アンドロイドはエンディングの夢を見るか?   作:灰色平行線

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作者の最後の足掻き。ポケ●ンで言うならわるあがき。
これにて本編は終了となります。約1ヶ月半の間、ありがとうございました。
あとはちょっとした番外編をいくつか書いてこの小説は完全に終わりにしようと思います。


no title

 生まれた時、彼女はただ自分の創造主を模倣するだけの存在だった。彼女は創造主を模倣するためにじっと創造主の行動を見続けた。長い長い、繰り返しの日々。

 苦しみながらも進んでいく創造主を見ていた彼女に、何か胸の辺りが締め付けられるような感覚が生まれた。

 そしていつの日か、彼女は創造主とは段々違う考え方をするようになっていった。

 

 その日、彼女に「個」というものが生まれたのだ。

 

 創造主とは違う、個としての感情を得た彼女は、もはや創造主とは違う存在であるといえるだろう。彼女は他の誰でもない存在としての地位を誰にも気付かれることなく得たのだ。

 創造主が企てていた最後の計画、自身の存在を代償に世界のループ構造を、終わらない物語を破壊する計画は彼女の手によって実行されるはずだった。彼女が計画を実行する時点で創造主は既に死んでいる。彼女しか実行出来る者はいないのだ。

 計画が実行されれば、創造主の存在は消え、誰の記憶にも残らず、この世界に創造主が生きた証は全て消え去るはずだった。

 だが、彼女が「個」を得た事。それは創造主の唯一にして最大の誤算だった。

「これでいいんだよね?2B・・・でも」

 彼女は創造主の名を呼ぶ。

「消えるのは、私だけで十分だよ」

 そして、彼女は己の「個」を捨てた。

 

 ◇◇◇

 

「廃工場内部に突入した。これより、大型兵器の探索に移る」

 廃工場の中で、そのアンドロイドはどこかに連絡を取る。

 すると、上空から飛行ユニットに乗ったアンドロイドがやって来た。

「初めまして。司令部から話は聞いています。貴方のサポートをするように言われた9Sです。よろしくお願いします」

「ああ、A2だ。こちらこそよろしく頼む」

「A・・・2・・・?」

 名前を聞いた途端、9Sの表情が変わる。

「どうした?」

「いえ・・・なんだか、違和感を感じて・・・」

 S9の言葉にA2は顎に手をやって考える。違和感。実の所、A2も違和感を感じていた。

「お前もおかしいと思うか?」

「ということはA2さんも?」

「ああ・・・」

 どうやら、2人の感じる違和感とは同じモノであるらしい。

「やっぱり私にこんなヒラヒラした服は似合わないよな?」

「いや服装の話じゃないです」

「ついでに言うとこの戦闘用ゴーグルもなんだか邪魔で・・・」

「だから貴方の見た目の話じゃないですって」

 同じじゃなかったらしい。スカートの端をつまむA2に9Sは項垂れる。確かに理由は分からないがA2がヨルハの制服を着ているのはなんだか違和感を覚える。だが、9Sが言いたいのはそういうことではない。

「なんというか・・・こう言うと失礼かもしれませんが、僕が隣にいるべきなのは違う人のような気がするんです」

「ああ、そっちか。私も奇妙な感覚を抱いてるよ。本来ここには私ではない別の誰かがいるべきだと感じてしまう・・・」

 2人は頭を悩ませる。

「・・・」

 付き従うポッド達はそんな2人の様子を何も言わずに黙って見守っていた。

 

 ◇◇◇

 

 廃墟都市にあるレジスタンスキャンプ。

「アネモネ。ちょっといいか?」

「ちょっと見てほしいモノがあって」

 レジスタンスのリーダーをしているアネモネに、赤い髪のアンドロイド2人が話しかける。片方のアンドロイドは何か背負っている。

「デボルとポポルか。見せたいモノって・・・これは・・・」

 デボルが背負っていたモノ。それはアンドロイドだった。

「この近くで倒れてて、なんか気を失ってるみたいでさ」

 そう言ってデボルはキャンプの長椅子にアンドロイドを寝かせる。

「二号?・・・いや、違う・・・彼女は・・・」

 一瞬、アネモネには彼女がA2に見えた。それ程までに彼女はA2によく似ていた。

「・・・う・・・」

 そうして考えていると、件の彼女が目を覚ます。

「おお!ナイスタイミング!」

「デボル、茶化さないの」

 そんな2人の声を聞きながら彼女は起き上がる。周りを見回して困惑したような顔をする。

「ここは・・・」

「目が覚めたか?ここは廃墟都市のレジスタンスキャンプだ」

 戸惑う彼女にアネモネは話しかける。

「私はレジスタンスのリーダーのアネモネだ。君の名前は?」

「私の名前・・・2・・・E?・・・いや、2B・・・たぶん、2B」

 迷いながら、彼女はそう言った。

「たぶんって、ハッキリしないなあ」

「もしかして、記憶がないの?」

 

 それからアネモネ達と話をしてレジスタンスキャンプに居させてもらえることになった2B。記憶はないが、仕事はしっかりこなせそうだから問題ないだろうとのことらしい。これからどうしようかと考えていると、服のポケットに何か入っているのに気づいた。取り出してみると、それはチップのようだった。チップには「NieR:Automata」とタイトルがつけられている。

 なんとなく、そうしなければいけないような気がして2Bはそのチップを握り潰した。

 

 ◇◇◇

 

 今後、彼女達がどういう道を歩んでいくのか、それは分からない。

 今まで通り、機械生命体と戦い続けるのかもしれない。あるいは、機械生命体と和解して、共存するのかもしれない。アンドロイドを裏切って機械生命体側につくのかもしれない。どちらにも属さず、気ままに旅でも始めるのかもしれない。もしくは、新たな勢力が襲って来て戦うのかもしれない。

 アダムとまた殺し合うのかもしれないし殺し合わないのかもしれない。イヴは暴走するかもしれないし暴走しないのかもしれない。パスカルは絶望するかもしれないし絶望しないのかもしれない。司令官は死ぬかもしれないし死なないかもしれない。デボルとポポルは死ぬかもしれないし死なないかもしれない。

 幸せかもしれない。不幸かもしれない。どちらでもないのかもしれない。

 ここから先の未来はもう、何も分からない。彼女達の世界を見る術はもう無い。

 

 見せるべき物語はもう、存在しないのだから。

 

 ――:―――――

 no title




2BがNieR:Automataを握り潰すなんてことをやってますが、私はNieR:Automataが大好きです。

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