超短編   作:まーぼう

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・初めての想い
・初恋知らず

pixivで行われた企画、1000文字ss大会の作品。
「初恋」をテーマに1000文字(前後)の作品を投稿し、一定期間内での評価を競うという企画でした。1000字に納めようと思ったら予想以上に短くなってしまったのを覚えています。
こちらだと字数少なすぎて投稿出来なくてどうしようかと思いましたが、2つエントリーしてたんでまとめることにしました。


1000文字ss

・初めての想い

 

 

「はーちゃん、またねー!」

 

 ぶんぶんと元気に手を振る妹に、ついつい顔がほころぶ。またずいぶんとなついたもんだね、あいつに。

 

「けーちゃんははーちゃんが大好きだねぇ」

「うん!はーちゃんだいすき!」

 

 京華は勢いよく頭を振り、その反動でバランスを崩して転びそうになる。危なっかしいね、まったく。あたしもこのくらい素直になれたらな……。

 心の中でこっそりため息を吐いていると、京華は繋いだお手々を上機嫌で振り回す。あいつと遊べたのがよほど嬉しかったらしい。ちょっと妬けるね……。

 

「けーちゃんは、はーちゃんのどこが好き?」

「ぜんぶ!」

「そっか」

 

 間髪入れずに返ってきた答えに思わず苦笑する。

 全部、か。

 子どもならそう答えるのが普通なんだろう。

 好きな相手は全部が好き。嫌いなら全部嫌い。それだけでいい。

 だけど実際には、人には良いところも悪いところも色々あって、同じ部分でも人によって好きになったり嫌いになったり。

 もちろんあいつにだって悪いところはある。というかそっちの方が多いんだろう。何しろ最初がアレだったし……。

 だけど、まぁ、

 

「けーちゃんね、おおきくなったらはーちゃんとけっこんするの!」

「そっか。じゃあさーちゃんとライバルだね」

「らいばる……?」

「さーちゃんも、はーちゃんのことが好きってこと」

「さーちゃんも……?うん!らいばる!」

 

 あたしも、というだけで納得してしまったらしく、京華はフンフンと嬉しそうにプリキュアを歌い出す。きっとライバルの意味も理解してないだろうに。

 それでいいさ。ゆっくり時間をかけて解っていけば良い。

 

 きっとはしかみたいなものなのだろう。

 たまたま親しくなった、身近で優しいお兄ちゃん。

 そういう相手に女の子が惹かれるのは、ごく自然なことだ。その想いが、大抵は叶わないことも含めて。

 それでも、

 

「けーちゃん、今日は晩御飯、何がいい?」

「ハンバーグ!」

 

 願わくは、この子の幼い初恋が、せめて美しいものになりますように。

 

 

 

・初恋知らず

 

 

 

 きっと、本当に人を好きになったことがないんだろうな。俺も、君も。

 

 

 

 

「……解ったようなこと言ってんじゃねえよ、クソヤロウ」

 

 ダブルデート(笑)の帰り道に、思わず電柱を蹴り付ける。

 

 ああ、不愉快だ。何もかも気に入らない。

 葉山も、折本も、陽乃さんも、何もかもだ。

 

 自己犠牲?ざけたこと抜かすな。誰がお前らなんかのために犠牲になんかなってやるものか。

 

 過ぎたこと?ふざけんじゃねえぞ。ああそうだろうよ。お前らみたいな連中は、自分が何をしてるかなんざ考えたことも無いんだろ?だけどな、やられた方はたまったもんじゃねえんだよ。下手すりゃ一生モノの傷になることだってあり得るんだ。

 

 なんでも分かっちゃうんだね?んな訳あるか。なんでも分かるならこんな苦労してるわけねえだろ。特にあんたのことなんか何一つ分かんねえよ。

 

 ああムカつくムカつくムカつく。

 小町もいつまでもしつこく怒ってるし、一色は好き勝手なこと抜かしてるし。それに、一番分かんねえのはあいつらだ。

 

 雪ノ下、お前は何がしたいんだよ?お前が俺を嫌いなことなんか知ってるよ。だけど俺に任せたのもお前じゃねえか。後から文句言うくらいなら最初から自分でやりゃ良いじゃねえか。

 

 由比ヶ浜、お前は俺に何を期待してんだよ?色んなことが分かる?そんなわけねえだろ。俺はちょっと計算高いだけのボッチだぞ。人の気持ちも考えろ?んなもん考えて分かるくらいならそもそもボッチなんかやってねえんだよ。

 

 分かんねえ分かんねえ分かんねえ。何がマズイ?何を間違った?なんで上手くいかない?

 

 電柱を蹴り続けて上がった息を整える。自然と上を向いていた視界に、星一つ見えない夜空が広がる。

 

『きっと、本当に人を好きになったことがないんだろうな。俺も、君も』

 

 不意に、数時間前に聞いたムカつく声が甦り、もう一度電柱に蹴りを入れる。

 俺に足りないものはいくつもある。その最たるものが、心とか気持ちとか呼ばれるモノだ。

 何度も女の子を好きになった。だけど、きっとそれは恋なんかじゃない。もっと身勝手で薄っぺらい、別のなにか。

 そこに本物の感情が無かったからこそ、ずっと大事なものばかりを取りこぼしてきた。

 

「んなこと、とっくに分かってんだよ、クソったれ……!」

 

 そう、そんなことはとっくに分かっていた。

 

 きっと俺は、まだ恋を知らない。

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