「よくも、よくも王様を!」
「王様の敵だ!」
森の国では機械生命体達が1人のアンドロイドに襲い掛かっていた。
「苦しいのが、お前達だけだと思うなッ!!」
アンドロイドは襲い来る機械生命体達を次々と破壊していく。
機械生命体に対するアンドロイドの総攻撃やウィルス汚染されたヨルハ部隊などとは全く関係無いところで、もう1つ別の戦いが繰り広げられていた。
「・・・こんなものか」
周囲の機械生命体を破壊し、残った残骸を見つめながらそのアンドロイド、A2は呟いた。脱走兵として同じアンドロイドからも狙われる彼女だが、彼女の敵はアンドロイドだけでない。例え1人になっても彼女は機械生命体と戦い続けていた。
敵を倒したからといって一休みする暇などない。ここは森の国。よそ者に対する敵意は他の場所に比べてずっと強い。
瞬間、気配を感じてA2は振り返る。新たな機械生命体が現れたかと思ったが、A2の目に映ったのはアンドロイドだった。バンカーからの暗殺部隊かと思ったがどうにも様子がおかしい。機械生命体のように赤く目が光っている。
こちらを見るなり襲い掛かってくるそのアンドロイドをA2は手に持つ武器で叩き斬る。様子がおかしかろうが襲ってくるなら容赦はしない。
だが、どうやらアンドロイドは1人だけではないようだ。新たなアンドロイド達が次々に現れる。その誰もが皆目を赤く光らせている。まるで仲間を増やそうとしているかのように、彼女達はA2に襲い掛かる。
「うっとおしい・・・」
面倒臭そうに呟きながらA2はアンドロイド達を斬っていく。それにしても、このアンドロイド達はどこから現れているのだろう。アンドロイド達を斬りながら、A2は彼女達のやって来る方向へと進んでいく。
◇◇◇
2Bは今にも倒れそうな足取りで、長い橋の上を歩く。目指すは商業施設。比較的アンドロイドの少ないその場所で、自らの命の最期を迎える為に。
ようやく商業施設の建物の入り口にたどり着いたが、そこに2人のアンドロイドが現れる。2Bは武器を握るが、立っているだけで精一杯で、武器を振るうだけの力はもう無かった。
アンドロイドが2Bに向かって刀を振り下ろそうとしたその瞬間、衝撃が走って2Bは後ろによろめいて地に膝をつけ倒れる。2Bの目に映ったのは、アンドロイドの首を斬り飛ばすA2の姿だった。
A2が振り向き、目線がぶつかる。
「A・・・2・・・?」
「・・・いや、違うからな?」
こちらを見たA2が唐突に口に出したのは弁解の言葉だった。
「おかしなアンドロイドを追いかけてここまでやって来たら偶然お前がいただけで決してお前を助けるために動いた訳じゃないからな?あー、なんか散歩がしたくなってきたな・・・じゃ」
まるで照れ隠しのように早口にそう言って早足で橋を渡って去っていくA2。2Bは「A2ってあんな性格だったっけ?」と思いながらその背中を見送る。
2Bは立ち上がろうとしたが、足に力が入らなかった。もう、歩くこともできないまでにウィルスの侵食は進んだらしい。
ふと前を向けば、新たに赤い目のアンドロイド達がここに集まってくるのが分かる。
「まあ、死ねば死に方は関係ないか・・・」
どの道自分はここで死ぬのだ。ウィルスに侵食され尽くして死のうが、アンドロイドに殺されようが、機械生命体に殺されようが、自分が死ぬことに代わりはない。
自分に近づくアンドロイド達の足音を聞きながら、2Bは静かに目を閉じた。
◇◇◇
A2は急に少しだけ散歩がしたくなった。
満足した頃には、2Bは機械生命体にかじり尽くされて無くなっていた。
NieR:Automata
time to rela[X]
◇◇◇
2Bは気がつけば橋の前に立っていた。
「・・・き、気持ちが悪い・・・苦しい・・・熱っぽい・・・絶対ウィルスにやられてる・・・」
ウィルス違いな言葉を吐きながら、2Bは倒れないように足に力を入れる。肉体的にも精神的にも今までで1番辛いやり直しだ。なにせ目が覚めたと思ったら体のほとんどをウィルスに侵食されているのだ。目覚めと同時に意識を手放したくなってくる。
まったく、自分が何をしたというのか。悪い事なんて何も・・・いや、悪いことはしたな。パスカルの村を滅ぼしたり任務放棄とかしたな・・・。
とにかく疲れ切ったように重い体を無理矢理動かして2Bは商業施設へ向かう。
商業施設まで行くと、前回と同じようにアンドロイド達が現れる。そして、前回と同じように現れたA2がアンドロイドの首を刎ねる。前回と違うのは、さらに集まってきたアンドロイドとA2が戦闘を始めたところだ。
A2は周りのアンドロイドを全滅させて2Bの方を見る。
「ここ・・・まで・・・かな・・・」
目を覆う戦闘用のゴーグルを外し、2BはA2を見つめる。その目は機械生命体と同じように赤く光っている。
持っている刀を地面に突き刺す。
「これは、私の・・・記憶。みんなを・・・未来を・・・お願いするね・・・A2」
アンドロイドは外部の記憶領域として、自身の持つ武器に記憶をデータとして入れておく事ができる。武器を渡すことで記憶を相手に伝えることができるのだ。
2Bは自分の記憶をA2へと渡す。彼女は自分の全てをA2へと託した。
当然、エンディングのことも。
A2は刀を地面から引き抜いて、そして・・・