした。どっちみち9Sはマッドサイエンティストまっしぐらですが。

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