アンドロイドはエンディングの夢を見るか?   作:灰色平行線

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いろいろな物語を読んだ小説は様々な知識を得ました。
そして、あらゆるジャンルの物語を読んだ小説は、
自分が何者であるかを改めて考えました。


break ti[M]e

 濾過フィルターを手に入れるためにパスカルの村に来たA2。

 何と言って話しかければいいか散々迷って未だに良い答えが見つかっていないA2だったが、

「ああ、あの時の!助けていただき、本当にありがとうございました」

「・・・」

 A2の予想に反してパスカルは友好的だった。

「それで・・・何の御用でしょうか?」

「・・・・・・」

「あの・・・」

 思った以上に相手が友好的でA2はますます何て言えばいいのか分からなくなる。

「説明、ヨルハ機体A2の燃料用濾過フィルターに不具合。経過、レジスタンスキャンプのリーダーアネモネより情報を入手。目的、当地区のフィルターを入手する為に来訪。要求、燃料用濾過フィルター」

 ポッドが1から10まで全部説明してくれた。これでは自分が1人では何にもできないみたいではないか。そんな風に考えるA2だったが、実際パスカルに何も話せていないのは事実なので黙っておくことにした。

「報告、A2の発言不足によるコミュニケーション不足」

「うるさい」

 お前は私のお父さんか。

「ああ、なるほど。そういう事ですか。ただ、今は材料がなくて・・・濾過フィルターを作るのに必要な『剛性植物の樹皮』の採取エリア近くに凶暴な機械生命体がいるんです」

「了解、『剛性植物の樹皮』の確保と輸送」

 自分を抜いてどんどん話が進んでいく。喋らないA2にも非はあるのだが。

 

 ◇◇◇

 

 濾過フィルターを作ってもらったお礼として子供達の遊び場に現れる凶暴な機械生命体を退治し、そのお礼としてアイテムをもらったA2。お礼が堂々巡りしている気がするが、村の子供達にお使いを頼まれたり村の道具屋にお使いを頼まれたりとパスカルの村との交流は順調に進んでいく。正直、お使いばかりしている気もするが、最初に比べれば機械生命体達とも普通に会話できているし前には進んでいるのだろう。

 別にパスカルの村と交流するのが目的だった訳ではないが、知らず知らずの内にA2の中で機械生命体への認識が変わり始めていた。もっとも、彼女はそのことに気付いていないが。

 現在、A2はレジスタンスキャンプに来ていた。パスカルにお礼がしたいという機械生命体のためにアネモネから『哲学書』を奪う・・・貰うのが目的だ。

 アネモネに聞いてみると、読み終わったのが1冊あるからと、哲学書を1冊貰った。そして、ついでにパスカルに渡してくれと『金鉱』を渡された。前から頼まれていたものらしい。

「しかし、機械生命体が哲学書か・・・私達は、敵である奴らの事を何もわかってないのかもしれないな」

「・・・そうだな」

 敵対心だけでは見えるモノも見えなくなってしまう。共存によってしか見えないモノもある。機械生命体に対する憎しみは消えていないはずなのに、ふとA2はそう思った。

「・・・聞こえますか!?A2さん!」

 用事が済んだのでパスカルの村へ行こうとしたA2に件のパスカルから通信が入る。

「A2さんッ!村が・・・大変なんです!村人達が・・・ああっ!!」

「おいっ!パスカル!?どうした?」

 さっきまでとは全然違う悲痛なパスカルの声にA2はパスカルに呼びかけるもが、通信はそのまま切れてしまった。

「一体・・・何が・・・!?」

「推測、貴重な情報源であるパスカルに問題が発生。推奨、パスカルの村の状態調査」

「言われなくても・・・!」

 あのパスカルの慌てようからして良くない事であることは確かだできるだけ急いだ方が良いだろう。パスカルの村まで早く行かねば・・・散歩した後で。

 

 ◇◇◇

 

 A2は急に少しだけ散歩がしたくなった。

 満足した頃には、パスカル村はとっくに滅びていた。

 

 NieR:Automata

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 ◇◇◇

 

 散歩は良いモノだ。ゆったりと何も考えずに目に映る景色を見ながら歩いていると心が安らぐ。ただ歩くという程良い運動が適度な疲れとなって気持ちよさを増幅させてくれる。

「・・・ふう。こんな所で良いだろう」

 さて、十分散歩を楽しんだところでパスカルの村へと向かう。

「・・・なんか焦げ臭いな」

 村の近くはあちこちが黒く焦げていて、煙が出ている。誰かが不注意で大火事でも起こしてしまったのだろうか。そんな事を考えながら、村の中へと入る。

「・・・うわあ・・・」

 村の中は死屍累々だった。壊れた機械生命体達、村を覆う灰色の煙、目に映るありとあらゆるモノが村で起こった事の悲惨さを表している。

「火事1つで、村がここまで・・・」

 火器の取り扱いには十分注意しよう。A2はそう心に誓った。

 

 ◇◇◇

 

 気がつくとA2はレジスタンスキャンプにいた。手には哲学書と金鉱が握られている。どうやらアネモネからこの2つを渡された直後らしい。

「聞こえますか!?A2さん!」

 パスカルから通信が入って来る。今度は寄り道せずに真っ直ぐパスカルの村へ向かうとしよう。散歩は十分したし。

 

 真っ赤だ。燃えるような赤がそこに広がっていた。というか燃えていた。パスカルの村が。

 逃げ惑う機械生命体。転んで倒れる機械生命体。そして、そんな彼らに群がる機械生命体。村は阿鼻叫喚の大惨事に陥っていた。

「なんだこれ・・・機械生命体同士が共食いをしている・・・!?」

 A2が村の中に入ると、パスカルが空を飛んでやって来た。

「ああっ!A2さん・・・!」

「どうしたんだ!?」

「わかりません・・・いきなり一部の村人達が暴走して・・・仲間を襲い始めたのです。子供達だけは別の場所に逃がしたのですが、他の村人は・・・」

 武器を通して得た2Bの記憶に似た光景がある。イヴが暴走した時の機械生命体達によく似ている。それと何か関係があるのだろうか。だが、考える暇はない。

「ここはなんとかするから、先に逃げろッ!」

 そう叫んで、A2は武器を握って走り出す。

 どうやら、ただの火事とはいかないようだ。




パスカルの苦悩3連続2発目。

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