ビルの中にいた37Bに戦いを仕掛ける14S、2B、9Sの3人。
14Sのポッドによるレーザー攻撃を37Bは後ろに跳んでかわす。何故か足元に転がっていた義体を抱えて。そんな37Bに2Bと9Sが刀を構えて突っ込む。空中でポッドのない37Bに2人の攻撃をかわす術はない。
「ガアアアアアッ!!」
だが、かわす必要など無かった。刀を振るう2Bと9Sに向かって37Bは片手に握った大剣を振るう。まるで小さなナイフでも振るうかのように素早いスピードで振るわれた大剣は2人分の斬撃などものともせず、力押しで強引に2Bと9Sの2人をビルのコンクリートの床に叩きつける。
「2Bさん!9Sさん!」
14Sが2人にかけよるが、さらに追撃とばかりに37Bはそのまま空中で大剣を振り下ろす。2Bと9Sに当たらなかったが、その一撃によってビルの床が崩落し3人は1つ下の階へと落ちる。
遅れて下に降りてきた37Bは着地と同時に大剣を横に振るうと、斬撃が巨大な衝撃波として飛んでくる。横に跳んで3人は衝撃波をかわすが、ビルの壁に衝撃波が当たるとそのまま壁を砕いて吹き飛ばしてしまった。
「プラグインチップが機能している?それにしたって・・・」
「アンドロイドに出せる力を超えている!!」
2B、9S共に37Bの持つ破壊力に思わず言葉が出ていた。
「推測、ウィルスの侵食による影響で体の制御機能が停止している。体に負荷をかけないためのリミッターが外れている状態。予測、長時間の戦闘行為は不可能」
「それならッ!!」
ポッドの言葉を聞いて2Bは37Bに向かって突っ込む。37Bは大剣を横に薙ぐように振るうが、2Bはそれを屈んでかわす。さらに大剣を振り続ける37Bに対して、2Bは攻撃をせず、よけることに専念する。いつ斬撃から衝撃波に派生してもいいように、斬撃によって振るわれる大剣が描く軌跡の正面には決して立たないように回避する。しばらく斬撃と回避の繰り返しが続くが、そこに急激な変化が生まれる。
体から火花を散らし、37Bは突然動きを止めた。アンドロイドの本来の性能を超えた激しい動きを繰り返すことによって起きる負荷に体が耐えられなくなり一時的に機能が停止したのだ。
「9S!14S!今!!」
2Bの言葉を合図に2人のスキャナータイプは37Bにハッキングを仕掛ける。おそらく、ハッキングしても37Bに巣食ったウィルスを完全に取り除くのは無理だろう。それでも、37Bの制御機能を侵食しているウィルスを完全にとはいかずとも、制御機能が復活するまで取り除くことが出来れば、37Bの持つ絶大な破壊力を打ち消すことができるかもしれない。
だが、ここで間違いが起きた。立ち位置が悪かったのだろうか。それとも運が悪かったのだろうか。9Sの仕掛けたハッキングは無事に37Bのデータへと侵入することに成功した。だが、14Sの仕掛けたハッキングはどういう訳か、37Bが抱えている義体の方のデータへと入ってしまった。
そして14Sは見つける。偶然入ってしまった義体のデータの中で、その義体に遺された記憶を。
◇◇◇
視界が変わる。ここはバンカーの廊下だろうか。記憶データの中のこのアンドロイドの行動を14Sは追体験しているようだ。ならばこのアンドロイドを通して37Bに何があったのか分かるかもしれない。
「37Bだ。今日からお前と共に行動することになった。よろしく頼む」
その義体のアンドロイドは、37Bが共に行動していたアンドロイドのようだった。目の前にいる37Bはこちらに向かって手を差し出す。握手のつもりなのだろう。
「ふ、14Sです!よ、よろしくお願いします!」
「ッ!?」
それに対してこの義体のアンドロイド、14Sと名乗った彼は頭を下げながら緊張した様子でその手を握っていた。
「そう畏まらないでくれ。私はお前の上官でもなければ敵でもない。これから一緒に任務をこなす仲間なんだ。もっとお互い気を楽にしてやっていこうじゃないか」
「そ、そんな事は言ってもですね!?僕はこっそりひっそり調査をするのだけが取り柄のS型モデルでして、戦闘も得意ではありませんし、貴方のような派手に活躍するB型モデルのアンドロイドと一緒に行動するなんて畏れ多くて・・・」
14Sはガチガチに緊張して動きもぎこちない。こんな調子で大丈夫だろうか。思わずこの記憶を見ている14Sまでもが心配になった。自分だけど。
「そう自分を卑下するな。お前のようなスキャナータイプが情報収集してくれるから私達はそれを頼りに有利に戦闘を進められるのだ。私はお前に期待しているよ」
14Sの緊張をほぐすためか、37Bはそう言いながらアンドロイドの頭をなでる。
「ちょ、こ、子供扱いしないでくださいよ!」
「そう、その意気だ。もう大丈夫だろう。改めてこれからよろしく頼む」
恥ずかしがって離れる14Sに37Bは笑う。
「・・・確かに、なんだか緊張は解けました。これからよろしくお願いします」
そう言って2人は改めて握手する。
「・・・まさか初対面で目の前でイチャつかれるとは思いませんでした。入りこむ隙もありません。今からもう対人関係に不安を感じます・・・」
そんな2人の横で、さらに別のアンドロイドがしゃがんで項垂れていた。
「う、うわあ!?」
「おや、いつの間にいたんだ?」
2人のそんな言葉にそのアンドロイドはさらに項垂れる。
「最初からいましたよ。私は貴方達のサポートをすることになった8Oです。よろしくお願いします・・・」
「よ、よろしくお願いします。とりあえず顔上げましょう?」
「ああ、よろしく頼む。まずは顔を上げないか?」
2人掛かりで負のオーラをまき散らす8Oを慰めにかかる。
こうして37Bは14Sと8O、2人のアンドロイドと出会ったのだった。