アンドロイドはエンディングの夢を見るか?   作:灰色平行線

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オリジナルの部分よりも元々のストーリーをどう書くかが1番悩む所です。


corru[P]tion

 機械生命体に対する総攻撃によって長く続いた機械生命体とアンドロイドの戦争は終わりを迎えるはずだった。

 2Bは遊撃部隊として各地で戦うヨルハ部隊の援護をしながら戦場を駆けていた。機械生命体を破壊していき、他のヨルハ部隊も遊撃に加わってあらかた片付いたかと思われたその時だった。

 新たに出現した機械生命体達による至近距離からのEMP攻撃(核爆発や雷などによって発生するパルス状の電磁波を利用した攻撃)によって2B達は機能停止に追い込まれる。

「2Bッ!?」

 駆け付けた9Sが機械生命体との戦闘を開始する。2B達が再起動するまでの時間を稼がねば。

 

 機械生命体を全て破壊すると、機能停止して倒れていた2B達が起き上がる。だが、9Sが安心したのも一瞬のこと、すぐに次の絶望はやってきた。

 起き上がったアンドロイド達が突如として苦しみだす。

「これは・・・広域ウィルス!?・・・さっきのEMP攻撃がトリガー!?」

 9Sはウィルスを取り除くためにアンドロイド達にハッキングを仕掛けていく。ハッキングの甲斐あって2Bはなんとか正気を取り戻す。

 だが、他のアンドロイド達の様子がおかしい。

 笑い声をあげながらこちらを見る彼女達の目は、機械生命体と同じように赤く光っていた。

 襲い掛かってくるアンドロイド達と戦う2Bと9Sだったが、数が多すぎる。さらに機械生命体による妨害電波によってバンカーに連絡をとろうとするが繋がらない。

 段々と追い詰められていく2人。

 最後の手段として、2Bと9Sはブラックボックスを使って自爆した。周りのアンドロイド達をまとめて破壊するために。そして、連絡のとれないバンカーに戻るために。

 

 ◇◇◇

 

 バンカーで再起動した2人は司令部へと向かった。

 司令官に地上での出来事を報告するが、「そんな報告は上がっていない」と信じてもらえず、さらにはウィルスに汚染しているのは2B達の方ではないかと疑われてしまう。

 だが次の瞬間、司令部のアンドロイド達が苦しみだしたかと思えば、地上で見たのと同じ赤い目をこちらに向けていた。赤い目の彼女達は、司令部に残っていたアンドロイドはもちろん、本来戦闘型ではないオペレーター達も、皆一斉に襲い掛かってくる。

 既にバンカーもウィルスに汚染されていたのだ。状況が呑み込めていない司令官を連れて2Bと9Sは脱出を計る。

「どうして、お前達二人は汚染されていないんだ?」

 逃げる途中、司令官がそう呟いた。

「・・・おそらく、僕がデータ同期を保留していたからです。以前、バンカーのサーバーデータにノイズがあったので、それが気になって・・・」

「・・・そうか」

 思えば、その時から既にウィルスは仕掛けられていたのかもしれない。

 アクセスユニットが汚染されているため転送装置が使えず、3人は飛行ユニットの格納庫に入る。

 飛行ユニットに乗ろうする2Bと9Sだったが、突然司令官が足を止める。

「司令官!早くッ!!」

「私は・・・行けない」

 2Bの言葉にも動かずにそう言う司令官の目は、赤く光っていた。

「私も・・・サーバーとデータ同期をしていたからな・・・」

「でも、それなら9Sが・・・」

「そんな時間はないッ!!お前達二人は、最後のヨルハ部隊なんだ!生き残る義務がある!それに、私はこの基地の司令官だ。せめて最後まで上官らしく、いさせてくれ・・・」

 爆発音が聞こえてくる。もう、時間がない。9Sは2Bの腕を掴んで引っ張る。

「司令ッ!!!」

「行けええっ!!2Bッ!!」

 

 ◇◇◇

 

 飛行ユニットでバンカーから脱出する2Bと9S。だが、ウィルスに侵されたアンドロイド達も飛行ユニットで追ってくる。2人は迎撃に移るが、同じ性能の飛行ユニットだ。数の差で不利なのは明白。このままでは地上まで逃げ切る前に2人とも死んでしまうだろう。

「9S!機体制御を貸して!ここを突破するッ!」

「わ・・・わかった・・・」

 9Sの飛行ユニットの制御を受け取ると、2Bは9Sの機体を遠くに飛ばす。遠く、ここからできるだけ遠くに。

「・・・え!ちょっと待って・・・何これ・・・そんなッ・・・2B!!」

 9Sの叫びを背に、2Bはただ1人囮となる。

 

 1人になった2Bはアンドロイド達の集中攻撃を受ける。機体にダメージを受け、飛行ユニットが爆発して強制的に飛行ユニットから外される。

 爆発の衝撃ですさまじい勢いで地面に叩きつけられる。頭を動かすと海が見える。どうやら水没都市に落ちたようだ。

 周りに機械生命体が集まってくる。

 痛む体を無理矢理起こし、武器をとって戦う。

 なんとか機械生命体を破壊するが、なにやら苦しさを感じる。

「警告、ウィルス汚染を感知。推奨、早急なワクチン投与」

 ポッドの無機質な言葉が響く。ワクチンなんて持っていない。バンカーにも戻れないから死んで新しい体で復活することもできない。ならばせめて、他のアンドロイドに汚染を広げないようにしなければ。

「ポッド。アンドロイドの反応が少ない地点を」

「検索・・・報告、商業施設の廃屋付近が該当」

 重い体を引きずって2Bは歩く。痛み、苦しみ、機能に異変を起こしている体はもう走ることはできなかった。

 ・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・。

 どれだけ歩いただろう。機械生命体に邪魔され、奴らの攻撃を上手くよけることもできず、地面を転がり、起き上がって、また歩く。戦う力はもう残っていない。そうしている間にも体の機能はどんどんウィルスに侵食されていき、体はどんどん思うように動かなくなっていく。熱い。体が熱い。ここまでの苦しさを感じるのは初めてかもしれない。ああ、もう頭も動かなくなってきた。ここは何処だろう。私は誰だろう。何で歩いているんだろう。私は・・・わた・・・し・・・わ・・・・・・・・・

 

 ◇◇◇

 

 ウィルスは2Bの中枢神経にまで入り込んでいた。

 理性を失った彼女は動力の無くなるまで廃墟をさまよい続けた。

 

 NieR:Automata

 corru[P]tion

 

 ◇◇◇

 

 気がつけば商業施設に続く橋の前に2Bは立っていた。相変わらず体は痛むし頭はクラクラするし異様な発熱を感じるが、まだ理性は働いている。まだ、自分の意思で動くことはできる。

 彼女は1歩1歩、ゆっくりと橋の上を歩く。

 

 進む度に、本当の意味での終わりが近づいているのを2Bは感じていた。


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