アンドロイドはエンディングの夢を見るか?   作:灰色平行線

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最後まで悩みました。Yは本編に絡まないから難しい・・・。


head[Y] battle(後)

「すっかり・・・強くなりましたね・・・もう、僕の手助けは要らないですよね」

 いつものように、2Bと9Sがエミールのショップで買い物をすると、エミールは突然そんな事を言った。

「どういう意味?」

「いえ、何でもないです。お元気で」

 2Bの疑問には答えず、彼は走り去って行ってしまう。

「なんだか、エミールの様子がおかしい・・・ポッド」

「既に追跡マーカーを使用。現在、砂漠方面に向かっている事を確認」

「わかった」

 相変わらず仕事が早いと思いながら、2Bと9Sは砂漠に向かう。

「エミール、どうしたんでしょうか」

「分からない・・・だけど、嫌な予感がする」

 

 エミールを追いかけて砂漠を走っていると、巨大なエミールの頭を見つけた。砂に半分程埋まったエミールの頭は複数あり、どれも動く様子はない。

「報告。砂漠に埋まっているエミールの頭はエミールとほとんど同じ成分で構成されている。既に生命活動は停止している模様」

 ポッドの報告を聞いて、この埋まっているエミール達がかつてエミールとして生きていたことを知る。

「エミールって、本当に何人もいたんですね・・・」

 エミールの頭を見つめて9Sが呟く。エミールの言葉を信じていなかった訳ではないが、こうして実際に見ると驚きを隠せない。

 そんなエミール達の近くに倒れたスクーターを発見する。それは、2人がよく知るエミールのスクーターだった。

「これは・・・エミールッ!!」

「気を・・・つけて・・・まだ・・・生きて・・・」

 エミールに駆け寄ると、彼は震えるような細い声でそう言った。

 その瞬間、地面が揺れて砂の中からいくつもの巨大なエミールの頭が飛び出してくる。

「グアアァァァウアアアアアッッ!!!」

「くそっ・・・」

 圧倒的な光景に2Bは思わず悪態をつく。

「警告。旧世界の魔法兵器。魔素を利用した攻撃はあらゆる防御システムを貫通する可能性あり。推奨。回避」

「そんな事言われたって・・・」

 大量のエミール達の撃ち出す魔法弾、魔素を利用したレーザーの猛攻に防戦一方を強いられる2Bと9S。力と数に押され、防御することもできず避けるのがやっとだった。

「僕は・・・ボク達は・・・!!!」

 エミール達は叫ぶ。

「永遠・・・クルしい・・・イタイ・・・何で、コンナ・・・僕達だけ・・・もう・・・全部・・・殺してヤル!!こんな世界!!!要ラナい!!!」

「警告。敵性魔法兵器、魔素の放出量増加」

 悲痛な叫びと共に、エミール達は攻撃の勢いを増していく。

 度重なる増殖と、長年に渡る戦争で、自我の崩壊した彼らに2Bと9Sの姿など分からない。アンドロイドだろうと機械生命体だろうと、同じエミールだろうと、彼らは壊す。

「あいつらは・・・僕が決着を・・・つけないと・・・」

 エミールは起き上がろうとするが、スクーターの体は動かない。

「僕は!僕達は頑張ったよ!」

「雨の日も風の日も嵐の日も」

「たとえ仲間が死んでも、僕たちはくじけずに戦ったよ!」

「でも、永遠に続く戦争が、永遠に続く痛みが、ッフフ・・・永遠に続く苦しみが・・・僕達に叫ぶんだ!」

「この世界には守るべき価値が無いって・・・」

「こんな世界に意味はないって・・・ハハハッ・・・そう叫ぶんだよ!」

「フフフッ・・・ハハッ・・・ハハハハハハ・・・アーッハッハッハ!ハハハハアアアアアアアアア!!」

「お前に・・・お前達に・・・」

「この痛みが!!悲しみが!!絶望が!!」

「わかルカああアアあああああああああっ」

 

「だからって!!こんなの間違ってる!!」

 

暴走を続けるエミール達に、動けないエミールは1人叫ぶ。

「どんなに苦しくても、どんなに辛くても・・・あの人達は諦めたりしなかった。いつか乗り越えられると信じて、戦ってたんだ!そうですよね!?カイネさんッ!無駄だと分かっていても、やらなきゃダメなんだッ!だって、あの人が、守ろうとした世界なんだからッッッ!!」

「・・・・・・!!」

 暴れていたエミール達の動きが止まった。

 そして、彼らは1ヵ所に集まって・・・。

 

 ◇◇◇

 

 暴走したエミール達が融合炉を暴走させた。

 この地球はもはや生物の住める星ではなくなってしまった。

 

 NieR:Automata

 head[Y] battle

 

 ◇◇◇

 

 何やらいろいろと思い出したような気がする。イノシシの牙を手に入れるために頑張ったことや、巨大なイノシシと戦ったことや、鎧をつけたイノシシと戦ったこと。

 やたらイノシシに関する記憶が多いような気もしながら、今日もエミールはスクーターを走らせる。

「ふふふふーんふふふーんとぅらーりららーりーん」

 軽快な音楽と共にうろ覚えの歌を口ずさむ。

 そうして走っていると、衝撃と共にスクーターが軽く吹っ飛ぶ。

 空中で一回転して止まると、こちらに近づいてくる人が2人。

「ああ、2Bさん、9Sさん」

 最近知り合ったこのアンドロイド2人。毎回毎回こちらを攻撃して呼び止めてくることを除けば基本的には良い人達だ。

 商品の売買をして、少し雑談をする。どうして攻撃して呼び止めるのか聞いてみると、普通に呼び止めても止まらないからだと答えた。歌に集中し過ぎているのだろうか。

「じゃあ、私達はそろそろ行く」

「また素材が必要になったら来ますね」

「はい!またいつでもどうぞ!」

 2人のアンドロイドは歩き出す。方向からして、おそらくレジスタンスキャンプに戻るのだろう。

「今度は、助けるから・・・」

 去りながら2Bは何かを呟いたように聞こえたが、内容までは聞こえなかった。

「ふふふふーんふふふーん・・・」

 そうしてエミールはまた走り出す。

 今日も廃墟都市のどこかで、奇妙な歌声が響いていた。


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