目が覚めた9Sは現れた「塔」について調べようとしたが、塔にアクセスすることはできなかった。
塔の中へと入るため、塔より示された「資源回収ユニット」から3つの「認証キー」を入手しようと9Sは行動を開始した。
機械生命体の殲滅のため。A2殺害のため。それは司令部からの命令なんかではなく、9Sが自分で決めたことだ。
認証キーを集める途中で機械生命体との戦闘、9Sの葛藤、デボルとポポルによる助け、21Oとの再会、A2へのさらなる憎悪、落ちる9Sなどいろいろな出来事があったのだが、話の都合上それらは全て省くことにする。
森の国、水没都市、遊園地に現れた3つの資源回収ユニットを巡り、ついに全ての認証キーを手に入れた9Sは改めて塔に向かう。
3つの認証キーを使い、塔に入るために塔の扉へのハッキングを仕掛ける9Sだったが、彼を止めようとするように機械生命体達が現れる。
「邪魔するなッ!!」
一旦ハッキングを諦め、機械生命体達を破壊していく9Sだったが、機械生命体は次から次へと現れる。まるで是が非でも9Sを塔が中へ入るのを止めたいかのように。
「クソッ!キリが無いッ・・・!!」
こんな所で立ち止まっている場合ではないのに。9Sの顔に焦りが浮かぶ。
「友軍の反応アリ」
「・・・友軍!?」
ポッドの言葉に戸惑いを隠せない。こんな自分勝手な目的で動いているというのに、誰を頼るでもなく1人で動いてきたというのに、一体誰が自分に協力するというのか。
「君たちは・・・!?」
戦う9Sの元へ現れたのは、赤い髪の2人のアンドロイド。デボルとポポルだった。2人とも、腰に刀をつけている。
「9S・・・」
「来ると思っていたよ」
デボルとポポルの2人は塔の前に立ち、刀を手に取りその切っ先を9Sへと向け、9Sに向かって走り出す。身構える9Sだったが、2人は9Sの横を通り過ぎ、その後ろの機械生命体を破壊した。
「ここは私達がなんとかする」
「君は『塔』への扉を開いて」
「デボル・・・ポポル・・・どうして・・・ここに!?」
デボルとポポルが何故助けに来てくれたのか分からない。だが、2人のおかげで塔へのハッキングをする時間を稼げているのも事実だ。訳が分からない状況だが、9Sは扉に手をかざし、ハッキングを再開した。
◇◇◇
破壊する。破壊する。続けて破壊する。さらに破壊する。休む間もなく破壊し続ける。だが、機械生命体の数は減らない。全く減る様子がない。空を飛ぶ機械生命体によって新しい機械生命体が投入される。
デボルとポポルは必死に刀を振るう。しかし、機械生命体は次から次へと襲い来る。終わりの見えないその戦いに2人に疲れの色が見えてくる。心なしか、先程よりも機械生命体の数が増えているような気がする。
このままではジリ貧だ。塔の中にさえ入れれば。
「9S、まだか・・・!?」
機械生命体を破壊してデボルは塔の入り口でハッキングしているであろう9Sの方を見た。
そこに9Sはいなかった。
「・・・は?」
頭の中が混乱する。
「え?え?あ、アイツどこ行きやがった!?」
思わず叫ぶ。
「デボル!前見て!・・・ああっ!」
こんな時でも機械生命体は容赦なくやって来るのだ。いつの間にかデボルのすぐ後ろまでやって来ていた機械生命体が手に持っていた武器を振り下ろす。その攻撃はデボルを突き飛ばしたポポルに当たった。
「ポポル!?」
倒れるポポルをデボルが支える。
そうしている間にも機械生命体の数はどんどん増えていく。周りを無数の機械生命体達が囲んでいく。
「は、はは・・・ここまでか・・・結局、私達は・・・許されないんだな・・・」
じりじりと近づいて来る機械生命体達を見ながら、脱力したデボルはそう呟いた。
◇◇◇
奮闘するデボル・ポポルを残して9Sは立ち去った。
もちろん、デボル・ポポルは死んだ。
NieR:Automata
city e[S]cape
◇◇◇
気がつくとポポルは上から塔を眺めていた。
「あれ?ここは・・・」
どうにも記憶がハッキリしない。自分は機械生命体の攻撃からデボルをかばってそれから・・・。そこから先は何も思い出せない。機械生命体の攻撃を受けて気を失ってしまったのだろうか。
「ポポル、そろそろ行こうぜ。9Sも来たみたいだし」
「え?あ、デボル?」
不意に隣から声が聞こえて振り向くと、デボルが立っていた。
「どうした?」
「う、ううん・・・何でもないの。ごめんね?」
デボルは不思議そうにポポルをみるが、やがて「何かあったらすぐ言えよ?」と言って歩き出した。下では9Sが機械生命体と戦っていた。
自分が見たのはなんだったのだろう?夢にしてはやけにリアルな夢だ。それとも未来の暗示なのだろうか。仮にこれが記憶だとしてもデボルが何も覚えていないように見えるのは何故だろうか。
気になることはある。だが、今は進むしかない。その先に待っているのがどのような終わり方であろうとも、足を止める事は許されない。それが彼女達に義務づけられた贖罪なのだ。
ポポルは腰に刀を持っていることを確認して、デボルの後を追いかけた。
深い意味はありません。ポポルだけ覚えてた方が話が書きやすかっただけです。