こちら「おまけ」となっておりおります。
本編以上のキャラ崩壊やアホみたいな展開が待っております。
「ヤバイ、こんな小説見るに堪えない!」と思ったら無理はせずに「戻る」しましょう。
a dream within a dream
「わーっ!遅刻遅刻ーっ!」
そう言ってアジのフライを加えながら家を飛び出す私の名前はA2。今日から花の女子高生!高校では一体どんな出会いが待っているのだろう?今からとってもドキドキ!でも今は遅刻しそうでドキドキ!高校デビュー初日で遅刻なんてしたら絶対悪い意味で目立っちゃう!そしてその後の学校生活もクラスに行く度にヒソヒソされて友達なんて絶対できないぼっち生活まっしぐらに決まってる!それだけはなんとしても阻止しなければ!!
そんな事を考えながら私は学校までの道を全力疾走する。とりあえずぼっちだけは避けたい。中学で友達だったアネモネちゃんは別の高校に行ってしまった。アネモネちゃん亡き今、私はなんとしてでも高校で新しい友達を作らねばならないのだ。
そんな時だった。十字路を通過しようとした私の前に、横から誰かが現れた。塀に囲まれた住宅街だったため、横から人が来るのに気付かなかったのだ。
ドン!という音がして私は後ろに倒れて尻もちをついてしまう。仕方ないよ、か弱い女の子だもん。
「おっと、大丈夫か?」
ぶつかった人が声をかけてくれる男らしい声だ。
「あ、いえ、こっちこそすいません」
そう言いながら顔を上げた私の目に映ったのは、上半身裸のイケメンだった。
胸がドキドキしている。これが恋?それとも生まれて初めて半裸を見た興奮?いや、どう考えても走り過ぎによるものだ。
「すまなかったな、まさかこんなに急いでる人がいるとは思わなくてよ」
男はそう言いながらこっちに手を伸ばす。
「ほら、アジのフライ落としたぞ」
「え、ええ?ありがとうございます?」
流石に落とした物はもう食えない。後でゴミ箱にでも捨てとこう。
「ほら、立てるか?」
「あ、1人で立てます」
アジのフライでベタついた手を握りたくはない。
「まあ、ここで会ったのも何かの縁だ。オレはイヴ。お前は?」
「え、A2・・・です」
その時の私は知らなかった。この男の存在が私の学校生活を狂わせることになるなんて。
◇◇◇
「そんな感じの普通の女の子に憧れたこともあった」
「そういうのを普通の女の子とは言わん。恋に恋するなんてレベルじゃないぞ」
そう言って目の前の男は私をジト目で睨む。
とあるビルの一室。部屋にいるのは私とこの男の2人だけだ。
「それで、アダム。今度の任務は?」
私の名前はA2。A2はコードネームであり、私の本名ではないのだが、私はスパイなのだ。本名を教えることはできない。
「ああ、―――にある軍事基地で開発中のある兵器のデータを入手してもらいたい」
そう言う目の前のロン毛の男はアダム。アダムも勿論コードネームで私の上司だ。私はコイツを上司だとはあまり認めたくはないがな。
「なんでも超大型の兵器で怪獣のような見た目をしているらしい」
「まさかメ●ルギア・・・」
「んなワケあるか。そんなモノ作ってみろ。世界が壊れるぞ」
「でも機械生命体が作れるんだからメ●ルギアだって作れるんじゃ・・・」
「それ以上言うな。確かに作れそうって思うけどそれ以上はダメだ。いいから行ってこい」
早口でアダムはまくしたてる。そんなにメ●ルギアに触れてほしくないのだろうか。カッコイイのに、メ●ルギア。
「・・・A2」
「何だ?」
部屋から出ようとする私をアダムは止める。
「お前は上司に対する口の利き方もなってないし性格も問題アリだ。だが、大事な部下だ。無事に戻って来い」
「アダム・・・」
真剣な顔のアダムに、やっぱり上司なんだなと思う。
「捕まったりなんかしたら!あんなことやそんなことをされるに決まってる!軍の奴らに『体に聞いてやるぜ!グヘヘ・・・』なんてされる部下を私は見たくない!」
「エロ本の読み過ぎだ」
前言撤回。やっぱりコイツを上司とは認めん。
「今の時代捕まって『体に聞いてやる』なんてもう古い。私は『話さなくてもいいぜ?どっちにせよお前は私の――になるのだ』って展開の方が好みだ」
「お前もエロ本読んでるじゃないか!」
この時の私は知らなかった。まさかこの会話が後にあんなことになるなんて・・・。
◇◇◇
「っていうスパイ漫画にしようと・・・」
「いや、それはちょっと・・・」
喫茶店で私の出した漫画のアイディアに前に座る男は首をひねる。
私の名前はA2。漫画家になろうと日々努力をしているどこにでもいる女だ。今日はとある漫画雑誌の編集者である9Sさんのところに漫画の持ち込みに来た。
「やっぱり絵がまずかったでしょうか・・・」
「いや絵は十分上手いんですけど内容がね・・・」
9Sさんは頭を抱える。
「まず第一にコレ最初少女漫画みたいに始まってるじゃん。ベッタベタの。なんでアジのフライくわえて学校走ってるのかは分からないけど。それが何でページ開いたらスパイ漫画になってるの?高校デビューの部分いる?あるいはそのまま少女漫画でやればよかったじゃん」
「いやー、自分でも少女漫画かスパイ漫画にするか迷いまして」
「じゃあ描く前にどっちかに決めよう?何で漫画書き始めても悩んでんの?」
「2つの漫画が1つの作品として同時展開していく。新しくないですか?」
「新しいけどひたすら読みにくいよ」
問題は絵ではなかったのか。さすが9Sさん。編集者としてためになるアドバイスをくれる。
「あとさ、ウチ一応子供向けの雑誌なの。コ●コ●コミックみたいな。それで『エロ本』とか『体に聞いてやる』とか明らかにエロを意識してるのはちょっと・・・」
「一応本番行為アリのR18ヴァージョンも用意したんですけど」
「出さなくていい!出さなくていいから!」
カバンから原稿を取り出そうとする私を9Sさんは止める。
「というかエロ漫画描きたいならなんでウチみたいな小学生向けの雑誌に持ち込んだの?」
「いや、最近は子供向け雑誌とか言ってもどこも結構乱れてるじゃないですか。だから問題ないかなーって」
「いや問題だよ。がっつり本番行為描いたら大問題だよ・・・」
そう言って9Sさんはため息を吐く。
「とりあえず、少女漫画かスパイ漫画がどっちかに絞ってからもう1回持って来て」
「分かりました。次は少女かスパイかエロ漫画のどれかにします」
「エロはもういいって!!」
そう言って9Sさんが、テーブルを叩いた瞬間、私は―――
◇◇◇
「・・・む?」
目が覚めると白い天井が見える。
「夢か・・・」
どうやらバンカーの自室で眠っていたらしい。伸びをしながらA2は起き上がる。
よく覚えてないがなにやらいろいろと忙しい夢を見た気がする。
「おはようございます。A2。報告、10分程前から司令官からの呼び出し」
「はあ!?なんで起こしてくれなかったんだ!?」
そう言ってA2は部屋を飛び出した。
そんな出来事があったとかなかったとか。
彼女の記憶にはなくとも、その世界は本当にあったのかもしれない。